春夏秋冬 Essay from Board Member “Shunka

日本企業のグローバル化と多様化
中村 裕治
Nakamura, HiroHaru
Americas Deputy Leader Japanese Services Group, Deloitte LLP
ESSAY
FROM
BOARD MEMBER
早いもので2011
いるからです。米国は異なる文化や価値観
で物事を考えようとする傾向は、日本企業
年にニューヨークへ
を持つことを許容しながら多様な人的リソ
がグローバル化を進め、多様な人材を受け
着任して3年が過ぎ
ースを共存させる。その上で、トランスペ
入れる上で大きな障壁となっていると思い
ました。今回のニュ
アレントな目標を設定し、ありとあらゆる
ます。「あうんの呼吸」などの考え方は、
ーヨーク赴任は、
ものを追求する。そして、フェアな競争の
グローバルで戦うビジネスの現場では、す
26年余になります
機会と選択肢をマイノリティーも含めた全
ぐにでも捨て去らなくてはなりません。
会計事務所勤務の中
員に提供し、成果を上げた者を評価する。
で、2度目の海外赴任となります。縁あっ
だから米国を目指して多様な人が集まる。
私ども会計事務所はお客様のディスクロ
てか2回ともニューヨーク赴任で、1度目
これが米国の成長の源であり、No.1であり
ージャー制度に基づく社会的役割の遂行や
は2002年でした。当時はサーベンス・オク
続ける理由の1つではないかと思います。
経済活動のサポートをさせて頂くことでビ
スリー(企業改革)法の施行で人が足らな
但し、グローバル化という観点では、米国
ジネスが成り立っています。お客様の経済
いくらいに忙しかったですが、今回はそう
の国内流のやり方を異なる文化・価値観を
活動がグローバル化すれば、それをサポー
した外部要因がない分、どうすれば成長路
持つ諸外国に対して同様に適用しようとす
トする我々もグローバル化しなければなり
線へと持っていけるかが課題となっており
る傾向があるので、この点に留意してつき
ません。その為には、我々が提供可能なサ
ます。
あう必要があると思います。
ービスをグローバルベースで展開すること
のできる「グローバル人材」の確保が不可
さて、米国に駐在して特に実感したこと
一方で、同時に「あうんの呼吸」とか
は、米国の物理的な国の広さや資源の豊富
「以心伝心」に代表される日本の同一性・
さ以上にこの国の持つ多様性です。多種多
均一性を改めて再認識させられました。日
そもそも「グローバル人材」とはどのよ
用な人種・民族・文化・宗教を融合させる
本の特徴として、島国で単一民族国家、タ
うな人材か、そのスペックを明確にし、関
こともなく、譲り合うこともなくそれぞれ
テ社会を基本とする集団主義、単独言語、
係部署(人事部署、事業部署、海外拠点等)
を共存させていることに驚かされます。弊
本音と建前などの特殊なコミュニケーショ
でしっかり共有することが大事と思ってい
社グループは世界4大会計事務所の1つであ
ン文化、外の文化を器用に内の文化に取り
ます。そうでないと、本社人事部のグロー
りますが、そのグローバルストラクチャー
込んでいく柔軟性等々は学生の時に机上で
バル人材担当は海外で戦っている我々の現
は本部を中心とするトップダウンな組織と
学んだ事ではあります。しかしながら、実
場感覚と外れたグローバル人材戦略を本社
いうより、各国の独立したメンバーファー
際に日本の外に出て初めて自分が如何に特
で立案してしまうリスクがあるからです。
ムがグローバルで一体的な組織を形成して
殊な文化・言語・ビジネススタンダードの
いるところに特徴があります。まさに米国
環境下で生きてきたのかを痛感させられた
私もいつかは東京に帰任しますが、強い
の独立した各州が米国として連邦国家を形
からです。グローバル化の観点からは、日
意思を持って弊社のグローバル化・多様化
成しているのと類似しております。その中
本の持つ勤勉さ、高い技術力、他民族を受
を推進したいと思っています。それが少し
で収益・人員数でNO.1なのが米国ファーム
け入れるホスピタリティと自己に取り込め
でも東京そして日本のグローバル化・多様
ですが、その人事戦略上Diversity(多様
るフレクシビリティは確固たる強みとな
化に貢献できればいいなあと願う次第であ
性)を非常に大切にしております。米国内
り、日本はまだまだ世界の中で十分に競争
ります。
で6万人超の人員を抱え、米国生まれだけ
していけると思います。但し、言語、本音
でなく多様な人種が混在した中で経営して
と建前、多様性よりも均一性を求めて一律
02
欠な要素となります。
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