「 エ コ ア イ ラ ン ド 」推 進 す る 宮 古 島

 沖縄本島の南西290㌔にある宮古島市は、2008年3月に「エコアイラン
ド宮古島」宣言を行い、最大の財産とも言える自然環境の保全活動を通じた
地域経済の活性化に取り組んでいる。活動の拡充を図るため昨年6月には、
市民の役割や活動理念を記した推進条例を制定した。食料やエネルギーの
地産地消、水の保全、雇用の場の確保という島の生活には欠かせない部門の
課題解決を目指す一方で、住民生活が島内完結型であることで生まれるメ
リットを最大限に生かしたモデルを構築する狙いがある。
産業の根幹を守る活動
「環境モデル都市」
認定
宮古島市が昨年 月から施行
する「エコアイランド宮古島の推
「島の環境の保全、限りある資源
って「環境負荷の低減を図りつつ、
〝離島の離島〟である宮古島にと
市の中で唯一、人口が
して島を挙げて積み重ねられてき
には、エコアイランドの実現を目指
とも言える同条例を制定した背景
を狙いとしている。
産業の振興による雇用の場の確保
減少傾向にある対策として、地場
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Zaikai Kyushu / FEB.2015
た取り組みがある。
市の基幹産業は、国内屈指の
生産高を誇るサトウキビや葉タバ
コなどの第 次産業や、四方を海
に囲まれた南国ならではの豊富な
自然と景観を活用したスポーツツ
ーリズムやマリンツーリズムなど
を含む観光産業である。つまり市
経済は、自然の恩恵抜きに語るこ
とはできない。一方で、市が環境
保全などに取り組む契機になった
のは「主に三つの課題への対応が
必要と判断したため」
(市エコアイ
ランド推進課)だった。
その三つは①地産地消による資
源循環②水を含む自然環境の保全
の循環、産業の振興に資する活動
食料やエネルギー資源の自給率を
フスタイルの変化や経済活動の活
を定めることにより、宮古島に関
する」―。
した一方で、地下水や海洋の汚染、
高めることが重要」
(同推進課)と
一般的な環境条例は、目的達成
のために規制する項目を列挙する
不法投棄の増加が動植物の生態系
わる全ての人や団体が一体となりエ
ケースが多いが、同条例は市民の
にも影響し始めたからだった。③
いう判断がある。また②は、ライ
役割や活動理念を具体的に例示し
は、県内
性化に伴い島の生活は豊かさが増
ている点が特徴だ。
〝環境の憲法〟
コアイランド宮古島の具現化に資
条で以下のように述べられている。 ③人口減少への対応―だ。①には
進に関する条例」の目的は、第1
7
1
独自の
〝憲法〟
制定し島を挙げて環境保全
宮古島は、自然との
共生による地域活性
化に取り組んでいる
「エコアイランド」
推進する宮古島
沖縄
宮古島は独立系統であ
るため、
自然エネルギー
の導入による電力の安
定供給が可能か実証実
験が行われている
宮古島に1カ所あるE3宮古給油所。将来は島内の全給油所への
設備の拡大を目指す
げている。その内、CO 2排出量が
容積比で
%含む燃料)の実用
全体の %と最も多い運輸部門は、 化や島内の全給油所への設備の拡
な取り組みがスタートした。さら
ンド宮古島」宣言を行い、具体的
動車(EV)の普及などに既に取
バイオエタノール燃料車や電気自
さらに、 年までにガソリン燃料
高付加価値化などを目指している。
大、サトウキビの安定生産による
年 月には、この三つの柱の
課題解決を目指した「エコアイラ
3
り組んでいる。全体の %を占め
29
に 年 月には、低炭素社会の実
3
施する「環境モデル都市」として
現に向けて先進的な取り組みを実
の普及やエネルギー消費の見える
る家庭部門は、家庭用太陽光発電
への対応も検証する方針だ。
万㌧程度
る。全体の %を占める業務部門
は %、同じく %の産業部門は
22
はなく、 戸当たり平均1・8台
ても公共交通機関の整備が十分で
2
排
部門別で、運輸部門のCO
出量が特に多いのは、全国と比べ
%の削減を目標に設定している。
20
定された。この行動計画では、
年度と比べたCO 2排出量を 年
度に %減、 年度に %減とす
ることが目標に設定されている。
CO 2削減計画推進中
観光や交流促進に活用
年には
市は、環 境対策を講じない場
合、島内のCO 2排出量は 年の
万㌧から
30
力発電の適正な導入量、離島であ
る特性を生かした地産地消モデル
の検討などを進めている。
こで「EVの普及による省エネル
島の事情が要因になっている。そ
と自家用車保有 率が高いという
視察コースを設けているほか、島
新エネルギーを体感できる学習・
ーマを設定した施設を回りながら
ンドPR館を中心にさまざまなテ
このほかにも島全体をエネルギ
ーパークと位置付け、エコアイラ
ギーの促進」と「地球環境に優し
前者に関しては、島内車両のう
ちEVを 年に %、 年に %
境モデル都市に基づく行動計画は、 項目に重点的に取り組んでいる。
トコミュニティーの実証事業、国
ー自給率を高める島しょ型スマー
内電力の需給を最適化しエネルギ
にまで増やすことを目標に設定し、 制 度を活用した離島型の実証 実
い新エネルギーの導入」という
させる目標を掲げるだけに達成は
験も行っている。さらに今年度か
年に 万9000㌧にまで減少
容易ではないだろう。しかし、同
充 電施設も順次整備していく計
らは、これまでの成果を踏まえて
40
後者では、E3(エタノールを
いもある。
車関連産業の活性化につなげる狙
として活用するほか、宮古島発の
30
をのぞかせる。
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EV社会のモデル化や島内の自動
部門で、具 体的な実
年 度までを実施期限とする第
観光や交流の促進を目指している。
ョンの一層の推進や次世代への継承、
同計画は、市民によるエコアクシ
段の行動計画に取り組んでいる。
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CO 2削減に向けた具体的なア
クションプランは、需要側 部門
と供給側
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9
30 1
交省の超小型モビリティーの認定
推進課は「部門ごとに対策を講じ
画だ。EVを島内の電力インフラ
にまで増えると試算している。環
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れば目標はクリアできる」と自信
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6
30
03
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70
40
1
50
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用発 電設備の活用、太陽光や風
化などで %の削減を目指してい
を全量E にするほか、E100
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離島では唯一、全国 市の一つに認
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供給部門では、サトウキビの搾
りかす「バガス」を利用した製糖
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施内容と 年までの削減目標を掲
(竹井 文夫)
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