早産児における脳の酸素化

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早産児における脳の酸素化
Cerebral Oxygenation in Preterm Infants
Karinna LF, Stephanie RY, Flora YW, et al. Pediatrics. 2014,134(3):435-44.
【はじめに】うつ伏せ寝は,乳幼児突然死症候群(SIDS)の主要な危険因子であり,早産児もまた SIDS の増悪因
子であることはよく知られています.SIDS は生後 2~4 か月の児に最も多く,正期産児においては,うつ伏せ寝と
平均動脈圧(MAP)及び脳組織酸素化指数(TOI)の減少との関連が示唆されています.今回は,早産児におい
てうつ伏せ寝がどのような影響を与えるのかという文献を紹介します.
【要約】〈方法〉対象は,オーストラリアのモナッシュ大学に入院した早産児(在胎 26~36 週)35 例と正期産児 17
例である.生後 2~4 週,2~3 か月,5~6 か月の 3 期間(早産児では修正月齢)で,MAP と TOI 測定を含む昼
間の睡眠ポリグラフ検査を施行した.児は,動睡眠と静睡眠時に仰臥位と腹臥位の両方で評価された.〈結果〉
早産児では,うつ伏せ寝においてすべての期間の動・静睡眠のいずれでも TOI が有意に減少していた
(P<0.05).また,TOI は,早産児においては動・静睡眠のいずれでも,2~4 週の期間ではいずれの体位でもより
有意に減少しており(P<0.05),2~3 か月の期間ではうつ伏せ寝でより有意に減少していた(P<0.001).MAP は,
早産児において 2~3 か月の期間ではうつ伏せ寝でより有意に低下していた(P<0.01).〈結論〉早産児では,う
つ伏せ寝により MAP と脳の酸素化が減少し,修正月齢の正期産児と比較してもさらに低くなる.このことが早産
児で SIDS が多いことに寄与しているかもしれない.
【太田のコメント】SIDS の約 30%を早産児が占めることはよく知られていましたが,その理由を明らかにした論文は
ありませんでした.ほとんどの新生児科医は,早産児では呼吸中枢未熟性の残存や RS ウイルス感染,稀な代謝
疾患の存在などが影響しているのでは?となんとなく考えていることでしょう.この論文では,早産児においては,
修正月齢の正期産児と比較しても循環動態が未だ不安定であることを示しており,特にうつ伏せ寝の危険性を
強調しています.一方で,NICU においては,うつ伏せ寝が無呼吸の予防や呼吸努力の軽減をもたらすことから,
呼吸の管理と一環として広く行われています.今後,NICU におけるうつ伏せ寝管理の正当性を検討していく必
要がありますし,当面は,この管理を目の当たりにしてきたご家族に対して,NICU 退院後に“うつ伏せ寝をして
はいけない”という指導を怠らないことが重要であると考えます.
(小児科 太田 栄治)