提言論文 盛り上がる"新しい贅沢"消費 昨年の暮れまでの"暗い"空気から、一転して消費市場が明るさを増してきた。 2013 年年初から 5 月現在、「高額商品が伸びて百貨店が好調」「輸入乗用車が対前年 2 桁 増」など高額商品サービスの消費が拡大しているというニュースが伝わっている。最初に 消費拡大の空気をつくったのは、株高により資産残高が増加した資産家層、企業業績回復 見通しをもった高収入層 (合わせてアッパー層) である。 その空気が 3 月 4 月と月を追って、年代でいうと 40 代 50 代のミドル層、収入階層の中間 層に波及している。ミドル層自身が資産収入見通しを改善させていることに加え、周りの 空気に感染して財布の紐が緩みはじめたのだ。 アッパー層の"贅沢"な商品サービスの消費行動はミドル層の模倣欲望を刺激している。世 間の"暗い空気"に支配された節約消費意識から解放され、魅力的に映るのは「ちょっとし たぜいたく感」のあるものだ。 今、人々が何を欲しがっているのか、4 月連休前に実施した緊急消費者調査結果を紹介す る。 40 の商品サービスカテゴリーと 53 の商品ブランドを任意に提示し、 「ぜいたくと感じる もの」「欲しいもの」の解答を得た。 はじめに商品サービスカテゴリーについて、 「ぜいたくと感じるもの」のベスト 10 をみて みる(図表 1)。全体では、 「自宅プール」、 「リゾートマンション」、 「豪華客船クルーズ」と 続く。上位 10 位までは、男女差はほぼない(違いは男性の 10 位「大排気量のスポーツカ ー」が女性では 11 位、女性 7 位「飛行機のビジネスクラス」が男性 13 位のふたつだけで ある)。 「欲しいもの」は、全体ランキングでは 1 位が「3 連泊以上の国内温泉旅行」、続いて「海 外旅行」 「お掃除ロボット」がベスト 3 である。男性 1 位が「ノートパソコン」、女性は「海 外旅行」。女性では、3 位に「お掃除ロボット」、4 位「高機能炊飯器」、8 位「家庭用エスプ レッソマシン」と白物家電が、男性では 6 位に「50 インチ以上の大型薄型TV」が入って いる。 copyright (C)2013 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved. 1 提言論文 図表 1.ぜいたくと感じるもの 図表 2.欲しいと思うもの こうしてみてくると「欲しいもの」は「ぜいたくなもの」とは大きく異なっており、男女 差も大きい。「欲しいもの」と比べると、「ぜいたくなもの」の上位には自分では買えない もの、欲しくないもの、ムダなものが含まれているようだ。 そこで、「ぜいたくと思うもの」であり同時に「ほしいもの」を集計してみた。 「欲しく」て「ぜいたくなもの」ランキングは、全体で 1 位が「3 連泊以上の国内温泉旅 行」、続いて「豪華客船クルーズ」 「海外旅行」、10 位までに「飛行機のビジネスクラス」 「料 copyright (C)2013 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved. 2 提言論文 亭での会食」 「ラグジュアリーホテルのレストランでの食事」など「ぜいたく」感のあるレ ジャーや外食、サービスカテゴリーがあげられた。物品では、 「海外高級ブランドの腕時計」 「欧米メーカーの輸入車」など実際に販売好調と言われる高額品があがってきた。 図表 3.欲しくてぜいたくなもの 次に、家電、クルマ、ファッション、ビールなどの個別ブランドについての結果をみてみ よう。 「ぜいたくなもの」の全体ランキングは、1 位「ベンツ」続いて「ロレックス」「エルメ ス」「BMW」と 10 位までに海外のプレステージブランドが並ぶ。10 位内に入ったブラン ドは男女差がない。 「欲しいもの」全体 1 位は、「ルンバ(お掃除ロボット)」 、2 位が「ダイソンサイクロン 掃除機」である。3 位「ザ・プレミアム・モルツ」 「ヱビス(ビール)」とプレミアムビール ブランドがあがった。男性では「ヱビス」「ザ・プレミアム・モルツ」「ルンバ」の順、女 性では 1 位が「ルンバ」以下「ダイソンサイクロン掃除機」「ユニクロ」僅差で「エアマル チプライアー(ダイソン)」と続く。 copyright (C)2013 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved. 3 提言論文 図表 4.ぜいたくと感じるブランド 図表 5.欲しいと思うブランド 「欲しく」て「ぜいたくなもの」は、全体では 1 位が「ルンバ」となった。6 位に「ダイ ソンサイクロン掃除機) 」が入り、海外ブランドの白物家電が上位に入った。それ以外のト ップ 10 には、「エルメス」などのプレステージブランドがあげられた。 男性では「BMW」 「レクサス」 「ベンツ」 「ロレックス」の順、女性では「エルメス」 「ル ンバ」「ルイ・ヴィトン」 「シャネル」の順である。 今「欲しく」て「ぜいたく」なブランドは、クルマとファッションのプレステージブラン ドと、海外白物家電によって上位が占められている。日本ブランドでランクインしたのは、 copyright (C)2013 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved. 4 提言論文 男性の 2 位「レクサス」 、10 位「クラウン」とプレミアムビールブランド、女性では、10 位に「ヘルシオ(シャープの電子レンジ)」だった。 図表 6.欲しくてぜいたくなブランド 「欲しくてぜいたくなブランド」は、ロングテール化している。そのことは、性別年代別 のランキングの違いとしても表れている(図表 7)。 男性では、40 代はベスト 3 が輸入車のプレステージブランドである。バブル期に 20 代を 通過したクルマ好きが表れている。50 代では、3 位 4 位に「エルメス」 「シャネル」があが り、ブランド好きがみてとれる。 一方、30 代男性では 1 位「ダイソンサイクロン掃除機」と「レクサス」、3 位に「ヱビス (ビール)」「ヘルシオ」「ロレックス」が同率であげられた。「ルンバ」など白物家電ブラ ンドや「プリウス」が上位に入っているのが特徴的だが、プレステージブランドに全く関 心がないわけではない。20 代男性は、1 位に「ザ・プレミアム・モルツ」と同率で「BM W」が復活している。 40 代以上はプレステージブランドが中心なのに対して、30 代以下では家電やビールブラ ンドが上位にはいり、「欲しくてぜいたくなブランド」の傾向が変わってくる。 女性についても同様であり、20 代 30 代の 1 位は「ルンバ」 、40 代以降の 1 位は「エルメ ス」か「シャネル」であった。ただし、順位は異なるものの女性 20 代 30 代でも「エルメ ス」「グッチ」「ヴィトン」「シャネル」は 10 位内に存在しており、プレステージブランド への関心がないわけではないことがわかる。 copyright (C)2013 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved. 5 提言論文 図表 7.性別・年代別欲しくてぜいたくなブランド 最後に、これまでみてきた「欲しいも の」 「ぜいたくと思うもの」 「欲しくてぜ 図表 8. 「欲しいもの」「ぜいたくと思うもの」 「欲しくてぜいたくと思うもの」の 分布と関連性 いたくと思うもの」についてカテゴリー とブランド毎の比率をもとにそれぞれ の分布と関連性を調べてみた。平均値が 異なるもの同士のばらつきの度合いを 表す指標として変動係数を用いた。 商品サービスカテゴリーでは、 「欲しい もの」よりも「ぜいたくと思うもの」、 さらに「欲しくてぜいたくと思うもの」 になるとばらつきが大きくなる。 また、 「欲しいもの」と「ぜいたくと思 うもの」の間にはマイナスの相関があることから、 「ぜいたくと思うもの」は「欲しくない」 という傾向がある。「ぜいたく」という言葉には「ムダ」や「ぜいたくは敵」と言われたよ copyright (C)2013 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved. 6 提言論文 うなネガティブなイメージが残っているようだ。 個別ブランドについては、 「ぜいたくと思うもの」 「欲しくてぜいたくと思うもの」のブラ ンド間のばらつきはますます大きくなる。「ぜいたくと思うもの」1 位の「ベンツ」は 40% の人があげており上位集中度が高いが、「欲しくてぜいたくと思うもの」は 1 位でも 6.0% とたいへん小さく、ロングテール化していることがわかる。 また、カテゴリーとは異なりブランドにおける「欲しいもの」と「ぜいたくと思うもの」 の間には関連性がない。カテゴリー選択でみられたようなマイナスの相関は存在していな い。「ブランド」の存在が「ぜいたく」=「ムダ」を切り離す役割を果たしているのかもし れない。 「欲しくてぜいたくなもの」ランキングに表れた、プレステージファッションブランドや 高級車ブランドに加えて、上位にあがった「ルンバ」「サイクロン掃除機」「ヘルシオ」な どの白物家電ブランド、プレミアムビールブランドは、日常生活で利用される製品カテゴ リーの中で標準品より高価格であり、実用的には代替品は多い。しかし「なくてもいいが、 あったらうれしい」というものだ。そうした少しのプラスαの価値がブランド価値として 消費者に認められている結果と考えられる。 copyright (C)2013 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved. 7
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