県内耕地土壌の理化学性の変化 1.ねらい 近年の耕地利用方法の急速な多様化等により耕地土壌は急速に変化しつつあることが予測され る。ついてはこれら近年の土壌の理化学性の変化の趨勢を明らかにし、今後の土壌の管理の方向 づけをするため、昭和54年から行っている土壌環境基礎調査及び以前に実施し、統計値が求めら れていなかった地力保全基本調査のデータを集計した。 2.結果及ぴ考察 図に主な性質の分布状況の推移をメディアン(中央値)及び上下ヒンジにより示した。それぞ れの調査の基準年は地力保全基本調査:1966年、土壌環境基礎調査第1巡目:1981年、土壌 環境基礎調査第2巡目:1986年とした。 ①作土深は、水田では徐々に浅くなる傾向であった。普通畑でも浅い地点が多くなる傾向であ った。耕盤層は水田、普通畑ともに硬くなる傾向であった。 ② pHは、」水田、普通畑共に1966から1981年の間に上昇したが、その後は低下する傾向で あった。E Cは地力保全では測定されなかったが1981と1986年の間に上昇し、E Cの上昇 がpHの低下をもたらしたと推察した。 ③ 土壌中の交換性塩基類合計量は増加する傾向であった。また、交換性カルシウム、マグネシ ウム及びカリウムは、それぞれ水田、普通畑ともに上昇する傾向であった。これらのうち普通 畑における1966から1981年の問の交換性カリウムの増加の程度が特に大きく、他の塩基類 とのバランスの悪化が懸念された。 ④土壌中の可給態りん酸は水田、普通畑ともに増加し、特に普通畑における1966から1981 年の間の上昇が激しかった。また、土壌中での濃度の幅が広がり、土壌管理の多様化がうかが われた。 本県に分布面積の多い黒ボク土で、可給態りん酸が上昇していることは生産性の向上に直接 結びつき歓迎すべき現象であるが、土壌中のりん酸の増加は、特に黒ボク土でC E Cを上昇さ せる一方、可給態窒素の消耗を促す等の副作用的な現象ももたらすので、注意を要する面もあ る。 3 成果の要約 以上から、最近の土壌の理化学性の変化の方向を総括的に判断すると、交換性塩基類及びりん 酸等の化学性は全体的には改善されると方向にあった。同時に、調査地点間の濃度の幅が広がり、 ある圃場では過剰害の発生が懸念される一方、ある圃場では欠乏症が発生する可能性があるとい う状況にある。 ’物理的性質では、作土深が浅くなり、耕盤層の硬度は硬くなる方向に動いており、これらの上 で注意が必要であることが明らかとなった。 (土壌肥料部 亀和田國彦) 一35一 Cn 20 日皿 30 ↓. 作土深 、硬度 一…一一一一一…一十二1→ 20 ユ5 \ 普通畑 メヂィアン,上下ヒンジ 水田 メチィアン,上下ヒンジ 10 10 1966 ’81 ’86 工966 ’86 ’81 % 7 工OO 100 pH 塩基飽和度 6’ → 5 一50 一 一 一 ’一 ’ 一’一_’一’’一 O Iユ96q㎎/100g ’81 ’86 ユ966 ,86 ,81 ㎎/100g 600 100 交換性CaO 500 60 400 300 200 交換性Mg○ 80 十 100 1966 一一 一 40 ’20 ,81 一 ,86」 ム三/1009 0 i86 ’81 理蔓6 ㎎/1009 50 100 豹 可給態リン酸 ・40 60 30 40 20 \ ←11 20 1966 ! 10 ’81 ,86’ 1966 図 メディアン及びヒンジの25年間の変化 一36一 ’81 ’86
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