【重要】最終試験のお知らせ
◦ 日程
 1月21日(水):最終講義日
◦ 時間
 17:10~18:30(80分)
◦ 場所
 3-123教室(いつもの教室)
※なお当初の告知通り、成績は出席&講義
コメントが40%、最終試験が60%の配分
1
経済史 I
続:工業化と貿易の経済史(III)
第11回:12月17日(水)
2
応用編(2)
戦後の国際社会における
農業保護の推移
3
先進国のNRAの推移:財の種類別
1960年代~2000年代
4
財別NRAの変化
5
日本のコメの名目保護率の推移
1880年代~2000年代
6
戦前:低い保護水準・
農家の相対所得減少
戦後:高まる保護・
農家の相対所得増加
戦後国際社会におけるNRAの推移
途上国・先進国いずれにおいても、国外から
の輸入品と競争関係にある輸入競合財は保護
対象とする傾向
 途上国では80年代、コメ、コーヒー、綿、豚
肉等のNRAがマイナスだったが、2000年代に
は軽減(あるいはプラス化)された
 先進国において、NRAが高い財はコメ、砂糖、
生乳など
 先進国において、NRAが高い国は日本
◦ 特に戦後、日本はコメの保護率を急拡大さ
せることで、農家と非農家との間の所得格
差(農工間格差)を是正してきた

7
貿易の「相対的保護」の測定
「農業保護の水準が高いか(絶対的水準)」
だけでなく、「他の産業に比べて農業保護の
水準が高いか(相対的水準)」も重要
 農業の相対的保護率

◦ RRA: Relative Rates of Assistance
◦ 農業NRAを𝑁𝑅𝐴𝑎𝑔𝑟𝑖 、非農業NRAを𝑁𝑅𝐴𝑛𝑜𝑎𝑔 とすると
100 + 𝑁𝑅𝐴𝑎𝑔𝑟𝑖
𝑅𝑅𝐴 =
−1
100 + 𝑁𝑅𝐴𝑛𝑜𝑎𝑔
① 農業と非農業が同程度の保護ならRRA=0
② 農業の方が保護されていればRRA>0
③ 非農業の方が保護されていればRRA<0
8
先進国のRRAの推移:
1960年代~2000年代
9
先進国のRRAの推移:地域別
1950年代~2000年代
10
経済発展とRRAの関係
11
戦後国際社会におけるRRAの推移
一般的に、経済発展に伴ってRRAはマイナ
スからプラスに変化していく
 つまり、途上国では農業よりも工業の保護
を優先する一方で、先進国になるにつれて
農業保護を強化していく傾向にある


12
ペティ・クラークの法則に従い、GDPや労
働者に占める農業の割合は極めて小さくな
る先進国において、なぜ農業保護が強化さ
れていくのだろうか??(今日のお題)
補論:日本からバターが消えた?



13
2014年は全国的にバターが品薄状態
なぜ?:昨年の猛暑で国内の生乳生産が大幅減
農水省は5月に7千トン、さらに9月に3千トンの追加
輸入を実施(異例の事態)
◦ 計1万トン:国内消費量の10~15%
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カレントアクセス輸入?
GATT(関税及び貿易に関する一般協定)
 ウルグアイ・ラウンド(1986年)

◦ 農産物の輸入(アクセス)機会の提供を合意
◦ 基準期間(1986~88年)の輸入数量が国内消費量
に対して、
① 5 %以下:最低輸入数量(ミニマムアクセス)
として国内消費量の 3 ~ 5 %の提供

例:ミニマムアクセス米(主に飼料用を輸入)
② 5 %以上:現行輸入数量(カレントアクセス)
の維持を約束した。
⇒バターはこのカレントアクセスに分類される保
護対象品目であり、生乳換算で毎年13.7万トンの輸
入を約束している
15
国産バターはどれほど保護され
ているのか?

内外価格差の比較(2010年、200gの価格)
◦
◦
◦
◦

アメリカ:70円
韓国:90円
国際平均:70円
日本:220円
雪印北海道バター(200g)
の希望小売価格:393円
日本のバターの輸入関税:360%
◦ つまり仮に200グラム100円の安いバターが輸入
されても、日本国内では100円+360円=460円で
販売されることになり競争力は失われる
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TPP交渉の論点
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国際協力の経済史
18
国際協力とは?

19
講義では政府開発援助(ODA)を扱う
第二次大戦後の世界の国際協力

1947年:マーシャル・プラン
◦ 米国務長官マーシャルが発表した、欧州経済復
興援助計画
◦ トルーマン政権の「封じ込め政策」の一環で共
産主義に対抗(東欧諸国は拒否)

1949年:COMECON(コメコン)
◦ Council for Mutual Economic Assistance
◦ ソ連主導の東欧諸国を中心とした共産主義に基
づく経済協力機構

20
つまり戦後の国際協力は「冷戦構造」の中
で黎明期を迎えた
被援助国としての日本

1946~51年:ガリオア・エロア資金
◦ 米国による日本復興支援資金
◦ 援助総額は約18億ドル(現在価値で約12兆円、
これは2013年の日本ODA支出額の10倍)

1953~65年:国際復興開発銀行による融資
◦ 現在の世界銀行(の一部)からの低金利融資
◦ 総借入額は現在価値で約8兆円、当時ではインド
に次いで2番目の金額(1990年に完済)
21
援助国としての日本

1950年:コロンボ・プラン
◦ スリランカのコロンボで開かれた英連邦外相会
議に基づく途上国援助のための国際機関
◦ 当初は英連邦諸国のみを加盟国としていたが、
後に西側諸国が加盟
◦ 日本は1954年に同プラン加盟を閣議決定
◦ これが日本のODAの開始であり、日本は被援助
国から援助国となる
◦ ※加盟日の10月6日=「国際協力の日」
22
2014年は日本の国際協力60周年

23
JICA特集ページ:
http://nantokashinakya.jp/projects/60th/
世界のODAの推移
いつ国際協力は話題になった?



24
Google Ngram Viewerでの、1920年以降の書籍に
おける”Foreign Aid”の検索結果数
「国際協力」は戦後から1960年代まで急激に話題
となり、その後は鎮静化の傾向
冷戦(60年代末以降のデタント)との関係?
先進国から途上国への資金流入
2000~2012年
25
世界のODAの推移:1960~2010年

ODAの総額はほぼ一貫して増加傾向
◦ ただし、90年代の「援助疲れ」の時期を除く

26
他方でGNIの割合は減少・横ばい傾向
主要国のODA推移:総額
1996~2013年
27
主要国のODA推移:純額
1995~2013年
28
国民1人当たりODA実績:2009年
29
GNIに占めるODA額の割合:2013年
30
日本のODA地域別配分の推移
31
出典:ODA
白書2013
日本のODAの特徴
ODA大綱
◦ 日本のODAの基本方針
◦ 1992年に閣議決定、2003年に改定
◦ 目的は「国際社会の平和と発展への貢献
を通じてわが国の安全と繁栄の確保に資
する」こと
 他国に比べ借款(ローン)の割合が大きい
 GNIに占める割合や国民一人当り拠出額と
しては少ない
 援助の対象地域はアジアが中心で、分野と
しては社会資本(インフラ)整備が多い

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ODAの評価
OECD/DACのODA5項目評価法
①妥当性(Relevance)
援助が被援助国の政策・ニーズに合致するか
②有効性(Effectiveness)
援助目標が十分に達成されたか
③インパクト(Impact)
援助がどのような正・負の効果を与えたか
④効率性(Efficiency)
資源が効率的に投入されたか(期間・費用)
⑤持続性(Sustainability)
援助の便益が持続的に継続できているか
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評価に伴う開発援助の困難

開発援助によるプラスのインパクトを重視
して評価されるなら…
⇒経済成長が見込める途上国と、紛争等の社会的
問題が多く成長が見込めない途上国の、どちら
を優先して援助したいと思うか?
経済成長が見込める途上国は、援助無しで
も自立的に開発を進められるのに、援助が
集中しかねない
 他方で、本当に支援を必要とする、成長の
見込めない途上国への援助が避けられる可
能性も

34
ODAの効果をめぐる議論
ODAは貧困削減に貢献するのか?

サックスv.s.イースタリー論争
◦ ジェフリー・サックス
 ODAで貧困削減できる。貧困国の経
済を活性化するには外部からの多額
の援助(ビッグプッシュ)が必要。
◦ ウィリアム・イースタリー
 これまでの多額の援助でもアフリカ
は脱貧困に失敗した。援助での貧困
撲滅には限界があり、負の効果すら
ある
35
開発援助(ODA)の問題点

援助依存
◦ 援助によって被援助国の自立的な政治・経
済・社会・文化の形成が阻害されてしまう

援助プロジェクトの氾濫
◦ 被援助国のニーズや許容能力にそぐわない援
助が増え、マイナスの影響すら起こりうる

ファンジビリティ(流用可能性)
◦ 援助によって「浮いた」分の予算が、開発に
有益ではないこと(軍事費など)に回される
36
課題

37
問題1.ペティ・クラークの法則に従
いGDPや労働者に占める農業部門の割
合は小さくなる先進国において、なぜ
農業保護が強化されていくのか?