第6章 まとめ(PDF:550KB)

Ⅵ まとめ
第Ⅴ章までで、背景を含む総論から、現状及び課題、基本方向及び今後推進すべき
施策などを整理してきました。
この章では、そのまとめとして、今後推進すべき施策や取組のスケジュールの観点
からロードマップ(行程)を示します。
また、再生可能エネルギー導入に当たって、太陽光発電の不安定性など、普及拡大
の支障となる様々な課題への解決に役立つ技術、革新的なエネルギー高度利用技術を
紹介します。
最後に、継続的な検討課題として、現時点では見通しが明らかにならない新技術へ
の対応や循環型社会における最終的なエネルギー源として注目される「水素エネルギ
ー」についての取組の方向性を示します。
1 再生可能エネルギー導入のロードマップ
本県が取り組む再生可能エネルギーの導入に係るロードマップは、図6-1のとお
りです。これまで報告書のなかで示してきたとおり、再生可能エネルギーには太陽光
発電をはじめ、様々なエネルギーがあります。
なお、このロードマップでは、全体像のイメージをつかみやすくするために、細部
まで記載していません。
ロードマップのうち最初の3年間を「フェーズ(段階)1」
、次の3年間を「フェー
ズ2」
、最後の3年間を「フェーズ3」と表現することとします。
なお、このロードマップは現段階のものです。技術開発の状況によっては、現在の
技術では導入が難しかった再生可能エネルギーについて、導入の可能性について再検
討する必要があります。
81
再生可能エネルギー全体のロードマップ
太陽光
工業団地のエコファクトリー化
普
及
普
及
商業施設のスマートマーケット化
利
用
拡
大
剪
定
枝
事モ
業デ
化ル
P
J
・
エ
リ
ア
拡
張
剪
定
枝
県
内
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ネ
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ギ
ー
利
用
プ
ラ
ン
ト
技
術
開
発
実
証
事
業
事
業
化
農業施設のエコファーム化
エコタウンの実現と県内他地域へ展開
図 6-1
埼玉県の再生可能エネルギー導入のロードマップ
82
モ
デ
ル
P
J
研
究
会
・
W
G
導
入
可
能
性
検
討
技
術
開
発
実
証
事
業
プ
ラ
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ト
技
術
開
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事
業
化
施
設
整
備
計
画
→
普
及
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用
の
実
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オ
オ
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ル
製
造
事
業
化
→
普
及
集
合
住
宅
ソ
ー
ラ
ー
面
的
導
入
→
エコタウンにおける
各種取組の展開
商
業
施
設
へ
の
ク
ー
リ
ン
グ
シ
ス
テ
ム
導
入
熱
の
建
物
間
融
通
研
究
会
・
W
G
廃棄物
22
家庭向け
大量普及
買
取
制
度
の
創
設
・
充
実
次
世
代
林
業
技
術
開
発
温度差
11
コ大
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ンよ
る
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3
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及
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拡
張
工
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大
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模
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発
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設
備
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入
実
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→
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ー
ラ
ー
発
電
事
業
実
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バ
イ
オ
オ
イ
ル
技
術
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発
その他
→
フ
ェ
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ズ
2
エコタウンの
先導的モデル
実現
マ
イ
ク
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マ
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ド
実
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施
工
品
質
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用
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術
の
P
R
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家庭向け
大量普及
(電力100%自活住宅)
買
取
制
度
の
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実
機
器
品
質
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上
開
発
木質
23
施
工
品
質
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向
上
→
コ大
ス量
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→
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ズ
1
機
器
品
質
向
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バイオマス
太陽熱
※
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、 23
東
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、 22
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術
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を
注
視
し
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的
な
情
報
の
入
手
が
求
め
ら
れ
ま
す
。
(1) 太陽光発電
本県では、全国的にみても比較的早い段階から家庭向けの補助制度を設置
するなど施策を講じてきました。それらの施策を継続し、
「フェーズ1」で
家庭向けの大量普及段階に到達、
「フェーズ2」では産業分野も含めて普及
拡大するものです。
[フェーズ1]
再生可能エネルギーによる発電は最も注目されており、今後、国レベル、
自治体レベルそれぞれで強力に施策が講じられていくことが想定されま
す。それに伴い、民間企業による機器及び施工品質の向上や大量生産に
よるコストダウンも期待されます。
これまでの家庭部門での普及に加えて「電気事業者による再生可能エネ
ルギー電気の調達に関する特別措置法」の成立により民間企業によるメ
ガソーラー発電事業の立ち上げの動きなどが顕著になっています。
また、太陽光発電の課題である不安定さなどを克服するための電力制
御・負荷平準化技術であるマイクログリッド・スマートグリッド技術や
蓄電システムなどの開発が進展していくものと思われます。
[フェーズ2]
住宅用太陽光発電の大量普及への移行に引き続き、産業分野でも大規模
太陽光発電設備の導入(モデルプロジェクト「工業団地のエコファクトリ
ー化モデル」)が始まり、売電を目的とするメガソーラー発電事業が拡大
していくことが予想されます。事業化を検討する民間企業を支援が課題で
す。
なお、本県では、業務部門で、既に県自らが行田浄水場に1メガワット
規模のメガソーラーを導入したほか、NHKも菖蒲久喜ラジオ放送所(久
喜市)に2メガワット級での設置を進めています(P45、47参照)
。
[フェーズ3]
必要な施策を講じていくことで、産業分野での普及拡大の継続を図ること
が課題です。
(2) 太陽熱利用
オイルショック時に石油代替エネルギーとして、住宅用の太陽熱温水器が
普及する兆しがありましたが、石油価格の低位安定によるコスト優位性の低
下などにより、太陽熱利用技術に対する社会の関心も低下していきました。
しかし、エネルギー変換効率の高さ(40~60%)から、その後も海外を中
心に技術開発が行われ、その技術レベルは一定の水準に到達しています。
- 83 -
[フェーズ1]
日本では、その高い変換効率も含め太陽熱利用技術が十分に知られてい
ないことから、まずは技術の広報を積極的に展開しながら、戸建住宅への普
及を目指します。機器及び施工品質の向上のための施策、大量生産によるコ
ストダウンへの誘導に取り組む必要があります。
熱利用の推進にあたっても、電力と同様、買取制度が有効である可能性
があります。国の動向を注視しながら、自治体として、制度の創設・充実を
後押しすべきです。
なお、個々の住宅や建物への導入では、夏場に「熱余り」の状況が発生
することから、セントラル方式による大規模な太陽給湯システムの導入や熱
の建物間の融通(面的活用)を推進、商業施設でのソーラークーリングシス
テムによる冷房利用や集合住宅への集中導入のための施策(モデルプロジェ
クト「集合住宅のソーラーエネルギー面的導入モデル」
)が課題です。
[フェーズ2]
更なる技術開発の進展を待ちつつ、太陽光発電に続き、戸建住宅を中心と
する家庭部門で大量普及段階に到達させることが目標となります。
建物間の融通(面的活用)と冷房利用、熱の買取制度の充実など施策を継
続的に講じていくことを前提に、集合住宅・福祉施設や商業施設などを中心
とした普及が課題です。
[フェーズ3]
必要な施策を講じていくことで、集合住宅や商業施設をはじめ、工場など産
業分野も含めた全てを対象に普及拡大を図ることが目標です。
(3) バイオマスエネルギー
ア 木質バイオマス
秩父を代表とする中山間地域の未利用の林地残材などについては、リーデ
ィングモデル事業として「森林資源活用によるエネルギー地産地消モデル事
業」により、バイオオイル製造の事業化についての取組を進めています。
[フェーズ1]
原料供給とバイオオイル製造に関する残された課題についての技術開発
を終了し、研究会で、事業主体・関係者による出資などについて具体的な検
討を進めつつ事業化に達成します。
- 84 -
[フェーズ2]
事業化達成後(1号機の設置後)、更に十分な原料の調達が見込める場合
には、製造プラントの2号機の建設を目指すほか、製造したバイオオイルに
ついては、産業部門での利用に限らず、家庭部門及び業務部門での利用も検
討していきます。
[フェーズ3]
バイオオイルの新たな用途など更なる有効利用も検討しながら、利用を拡
大していきます。
その他、都市部の剪定枝については、現在、一部の市町村と産業廃棄物処理
業者を中心に行っている集約化のスキーム、モデルプロジェクト「都市内剪定
枝の集約化モデル」を実施、検証していきます。
[フェーズ1]
先行して実施している実証事業「みどりのリサイクルシステム構築事業」を
終了するとともに、他地域への拡大を検討していきます。
[フェーズ2・3]
全県に取組のエリアを拡張するとともに、更に、製造した木質チップの県内
各地域におけるエネルギー利用(地産地消)を進めていきます。
イ その他のバイオマスエネルギー
その他のバイオマスエネルギーとしては、農業系、畜産系、食品系バイオ
マスを想定しています。モデルプロジェクトにも、農業系・畜産系バイオマ
スでは「農業施設のエコファーム化モデル」
、食品系バイオマスでは「既存イ
ンフラを利用した生ごみの処理効率化モデル」があり、これらを中心に取り
組む必要があります。
これらのモデルプロジェクトには、全国の他地域で先行している類似の取
組がありますが、技術開発を普及レベルという視点で考えた場合、まだ十分
には進んでいない状況にあります。
[フェーズ1]
埼玉県での事業化に関心を持つ関係者を集めて研究会を立ち上げ、国や他
の自治体、民間企業の技術開発及び実証事業の進捗状況を把握し、情報共有
を進めていく中で、実証事業の検討を行う必要があります。
- 85 -
[フェーズ2]
実証事業の実施により得られる課題を整理した上で、研究会などの関係者
を中心として事業化が目標となります。
[フェーズ3]
事業化の実績をもとに他地域への普及拡大を図ることが課題です。
(4) 温度差エネルギー
河川水熱、地中熱、下水熱などの熱エネルギー利用があります。これらの
エネルギーは、基本的にヒートポンプにより利用することになりますが、現
在の技術開発のレベルでは完全に実用化されています。しかし、大量普及段
階にある大気熱ヒートポンプを除けば、家庭部門における戸建住宅や集合住
宅への導入は、まだコスト的に厳しい状況にあると言えます。
しかし、太陽熱利用と同様に、セントラル方式による大規模なシステム導
入やインフラ共有、熱の建物間の融通(面的活用)
、特に、大型の開発物件
については導入の可能性があると考えます。
[フェーズ1]
民間企業の技術開発及び国や他の自治体などが行う実証事業の進捗状況
を把握しながら情報共有を進めていく中で、導入可能性及び実証事業の検討
が必要です。
[フェーズ2]
実証事業の実施により得られる課題を整理した上で、事業化を目指すこと
が目標です。
[フェーズ3]
事業化の実績をもとに他地域への普及拡大を図ることが課題です。
(5) 廃棄物エネルギー
廃棄物では、一般廃棄物については市町村、産業廃棄物については民間事
業者が中心となり適正処理と利用が行われています。下水については、流域
下水道の処理場は県、他の小規模な下水処理場、し尿処理施設、コミュニテ
ィプラントや農業集落排水施設は市町村が、その適正処理と利用を行ってい
ます。
このとおり、一部を除いては、市町村が中心となって取組を進めていくこ
とになることが予想されること、更には、処理プラントの更新のタイミング
で事業化を目指すほうが効率的であると考えられます。
- 86 -
今後も、民間企業を中心に進められていくプラント技術などの開発の動向
を注視するとともに、プラントの更新計画などの情報と市町村の意向を注視
しつつ、
「フェーズ」の枠にとらわれない長期的な視点も持ち、事業化を検討
する必要があります。
(6) その他のエネルギー
水力や風力、工場排熱をはじめとするその他のエネルギーについても、技
術開発の動向を注視しながら、民間企業などが主体的に導入することに対し
て支援を検討すべきです。
技術的な困難や障害を突破するブレークスルーがあった時は、新たな支援
を検討する必要があります。
2 革新的なエネルギー高度利用技術などの活用
再生可能エネルギー導入に当たっての大きな課題としては、エネルギーとし
ての安定性の欠如、導入コストの高さが挙げられます。その課題を解決するた
め、天然ガスコージェネレーションなど、革新的なエネルギー高度技術の活用
のほか、蓄電池を搭載する電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動
車(PHV)の導入などが求められます。
(1) 革新的なエネルギー高度利用技術とは
革新的なエネルギー高度利用技術は、
「再生可能エネルギーの普及、エネル
ギー効率の飛躍的向上、エネルギー源の多様化に資する新規技術であって、
その普及を図ることが特に必要なもの」とされています。
これには、再生可能エネルギーの普及拡大の点からも様々な導入メリットが
あるので積極的に推進する必要があります。
◆ エネルギー効率の飛躍的向上に資する新規技術
定置用燃料電池、ハイブリッド自動車、天然ガスコージェネレーション、ヒ
ートポンプ、石油残渣ガス化技術(石油残さをガス化して発電する技術)、ク
リーンコール技術(石炭の高度利用技術)
◆ エネルギー源の多様化に資する新規技術
クリーンエネルギー自動車、天然ガスや軽油などを製造する技術、ジメチル
エーテル(DME)製造技術、非在来型化石燃料利用技術(メタンハイドレート
の利用技術、オイルサンドなど超重質油の効率的分解技術)
(2) 革新的なエネルギー高度利用技術の活用メリット
ア 再生可能エネルギーの有効活用
再生可能エネルギー導入に当たっての大きな課題として、
「安定性の欠
- 87 -
如」
「導入コストの高さ」などが挙げられます。特に、再生可能エネルギ
ー由来の電力は天候などにより、供給量が大きく変動することから、そ
の弱点を補完すべく、革新的なエネルギー高度利用技術を不安定な再生
可能エネルギーの設備やプラントの周辺に配置して安定性を高めるなど、
より有効に活用できるようにすべきです。
例)太陽光発電設備に対する補助電源としての「天然ガスコージェネレーショ
ン」
イ 省エネルギー技術としての有効利用
エネルギー効率が飛躍的に向上する技術として、
省エネでも大いにその
威力を発揮します。これにより、エネルギー需要量の削減を図ることが
できれば、エネルギー自給率の向上に寄与します。
また、
「電力」を地産する際に発生する「熱」の有効利用を進めること
で、冷暖房など「熱」に関する「電力」の節減が可能になるなど、節電・
省電力にもつながります。
ウ スマート性を付加した安心安全な街づくり
街づくりにおいて、
「再生可能エネルギー」+「革新的なエネルギー高
度利用技術」+「スマート化:需要をマネジメントする仕組み」を導入
し、省エネ性や自然エネルギーの導入により自立性・多様性を高めるこ
とで、災害など有事にも強い街づくりの一翼を担います。
例)定置用燃料電池:化石燃料(水素)→ 電力+熱(+水)
天然ガスコージェネレーション:化石燃料 → 電力+熱
ヒートポンプ:電力(小) → 熱(多量の温水)
(3) 革新的なエネルギー高度利用技術の推進策
民生向けの家庭用燃料電池や事業者向けの天然ガスコージェネレーショ
ンなどに対する設備導入に向けた補助支援や余剰電力を電力会社などが買
い取る際の売電価格の上乗せ措置注)や設備の導入や自動車の買い替えに対
する補助制度など、従来の取組を継続・強化していくことが重要です。
国が現在検討中の新たなエネルギー政策における扱い(位置付け)もよ
く見据えた上で、改めて県としての推進策を整理する必要があります。
注)太陽光発電と家庭用燃料電池を併設した場合、買取対象は太陽光部分のみが
買取対象となります。太陽光発電と燃料電池を併設した電力の売電価格を高め
に設定すれば、革新的なエネルギー高度利用技術は普及すると考えられます。
(4) エネルギー貯蔵技術の活用
- 88 -
太陽光パネルなどで発電したエネルギーを電気自動車(EV)やプラグ
イン・ハイブリット自動車(PHV)の蓄電池(バッテリー)に充電する
ことで、不安定な再生可能エネルギーの電源が安定的に利用できるように
なるほか、災害時などの緊急時に、病院や老人ホーム、避難所などでの活
躍が期待されます。現在、「スマートハウス」など住宅電源との連携につ
いての実証研究が進みつつあります。
一方、大型の蓄電池としては、NAS(ナトリウム硫黄)電池がありま
す。不安定な風力発電設備や太陽光発電設備に併設することで系統電力の
安定性を維持できるほか、系統電力の接続でも電力需要変動の問題を解決
する手段になっています。
(5)
エネルギーネットワークの構築
再生可能エネルギーの大量導入に当たっては、マイクログリッド・スマ
ートグリッド技術による不安定電源に対する電力制御や負荷の平準化、熱
の余剰に対する建物間融通(面的活用)など、スマートメータや各種エネ
ルギーマネジメントシステム(HEMS:ホーム、BEMS:ビルディン
グ、CEMS:コミュニティ)などの情報通信技術や熱輸送管網などの新
しいエネルギー供給基盤などをフルに活用したエネルギーマネジメント
が必要になります。
現在、国では、次世代エネルギー・社会システムの構築を目指して、全
国4つのモデル地域(横浜市、豊田市、京都府けいはんな学研都市、北九
州市)でエネルギーネットワークの構築を中心とした大規模な実証研究を
行っています。更には、本県でも早稲田大学本庄キャンパスを中心とした
本庄地域では「本庄スマートエネルギータウンプロジェクト」(P82~
P84)が展開されています。
これらの取組の動向を注視しつつ、県内各地域において、地域の特性に
合わせた、スマートエネルギーネットワークの構築が目標となります。
3 継続的な検討課題
ここでは、再生可能エネルギーの導入に当たり、現状で、まだ明らかになっ
ていない課題について継続して取り組んでいくことをイメージしながら整理
しました。
(1) 情報収集と課題の整理・検討
実際に、再生可能エネルギーの導入を進めて行くプロセスにおいて、技術
革新による画期的な新技術の登場が想定される一方で、様々な課題が次々に
発生することも想定されます。
国などからの発信情報や研究会などの参加者からの情報などに、
常にアン
テナを張り、随時課題を整理しながら検討をしていく仕組みの構築が課題で
す。
- 89 -
(2) モデル化と普及シナリオ(マニュアル)作り
成功した事例は、
他地域や環境でも参考にできるよう常にモデル化を意識
しながら実証事業などに取り組み、その後の普及シナリオを策定すべきです。
なお、成功事例に対して策定した普及シナリオは、
「埼玉方式」として、
広く県内外に対して広報を図ることで、再生可能エネルギーの普及に貢献で
きます。
(3) 施策による効果の検証
国の政策との整合性を図りながら、県として導入施策の継続性を担保し、
効果を検証するためには、そのための仕組み・体制整備づくりが求められま
す。
エネルギーごとにその普及拡大を表す指標となるデータを選定して収集
方法を検討し、毎年、施策展開の進捗管理のなかで、データの収集を行いな
がら効果の検証を行う必要があります。そのなかで、設定した目標の妥当性
について確認し、必要に応じた修正も検討します。
(4) 外部チェック機能の確保
あらゆる環境エネルギー政策が正しく機能するためには、
環境審議会に毎
年、報告を行うほか、学識経験者などから意見を受ける必要があります。
その意見は、随時、施策の展開に反映させることが求められます。
(5) 新たな再生可能エネルギーへの取組
ア 新技術への取組強化
バイオマスエネルギーや温度差エネルギーなど再生可能エネルギー技
術のなかには、現時点で、その技術レベルが明確になっていない、社会的
に認知されていない新技術や仕組みがあります。
このような新技術については、国からの情報や大学や県の研究機関との
連携のなかから、技術理論に対する信憑性や開発段階などを、随時、議論
しながら判断していきます。
技術の確立と普及を見据えた上で社会的価値が十分に高いと考えられる
ような場合には、国の動向を問わず、県として必要な支援策を積極的に展
開すべきです。
イ 水素エネルギーへの取組
「水素」は、地球上に豊富に存在する元素のひとつであり、新しいエネ
ルギー媒体として期待されています。その「存在量の膨大さ」と「高い環
境性(自然界からの収集が可能、利用後に水となることなど)
」から、埼玉
県では、水素エネルギーの周辺情報には特に気を配り、民間との連携を強
化しつつ、県としての施策を検討、積極的に展開する必要があります。
具体的には、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる水素ガス製造
- 90 -
や輸送・貯蔵における安全性の向上など基礎的な技術開発のほか、レアメ
タルの使用量削減をはじめとするコストダウンに係る技術開発に対する支
援、家庭用燃料電池の市場拡大、燃料電池自動車の普及など設備導入に対
する支援なども含めて、新しいエネルギー技術の一つとして、その普及拡
大を検討が求められます。
- 91 -