第113号「こけ枝のほのぼの人権噺」

共創・共育・共感
尾鷲市教育長だより
2015.2.20.(金)
第113号
こ け枝の ほのぼの 人権噺
熊野市立入鹿中学校勤務時代、ちょうど今頃、紀
南PTAの6ブロックの研修会も兼ねて、生徒だけ
でなく、小学生や保護者、地域の人たちにも来ても
ら い 、「 こ け 枝 の ほ の ぼ の 人 権 噺 」 を テ ー マ に 、 落 語
・講演活動を展開されている落語家の桂こけ枝さん
を招 い て 人権講 演 会を開催したことがあり ます。
こけ枝さん自身が先天性股関節脱臼により、生まれつき右足をひきずりな
がら生活し、小学生の頃いじめを受けていた話やさまざまな人たちとの関わ
りを通して得た貴重な体験をもとに、差別の愚かしさ、人権の尊さを笑いを
交え な が ら、楽 し く、わかりやすく語って くれました。
こ け 枝 さ ん の 講 演 は 、「 笑 う 」 と い う 行 為 が 最 近 注 目 を あ つ め て き て い る
とい う お 話から は じまりました 。話の内容 はだいた い次のようなものでした 。
笑いは「健康の源」であり、医学的にも証明さ
れています。人間は笑うことによって、身体にと
って悪い細胞、例えばガン細胞など、これをやっ
つけるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が増殖
するので す。
では、どうすれば笑いの場がつくれるのか、それはそんなにむずかしいこ
とでもなく、ちょっとしたゆとりをもって世の中の出来事に気をつけていれ
ば、 い ろ いろな と ころに笑いのネタはあり ます。
といって、こけ枝さんが大阪で電車に乗っているときに、隣の席の女性が
自分のしたオナラを、その隣の男性がしたかのような発言をし、その隣の男
性に「わしがしたオナラが、あんたのお尻から出てくるのかい!」と逆に切
りか え さ れた話 を 、本当にオモシロおかし く語ってくれました 。
そ う し た 話 を い く つ か 紹 介 し な が ら 、 一 つ め の 話 を 、「 一 人 も 欠 け て い て
はだめ!みんながニコニコ笑顔で笑うようにすることが大切」と、まとめて
くれ ま し た。
また、生まれつき先天性股関節脱臼という病気を抱え、右足が不自由なた
め、よくいじめられ、うじうじくよくよ悩んでいたとき、仲のよい友だちか
ら 、「 足 が 不 自 由 な の は 、 そ ん な ん 、 あ ん た の 責 任 や あ ら へ ん で 、 悩 ま ん で
もえ え や ん!」 と 励まされました。
そ の こ と が き っ か け で 、「 そ う や な 、 別 に 自 分 が 何 か 悪 い こ と を し て 、 罰
にでもあたったわけでもない。こんな、自分では何ともしようのないことで
悩んだり、くよくよ無駄に過ごすより、ニコニコして頑張れることを一生懸
命探して生活しよう」と思うようになり、立ち直ることができた話をしてく
れま し た 。
人 間 は、だれ もに も、人そ れぞれの特徴 があります 。背の 高い人 、低 い人 。
肥えている人、やせている人。髪の毛の本数が多い人、少ない人。白髪にな
る人、ならない人。年齢を重ねている人、そうでない人。男の人、女の人。
障がいのある人、ない人。……数えていったらキリがありません。こういっ
た こ と は み ん な 、「 本 人 の 責 任 と は 関 係 の な い こ と で す 。 自 分 の 責 任 外 の こ
とでは悩まない。みんなちがって、みんないいんです」と、二つめの話しを
まと め て くれま し た。
さ ら に 、 三 つ め の 話 を し て く れ ま し た 。「 差 別 や 偏 見 を な く す こ と は 一 人
では 不 可 能なん で す。みんなが考えなけれ ばならない問題なの です」と。
よく第三者になるなといいますが、第三者的な立場というのは、差別や偏
見の問題では、ありえない立場なのです。第三者=傍観者になった時点で、
差別 す る 人と同 じ なのです。
ですから、今ある差別や偏見を受け入れるのではなく、社会的な事実と受
け止めて、日常生活のレベルでなくしていく努力をしなければいけません。
福祉やバリヤフリーの問題と同じです。人権問題とそれらは、表裏一体の問
題です。一人ひとりがちゃんと差別や偏見に向き合って、真剣に考えること
が第一歩です。人権や差別、いじめの問題は、一人ではなく、みんなが考え
なけ れ ば ならな い 問題なのです。
そ の 後の 落語も 大笑いで、話芸に引き込 まれた大盛況の講演 会でした!