in-source CID によるシルデナフィル類縁体の構造解析 - 佐賀県

in-source CID によるシルデナフィル類縁体の構造解析
○1)中園陽子、1)江口晴香、1)中山秀幸、1)八ヶ代一郎、
1)
古川義朗、2)堀重俊、2)植山高光
(1)佐賀県衛生薬業センター、2)奈良県薬事研究センター)
【目的】
2. 装置及び測定条件
医薬品成分が含有された健康食品・化粧品等に
(LC 装置及び測定条件)
よる健康被害の事例が、世界的に問題となってい
装置:Agilent 1200 シリーズ
る。当センターでは、これらの成分を検出するシ
カラム:Agilent ZORBAX Eclipse Plus C18 Rapid
ステムとして、LC-TOF MS を用いた精密質量デー
resolusion HD φ2.1×100mm, 粒径 1.8 μm
ターベース検索システム
1)2)
、LC-QTOF MS を用い
移動相:(A)0.1 %ギ酸+2.5 mM 酢酸アンモニウ
3)
た未知医薬品類似物質の検索システム を開発し
ム/15%MeCN (B)0.1 %ギ酸+2.5 mM 酢酸アンモ
運用しているが、更なる検索能力の向上が課題の
ニウム/85%MeCN
一つであった。
グラジエント条件:A:B(time)=100:0(0min)
LC-MS 分析に用いられるエレクトロスプレーイ
+
オン化(ESI)はソフトなイオン化であり、H や
+
Na といった付加イオンが主として観察されフラ
グメントイオンは観察されにくいが、フラグメン
→0:100(30min) →0:100(35min)
カラム温度:40 ℃付近の一定温度
流速:0.2 mL/min
注入量:3μL
(MS 装置及び測定条件)
ター電圧を調整することによりインソース衝突
装置:Agilent 6540(Q TOF MS)
誘起解離(in-source CID)によるフラグメント
イオン化:Dual ESI,Positive mode
イオンの観察が可能となる。
乾燥ガス:N2,350℃,10.0L/min
今回、我々は in-source CID と QTOF を組み合
ネブライザー:N2,50psig
わせて擬似的な MS^3 スペクトルを計測し、シル
キャピラリー電圧:3500V
デナフィル類縁体の詳細な構造解析を行ったの
フラグメンター電圧:100V~350V
で報告する。
コリジョンガス:N2
【方法】
コリジョンエネルギー:5~40V
1. シルデナフィル類縁体
SCAN 範囲:25~1050(m/z)
デスメチルシルデナフィル、シルデナフィル、
ノルネオシルデナフィル、ホモシルデナフィル、
【結果及び考察】
各種シルデナフィル類縁体のうち、特徴的であ
メチソシルデナフィル及びヒドロキシホンデナ
ったホモシルデナフィルとメチソシルデナフィ
フィルをメタノールで希釈し 0.2mg/mL の標準溶
ルの結果を図1にまとめた。両化合物は同一の組
液を作成した。実験には、標準溶液を適宜メタノ
成式(C22H32N6O4S)を持ち、フラグメンター電圧を
ールで希釈し、0.2μm のメンブランフィルターで
150V とした場合、得られる MS スペクトルは殆ど
ろ過したものを使用した。
同一であり、保持時間も近接、UV スペクトルも類
似していることから判定には注意が必要である。
そこで、フラグメンター電圧を 350V とし、両化
合物で唯一異なる構造を持つ置換基(-C6H13N2 ,
検索能力の更なる向上に繋がるものと考えてい
m/z=113.11)のフラグメントイオンを Q1 にて分
る。
離、Q2 にてコリジョンエネルギーを 15V としてプ
ロダクトイオンを観察したところ、異なったスペ
1)
クトルが得られ、構造上の差を確認することがで
朗:佐賀県衛生薬業センター所報,31,p.32-35,2009
きた。本事例のように置換基の構造のみが異なる
2)
異性体に対して in-source CID と QTOF(タンデム
回全国衛生化学技術協議会年会講演集,p.290-291
型質量分析計)を組み合わせた擬似 MS^3 スペク
3)
トル解析は非常に有用であり、医薬品類似物質の
全国衛生化学技術協議会年会講演集,p.306-307
homosildenafil
homosildenafil のMS^1スペクトル(Fr=150V)
原口那津美、中山秀幸、志岐寿子、吉冨淑玲、古川義
原口那津美、中園陽子、八ヶ代一郎、靍田清典:第 48
原口那津美、中野里美、古川義朗、靍田清典:第 47 回
methisosildenafil
methisosildenafil のMS^1スペクトル(Fr=150V)
≒
homosildenafil の擬似MS^3スペクトル
(Fr=350V , precursor ion=113.11 , CE=15V)
methisosildenafil の擬似MS^3スペクトル
(Fr=350V , precursor ion=113.11 , CE=15V)
≠
図1 擬似MS^3スペクトルによるhomosildenafil とmethisosildenafil の構造解析