兵庫教育大学教職大学院 授業実践開発コース 授業実践アイディア集 2016 見通しと振り返りから、自分の見方・考え方を自覚し、 自分事の問題解決学習を目指そう! 坂井詩歩・松本伸示 校種・学年: 小学校 6 年生 教科: 理科 単元名: 「ものが燃えるとき」 啓林館平成27年度教科書「わくわく理科」準拠 あらまし 児童は、観察・実験に意欲的だが、それ自体が目的となり、 “学習内容への関心は低い” ・ “考察は人ま かせになっている”と感じたことはないだろうか?そこで、見通し・振り返りの過程において、自分の 思いを明確化・自覚化させることで、児童が自ら思考し、行動する自分事の問題解決学習を目指す。 手立てと活動 ~見通しと振り返りの重視~ 自分事の問題解決を行うには、児童が意欲的に取り組む体験活動の前後の思考活動が重要であり、そ れは見通しと振り返りである。本研究では、それぞれの過程を以下のように定義する。 見通し:【学習前の自分の見方・考え方の明確化】 振り返り:【学習後の自分の考えの変容の自覚化】 児童が学習前後に自分の見方・考え方を明確化・自覚化することは、 「明らかにしたい」という目的意 識や、 「明らかにできた」という達成感・充実感を実感できるきっかけとなる。こうした意識づくりによ って、学習のスタートとゴールを児童自らの意思で踏むことができると考えた。 以下に、見通しと振り返りを支える3つのツールを紹介する。 ・イメージ図の活用 ・一枚ポートフォリオ(わたしの学び)の活用 ・コンセプトマップの作成 問題に対する自分の見方・考え方を明確化するためにイメ ージ図を活用します。言葉だけでなく、イメージを絵にす ることで、目に見えない現象に対する自分の考えを自覚で きます。自分の考えをもつことで、問題解決に責任をもっ て意欲的に取り組めます(理科を勉強したい)。考察の場 面でもう一度イメージ図を用いて、予想場面のものと比較 することで、考え方の変容・深まりが自覚でき、学習に対 する充実感を高めます(理科を勉強してよかった) 。 コンセプトマップとは、言葉と言葉の関係を視覚化する 方法です。コンセプトマップを作成することで、学習内 容に対する問題意識を高めます(理科を勉強したい)。 学習を重ねるごとに問題解決の経験と科学的な概念が 結び付くので、学習前後で比較すれば、学習によって何 が明らかになったのか、自分の見方・考え方の変容を実 感できます(理科を勉強してよかった)。また、個人だ けでなく、グループで作成し、学習の成果を発表するこ とで、学習の深まりや達成感も実感しやすくなります。 わたしの学びとは、一枚の用紙に1単元の学びの成 果を整理できる一枚ポートフォリオのことです。学 習中の履歴を残すことは、自分の学びを振り返るこ とを促します。学習が進むにつれて自分の考えが深 まったり、修正されていくことを見取ることができ るので、学習の達成感や充実感を実感しやすいです。 また、いつでも見返すことができ、次回の見通し(自 分の思いの自覚)の糸口になります(理科を勉強し たい)。学習の前後で本質的な問いを設けます。これ らは、となりあわせのページになっているので、学 習後に比較することで、学習による自己の成長を自 覚できます(理科を勉強してよかった) 。 学習後の自分 〈実際に使用したわたしの学び 表面・裏面〉 学習前の自分 毎時間の 学習履歴 〈実際に使用したわたしの学び~ものが燃えるとき~〉 これら3つの手立ては、見通し・振り返りの場面で 活用することで、児童の問題意識を高め、学習による 成長を可視的に実感で きるツールとなり自分 事の学習を意識づけま す。これを1単元・1時 間の計画に意図的に組 み込みます。 〈理論図:3つのツールを組み込んだ授業計画〉 期待される効果 ・実験だけでなく、 「考える」 「予想する」といった思考活動にも意欲 的に取り組むようになり、自律的・主体的な問題解決になります。 ・学習前後の自分の変容から自己の成長を実感できるので、学習へ の有用感も高まります。 補 足 ・わたしの学びは、毎回授業後に回収し、そこから児童の疑問や誤った理解があれば、次回以降の授業 に活かすことができるので、児童の思いに寄り添った授業ができます。 ・ 「見通し」と「振り返り」は切り離すことができない関係にあり、相互に充実させることで、 「理科を 勉強したい」 「理科を勉強してよかった」と感じることができます。 出典)坂井詩歩(2016)「児童が主体的に取り組む理科授業の開発‐見通し・振り返りの充実による学習の意 味づけと価値づけ‐」授業実践開発コース実践研究報告書(指導教員:松本 伸示)
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