MS 研究技術委員会 児玉和子 パーソナルケア製品に含まれる防腐剤パラベンの体内摂取量と 尿への代謝量および代謝形態の分析方法に関する研究 中部大学大院 応用生物学研究科 ○児玉和子、鈴木茂 A study of urinary excretion of parabens : provisional method for determining parabens and their metabolites in urine, Kazuko KODAMA and Shigeru SUZUKI(Grad. School of BioSci. & BioTech. Chubu Univ.) 1.はじめに パーソナルケア製品等に使用されているパラベンは、 カラム:GL Science Inertsil ODS-3 「アレルギーなどの皮膚障害を起こす恐れのある物 注入量:10.0μL 質」とされており、人によってはアレルギーや皮膚 ○MS 条件 障害を起こす恐れがある。さらに、女性ホルモンの 機種:Waters micromass ZQ エストロゲンと似たような働きをするため、内分泌 イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法(ESI-Nega) 攪乱作用をもつのではないかとの疑いもあり、人体 のホルモンレベルの変動への影響が懸念されている。 分析条件(2) パラベンは、摂取後一部がグルクロン酸抱合体等と ○LC 条件 して主に尿中に代謝されることが知られている 1)が、 機種:SHIMADZU prominence シリーズ LC-20AD すべての代謝形態および量を把握する分析方法はな く、代謝形態の把握を含む分析法の開発は難しい。 カラム:GL Sciences Inertsil 演者らはパラベンの人体への曝露および代謝物を含 ガードカラム:GL Sciences ODS-3 む尿への排泄量を把握するため、表 1 の 5 種のパラ Cartridge Guard Column E ベンを対象に、LC/MS による分析方法を研究してい InertSustain C18 3μm る。 注入量:10.0μL そのはじめとして、尿中のパラベン抱合体の数種の ○MS 条件 機種:AB SCIEX 探索を行った。 表 1.対象物質の分子量と logPow API4000 イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法(ESI-Nega) Scan: Precursor Ion 対象物質 分子量 LogPow メチルパラベン 152.15 1.96 エチルパラベン 166.17 2.47 プロピルパラベン 180.2 3.04 0.00 95 5 0.2 ブチルパラベン 194.23 3.57 5.00 0 100 0.2 ベンジルパラベン 228.26 3.6 20.00 0 100 0.2 21.00 95 5 0.2 2.実験方法 表 2.グラジエント条件 時間(分) 水 ( % ) メタノール(%) 流量 (mL/min) ①分析方法 以下に LC/MS 条件を示す。 分析条件(1) ○LC 条件 機種:Waters Alliance2695 ②操作方法 抱合体を含むパラベン類の分析では、C18 固相カー トリッジを用いて試料の前処理を行い、以下の手順 で前処理した試料を測定に使用した。 MS 研究技術委員会 児玉和子 量値が上がった。 抱合体としてクラスター化された尿中のパラベンが 高い Cone 電圧によって解離し検出されたためであ ると推察される。一例としてインソース CID で解離 エチルパラベンの SIM クロマトグラム(図 2.)に示す。 エチルパラベンのピーク 図 2.尿中エチルパラベンの SIM クロマトグラム 次に LC/MS/MS による Precursor Ion Scan 測定 (低 分解能)を行い,尿中パラベンを探索した。その結 図 1. 抱合体を含むパラベン類の分析のフローチャート 果、メチル、エチル、プロピル、ブチルのプロダク はじめに分析条件(1)を使用し、インソース CID によ トイオンを生じる前駆が探索された。しかし、一概 るパラベン抱合体の探索可能性を調べた。抱合体を に質量が抱合体と一致するだけでは不十分である。 解離させるため Cone 電圧 (MS へのイオンの誘導電 現在構造解析を行うため、Triple-TOF での測定の 圧)を 20v から 10v 刻みで 60v まで変化させた。 解析を行っている。また、抱合体と Free 体のパラベ インソース CID で抱合体の探索可能性が示唆された ン両方を視野にいれた定量分析方法の開発にも取り ため、LC/MS/MS を用いて分析条件(2)により、5 種 組んでいる。 表 3. Cone 電圧と尿中パラベン濃度(ppb)の変化 のパラベンを生じる前駆物質を Precursor Ion Scan で測定、探索した。 3.結果と考察 Methyl 20v 30v 40v 50v 60v 1.2 2 2.9 54.4 0.6 インソース CID におるパラベン抱合体の探索可能性 Ethyl 0 0 0.5 28.1 149.4 について尿サンプルは標準を添加せずに用いた。表 Propyl 0.9 1.2 1.3 0.1 0.2 3.に Cone 電圧と検出された尿中パラベンの濃度の Butyl 0 0 0 1.7 2 Benzyl 0 0 0 0 0 変化を示す。なお検量線はサンプルと同じ Cone 電 圧でそれぞれ作成し、濃度を測定した。Cone 電圧 50v ではメチルパラベンとして 54.4ppb、エチルパ ラベンとして 28.1ppb が検出され、またエチルパラ ベンに関しては Cone 電圧 60v で 149.4ppb という値 が検出された。Cone10v~30v の間は濃度に変化はな く、40v あたりから電圧が上がるにつれて徐々に定 4.参考文献 1) Sayaka Shirai, Yayoi Suzukia, Jun Yoshinaga, Reproductive Toxicology. 35 96–101 2013
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