こちら - 大分大学 高等教育開発センター

大分大学版
20
2014 年 12 月 22 日
シラバスの書き方
末本 哲雄
(高等教育開発センター)
本学では、学期末の「学生による授業改善のためのアンケート」にて、学生にシラバスの有用性を尋ねて
います。集計の結果、シラバスがあまり役に立っていない様子が表れてしまい、改善が求められています。
[加重平均値 1.93:(最小)0~4(最大),他設問の加重平均値 2.03~2.63 (2012 年度 教養教育科目より)]
では、役に立つシラバスとは、どのようなシラバスでしょうか?
(1)受講生との最初のコミュニケーション
→ 科目との出会い、学生の科目選択を助ける
(2)授業の羅針盤
→ 学期中、授業全体の方向性と各回の位置づけを伝え、
学生の学びを深めるガイドとなる
左表は、シラバスで特に重視される2つの役割
です。優れたシラバスは授業の最初から授業の終
わりまで利用できるようです。改定には綿密な授
業設計が必要ですが、シラバスの段階で十分な理
念や計画を打ち立てておくと、教員と学生の双方
にとって意義ある時間を共有できるでしょう。
本紙ではシラバスの要素から特に重要な 8 項目をとりあげ、書き方のヒントを紹介します。
(1)授業のねらい
「授業のねらい」には、授業の趣旨や概要・学びの方向性などを記載します。
意図を表現する項目のため、
「何をするのか」に偏重した情報提供は好ましくあり
ません。手段を目的とせず、「なぜ、その授業をするのか」
・「学生にとって、そ
れを学ぶ意義は何か」といった授業の存在意義も併せて表現するように心掛けて下さい。学ぶ理由が明確に
なることで、学生の科目選択の効果や動機づけを高めます。授業にかける先生自身の思いを語って下さい。
(2)具体的な到達目標
「具体的な到達目標」には、「何をどこまで学習するのか」を記載します。
すなわち、単位を認定するため、学生がクリアしなくてはならない能力の
水準です。到達目標を考える際の基本原則は次の3つです。
① 具体的であること
② 現実的であること
③ 測定可能であること
具体的で現実的な目標を示すと、学生は「授業後の自分」を想像しやすくなります。これは履修を判断す
るための材料になるだけでなく、教員として期待する成長像を伝えることでもあります。また、測定可能な
目標の明示は、学生に透明性のある厳格な成績評価をしようとする意思として伝わります。
なお、成績評価を厳格に行うには、教員が受講生の状態を測定できなければなりません。そのため、
「○○
の仕組みについて理解する」のような学生本人しか判定できない表現ではなく、
「○○の仕組みを他者に説明
できる」のように、学生の行動に着目し、教員が観察できる表現として示します。
「具体的な到達目標」で推奨される書き方は、学生を隠れた主語とし、条件や範囲を示しながら「○○で
きる」とまとめた一文です([例]授業で取り上げる5つの行政計画の事例について、その目的と内容を時
代背景と関連づけながら説明できる)。知識・技能・態度などの観点や対象とする能力が複数ある場合、2~
5個の文で列挙します。後記する(6)「成績評価の方法及び評価割合」との整合性も考慮して下さい。
(3)授業内容
授業内容には、各回の内容やテーマなどを書きます。原則として全ての授業回
について記載します。同じテーマが続く場合は、副題やキーワードを記載して可能な限り具体的に示して
下さい(下表の第 13 回目と 14 回目)。
(1) ガイダンス(授業のねらい・到達目標・評価方法・概要の説明、受講動機の記入)
[中略]
(13) e ラーニングによる学習支援(1): 遠隔授業とオンデマンド型授業
(14) e ラーニングによる学習支援(2): 自己学習の設計と e メンタリング
(15) 授業全体のまとめ
※通常は 15 回分の授業内容を記載します。 期末テストは 15 回分の中に含めず、別の日に設けます。
以前、「その時期の社会情勢を題材にするので、シラバスに詳しく書けない」との意見がありました。堅
くシラバスどおりに進行しなければならないのではなく、できるだけ具体的な予定を記述することで、ミス
マッチの防止や授業を見渡す鳥瞰図の作成につなげる配慮と捉えて下さい。
【重要】次年度のシラバスの「授業内容」の最後に、新しく「 【学生がより深く学ぶための工夫】 」と
いう項目を追加することが決定しています。シラバス入力システムは従来どおりであるため、各
先生が手入力で見出しと内容を打ち込む必要があります。詳しくは別紙をご覧下さい。
(4)時間外学習
宿題・予習・復習などについて記す項目です。講義時間外での活動を求める場合、
内容や量・想定時間数などが記述されていると、想像をより助けるでしょう。
(5)教科書・参考書
「購入したけど使わない」との苦情がありました。購入を必須としない場合は
参考書にしましょう。教科書に指定すると、1 冊は図書館に配架されます。
単位認定の判断材料となる課題や活動とその割合を明記し
(6)成績評価の方法及び評価割
ます。前記の(2)「具体的な到達目標」との整合性に留意して
下さい。到達目標に関係する能力を(もれなく)対象にして
いるでしょうか。また、その能力を適切に評価できる手法を採用しているでしょうか。
筆記テスト、レポート提出、各回の小テスト・感想文、プレゼンテーション、実演、受講者間の相互評価、
クラスへの貢献など、評価対象と方法の明示は学生に「学ぶべき方向性を示している」と言えます。
注意事項には、授業に関する留意などを記載します。次の「備考」との明瞭な区別
(7)注意事項
はありませんが、「注意事項」を受講者が授業で守るべきルール、「備考」を科目選択
のための補足情報、と使い分ける先生が多いようです。
受講生へのメッセージです。自由に書いて構いません。科目選択への配慮から、「望む
(8)備考
履修生像」に関する記載を推奨しています。その場合、誰もが認める理想的な学生像を指
定するのではなく、受講に関連する要件にとどめます。正当性を示すため、理由とセット
で記述しましょう。適性者像を明らかにすることは、学生の誤解を解き、ミスマッチの解消につながります。
設備による人数制限のほか、受講履歴、獲得した知識やスキル、熱意、関心がよく取り上げられています。
[推薦書] 佐藤浩章 編(2010)
「大学教員のための授業方法とデザイン」
(玉川出版)はシラバス以外にも大変参考になります。