「GC認定」と「GCキャリアボックス」

一般社団法人 国際交流サービス協会 清水匡
業務執行理事に聞く
グローバル・コミュニケーター(GC)を育成し企業と結ぶ
「GC認定」と「GCキャリアボックス」
近年、ますます進みつつある企業のグローバル化に伴って、「グローバル人材」の確保・
育成の必要性が強く叫ばれている。では、「グローバル人材」とは具体的にどのような能
力を持った人材なのかと問われると、イメージされる姿は様々で、ともすると言葉だけ
が独り歩きしている状況とも言える。
そこで今回は、外務省からの委託により、世界各国の在外公館で働く「派遣員」と呼ば
れる人材の「採用・派遣事業」を行っている一般社団法人 国際交流サービス協会の清水
匡理事に、グローバル人材に必要とされる資質やグローバル・コミュニケーション能力
についてお聞きした。
たくましく、しなやかな
グローバルコミュニケーター(GC)
「グローバル・コミュニケーター(GC)
」とは
い。語学試験の得点が必ずしもコミュニケーショ
ン能力の高さを証明しているとはいえない面があ
ります。当協会ではその点に着目し、慶應義塾大
学・田中茂範教授、㈱アルクと協働し、単に語
清水:グローバル人材に必要とされる資質につ
学力にとどまらない真のグローバル・コミュニ
いては、まず、語学ができないと現場では仕事に
ケーション能力を測定することを可能とした試験
ならず、一定水準の語学力は必須です。しかし、
いくら語学が堪能でも、様々な文化や価値観を持
つ人たちで構成される多文化共生の場面で活躍で
きるかというと、必ずしもそうではありません。
海外の慣れない環境下でも心身の健康を保ち、
周囲に溶け込んで粘り強く業務を遂行するために
は、語学力に加え精神的な強さや自分で考え判断
して行動できる自立性を備えていることが非常に
重要となります。また、利害関係が対立する場面
でも、自分の立場や考えをきちんと伝えながら、
創造的・生産的に対話を行うコミュニケーション
能力も必要です。前者は
「たくましさ」
、
後者は
「し
「GC 認定」を開発したのです。
日・英両言語能力を同時測定
「GC 認定」の特徴とは
清水:「GC 認定」の特徴としては次のような
ものがあります。
①実際のビジネスシーンで起きた事例が題材に
なっている
②日本語・英語、両方の言語運用能力が測定で
きる
③レベル判定と評価が丁寧でわかりやすく説明
される
なやかさ」という言葉に置き換えることもできる
以上の3点の中で、①については、海外で事業
でしょう。我々は、
このような
「たくましさ」
と
「し
展開している日本企業が現実的に直面する様々な
なやかさ」を素地として持つ人材を「グローバル・
問題の事例集としても注目されている『海外派遣
コミュニケーター(GC)
」と定義しています。
者ハンドブック』
(日本在外企業協会発行)から、
GC としての素地を備えているかどうかは、こ
れまでのような語学中心の試験では測定が難し
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国・地域、立場、職種別に分析・厳選した最適な
事例を素材としています。
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認定試験では、仕事の現場で実際に発生し得る
(しみず・ただし)
14 年にわたり在外公館派遣員・
公邸料理人等の人材確保・育成に
たずさわる。
在オーストリア日本国大使館での
勤務経験を有し、欧州、アフリカ、
中近東、北中南米、大洋州諸国等々
約 90 カ国を訪問し勤務状況を視
察する現場主義者。
課題に関する問題が出題され、
受験者は事実関係・
因果関係を十分把握した上で解決策を提案するこ
とが求められる。そのため、分析力、課題解決力、
創造的思考力などがリアルな裏付けを持って評価
されることになります。
②については、実際の日本企業の言語使用状況
を見ると、英語だけではなく、日・英バイリンガ
ルというところが多いのが現状です。例えば、部
対外折衝への立ち合いといった業務に就きます。
下から英語で報告された内容を日本語で上司に説
任期は国によって多少異なりますが、基本的に3
明するといった場面などが多く想定されます。こ
年間です。実は、
「GC 認定」は、こうした派遣
れを踏まえ、「GC 認定」では、ある問題状況を
員の採用試験におけるノウハウや考え方を反映し
英語で聞き、それを日本語で報告するといったタ
てつくり上げられた試験でもあるのです。
スクが課されます。このように日・英両方の言語
実際に採用された派遣員は、いわば GC として
運用能力を同時に測るという試験は、他ではまず
の素地を持つと認められた人材です。そのような
ないと思います。
人材が海外の現場に出て経験を積み、いずれ「真
③は、
この試験の最大の特徴と言えるものです。
の GC 人材」となって帰国することになります。
具体的には、レベル判定では、論理性や表現力と
そこで我々は、彼らのセカンド・キャリア構築を
いった包括的な言語運用能力や、要点把握力、情
支援する一方で、即戦力となる GC 人材を求める
報分析力といったタスク遂行力が分析・評価され
企業との間を結ぶためにスタートしたのが、この
るだけでなく、丁寧で詳細なコメントも付けて示
マッチング支援事業なのです。
されます。つまり、自分の力を客観的に把握でき
海外での職務経験や実績、スキルを持った人材
るだけでなく、今後具体的にどのような能力を伸
を採用したいという企業は多いのですが、なかな
ばす必要があるのかなど、学習指標としても役立
か適当な人材を見つけるのが難しいという声を聞
つかたちで評価がなされるのです。
きます。そこで、企業の採用情報を掲載し、それ
今後、受験者の増加が見込まれるため、当協会
を派遣員が閲覧できるシステムとして「GC キャ
では、さらに幅広く事例収集を進めており、問題
リアボックス」をオープンする予定です。それは
内容をいっそう充実させていきます。
派遣員だけでなく、一般の GC 認定者も閲覧・利
人と企業の橋渡しも6月に開始
「GC キャリアボックス」とは
清水:この春からは、GC 認定された人材の登
用が可能です。今年5月から求人情報の登録を開
始し、実際のマッチングは6月から開始しました。
「GC キャリアボックス」は、真のグローバル・
コミュニケーション力を持つ人材を探す企業と、
録制度を整備し、
「企業とのマッチング支援事業
キャリアを活かして活躍したい GC 認定者の双方
(情報支援)
」も開始しました。当協会は外務省か
にとって非常に有益かつ有効なシステムになると
ら委託を受け、
「派遣員(在外公館派遣員)
」の採
用を行っています。
派遣員は、主に語学力を活用し公用旅行者の来
訪時対応や、庶務などの部署において文書作成、
考えています。
(取材・文=青山美佳)
お問い合わせ:一般社団法人 国際交流サービス協会
Tel 03-3580-0905(http://www.ihcsa.or.jp/)
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