高齢化が進む地域の経済とテクノロジー ドイツ日本研究所 芳賀和恵 本報告では、経済をけん引する技術(イノベーション)の高齢化へのリンクの状況を考察 する。高齢化が経済発展の負の要因にならないようにするためには、高齢化が正の要素と してプロセスに内包されるようなイノベーションを追求するべきであるだろう。そのとき、 高齢化の進む社会にあってもイノベーションが経済発展に有効な刺激を与えることができ るであろう。 高齢者向けの財の開発やイノベーションは、介護用やいわゆる「シニアビジネス」向けが 多い。高齢化が進行した地域の持続性に資するイノベーション技術の効果的な取り込みは まだ少ないように見られる。日本では中山間地域で高齢化が先行している。イノベーショ ンが、どのように退行の中にある地域へ有意義な関わり方ができるのかを考えることは重 要である。 中山間地域が、経済も構造的に弱く、高齢化と人口減少が進むという負のループから脱却 し、地域の経済的、社会的な持続性を図ることは、急務であり重要な課題である。包括的 な価値、すなわち、企業単体のみの合理性や利益の追求ではなく、経済力、生活の質、満 足度の向上のために経済に求められることは、地域固有の(比較)優位性を生かした地域 経済の確立であろう。すでにハーシュマン(A. O. Hirschman)が考察しているように、他の 産業との連関(前方連関、後方連関)は、産業発展に重要である。地域の既存の資源の新 結合によるイノベーションは解決策の一つであろう。中山間地域の立地条件を考えると、 ローテクでありながら新しい価値を生むバリューイノベーションの追求が現実的である。 新規技術をイノベーションプロセスに取り入れる後方連関により、財はローテクであって も、他の産業と連関を持ち、また地域の高齢者をイノベーションプロセスへとり込むこと が可能となれば、地域経済発展への大きな刺激となろう。 具体的な事例として徳島県上勝町の「いろどり」を考察する。
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