第11回レポート問題の解説

略解と解説
数学総合レポート問題 (第 11 回)
問 1
f (x) が周期 T (> 0) の周期関数であるとき,f (x) の1周期区間の積分は区間の端点によら
ず一定であることを示せ.すなわち,
∫
∫
a+T
T
f (x) dx =
( 任意の a について )
f (x) dx
a
0
(解) ま ず f (x) が 周 期 T の 関 数 な ら ば ,任 意 の 区 間 [α, β] に お け る f (x) の 定 積 分 の
∫ β
値
f (x) dx は,その区間を周期 T の整数倍 mT ずらした区間 [α + mT, β + mT ] における
α
定積分の値と等しい,すなわち,
∫
∫
β
β+mT
f (x) dx =
α
f (x) dx
α+mT
であることに注意する.これは左辺の積分で変数変換 x
˜ = x+mT を行い,周期性より f (˜
x−mT ) =
f (˜
x) なることを使えば確かめられる.
さて,与えられた a に対して mT ≤ a < (m + 1)T となる整数 m を取れる.そして,
a = mT + r ( 0 ≤ r < T ) と表せる.
∫
∫
a+T
f (x) dx =
a
∫
mT +r+T
r+T
f (x) dx =
mT +r
∫
∫
T
=
f (x) dx
r
T
∫
T
=
r
f (x) dx +
r
∫
=
( 周期 mT だけずらす )
r+T
f (x) dx +
∫
f (x) dx
r
f (x) dx
0
T
f (x) dx
0
1
( 第2項の積分を周期 T だけずらす )
問 2
区間 [−π, π] において


cos x
f (x) =

0
(
π
π)
≤x≤
2
2
(
)
π π
−π ≤ x ≤ − ,
<x≤π
2 2
−
で定義される周期 2π の周期関数 f (x) のフーリエ級数を求めよ.
(解) f (x) は偶関数であるからコサイン(余弦)級数に展開される.
∫
1
1
a0 =
2
π
2
a1 =
π
∫
π
0
1
f (x) dx =
π
π/2
cos2 x dx =
0
∫
π/2
cos x dx =
0
1
π
2 π 1
1
· · =
π 2 2
2
さらに n > 1 であるフーリエ係数 an を計算する.
∫
∫
}
2 π/2
2 π/2 1 {
cos (n + 1)x + cos (n − 1)x dx
an =
cos x cos nx dx =
π 0
π 0
2
π
2 sin{(n + 1) 2 }
2 sin{(n − 1) π2 }
=
·
+
·
π
2(n + 1)
π
2(n − 1)
ここで,n が奇数のとき,n = 2m + 1 とおくと,
a2m+1 =
sin(m + 1)π
sin mπ
+
=0
2(m + 1)π
2mπ
他方,n が偶数のとき,n = 2m とおくと,
a2m
(
)
)
(
sin mπ + π2
sin mπ − π2
=
+
(2m + 1)π
(2m − 1)π
m
(−1)
(−1)m+1
2(−1)m+1
=
+
=
(2m + 1)π
(2m − 1)π
(4m2 − 1)π
以上より
f (x) =
=
∞
1
1
2 ∑ (−1)m+1
+ cos x +
cos(2mx)
π
2
π m=1 4m2 − 1
1
1
2
2
2
+ cos x +
cos 2x −
cos 4x +
cos 6x + · · ·
π
2
3π
15π
35π
(参考) 以下の図において, 上段は f (x) のグラフであり,中段は f (x) のフーリエ級数の最初の 3
1
2
1
+ cos x +
cos 2x のグラフのであり,下段は上の二つのグラフの重
項までの関数 S3 =
π
2
3π
ね合わせたものである.
2
1
0
−π
−π
2
1
π
2
π
π
2
π
π
2
π
0
−π
−π
2
−π
−π
2
1
0
グラフを見れば S3 が十分に f (x) を近似していることがわかるが,より厳密には,パーセバル
の等式をに基づいて近似の度合いを判定することができる.
一般に周期 2π の周期関数のフーリエ級数を
∞
∑
(
)
1
f (x) ∼ a0 +
am cos mx + bm sin mx
2
m=1
(1)
とするとき,パーセバルの等式,
∫
∞
∑
{
}2
{
}
π
f (x) dx = (a0 )2 + π
(am )2 + (bm )2
2
−π
m=1
π
(2)
が成り立った.ある N 次までで打ち切った近似フーリエ級数
SN (x) =
N
∑
(
)
1
a0 +
am cos mx + bm sin mx
2
m=1
に対して,
∫
N
∑
{
}
{
}2
π
2
(am )2 + (bm )2
SN (x) dx = (a0 ) + π
2
−π
m=1
π
である.これから比率
∫π {
0≤
}2
SN (x) dx
−π
}2
∫π {
f
(x)
dx
−π
≤1
において,値が 1 に近いほど近似が良いとみなすことができる.
∫
π
いま問題にしている関数では,
∫
{
}2
f (x) dx =
−π
π
2
+ 1.5708 で あ り ,他 方 ,
{
}2
22
π
1.5708
+
+ 1.5692 で あ る の で ,求 め る 比 は
+ 0.995348 と な
S3 (x) dx =
9π
4
1.5692
−π
π
るから,きわめて良い近似だと判定してよいだろう.
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