【問題】 (類題)都庁H6、7、14、特別区H12 議会政治の原理に言及した上で、現代における議会政治の危機について説明せよ。 【答案例】 議会制とは、 国民の代表者で構成される議会を通して、 国家意思を形成していく制度である。 ↓そして、 この議会政治の原理として、 ①国民代表の原理と ②多数決の原理 の2点が挙げられる。 ↓まず、 ①国民代表の原理とは、 議員は全国民の代表であり、 国民全体の利益のために行動しなければならないというものである。 ↓次に ②多数決の原理とは、 議会としての意思決定は、 議員が審議を尽くした後に、 多数決によって行うというものである。 ↓但しその際、 多数決の濫用は許されず、 少数派に対する配慮や妥協、各種利害調整も必要となる。 こうした原理のもと、 近代議会は、国民の代表機関として 立法機能及び行政監督機能を果たしてきた。 ↓しかし 近代から現代への社会の変容に伴い、 議会制は以下の2つの危機を迎えることとなった。 ↓第一の危機としては、 マス・コミュニケーションの発達や 選挙権の拡大などを背景に、 現代大衆社会が形成されたことがあげられる。 5 ↓ この大衆社会は、 従来は政治の枠外に置かれていた 異質で非合理的な大衆を基盤とするため、 近代社会の構成員である市民にみられた同質性は失われる。 ↓また 大衆の利害は細分化・複雑化するため、 社会内の利害対立が激化し、 議会が全国民の利益を発見することは困難となる。 ↓このように 異質で利害対立の激しい大衆社会の下では、 従来のような、 『理性的な討議に基づく国家意思の形成』は困難となり、 上述した近代議会制の原理は空洞化してしまうのである。 ↓第二の危機としては、 近代立法国家から『行政国家への移行』が挙げられる。 ↓すなわち、 社会の複雑化、専門化に伴い、 政府への委任立法が増加し、 政策立案における官僚の裁量が広範化した。 ↓その結果、 立法府の地位は相対的に低下し、 議会の立法機能や行政監督機能は低下することとなったのである。 このような議会制の危機をいかに解消するかが、 今後の政治課題の1つといえよう。 以上 6
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