14.4.31現代物理化学

14.4.3
現代物理化学-シラバス(1)
<概要>
現代の化学においては,エネルギーや生体関連などの問題に対
し,その改良・解決に向けて多大な努力が払われている。それらの
問題に立ち向かい,解決の道を探る基礎となる学問の一つが物理
化学である。本科目では,学部で学習した内容を講義と演習を通し
て,より深く理解することを目標とし,また,特に近年重要性が高
まっている界面の熱力学についても学習する。
(レジメ(pdfファイル)など,持参のこと)
<到達目標>
(1)熱力学の基礎が理解できるようになる。
(2)界面の物理化学の基礎が理解できるようになる。
(3)量子化学の基礎が理解できるようになる。
現代物理化学-シラバス(2)
<授業計画>
第1回 熱力学第一 <上野>
第2回 熱力学第二,第三法則
第3回 相平衡の一般論
第4回 部分モル量(化学ポテンシャルと活量係数)
第5回 化学平衡
第6回 物質の界面と機能性(1) 界面と酸塩基性 <大門>
第7回 物質の界面と機能性(2) 界面とサイズ効果
第8回 界面の物理化学 (1) 固/液界面
第9回 界面の物理化学 (2) 固/気界面
第10回 界面を利用した機能性材料
第11回 シュレーディンガー方程式と波動関数,演算子<木村>
第12回 トンネル効果と調和振動子
第13回 水素原子の波動関数
第14回 多電子原子の波動関数
第15回 二原子分子の波動関数
1
14.4.3
現代物理化学-シラバス(3) (上野)
<成績評価>
平常点 30%
: 各講義での問題形式のまとめの提出
問題演習 20%
: 適宜行う演習問題の解答
中間レポート 50% : 講義内容に即したレポートの提出
<テキスト・参考書>
○近藤・上野・芝田・計良・谷口共著,『物理化学』(朝倉書店)
○物理化学研究室, 『授業のポイント・物理化学Ⅰ・Ⅱ』
○レジメ (pdf ファイル)
pdf ファイル:<http://www1.doshisha.ac.jp/~bukka/lecture/index.html>
http://www.doshisha.ac.jp/ →在学生→学修支援システムDuet→現代物理化学 現代物理化学 -1-1-1
2章 熱力学第一法則
2-1 熱力学第一法則
(1)熱力学−熱と仕事の等価性
(2)系(考察の対象,多数の分子を含む)と外界
・系の種類
解放系:外界と境界を通して,熱・仕事・物質のやり取りを行う。
閉鎖系:外界と境界を通して,熱・仕事のやり取りを行う。
孤立系:外界とは何のやり取りもしない。
・外界:熱と仕事の巨大な溜めを形成しており,系が引き起こす小さな変化には
応答しない。 −(系のエネルギー変化に注目する)
外界
系
熱・仕事・物質
のやり取り
(系:考察の対象,多数の分子を含む)
(外界:熱と仕事の巨大な溜め)
図 2-a. 系と外界
2
14.4.3
1-1-2
(3)系全体のエネルギー E と系の内部エネルギー U
[閉鎖系を考える]
・系全体のエネルギー (=系の運動エネルギー+系の位置エネルギー+系の内部エネルギー)
E = K E + PE + U
・重力場にある静止系のエネルギー変化(ΔE)
静止系:KE = 0,重力場:PE 一定,したがって
(系のエネルギー変化)= (系の内部エネルギー変化)
Δ E = ΔU
・系の内部エネルギー(U)
U = 分子1個の平均エネルギー(ε) 分子数(N)
分子のエネルギー
(a) 分子の内部エネルギー:分子中の原子核および電子エネルギー
(b) 分子の運動エネルギー:分子の並進・回転・振動運動エネルギー
<注>振動エネルギーは位置エネルギーも含む
(c) 分子の位置エネルギー:分子間相互作用に基づくエネルギー
<注>位置エネルギー=ポテンシャルエネルギー
1-1-3
・系の内部エネルギー変化(ΔU)
分子のエネルギーの内で,変化するものとしないもの
(a) 分子の内部エネルギー:分子の原子核および電子エネルギー。
原子核エネルギー:核反応は取り扱わないので,変化しない。
電子エネルギー:結合エネルギーに関するものが変化する。
化学反応によって分子構造が変化する。それに伴って,
反応熱が発生する。
(b) 分子の運動エネルギー:分子の並進・回転・振動運動エネルギー
系の温度変化に伴って変化する。
(c) 分子の位置エネルギー:分子間相互作用に基づくエネルギー
系の体積(圧力)変化や温度変化に伴って変化する。
<注>相変化は温度変化を伴わないが,分子間の相互作用エネル
ギーが各相で異なる(ex. 液体と気体)
(4)熱力学第一法則:エネルギー保存の法則
ΔU = Q + W , dU = d 'Q + d 'W
(有限の変化と,無限小の変化)
・ Q, d’Q :系が外界から吸収した熱量 (- Q, -d’Q )
・ W, d’W :系が外界からされた仕事量 (- W, -d’W )
・系はΔUのエネルギーを得るが,外界はΔUのエネルギーを失う。
3
14.4.3
1-1-4
2-2 仕事(力学的仕事,PV work)
(1)力学的仕事
d 'W = −PedV
(−d 'W = PedV )
dx
P
(gas)
Pe
A
図 2-b. 気体の膨張 (P > Pe) に伴う仕事: –d’W
−d 'W = Fedx = (APe )dx = Pe (Adx) = PedV
・力学的仕事に関係する圧力は常に外圧(Pe)
・ dV = Adx は系の微小体積変化
・ 圧力 体積[PV(PdV)]の単位はエネルギー
1-1-5
(2)具体的な仕事の計算例(気体の膨張)−系がした仕事
気体の定温膨張[系:状態1(P1,V1, T)→状態2(P2,V2, T)]
・真空への拡散(P > Pe = 0)
−W = − ∫ d 'W =
V2
∫V
1
PedV = 0
・一定の外圧に抗して膨張(P > Pe = 一定)
−W = − ∫ d 'W =
= Pe ∫
V2
V1
V2
∫V
1
PedV
dV = Pe (V2 − V1 ) = Pe ΔV
・準静的変化での膨張(可逆変化)
Pe
[ P ≅ を保ちながら変化]
−Wr = − ∫ d 'Wr =
V2
∫V
1
PedV =
V2
∫V
PdV
1
(r : reversible, 可逆変化)
4
14.4.3
1-1-6
・準静的変化での膨張(可逆変化)−理想気体の系
V2
V2
V2 nRT
−Wr = − ∫ d 'Wr = ∫ PedV = ∫ PdV = ∫
dV
V1
V1
V1 V
(P = nRT / V )
さらに,定温変化(T:一定)なら
−Wr = − ∫ d 'Wr =
V2
∫V
1
PedV =
V2
∫V
PdV =
1
V2
∫V
1
nRT
V
dV = nRT ln 2
V
V1
●系がした仕事は(Pe
~ V)図での囲まれた
面積に等しい。
●系の最初と最後の状態が同じでも,系がし
た仕事量は変化の仕方(経路)によって異な
る(経路関数,状態量ではない)。
1-1-7
<van der Waals気体の定温可逆変化に伴う仕事>
2
2

nRT
 n  
 n
− a 
 P + a    (V − nb ) = nRT → P =
V
V 
V − nb

−Wr =
V2
∫V
1
PedV =
= nRT ln
V2
∫V
PdV =
1
V2
∫V
1
 nRT / (V − nb) − a(n / V )2  dV


 1
V2 − nb
1
+ an 2  − 
V1 − nb
 V2 V1 
<いろいろな仕事>
仕事の型�
示強性変数�
示量性変数�
外圧�Pe [N
表面積変化�
表面張力 γ [N
長さの変化�
張力�f [N]
長さの変化�dl [m]
電気的仕事�
電位差� Δφ [V]
電気量変化�dQ [C]
Δφ dQ
磁気的仕事�
磁場�H [A m-1]
磁気モーメントの変化
��dM [Wb m]
HdM
m-1]
体積変化��dV
d’W
体積変化�
m-2]
[m3]
表面積変化�dA
[m2]
- PedV
γ dA
fdl 5
14.4.3
現代物理化学 -1-2-1
2-3 熱
熱の作用:①系の温度変化 ②系の状態変化(相変化) ③化学反応(反応熱)
<ここでは ① について考える>
(1)定積変化(系の体積 V 一定のもとで変化,dV = 0)
−W = − ∫ d 'W =
V2
∫V
1
PedV = 0 (−d 'W = 0)
ΔU = Q + W
∴QV = ΔU = U 2 − U1
(dU = d 'Q + d 'W )
(∴ d 'QV = dU )
(2)定圧変化(外圧 Pe 一定のもとで変化,系の変化の前後において Pe = P)
−W = − ∫ d 'W =
V2
∫V
1
PedV = Pe ∫
V2
V1
dV = Pe (V2 − V1 ) = P(V2 − V1 )
∴QP = ΔU − W = (U 2 − U1 ) + P(V2 − V1 ) = (U 2 + PV2 ) − (U1 + PV1 )
= (U 2 + P2V2 ) − (U1 + P1V1 )
< P = P2 = P1 >
(H:エンタルピー,状態量)
H = U + PV
∴QP = H 2 − H1 = Δ H
QP = Δ H = ΔU + P ΔV
(d 'QP = dH )
1-2-2
[CV = (∂U / ∂T )V , CP = (∂H / ∂T )P ]
(3)定積熱容量・定圧熱容量
1 d 'QV 1  ∂U 
 ∂U m 
・定積モル熱容量 CV ,m = n dT = n  ∂T  =  ∂T 
V
V
・定圧モル熱容量 CP,m =
<参考>
1 d 'QP 1  ∂H 
 ∂H m 
= 
 =

n dT
n  ∂T  P  ∂T  P

 ∂U    ∂V 
CP − CV =  P + 
 ∂V  T   ∂T  P

(内部圧と熱膨張)
(4)単原子分子理想気体の CV,m と CP,m との関係
・系の内部エネルギー U とエンタルピー H (1 molあたり, Um, Hm )
U m = (3 / 2)RT , H m = U m + PVm = (3 / 2)RT + RT = (5 / 2)RT
・それぞれのモル熱容量とその比
dU m 3
dH m 5
 ∂U 
 ∂H m 
CV ,m =  m  =
= R, CP,m = 
=
= R
 ∂T  V
 ∂T  P
dT
2
dT
2
∴CP,m − CV ,m = R,
γ =
CP,m
CV ,m
= 1.67
1
14.4.3
1-2-3
(単原子分子)
(二原子分子)
(多原子分子)
・剛体二原子分子,剛体多原子分子理想気体の CV,m と CP,m は
並進運動エネルギーと回転運動エネルギーからの寄与
1-2-4
2-4 内部エネルギーと状態量
(1)状態量の意味(1価連続関数)
熱平衡状態において一義的に決まった値をもつ物理量(状態量,状態関数)
(2)状態量(状態関数)と経路関数
・内部エネルギーは状態量
その変化量は経路に依存しない。1サイクル後,その変化量は 0 である。
・仕事と熱は経路関数
その(変化)量は経路に依存する。
内部エネルギーが状態量でないなら
ば,1サイクルすることによって,系の状
態に変化無く,エネルギーだけが新たに
産み出されることになる。
→熱力学第一法則に反する。
Q2 + W2 − Q1 + W1
= U B (2) − U B (1) = ΔU B > 0
2
14.4.3
1-2-5
<2章 練習問題:2.3> <宿題>
熱Q が状態量でないことを,教科書2.2.b項(気体の定温膨張)の例
を用いて示せ。ただし,気体は理想気体とする。
理想気体の定温膨張[系:状態1(P1,V1,T)→状態2(P2,V2,T)]
(1) 理想気体の定温膨張に伴う内部エネギー変化:
ΔU = 0
(2) それぞれの経路で,系がした仕事と系が吸収した熱
(a) 真空中への拡散
V2
−Wir = − ∫ d 'Wir =
∫V
1
PedV = 0
∴Qir = ΔU − Wir = 0
(b) 準静的変化
−Wr = − ∫ d 'Wr =
V2
∫V
1
PedV =
V2
∫V
PdV
1
nRT
V
dV = nRT ln 2 (> 0)
V
V1
V
∴Qr = ΔU − Wr = nRT ln 2 (> 0)
V1
=
V2
∫V
1
1-2-6
(3) 状態量・経路関数の全微分(微小変化量)と,変化量の表現
・状態量 [その全微分は完全微分]
dU, ΔU = U 2 − U1 =
state,2
∫state,1 dU ,
ΔU = ∫ dU = 0
(全微分の具体的表現や,状態量の必要十分条件は次回)
・経路関数 [その微小変化量は不完全微分]
d 'W , W =
d 'Q, Q =
∫process d 'W ,
∫process d 'Q,
W =
∫ d 'W ≠ 0
Q=
∫ d 'Q ≠ 0
(4) 示量性状態量と示強性状態量
・示量性状態量(物質量nが2倍になると,その物理量の値も2倍になる)
V, U, H, S, A, G, CV, CP など
(注意:1 molあたりの量や,微分量は示強性状態量になる)
・示強性状態量(物質量nが2倍になっても,その物理量の値は変化しない)
T, P, d(密度), 濃度・組成[ci(容量モル濃度), mi(質量モル濃度), Yi
xi(モル分率)など],部分モル量( →物理化学II)
など
3
現代物理化学 -1-3-1
2-5 ジュールの法則と理想気体
(1)状態量(1価連続関数)の偏微分係数と全微分
・2変数関数z に対する偏微分係数の定義式
z = z(x, y)の点(x, y)における,xおよびyに関する偏微分係数
z(x + Δ x, y) − z(x, y)
 ∂z 
 Δz 
= lim  
  = z x (x, y) = lim
∂x y
Δx
Δ x→0
Δ x→0  Δ x  y
 ∂z 
 Δz 
z(x, y + Δ y) − z(x, y)
= lim  
 ∂y  = z y (x, y) = Δlim
Δy
y→0
Δ y→0  Δ y  x
x
1-3-2
・ 2変数関数z の全微分(dz)の表現
(a) z = z(x, y)において,点(x, y)に対して,Δx, Δyに関係しない定数A, Bが
存在し,次式が成立するなら,関数z は点(x, y)において全微分可能で
あるという。
Δ z = z(x + Δ x, y + Δ y) − z(x, y) = AΔ x + BΔ y + ε ( Δ x, Δ y)
ε ( Δ x, Δ y)
lim
=0
( Δ x, Δ y)→(0,0) Δ x 2 + Δ y 2
(b)定数Aについて:ここで,Δy = 0 のとき [定数B(Δx = 0)のときも同様]
z(x + Δ x, y) − z(x, y) = AΔ x + ε '( Δ x)
∴
lim
Δ x→0
z(x + Δ x, y) − z(x, y)
ε '( Δ x)
 ∂z 
= A + lim
=A= 
 ∂x  y
Δx
Δ x→0 Δ x
(c) 関数z の全微分(dz):高次項 ε (Δx, Δy)が無視できる極限[(Δx, Δy) →(0, 0)]
<注>高次項ε (Δx, Δy )とは,(Δx)2, (Δy)2 など次数の高い項を含むこと
 ∂z 
 ∂z 
dz = z(x + dx, y + dy) − z(x, y) = Adx + Bdy =   dx +   dy
 ∂x  y
 ∂y 
x
全微分(dz)が関数z の偏微分係数で表されるとき,dz を完全微分という。
1
1-3-3
・ 全微分(dz)に関連した式
(a) z = z(x, y)において,(x, y)それぞれが (s, t)の関数であるならば,
zは(s, t)の関数である[z = z(s, t)]。
関数(z, x, y)それぞれの全微分
z = z(x, y), dz = (∂ z / ∂ x) y dx + (∂ z / ∂ y) x dy
x = x(s,t), dx = (∂ x / ∂ s)t ds + (∂ x / ∂ t)s dt
y = y(s,t), dy = (∂ y / ∂ s)t ds + (∂ y / ∂ t)s dt
dz を(ds, dt) について整理すると
 ∂ z   ∂ x   ∂ z   ∂ y  
 ∂ z   ∂ x 
 ∂z   ∂y 
dz =     +      ds +     +      dt










 


∂
x
∂
s
∂
y
∂
s
∂
x
∂
t


y
t
t 
y
s  ∂ y  x ∂ t s 
x
(b) zは(s, t)の関数[z = z(s, t)]であるので
dz = (∂ z / ∂ s)t ds + (∂ z / ∂ t)s dt
 ∂z 
 ∂z   ∂x   ∂z   ∂y
  =     +     ,
∂s t
∂x y ∂s t  ∂y x ∂s t
 ∂z   ∂y
 ∂z 
 ∂z   ∂x 
  =     +    
∂t s
∂ x y ∂t s  ∂ y  x ∂t s
[cf . dz = (∂ z / ∂ x) y dx + (∂ z / ∂ y) x dy]
1-3-4
・ 内部エネルギー U,およびエンタルピー Hの全微分
U = U(T ,V )
 ∂U 
 ∂U 
 ∂U 
∴ dU = 
dT + 
dV = CV dT + 
dV
 ∂T  V
 ∂V  T
 ∂V  T
H = H (T , P)
 ∂H 
 ∂H 
 ∂H 
∴ dH = 
dT + 
dP = CP dT + 
dP
 ∂T  P
 ∂P  T
 ∂P  T
理想気体のとき
右辺第2項は?�
(a) 定積変化でのUの全微分(一般的): dU = nCV ,m dT = d 'QV
(b) 定圧変化でのHの全微分(一般的): dH = nCP,m dT = d 'QP
<参考> Uの全微分の応用例
 ∂U 
 ∂U 
dU = 
dT + 
dV
 ∂T  V
 ∂V  T
 ∂U 
 ∂U 
 ∂U   ∂V 
∴
=
+
 ∂T  P  ∂T  V  ∂V  T  ∂T  P

 ∂U    ∂Vm 
CP,m − CV ,m =  P + 
 ∂V  T   ∂T  P

を導くときに用いる。(P.20)
2
1-3-5
(2)ジュールの法則と,理想気体のU, Hの変化量 <省略>
・ジュールの実験:気体の真空中への拡散
・系がした仕事: - W = 0
・温度変化なし: ΔT = 0 → Q = 0
・熱力学第一法則より
ΔU = Q + W = 0
すなわち,(理想)気体の定温で
の体積変化では,その気体の内
部エネルギーは変化しない。
・ジュールの法則
<分子間力が働いていない>
<ポテンシャルエネルギーは0である>
→ 理想気体
 ∂U 
 ∂U 

 = 0 → 
 =0
∂V  T
∂P  T
○理想気体の内部エネルギーUは,温度Tのみの関数
○温度変化により,分子の運動エネルギー(並進・回転)が変化
●ジュールの法則を用いて,[CP,m - CV,m = R]を導け。(Slide4の式)
1-3-6
・理想気体のU, Hの全微分と,それらの変化量
(a) 一般的なUの全微分(4頁の式)とジュールの法則より,
理想気体では常に(定積変化などの条件なしで→スライド4の式と比較)
dU = nCV ,m dT
∴ ΔU = U 2 − U1 =
U2
∫U
dU =
1
T2
∫T
1
nCV ,m dT = nCV ,m (T2 − T1 ) = nCV ,m ΔT
(b) ジュールの法則より
(∂U / ∂V )T = 0 → (∂U / ∂ P)T = (∂U / ∂V )T (∂V / ∂ P)T = 0
H = U + PV = U + nRT → (∂ H / ∂ P)T = (∂U / ∂ P)T + 0 = 0
[(∂ H / ∂V )T = (∂U / ∂V )T + 0 = 0]
したがって,一般的なHの全微分(スライド4の式)と上式より,
理想気体では常に(定圧変化などの条件なしで→スライド4の式と比較)
dH = nCP,m dT
∴ Δ H = H 2 − H1 =
H2
∫H
1
dH =
T2
∫T
1
nCP,m dT = nCP,m (T2 − T1 ) = nCP,m ΔT
3
1-3-7
<参考> 関数 z = z(x, y)が状態量であることの必要十分条件
関数 z = z(x, y) の全微分
 ∂z 
 ∂z 
dz =   dx +   dy = X(x, y)dx + Y (x, y)dy
 ∂x  y
 ∂y 
x
ここで,X, Y が連続な偏導関数をもてば,次式が成立する。次式が成立する
ことが,関数 z = z(x, y) が状態量であることの必要十分条件である。
 ∂X 
 ∂Y 
,

 =
∂x  y  ∂y  x
 ∂  ∂z  
 ∂  ∂z  
(i.e.)     =    


∂x
∂y
∂y  ∂x  y 

x  y 
x
上式が成立するなら,グリーンの公式より,系がどのような経路をたどって
も,1サイクル後の物理量(関数)z の変化量は0である。
Δ z = ∫ dz = ∫ (Xdx + Ydy) =
 ∂Y 
 ∂X  
∫∫σ  ∂x  y −  ∂y  x  dxdy = 0
1-3-8
<考察事項> <宿題>
体積は状態量であるが,仕事は状態量でない(経路関数である)ことを,
理想気体1 mol(PVm = RT)から成る系の可逆変化について調べる。
○系の体積[その全微分(dV)は完全微分]
V = V (T , P), ∴ dV = (∂V / ∂T )P dT + (∂V / ∂ P)T dP
∴ dVm =
R
 RT 
dT +  − 2  dP
 P 
P
 ∂(−RT / P 2 ) 
 ∂(R / P) 

 ∂P  = 
∂T
 P
T

<確かめよ>
○可逆変化で,系がされる仕事[その微小変化量(d’Wr)は不完全微分]
d 'Wr = −PdVm = −RdT +
RT
dP
P
 ∂(−R) 
 ∂(RT / P) 
 ∂P  ≠  ∂T

T
P
<上式のdVmより>
<確かめよ>
[ d’Wr も (Xdx + Ydy) の形をとるが,状態量ではない]
4
1-3-9
2-6 理想気体の断熱変化(断熱膨張) <省略>
2-7 反応熱 <省略>
(1)定積反応熱(QV)・定圧反応熱(QP)
・系の温度を一定に保つために,発熱・吸熱現象が生じる。
反応熱Qの値の正負:発熱反応(Q,負),吸熱反応(Q,正)
・反応熱Qと,ΔU, ΔHとの関係(重要)
定積反応熱: QV = ΔU,定圧反応熱: QP = ΔH
<反応熱が状態量変化に等しい:反応経路に依存しない>
このことが,熱化学と熱力学とを結ぶ中心的な役割を果たす。
(2)標準エンタルピー変化(標準反応熱,標準状態での反応熱)Δ H °
(3) Hessの総熱量不変の法則
(4)標準生成エンタルピー(標準生成熱,標準状態での生成熱)Δ f H °
(5)標準反応熱 の温度変化
ΔH °
(6)平均結合エネルギー
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