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141
第
10 講
微分法 ⑴
▲
基本事項
Theme
三角関数,A 指数関数の極限,A グラフの概形の問題について研究します.
❶ 三角関数の極限の導入
 = sin A のグラフにおいて,A  = 0A す
なわち,A 原点における接線の傾きはどう
なるかを考えてみよう.
f    = sin A とおくと,A それは数学Ⅱ
で学んだように,
f  h  − f 0
h

f 0 = lim

sin h
h
= lim

となる.したがって,A 極限 Alim

sin h
A の値を求める必要がある.
h
いま,A hA を A θA と書き直して,A θA と Asin θA の値を三角関数の数表などを用いて求めると次のように
なる.
10°
度数法
θ
弧度法 0.17453
sin θ
0.17365
5°
3°
2°
1°
0.08727
0.05236
0.03491
0.01745
0.08716
0.05234
0.03490
0.01745
この表から,A θA を弧度法 A(ラジアン)A で測ったならば,A θ 0A のとき A
できる.
(注) 微分・積分では角は必ず弧度法を用いて測ることに注意しよ
う.その単位の A radianA はラテン語の半径 A  radiusA に由来して
いる.


また,A 単位円 A +  = 1A において,A A1,A 0,A
Pcos θ,A sin θ A から A A 軸に下ろした垂線の足を A HA とすると,A θA
が十分小さい正の値のときは,
= θ
PH= sin θ, AP
だから,A 「θ 0A のとき A
sin θ
1」は,A 「PAA のとき
θ
sin θ
1A となることが推測
θ
142
PH

AP
」を意味する.
1」,A つまり「θ ≑0A ならば APH≑ AP
❷ 三角関数の極限
例 題 10・1
⑴ 0< θ <
π
A において,A 不等式
2
sin θ < θ < tan θ
が成り立つことを示せ.
sin θ
=1
θ
lim
⑵

が成り立つことを示せ.
【解答】
⑴ 右の図において,A 面積を比べると,
△OAB <A 扇形 AOAB < △OAC
すなわち,
1
1 
1
⋅ 1 ⋅ 1 ⋅ sin θ < ⋅ 1 ⋅ θ < ⋅ 1 ⋅ tan θ.
2
2
2
よって,
sin θ < θ < tan θ.
⑵
…①
sin θ
sin − θ 
A であるから,A θ > 0A で A θ 0A の
=
θ
− θ
場合のみを考えればよい.
0< θ <
π
A のとき Asin θ > 0A だから,A ① を Asin θA で割って,
2
1<
1
θ
.
<
cos θ
sin θ
さらに,A 逆数をとって,
cos θ <
sin θ
< 1.
θ
lim cos θ = 1A だから,A はさみうちの原理より

lim

(注)
sin θ
= 1.
θ

f    = sin A に対して A f 0 = 1,A つまり A f    = sin A の原点での接線は A = A である.

角を度数法で測ると A f 0= 1A とはならない.したがって,A 微積分においては弧度法を用いる.
143
例 題 10・2
次の極限値を求めよ.
⑴ lim

⑵ lim

sin 3 θ
θ
1 − cos θ

θ
(解説)
θ 0A のとき Asin 3 θ 0A であるが,A
ことは,A
sin θ
sin 3 θ
1A と同じく A
1A になるわけではない.重要な
θ
θ
sin□
A において,A 2A つの□を同じものにすることである.
□
【解答】
sin 3 θ
sin 3 θ
× 3.
=
3θ
θ
⑴
よって,A θ' = 3 θA とおくと,A θ 0A のとき Aθ '0A だから,
lim

⑵ 半角の公式により Asin

sin 3 θ
sin θ'
= lim
× 3 = 1 × 3 = 3.

θ
θ'
…(答)
1 − cos θ
θ
A だから,
=
2
2
1 − cos θ
lim
= lim



θ
2 sin
θ
θ
2

 
sin
= lim


θ
2
θ
2

×
1
1
1
= 1× = .
2
2
2
…(答)
(⑵ の別解)
分母,A 分子に A1 + cos θA を掛けて,

lim

1 − cos θ
1 − cos θ
= lim 

 θ 1
θ
+ cos θ 

= lim


=1 ×
sin θ
θ

1
 × 1+cos
θ
1
1
= .
2
2
…(答)
144
(注) ⑴ は図解すると次のようになる.
sin 3 θ
PH
=
θ

P'A
=
入試問題を解くうえで,A lim

lim

PH

PA
×3  1×3.
1
1−cos θ
= AはA

2
θ
sin θ
= 1A と同じくらい用いる頻度が高く重要である.
θ
[三角関数の極限]
⑴ lim

⑵ lim

sin θ
=1
θ
1 − cos θ
1
=

2
θ
❸ 微分係数の定義
関数 A f   A の定義域に属する点 A = aA において,A 極限値 Alim

f  a + h − f  a 
A が存在するとき,A
h
f   A は A  = aA で微分可能という.また,A この極限値を A  = aA における A f   A の微分係数といい A

f ( a )A で表す.

f  a  = lim

= lim
 
f  a + h − f  a 
h
f   − f  a 
. (ただし,  = a + h)
−a
点 A A a,A f  a A と点 A B a + h,A f  a + h A を結ぶ直線の傾き
は
f  a + h − f  a 
 a + h − a

で与えられるから,A f  a  = lim

(平均変化率)
f  a + h − f  a 
A は,A 曲線 A  = f   A 上の点 AA a,A f  a A におけ
h
る接線の傾きを与える.
上の定義は詳しくかけば,A 次のようになる.
「f (  )A が A = aA で微分可能」
 「lim

 「 lim

f ( a + h )− f ( a )
A が有限確定値として存在する」
h
f  a + h − f  a 
f  a + h − f  a 
A (右側微分係数)A と A lim
A (左側微分係数)A が

h
h
それぞれ有限確定値として存在し,A この A2A つの値が一致する」.
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自習問題 10
[10・1]
OA を原点とする座標平面上に A2A 点 AA2,A 0,A B0,A 1A がある.自然数 AnA に対し,A 線分 A
ABA を A 1 ⁚ nA に内分する点を A P A とし,A ∠AOP  = θ A とする.ただし,A 0 < θ <
π
A であ
2
る.
l
A を求めよ.
 θ 
線分 AAP A の長さを AlA として,A 極限値 Alim
[10・2]
曲線 A  =
1 

e + e A 上で,A  = α  ≠ 0A なる点 APA における法線が A A 軸と交わる点

2
を AQA とする.α 0A のとき,A 点 AQA はどんな点に近づくか,A その AA 座標を求めよ.
[10・3]
曲線 A  = log A 上の点 A P t,A log t   t > 0A における法線を A lA とする.ただし,A log A
は自然対数である.


⑴ 点 AP' s,A log s   s > 0,A s ≠ t A における法線を Al A とし,A lA と Al A の交点を AQ'A とする.
sA が At A に近づくとき,A Q'A の近づく点 AQA の座標を求めよ.
⑵ PQA の値が最小となるような At A の値 AtA を求めよ.
[10・4]
半径 A1A の円に内接する正 AnA 角形の周の長さを Al,A 外接する正 AnA 角形の周の長さを A LA
とするとき,
l + L > l  + L 
を示せ.
166
自習問題 10
[10・5]
曲線 A  =

A の増減,A 凹凸,A 変曲点を調べ,A 曲線の概形をかけ.さらに,A 変曲点に
log 
おける接線を図にかき込め.
[10・6]
f  =
1
cos A とする.
2
⑴ 方程式 A = f   A はただ A1A つの実数解をもつことを証明せよ.
⑵ 任意の実数 Au,A vA に対して,
 f  u − f  v   ≦
1
 u−v 
2
が成り立つことを証明せよ.
⑶
a = 0,
a  = f  a 
 n = 1,A 2,A 3,A ⋯ 
によって定義される数列 A  a A は,A 方程式 A  = f   A の実数解 A αA に収束することを,A
⑵ を利用して証明せよ.