*グローバル投資環境 IMFのエコノミストが原油安の影響を試算~ No.848* ご参考資料 髙木証券投資情報部 2015年の世界成長を0.3%な いし0.7%押し上げ 2015年1月5日作成 2015年最初の「グローバル投資環境」では、やや古い話で恐縮だが、去る12月22日に IMFのウェブサイトに掲載された、2名のシニアエコノミストによる最近の石油安が世界 経済に与える影響についての考察レポートを紹介したい。結論から先に述べると、 IMFは 原油安は2015年の世界のGDPを0.3%ないし0.7%押し上げると述べている。レポートの表 題は「Seven Questions About The Recent Oil Price Slump(最近の原油安に関する7つの疑 問)」だが、ここでは、順を追って解説するのではなく、ポイントを手短にまとめたい。 ・原油安は主に供給要因による 原油価格は6月以降で50%近く、9 月以降では40%下げているが、原油 価格よりも典型的に世界の経済活動 に反応する金属価格も値下がりして いるものの、原油に比べると、下落 は相当に小さく、このことは、原油 の値下がりを説明する上では、供給 要因が重要な役割を演じていること を示唆していると述べ、具体的には、 需要減では価格下落の20~35%し か説明できないとIMFは述べている。 ↓ 金属 ↑ 食品 ↑ 原油 ・先物市場は原油価格の反発を示 唆するが、近年を下回る水準にと (出所:IMF) どまろう IMFは、原油価格はいずれ反発するが、近年の水準を下回る水準にとどまることを先物 市場は示唆していると述べている。そして、供給サイドの要因が価格にどの程度の期間影 響を与えるかは、①OPEC(11月27日の総会において日量3,000万バレルの生産を維持す ることを決定)、とりわけサウジアラビアが将来進んで生産をカットするか?、②投資と その結果としての原油生産が低価格に対してどのような反応を示すか?に左右されると述 べているが、先物価格は2019年までに1バレル=73ドルに上昇するとの見方を示している。 しかし、OPECの戦略の変化や、リビア、イラク、ウクライナ、ロシアの地政学的緊張と 緊張といった供給面、世界の経済活動 という需要面の双方から見通しは不確 かだとした上で、オプション価格に基 づく先物価格の予測分布では、2019年 の原油価格の見通しは、68%の確率で 1バレル=48~85ドル、95%の確率で 同38~115ドルという幅広いレンジに なっていると指摘する。 ・2つのシミュレーション 原油安が世界の成長率に与える影 響を試算する上で、 IMFは上述の (出所:IMF) 1/3 最終頁の「ご注意いただきたいこと」を必ずお読み下さい。 髙木証券投資情報部 ご参考資料 不確実性を考慮して、2つのシミュレーションを行っている。第一のシナリオは、先物 市場における価格変動の60%が供給要因によることを前提とするケースであり、第二 のシナリオは、供給要因が価格に与える影響は当初60%であるが、それはやがて解消 され、2019年にかけて徐々にゼロに向かうケースである。 ・原油安は2015年の世界成長を0.3%ないし0.7%、2016年を0.4%ないし0.8%押し上げる IMFは、供給要因による原油価 格下落は、世界経済にとっては良 いニュースであるが、原油輸入国 と原油輸出国の間で所得の再分配 が発生すると指摘した上で、上述 の第一のシナリオでは、世界のGDP の押し上げ効果を、2015年が0.7%、 2016年が0.8%、第二のシナリオで は、2015年が0.3%、2016年が 0.4%と試算している。 ・石油安の恩恵が大きな国は? IMFは、原油安が輸入国に与える ポジティブな効果として、①消費に 回せる実質収入の増加、②最終製品 の製造コストを下げ、それを利益や 投資に回すことができる、③インフ レ抑制効果、の三つを挙げているが、 その影響の強さは国により異なると 述べている。 (出所:IMF) そして、米国は消費する石油の半 分以上を自らが生産しているため、 実質収入増加による影響は、ユーロ 圏や日本に比べると小さいと述べて いる。また、実質収入増加の効果は、 その国のエネルギー集中度(生産単 位あたりのエネルギー消費量の多さ とも言い換えられよう)にも依存す るとも述べ、中国やインドは、先進 国に比べて今なお相当にエネルギー 集約的であり、低いエネルギー価格 (出所:IMF) からの恩恵はより大きいとした上で、 GDPに占める石油消費の比率は、米国が3.8%であるのに対して、中国は5.4%、インド とインドネシアは7.5%であることを指摘している。 具体的には、原油安が中国に与える効果は、先に述べた二つのシナリオのいずれに おいても日本、米国やユーロ圏の各国よりも大きく、中国のGDPは原油安を考慮しな いベースラインシナリオに比べて、2015年が0.4~0.7%、2016年が0.5~0.9%押し上 げられると指摘する一方、米国のGDPに対するプラスの影響度は、2015年が0.2~ 0.5%、2016年が0.3~0.6%であると試算している。 2/3 最終頁の「ご注意いただきたいこと」を必ずお読み下さい。 髙木証券投資情報部 ご参考資料 また、 IMFは6月以降の為替市場における円とユーロの下落(円が14%、ユーロが 8%)により、円及びユーロ換算の原油価格の下げは米ドルベースよりも小さく、それぞ れ36%及び40%であり、日本とユーロ圏における価格低下のインパクトは、我々のシ ミュレーションよりもやや小さくなったと指摘している。 IMFはさらに、燃料に対する補助金を設けている多くの国(筆者註:インドネシアやイ ンド等)では、原油価格の下落によって補助金の額を減らし、その余裕が目的を絞った所 得移転の機会を与えたほか、エネルギー税を増税したり、他の税金を減税することができ たと述べている。 (出所:IMFより髙木証券作成) ・輸出国へのネガティブな影響は国により異なる 一方、原油価格の下落は、輸出国の国家収入を減少さ せ、国家予算や国際収支を圧迫するが、その度合いは、 輸出の原油依存度や石油由来の収入が国家の収入全体に 占めるウエイト等によって国により相当の違いがあると IMFは述べている。 ・注目される1月の世界経済見通し IMFは3ヶ月に一度 の頻度で「世界経済見 通し」を発表している が、昨年は発表のたび に世界の成長率見通し が下方修正されてきた。 IMFは今回のレポート は、正式な経済見通し ではないとしているが、 原油価格下落の影響は 今月公表される新しい 見通しに反映されるこ とは言うまでもなく、 恐らく20日前後になる とみられる発表が待た れるところだ。 (文責:勇崎 聡) ロシア 湾岸協力会議 エクアドル ベネズエラ 原油輸出/ 石油収入/ 輸出全体 国家収入 70% 50% 63.6% 22.5% 55% 30% 94% 46.6% ※湾岸協力会議加盟国は、アラブ首長国連邦、 バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、 サウジアラビアの6ヶ国 ◆IMFの世界経済見通し(2014年10月7日発表) 2014年予想 2012年 2013年 実績 実績 予想 前回比 世界 3.4 3.3 3.3 -0.1 先進国 1.2 1.4 1.8 0.0 米国 2.3 2.2 2.2 0.5 ユーロ圏 -0.7 -0.4 0.8 -0.3 ドイツ 0.9 0.5 1.4 -0.5 フランス 0.3 0.3 0.4 -0.4 イタリア -2.4 -1.9 -0.2 -0.5 スペイン -1.6 -1.2 1.3 0.1 日本 1.5 1.5 0.9 -0.7 英国 0.3 1.7 3.2 0.0 カナダ 1.7 2.0 2.3 0.1 その他先進国 2.0 2.3 2.9 0.0 新興国 5.1 4.7 4.4 -0.1 新興アジア 6.7 6.6 6.5 0.1 中国 7.7 7.7 7.4 0.0 インド 4.7 5.0 5.6 0.2 ASEAN5 6.2 5.2 4.7 0.1 ラテンアメリカ 2.9 2.7 1.3 -0.7 ブラジル 1.0 2.5 0.3 -1.0 メキシコ 4.0 1.1 2.4 0.0 ロシア 3.4 1.3 0.2 0.0 南アフリカ 2.5 1.9 1.4 -0.3 2015年予想 予想 前回比 3.8 -0.2 2.3 -0.1 3.1 0.0 1.3 -0.2 1.5 -0.2 1.0 -0.5 0.8 -0.3 1.7 0.1 0.8 -0.2 2.7 0.0 2.4 0.1 3.1 -0.1 5.0 -0.2 6.6 0.0 7.1 0.0 6.4 0.0 5.4 -0.2 2.2 -0.4 1.4 -0.6 3.5 0.1 0.5 -0.5 2.3 -0.4 (出所:IMFより髙木証券作成) 3/3 当資料は投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資の最終決定はご自身でなさるようお願いいたします。当資料は信頼できると思われる各種 データに基づいて作成されていますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。株式への投資は、価格の変動や発行者の信用状況の悪化等により 投資元本を割り込むおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。また、信 用取引ではその損失額が差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。国内株式取引の委託手数料は、約定代金に対して最大(税込)1.19664%【2,700 円に満たない場合は2,700円(現物取引買付および信用取引売買)】になります。株式を募集等により取得する場合には、購入対価のみをお支払いいただきます。 外国株式を委託取引により購入する場合は、所定の委託手数料をいただきます。外国株式の委託手数料は国や市場により異なります。外国株式を店頭取引によ り購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。債券をご購入いただく場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。(経過利子をお支払いいただく 場合があります)。債券は、市場の金利水準の変動等により価格が変動しますので、損失が生じるおそれがあります。また、発行体の信用状況や財務状況によっ ても価格が変動し、利金や償還金の支払遅延や不履行となる場合があります。また、倒産等により元本損失が生じる場合があります。投資信託は、主に国内外の 株式や債券を投資対象としているため、基準価額は組み入れた株式や債券の動き、為替相場の変動等の影響により上下しますので、これにより投資元本を割り 込むおそれがあります。投資信託はファンドごとに設定された購入時手数料をご負担いただきます。また、投資信託を保有期間中に間接的にご負担いただく費用 として、ファンドごとに設定された運用管理費(信託報酬)のほか、運用成績に応じて成功報酬をご負担いただく場合があります。外国株式や外国債券、外国投資 信託への投資は、上記に加え為替相場の変動等により損失が生じる場合があります。また、通貨発行国の国情の変化により投資元本割れや途中売却ができなく なるおそれがあります。当社で取り扱う商品等へのご投資には、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、お客様向け資料等をよく お読みください。 商号等:髙木証券株式会社 金融商品取引業者 近畿財務局長(金商)第20号加入協会:日本証券業協会【広告審査済】 髙木証券インターネット ホームページ:http://www.takagi-sec.co.jp/
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