マンション需要が米国の新築住宅を牽引 ~新築住宅市場

景気循環研究所レポート
景気循環週報(米国)
2014 年 12 月 26 日
マンション需要が米国の新築住宅を牽引
~新築住宅市場が弱く見えるのは、統計や供給側にも一因~
相対的に新築住宅市場の
回復が鈍い
米国の住宅市場は、全般的に順調に回復しているものの、新築住宅市場
は、相対的に回復ペースが鈍い。図1は、主要な住宅関連指標について、
リーマンショック前の住宅ブームのピークから景気後退期以降のボトム
までの落ち込みに対して、どの程度戻したかを比率で見たものである。中
古住宅販売件数は 39%である一方、新築住宅着工件数は 30%、新築住宅
販売件数に至っては 15%にとどまっている。
上記 3 つの統計のうち、新築住宅販売件数の戻りが鈍い理由として、ひ
とつには、統計の集計対象の違いが挙げられる。商務省の新築住宅販売件
嶋中 雄二
景気循環研究所長
数は、一戸建て住宅を対象としており、マンションなどの集合住宅を含ん
でいない。一方、新築住宅着工件数や中古住宅販売件数は、集合住宅を含
んでいる。最近では、若者を中心に一戸建てよりマンションなどの集合住
宮嵜 浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
miyazaki-hiroshi
@sc.mufg.jp
宅を好む傾向が強まっており、集合住宅を含まない新築住宅販売統計は、
新築住宅市場の回復を過小評価しているといえる。
図1.主要な住宅関連指標の推移
(百万件)
福田 圭亮
6.9
シニアエコノミスト
03-6213-2608
fukuda-keisuke
@sc.mufg.jp
5.9
(百万件)
3.6
05/9
7.25
中古住宅販売件数
(左メモリ)
3.3
3.0
2.7
06/1
2.27
14/11
4.93
4.9
本週報は、嶋中雄二の見方に基
づき、宮嵜・福田が執筆を担当し
ています。
39%
新築住宅着工件数
(右メモリ)
2.9
1.5
14/11
1.03
10/7
3.45
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
新築住宅販売件数
(右メモリ)
1.2
30%
09/4
0.48
1.9
2.1
1.8
05/7
1.39
3.9
2.4
11/1
0.27
14/11
0.44
0.6
15%
0.9
0.9
0.3
0.0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(出所)米商務省、全米不動産業協会『Existing Home Sales』
1
(年、月)
2014 年 12 月 26 日
図 2 は、商務省の新築住宅着工件数(集合住宅)と全米建築家協会の集合
集合住宅は今後も堅
住宅受注指数である。集合住宅の着工件数をみると、足元の水準は、既に 2008
調に推移
年の住宅バブル崩壊前を上回っている。また、集合住宅の着工件数に 1 年程
度先行する集合住宅受注指数は、増加と減少の分岐点である 50 を持続的に上
回っており、目先、集合住宅の着工件数は堅調に推移しそうである。
図2.新築住宅着工件数(集合住宅)と集合住宅受注指数
(百万件)
(「増加」-「減少」、%)
85
新築住宅着工件数(集合住宅〈 5世帯以上〉)
(右目盛)
80
0.40
75
0.30
70
65
0.20
60
0.10
55
50
0.00
45
40
集合住宅受注指数
(左目盛)
35
-0.10
30
-0.20
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
(年、月)
(出所)米商務省『 Housing Starts』、全米建築家協会(AIA)
建築用地不足が新築
また、新築住宅販売件数の低迷要因としては、建築用地の不足が挙げられ
住宅販売の抑制要因
に
る。全米住宅建築業者協会(NAHB)の調査によると、建築用地が「少ない」
「非常に少ない」と回答した建築業者の割合は、14 年において 59%と 13 年
から高止まったままである。特に生活の利便性の高い土地クラス A の用地は
一段と少なくなっている。住宅バブル崩壊以降、用地開拓業者が次々と倒産
し、技術者が他業種に流出してしまった影響が大きいと思われる(図 3、4)1。
(回答者数
占率、%)
70
図3.建築用地が「少ない」「非常に少ない」と
回答した建築業者の割合
(%)
50
60
50
20
「非常に
少ない」
40
20
40
30
30
20
43
20
10
図4.建築用地「非常に少ない」との回答割合
土地クラス別
2013年 2014年
35.0
34.0
18.0
20.0
12.0
39
39
「少ない」
11.0
10
17
0
0
2010
2012
2013
クラスA
2014
(出所)NAHB Aug 2014
クラスB
クラスC
(出所)NAHB June 2014
1
新築住宅販売統計は、建売住宅のみを対象としており、既に保有している土地に注文住宅を建てるような契約は、含ま
れていない。このことも、新築住宅販売統計と新築住宅着工統計とのかい離の一因となっている。
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
2
2014 年 12 月 26 日
労働力不足が新築住
また、労働者不足が新築住宅着工件数の伸びを阻害し、それが販売の低迷
宅着工件数の伸びを に結びついている点も見逃せない。NAHB の調査によると、建築労働者に対す
阻害
る不足感は、年々高まりをみせている。労働力不足により、予定通り建築計
画が進まなかったり、建築計画自体を取りやめるケースも増えている(図5、
6)。
図5.建築労働者不足感の推移
(回答者数占率、%)
47.0
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
直接雇用
41.0
派遣
30.5
28.0
22.3
19.8
12年6月 13年3月 14年6月
12年6月 13年3月 14年6月
(注)建築業者および建築関連派遣業において、 労働者 が不足し ていると回答 した割合。
建築関連12職種の平均
(出所)NAHB
図6.労働力不足が引き起こした影響
54
高い賃金の支払い
65
46
予定通り建築が進まない
60
35
広い地域から労働者を募集
36
15
一部の建築計画を取りやめた
18
10
受注ペースを落とした
13
9
販売がキャンセルされた
9
0
(注)上段が13年、下段が14年
(出所)NAHB June 2014
20
40
60
80
(回答者数占率、%)
集合住宅を中心に新
住宅関連統計のうち、新築住宅関連は、鈍い動きが続いているものの、必
築住宅市場は改善へ
ずしも、住宅に対する需要の弱さを反映したものではない。建築用地不足は
簡単には解消しないとみられるものの、土地を有効活用できる集合住宅の着
工などが進んでおり、今後の新築住宅市場は着工件数を中心に回復ペースを
速めていくと考えられる。
(以
(14.12.26 福田
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
3
上)
圭亮)
2014 年 12 月 26 日
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巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
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