3)再生藻場の維持管理手法の検討 再生藻場の維持管理手法の検討 目的 再生藻場のモニタリングを継続し、イシダイなどの魚類を対象にして、それらの定住し やすい環境を創出し、ウニの密度を制御する方策について検討を行う。 方法 再生藻場とイシダイとガンガゼについて、次のような調査を行った。 調査方法A1/再生藻場 調査海域 大分県佐伯市名護屋地先 調査時期 2010 年5月、9月、11 月 調査方法 名護屋湾の葛原地先の再生藻場域内の4カ所で定置枠(1m×1m)内の目視 観察と 100mラインを設置し片側1mに出現するウニ密度を測定した。 -209- 調査方法A2/イシダイ 調査海域 大分県佐伯市名護屋地先 調査時期 2010 年5月 調査方法 名護屋湾内の沖防波堤東端の下図の地点で、 イシダイと海藻の出現状況について目視観察 を行った。 調査方法A3/ガンガゼ 調査海域 大分県佐伯市名護屋地先 調査時期 2010 年 11 月 調査方法 名護屋湾内の下図の地点に調査ラインを9本設置し、幅1mに出現するガンガ ゼの小型ウニ(φ40 ㎜未満)の殻径を測定した。 -210- 結果 A1.再生藻場 定置枠内の直立海藻の被度の経時変化を図A-1と表A-1、観察結果を表A-2、100 mラインのウニ密度の経時変化を図A-2と表A-3、観察結果を表A-4に示した。 定置枠内の直立海藻被度の経時変化をみると、2007 年 11 月にウニを除去した対策区内の 2つの定置枠(07 年①と 07 を開始した 07 年①)では春季に一時的に被度が高くなるが、 その他の季節は低位となっていた。2008 年対策区と 2009 年対策区では、テングサなどの 下草が生育したため秋季でも被度が高くなっていた。 2007 年対策区のウニ(ガンガゼ、ムラサキウニ、ナガウニ)の密度は、ウニ除去前は 3.2 個/㎡であったが、ウニ除去により 0.5 個/㎡に減少し、その後、漸増したが、漁業者が繰 り返し除去を行ったため、現在は1個/㎡に低下した。 図A-1 定置枠内の直立海藻被度の経時変化 表A-1 定置枠の直立海藻被度の経時変化 -211- 表A-2 定置枠の観察結果 -212- 図A-2 ウニ密度の経時変化 表A-3 ウニ密度の経時変化 -213- 表A-4 100mラインの観察結果 -214- A2.イシダイ 調査を行った沖防波堤のマウンドの天端水深は 11mであった。イシダイは、全長 15 ㎝ 前後の若魚(図A-3、左)が 10 数尾とイシガキダイ(図A-3、右)が1尾観察された。 直立海藻は、水深 6m位より出現し、水深 5m位より浅所で繁茂しているところがみられ た。出現種は、オバクサ、マクサ(図A-4、左) 、アヤニシキ、ウミウチワ、ハイオウギ、 エンドウモク(図A-4、右)などであった。クロメの幼体と2年目藻体が稀に生育して いた。 ウニは少なく、ムラサキウニが稀に観察された。 図A-3 沖防波堤で出現したイシダイとイシガイダイ 図A-4 沖防波堤でみられた海藻植生 -215- A3.ガンガゼ ガンガゼについての調査結果のうち、殻径分布を図A-5、稚ウニの出現水深と殻径を図 A-6、稚ウニの水深別の出現状況を表A-5、地点別の調査結果を表A-6に示した。 ガンガゼの殻径分布には、2つのモードがあり、殻径 20 ㎜未満のモードが本年度着底群 と考えられた。この殻径 20 ㎜未満のものを稚ウニと呼ぶ。稚ウニはは水深 0~10mに出現 し、水深帯別の大きさ(殻径組成)に特徴的な傾向は認められなかった。 図A-5 ガンガゼの殻径分布 図A-6 ガンガゼの稚ウニの出現水深と殻径 ガンガゼの稚ウニは、水深水深 2~8mで多い傾向が認められた。調査を行った名護屋湾の 地形と海藻植生からみて、波浪はライン2(GL-2)付近で最も強く、湾奥(GL-9)に向かっ て弱くなる。稚ウニの密度と波浪の関係をみると、稚ウニが多い水深帯(濃緑色)は波浪 が強まるに従い、深くなる傾向が認められた。水深が浅いほど波浪が強いことを考慮する -216- と、ガンガゼの稚ウニの出現と波浪には関連が認められた。 表A-5 ガンガゼのライン別の出現状況 表A-6 ガンガゼの稚ウニの調査結果(1) -217- 表A-6 ガンガゼの稚ウニ の調査結果(2) -218- 表A-6 ガンガゼの稚ウニの調査結果(3) -219- まとめ A1.再生藻場 ・ 大型海藻の藻場は維持されていたが、下草の回復が遅れていた。 A2.イシダイ ・ 名護屋湾の沖防波堤でイシダイがみられ、海藻の繁茂がみられ、ウニが少なかった。 A3.ガンガゼ ・ 殻径 20 ㎜未満(稚ウニ)が本年度着底群と考えられた。 ・ 稚ウニは水深2~8mで多い傾向がみられた。 ・ 稚ウニの分布と波浪には関連が認められ、波浪の強いところで稚ウニが少ない傾向がみ られた。 今後の課題 再生藻場は、今後もモニタリングを継続していくと共に、下草の回復方策を検討する必要 がある。 イシダイの生態については、更なる情報の収集が必要である。 天敵によるガンガゼの稚ウニの個体群制御の可能性を検討する必要がある。 謝辞 本調査に協力して頂いた以下の関係機関・漁業協同組合の方々に感謝します。 大分県漁業協同組合名護屋支店、大分県海洋水産センター、宮崎県水産試験場 -220-
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