HAY ホワイトペーパーエクスプレス 1 激変するビジネス情勢に対応して、その時々の課題につい てヘイグループからさまざまな視点を提供いたします 不況下で問われる顧客ロイヤリティ ヘイグループ 高野研一 あるブログで、一眼デジカメを持ってジョギングすることを薦めて いる人がいる。ジョギングをしない私にはどうでもいいことなのだが、 一眼デジカメを選定する際の様々な着眼点が書かれていて面白い。こ んな感じだ。 まず、コンデジなら 200g 台の高解像機 SIGMA DP-1 などを選択するとこですが、どうしてもペンタックスレンズを使いた いので、軽量の*ist DS2 505g を中古(約 2 万円)で手に入れました。 ペンタプリズム付です。 電池はやや重いけどエネループ。 レンズは、自転車の場合、重量級ズームレンズなんでもありですが、 ジョグ・ランでは、超軽量薄々90g のパンケーキレンズ DA 40mm F2.8 Limited の格安中古を使うことにしました。 これでカメラ総重量は、734g です。 ジョグ・ランでは、自転車と違い振動が多いので、 万が一のことを考え中古の組み合わせとしました。 一眼デジカメの振動耐久試験の様相を呈します。 このブログを読んでいると、消費者は「自分」をモノサシにして商 品を評価することを楽しんでいることが分かる。それは、筆者がブロ グの横に「なんでもご講評、ご意見、ご指導お願いします!」と書い ていることからも感じられる。 今みたいに不況感が漂ってくると、消費者は「自分」にマッチした ものだけを買うようになる。一様に倹約するのではない。「自分」に 合ったものには高くてもお金を払い、合わないものは買わなくなる。 このブログの筆者は、どんなに不況になってもペンタックスのレンズ は買うだろう。中古だが。 これを企業の側から見ると、ロイヤリティの高い顧客層を特定し、 囲い込めている企業だけが利益を維持でき、明確なロイヤル層を持た ない企業から、顧客を失うということになる。ところが、このロイヤ ル顧客を特定できている企業は極めて少ない。「貴社にロイヤリティ を感じる顧客は、競合他社にロイヤリティを感じる顧客と比べて、ど のようにプロファイルが違うのか」という質問をしても、即回答が帰 ってくるケースは稀である。 また、ターゲットとする客層が特定できたとしても、実際にロイヤ リティを植えつけるためには、それにマッチした社員の行動パターン、 企業文化をつくりあげなければならない。ロイヤル顧客にとっての 「自分」というモノサシを深く理解し、それに適った商品・サービス をつくり出せる人の一団を構成できなければならないのだ。 それができた企業だけが、ロイヤル顧客を城壁の中に囲い込むこと ができる。ブログに書かれない、特徴の無い企業は、他社がつくった 城壁の外で、残された顧客を追い求めて競争することになる。折から の不況で、城壁の外は荒野と化し、価格競争の風が吹き荒れる。 不況下で起こるのは、こうした企業間の淘汰である。ロイヤリティ の高い顧客を囲い込んでいる企業にとっては、低価格志向の消費者だ けが離れていくため、不況下でも採算性はある程度維持できる。こう した場面では、売上増を狙った安易なキャンペーンは打たない方がい い。なぜなら、ロイヤル顧客を持たない企業が、低価格志向の顧客を 奪い合ってキャンペーンを打つからだ。そうした効果の薄いところで お金を使うより、いかに城壁を強固にするかを考えた方がよい。 城壁を強固にするとは、ロイヤル顧客にとっての「自分」というモ ノサシを理解できる人材の育成である。まさに人は石垣、人は城であ る。「どうしてもペンタックスレンズを使いたいので」とブログに書 かせることができるような人材づくりにこそ、投資をすべきなのであ る。 (2008 年 12 月 4 日記)
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