n次元位相空間の集合と位相 • 基礎的な話を纏める – 基礎は易しいという意味では無い – 高校数学と一番違っている – 理系の人と同じスタートライン – ルディン「現代解析学」では最初の100ページ 集合と論理 • 集合 – 数学的に分析対象になるように定義されたものの 集まり – 実数、[0,1]で定義された連続実関数 – みかんやりんごではない – 基礎論では、ややこしい定義がある。 – 普通は何らかの構造を与えられた集合である空 間とその要素や部分集合から話が始まる 集合、要素、部分集合 W:全体の集合 W:その要素 A :部分集合 各Wは、 A(Aに属する)かA(Aに属さな い)かどちらか AC : Aの補集合・・Aに属しない要素をすべて含む 集合 WC):空集合・・・一つも要素がない集合 集合の包含 AB :AがBに含まれる Aの要素はすべてBの要素 A=B (ABかつBA) AB BCAC AWがすべてのAについて成立する 必要条件と十分条件 • 基礎論に遡らなければ以下は同じ – 「ある条件が成立すれば別の条件が成立する」 – 「別の条件が成立するのは、ある条件が成立する ときだけである」 – {ある条件が成立する集合}{別の条件が成立す る集合} – ある条件は、別の条件の十分条件 – 別の条件は、ある条件の必要条件 – ある条件別の条件 – 別の条件が成立しないある条件が成立しない (対偶) 必要十分条件 • • • • (ある条件⇒別の条件)かつ(別の条件⇒ある条件) ある条件⇔別の条件 ある条件は別の条件の必要十分条件 ある条件と別の条件は同値(equivalent) 和集合と共通部分 A B Aと Bのど ちら かに属する 要素から なる 集合 A B A B) C Aと Bの両方に属する 集合 A B , A B) A B C C C C ド・モルガンの法則 ・・図を描くとすぐわかる C 和集合と共通部分(沢山のとき) A1 , A2 ,...のど れか属する 要素から なる 集合 A i i 1 i 1 Ai n A i 1 i A , A1 , A2 ,...のすべてに属する 集合 有限のと き n A i 1 i A 集合に順番がつく ( 加算) と 限ら ないと き 一般のド・モルガン法則 A ) C C A ) A C ) A • 右に入っている要素が左に入っていて、左 に入っている要素が右に入っていることを じっくり言葉で説明できる • メカニカルな変形 x C , x A C A , x A , x A , x A )) x ) A x A x ) A ) C ) C 加算集合と非加算集合 • 有限集合(finite set) – 有限個の集合 • 加算集合(countable set) – すべての要素が順番に並べられる – 自然数と一対一対応ができる • 非加算集合 – すべての要素が順番に並べられない 有理数の加算性 • 正の有理数は以下のように並べ、通分して同 じものは飛ばせば、どの有理数も必ずやがて は出てくる 1 2 3 4 1 (1) (2) (6) (7) 2 (3) (5) (8) 3 (4) (9) 4 (10) 分母 分子 実数の非加算性 • 加算なら(0,1)の実数を順に並べられるとする。 • これを10進法で表す(0.1は0.099....の書き方 にする) • 1番目の桁が一番目の数と違い、2番目の桁 が二番目の数と違う・・・というふうに作った数 は、実数だがリストに載っていない • 選好と効用関数 二財の組み合わせで、どちらがいいかは無差別曲線で表される 行儀のいい選好は実数値を取る効用関数であらわすことができる 例・・対応する無差別曲線の原点との最 少距離 ビール 距離の自乗や対数も同じ選好に対応す る効用関数 𝑥, 𝑦 𝑢 𝑥, 𝑦 辞書的選好 𝑥, 𝑦 ≻ 𝑥′, 𝑦′ ⇔ 𝑥 > 𝑥′ or 𝑥 = 𝑥′&𝑦 > 𝑦′ 一番目が単語の一番目のアルファベットに対応するので辞書的 効用関数であらわされるとすると 𝑢 𝑥, 1 , 𝑢 𝑥, 2 から、一つ有理数がとれる。 加算な有理数と非加算な無理数の間の一対一対応はできない 辞書的選好に対応する効用関数は存在しない 関数 Aから Bへの関数f x ) Aの要素xが一つ決ま る と Bの要素f x ) が一つ決ま る 関数 関数でな い Aから Bへの関数f x ) A : 定義域( domai n) B : 値域(range) y y B, x, y f x ) 関数の例 数列 a1 , a2 ,.... 定義域 値域 自然数 実数 二項関係(例えば a b ) 順 序 の つ い た ペ ア (ordered {成り立つ、成り立 pair) たない} 1 定積分 実関数 実数 f x )dx 0 f C ) y y B, x C , y f x ) Cの像: C Aの行き 先 f 1 D ) x x A, y D, y f x ) Dの逆像: D Bの戻り 先 逆像のほう がよ く 使われる f 1 f f 1 1 D ) f 1 D ) 1 D ) C f 1 f D) C ) ) D D f : A Bの関数 上への写像(on to,surjection(全射)) f A) B 一対一(one to one,injection(単射)) f -1 y)の要素がたかだかひと つ x x ' f x ) f x ') 一対一(bijection(双射)) one to oneでonto 加算集合は自然数と のbijectionがあ る n次元実ベクトル Rnの点 n個の実数を並べたもの・・ いろんな物の値段、いろんな人の所得 x1 x x n ちゃんとした書き方 x x1 ,..., xn ) 大雑把な書き方 Rnの定義と集合の記号の話を集める Rnの収束 x x ,..., x 1 1 1 1 n ), x x 2 2 1 ,..., x 2 n ) ,....が x x1 ,..., xn )に収束 べきではない x 1 x1 ,..., x i xi ,..x k k k n xnが 各i 1, 2..., nについて成立 Rnの距離 x y x y ) 2 1 1 xn yn ) 2 ) x x1 ,..., xn )と y y1,..., yn )の距離 2次元と3次元ではピタゴラス定理で出る 距離の公理 ある空間のペアの実数値関数で以下の公理を満たす x, y ) 0 x, y ) y, x ) x, y ) 0 x y x, y ) y, z ) x, z ) 三角不等式 距離のあるのが距離空間(metric space) max x1 y1 , , xn yn )は別の距離 距離空間の収束 xn x xn , x ) 0 • Rnでは、要素ごとの収束と同じ max x1 y1 , , xn yn )はR nの別の距離 • 収束などは同じ・・同じ位相(topology)を与 える 線形空間 Xが(実)線形空間 x, y X , , R x y X (実)線形空間のノルム x 0, x 0 x 0, x x , x y x y 例 Rnの原点からの距離 線形空間(続き) (実)線形空間の内積 x, x ) 0, x, x ) 0 x 0, x, y ) y , x ) , x y, z ) x, z ) y, z ) : , R 例 Rnの内積 x, y ) i1 xi yi n 内積・ノルム・距離の関係 x, y )が内積 x x, x )がノ ルム x, y ) x y が距離 max x1 y1 , , xn yn )は内積から 導けない コ ーシー・ シュ ワ ルツ の不等式 x, x ) y, y ) x, y ) 0 x y, x y ) 2 x, x ) 2 x, y ) y , y ) 2 判別式が負 4 x, y ) 4 x, x ) y, y ) 0 2 x, x ) y, y ) x, y ) 2 x, x ) y, y ) 2 x, x ) y, y ) x y, x y ) x, x ) y, y ) 2 x, y ) x, x ) y , y ) x y , x y ) x y x y コーシー列と完備性 • 距離空間で先のほうでお互いにくっついていくの がコーシー列 0, N : n, m N x , x ) ) n m • コーシー列が収束するのが完備空間 内点、集積点と開集合、閉集合(1) • 開球 (近傍): xから距離が以下の点の集合 B x, ) y y x , x R , 0 n • Aが開集合・・ Aの各点がAに完全に入ってい る近傍を持つ x A B x, ) , B x, ) A • 直感的にはつぶれないで端を含まない 内点、集積点と開集合、閉集合(2) • Aの集積点・・ Aの点列の極限 – 同じ点を繰り返す数列は、OKなのでAの点は、す べてAの集積点 – Aの集積点は、 Aに属するとは限らない – Aの集積点の集合がAの閉包 A A A • Aがその集積点をすべて含むとき、閉集合 A A 内点、集積点と開集合、閉集合(3) • 開集合の補集合は、閉集合で閉集合の補集 合は開集合 • 例・・すべての有理数の集合の閉包は、すべ ての実数の集合 – すべての有理数の集合自体は、閉集合でも開集 合でもない 有界集合 • Aを含む開球があるときAは有界 • 開球でなくても無限に広がっていなければい い • 有界(bounded)と有限(finite)は違う コンパクト集合 • Rnでは有界な閉集合(ハイネ・ボレルの被覆定理) • 一般的な定義は、ハイネ・ボレルの被覆定理式 A A , A : 開集合 A1 ,..., An , A n A i 1 i 距離空間の連続関数 xn x f xn ) f x ) • 以下では連続でない行儀の悪い関数はほと んど出ない 関数の逆像(1) f 1 A ) x : x R n , f x ) A • つまり行き先がAに入る点の集合 • 逆写像は単調性を仮定し点なのに対し、 逆像は集合 例 f x ) x f 2 1 4) 2, 2 関数の逆像(2) • 逆像は、都合のいい性質をすべて持つ f f f 1 1 1 ) A ) A A ) f A) C 1 f f 1 A ), 1 A ), C • 連続関数の開(閉)集合の逆像は開(閉)集合 – 連続関数のより一般的な定義 関数の像 f A) y : x A, y f x ) • つまり集合の行き先 f A B ) f A) f B )は等号では成立し ない f(A) f(B) A B f A B) f(A) A B f(B) コンパクト集合の性質 • コンパクト集合上で連続関数は最大値と最小 値を取る – 最大化の解が存在することをちゃんというには、 必要 – コンパクト集合の連続関数による像はコンパクト – n次元実空間ではコンパクト集合と有界閉集合が 一致するので上の命題が出る 凸集合 A R が凸集合 n x A, y A, 0,1) x 1 ) y A 凸集合 凸集合で な い 分離定理 二つの交わら ない凸集合の間に分離超平面があ る いく つかのバージョ ンがある p1 ,..., pn , C ) R n 1 , Both A and B are convex, A B x1 ,..., xn ) A p1 x1 ..., pn xn C x ,..., x B p x ..., p x C n) 1 1 n n 1 分離定理の経済学への応用例 • 厚生経済学の第2基本定理の証明 • パレート効率的な資源配分は一括的な所得 再分配をすれば、完全競争市場均衡になる • 分離超平面が価格ベクトル ブラウアーの不動点定理 f : A Aの関数 f の不動点 : f x ) xと なる 点 R で Aが有界閉凸集合で f が連続なと き n 不動点が存在する : ブラ ウ アーの不動点定理 対応(Correspondence) • 部分集合への関数 対応の上半連続 yk f xk ) , xk x, yk y y f x ) x, y ) x A, y f x )が閉 角谷の不動点定理 R の有界閉凸集合から その中の凸集合への n 対応が上半連続で凸値なら 不動点が存在する 対応の不動点はx f x ) グリコ・チョコレート・パイナップル ゲーム • グーで勝てば3歩進む • チョキで勝てば6歩進む • パーで勝てば6歩進む • いつも同じ手では読まれて負けるのでランダ ムに混ぜる必要がある • どのようにランダムに混ぜるか • どんな混合戦略をとるか Aの戦略 Bの戦略 pG , pC , pP qG , qC , qP Aの期待利得 3 pG qC 6 pC qP 6 pP qG Aの反応対応 qG , qC , qP に対してAの期待利得 3 pG qC 6 pC qP 6 pP qG を最大にする pG , pC , pP の集合 RA 1, 0, 0 ) ) 0, 0,1) 1 1 1 qG , qC , qP ) , , 4 2 4 3 3 3 3 3 pG qC 6 pC qP 6 pP qG pG pC pP 2 2 2 2 1 1 1 RA , , S 4 2 4 S x, y, z ) x 0, y 0, z 0, x y z 1 Nash均衡 pG , pC , pP ) RA qG , qC , qP )) qG , qC , qP ) RB pG , pC , pP )) お互いに手を変えないほうがいい このゲームのNash均衡 1 1 1 1 1 1 4 , 2 , 4 , 4 , 2 , 4 普通のじゃんけんのNash均衡 1 1 1 1 1 1 3 , 3 , 3 , 3 , 3 , 3 一般の非協力ゲーム Aの混合戦略 p p1 ,..., pm ) Bの混合戦略 q q1 ,..., qn ) m Aの期待利得 n p q u i 1 j 1 m n Bの期待利得 i j ij p q v i 1 j 1 i j ij Aの最適反応対応 RA q ) Bの最適反応対応 RB p ) Nash均衡の存在 p RA q ) , q RB p ) Nash均衡 RA q ) , RB p ) は上半連続 f x, y ) が連続 y ) arg max x f x, y )は上半連続 p, q ) RA q ) , RB p ) ) は上半連続 定義域が凸有界閉なので角谷不動点定 理が適用でき、 p, q ) RA q ) , RB p ) ) となる点がある 角谷定理の他の応用 • 一般均衡競争モデルの均衡価格の存在
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