3. 地球の姿勢と自転の変化

3. 地球の姿勢と自転の変化
歳差・章動(月、太陽の潮夕力)
極運動(大気、海洋、陸水、地球システム内部に原因)
自転角速度変動(ΔLOD、風、潮汐、流体核(?))
歳差 Precession → 天の赤道も運動
春分点γ、50``/年 (東から西)
章動 Nutation → 短周期の多くの移動
歳差・章動=月、太陽からの潮汐力によるトルクが原因
極運動 Polar motion, Wobble
自転角速度変動→Length of day change (LOD)
IS×歳差×章動×極運動×(自転+その変動)= TS
回転変動の観測はなぜ必要か?
1. 高精度な座標値(空間だけでなく時間”座標”も)を維持するため
2. 地球(惑星)の性質を知るため
入力 → 特性 → 出力
潮汐力 固有の性質 回転変動、地震波
風、地震 扁平率
(例)1ms の LOD の error がいかに深刻か?
角度にすると、0.015 秒角(慣性系に対し)
〜地球近傍の人工衛星、〜50cm の誤差
〜火星近傍の人工衛星、〜10km の誤差
惑星探査にとっても地球の回転計測は重要
2.7 座標変換の基本
𝑥!
xyz 系で、𝑥! = 𝑦!
𝑧!
とする
xyz 系を z 軸のまわりに、反時計回りにγだけ回転させる
cos 𝛾
𝑥!` = − sin 𝛾
0
sin 𝛾
cos 𝛾
0
𝑥!
0
0 𝑦!
𝑧!
1
cos 𝛾
z 軸まわりの回転行列 𝑅! 𝛾 = − sin 𝛾
0
sin 𝛾
cos 𝛾
0
1
0
x 軸まわりの回転行列 𝑅! 𝛼 = 0 cos 𝛼
0 − sin 𝛼
cos 𝛽
0
y 軸まわりの回転行列 𝑅! 𝛽 =
sin 𝛽
0
0
1
0
sin 𝛼
cos 𝛼
0 − sin 𝛽
1
0
0 cos 𝛽
新しい座標系の単位ベクトルは,元の座標系の単位ベクトルの線形結合で与え
られ,その時の係数が「方向余弦」で与えられるので,上の式を丸暗記する必
要はない.例えば,R3(γ)はこんな感じで求まる:
ˆ xˆ + cos( xˆ ', y)
ˆ yˆ + 0 zˆ
xˆ ' = cos( xˆ ', x)
ˆ = cos( y',
ˆ x)
ˆ xˆ + cos( y',
ˆ y)
ˆ yˆ + 0 zˆ
y'
zˆ ' = 0 xˆ + 0 yˆ +1zˆ
ˆ とは,ある二つの単位ベクトルで挟まれる角の余弦というこ
方向余弦 cos( xˆ ', x)
とで,図を描けば分かる.
(注意)座標系を回転する行列と,あるベクトルをその座標系の中で回転する
行列は別物.
歳差・章動の行列=理論的に与える.具体的な表現は、Seeber の教科書「Satellite
Geodesy」などにある.
3.1 回転楕円体の力学
軸対称な回転楕円体を考える.慣性主軸の方向に xyz 軸を設定したとすれば、
慣性テンソルは以下のように対角化できる:
𝐴 0 0
慣性モーメント I = 0 𝐴 0
0 0 𝐶
𝜔!
角速度ベクトル 𝜔 = 𝜔!
𝜔!
とする.
以下剛体の場合とする.外力トルク(モーメント)をLとする.
角運動量 H = Iω
𝜔で回転する座標系での角運動量保存則は、以下の通り
dH
+ ω×H = L
dt
これを成分ごとに書き下すと、
A
𝑑𝜔!
+ 𝐶 − 𝐴 𝜔! 𝜔! = 𝐿!
𝑑𝑡
A
𝑑𝜔!
− 𝐶 − 𝐴 𝜔! 𝜔! = 𝐿!
𝑑𝑡
C
𝑑𝜔!
= 𝐿!
𝑑𝑡
歳差・章動・・・自転軸が慣性空間で長周期(>1 日)の運動をする(月、太陽)
極運動・・・自転軸が地球固定系に対して長周期(>1日)で運動(大気、海
洋)
自転角速度運動
𝜔! = 𝛺(𝑚! , 𝑚! , 1 + 𝑚! ) とする。𝑚! は微小量とする。
𝑚! の1次までは残す。
A𝛺
𝑑𝑚!
+ 𝐶 − 𝐴 𝛺! 𝑚! = 𝐿! ①
𝑑𝑡
A𝛺
𝑑𝑚!
− 𝐶 − 𝐴 𝛺! 𝑚! = 𝐿! ②
𝑑𝑡
C𝛺
𝑑𝑚!
= 𝐿! ③
𝑑𝑡
𝑚 = 𝑚! + 𝑖𝑚! (複素表記)として
① +𝑖②より
𝑖 𝑑𝑚
𝑖
+ 𝑚 = 𝐿 ④
𝜎! dt
(𝐶 − 𝐴)𝛺!
ただし、𝜎! = !!!
!
𝛺 (オイラー周波数)
ここで、L=0 とすると④式は、𝑚 ∝ 𝑒 !!! ! の解を持つ
自由振動(固有振動)→305 日周期のオイラー極運動が
実際、~435 日周期(1.2 年)=チャンドラー極運動(ウォブル)Wobble
+365 日周期 =年周ウォブル(強制運動)
自由振動というのは,外力 0 で出てくる解.しかし,外力が全くの0ではそも
そも観測できないはずなので、何らか(何でも良いが)の励起源は必要.
3.2 座標系
1秒の定義と“自転”の関係の変遷
・太陽時 Solar Time
南中から南中まで 24h(旧)
南中高度の変化が1周→1年 視太陽時 問題点①:公転軌道の楕円→1日の長さが非一様
②:軌道面が 23.4°傾いている→視太陽時は一様ではない
(1日の長さ~16分(Max)変化)
平均太陽時・・・赤道に沿って円運動する仮想太陽を考える
→世界時 Universal Time(グリニッジ子午線での平均太陽時)
Mean solar time の1日 1/86400=1秒(~1956 年迄)
太陽そのものの観測は困難(大きさ、熱などが原因)
・恒星時 Sidereal Time - 恒星の子午線通過に基づく
θ:グリニッジ恒星時(Greenwich Sidereal Time)
↓
平均恒星時(γの動きを補正)の観測
↓
UT0(Universal Time Zero)
↓
UT1=UT0 にΔλ(極運動の補正)
1930 年代 永年減速 UT による1日は次第に長くなる⇒一様ではない
1940 年代 水晶時計
・力学時(Dynamical Time)による1秒(1956-1967)を一秒としたこともあ
った.
天体力学の運動方程式の独立変数 t は一様に流れるはずである
↓
天体(太陽系)の位置を時間で表現した表=天体暦(“れき”という言い方
をする.
(太陽系天体の記述に使用)人工衛星, たとえば GPS でも速報暦とか精
密暦という言い方をする.
・原子時(Atomic Time) 1秒=𝐶!!"" 原子の特定の放射周期の 9192631770 倍
↓ (1950 年代の1秒に合わせた)
国際原子時 TAI(Temps Atomique International):これは未来永劫不変
・日常使われている時系は?
UTC(協定世界時)Coordinated Universal Time
TAI の1秒を採用
UT1 からあまり違わないもの(~平均太陽時)
1958 年には TAI と UT1 は一致していた
↓
2009 年 TAI-UT1=+33.59 秒 (正午ではない時刻に南中)
ΔUT1=|UT1-UTC|≦0.9s になるように
UTC に 1s 足したり、引いたりする=うるう秒(Leap Second)
3.3 潮汐(Tide)ポテンシャルと起潮力
潮汐現象→地球(惑星)の性質を知る
測地データ(変位、重力)への影響
潮汐の他の現象(地震、噴火をトリガー)
用語:地球潮汐(固体地球)
海洋潮汐(海水面の変化)
慣性系での位置ベクトル
P 𝑟!
Q 𝑟!
R
𝑟!
点 P での海水(地殻)の運動方程式
µμ
𝑑 ! 𝑟!
𝑟! − 𝑟!
𝑟! − 𝑟!
= −𝐺𝑀𝜇
− 𝐺𝑀𝜇
!
! ①
!
𝑑𝑡
𝑟! − 𝑟!
𝑟! − 𝑟!
地球へは m からの引力が働く
𝑑 ! 𝑟!
𝑟! − 𝑟!
𝑀 ! = −𝐺𝑀𝑚
②
𝑑𝑡
𝑟! − 𝑟! !
地球地心に対する運動は𝑟 = 𝑟! − 𝑟! と𝑅 = 𝑟! − 𝑟! を用いて、
①
!
②
− ! より
𝑑! 𝑟
𝑟
𝑟−𝑅
𝑅
= −𝐺𝑀 ! − 𝐺𝑀
+
!
! ③
!
𝑑𝑡
𝑟
𝑟−𝑅
𝑅
地球重力 起潮力
起潮力 𝑓 = −
!!!
!"
となるためには
𝑈! = −𝐺𝑀
ここで、
1
𝑟−𝑅
−
𝑟∙𝑅
𝑅!
④ であればよい
1
𝑟−𝑅
=
!
1
1
=
𝑅! + 𝑟 ! − 2𝑅𝑟 cos 𝜑 𝑅
1
1
= + ! 𝑟 cos 𝜑 +
𝑅 𝑅
!
!
𝑟
𝑅
!
!
𝑟
𝑅
!
𝑃! (cos 𝜑)
𝑃! (cos 𝜑)
よって、
!
𝑈! =
!
𝑟
𝑅
!
𝑃! (cos 𝜑)
ここで n>3 以上の項の寄与は小さいので無視すると、
𝑈! = −
𝐺𝑚𝑟 !
(3𝑐𝑜𝑠 ! 𝜑 − 1)
2𝑅!
r 方向、𝜑方向への起潮力は
𝑓! = −
𝑓! = −
𝜕𝑈! 𝐺𝑚𝑟
= ! (3𝑐𝑜𝑠 ! 𝜑 − 1)
𝜕𝑟
𝑅
1 𝜕𝑈!
3𝐺𝑚𝑟
=−
𝑠𝑖𝑛𝜑𝑐𝑜𝑠𝜑
𝑟 𝜕𝜑
𝑅!
よって、𝑈! =
𝐺𝑚!"# 𝑎!
𝑃! 𝑐𝑜𝑠𝜑 でほぼ OK
𝑅!
3.2.2 潮汐力による地球の変形応答
まともにやると、
ρ
を解けばよいが・・・
𝑑! 𝑣
= ∇ ∙ 𝜎 + 𝜌∇𝑈
𝑑𝑡 !
潮汐ポテンシャルの時間変化は半日以上
自由振動(Max54 分)の周期より長い
慣性項(加速度項)を無視した近似が成立
例えば、
m
𝑑! 𝑥
= −𝑘𝑥 + 𝑓(𝑥)
𝑑𝑡 !
→ 自由振動の周期 (角振動数
!
!
)より充分に長周期ならば、x =
!(!)
!
これと同様な発想をするのが「静的変形」の近似.
・弾性地球の変位、重力ポテンシャル変化
𝑢! =
𝑢! =
ℎ
𝑈 gravity
𝑔 !
𝑙 𝜕𝑈!
𝜃: 余緯度
𝑔 𝜕𝜃
𝑢! =
𝑙 𝜕𝑈!
𝑔𝑠𝑖𝑛𝜃 𝜕𝜆
Δ𝑈 = 𝑘𝑈!
ここで h,k:Love 数、l:Shida 数でいずれも無次元量。
History:Love(1909)は非圧縮均質な弾性球について計算した。
その後竹内均(1950)がより現実的な地球モデルで初めて計算した。
例)検潮による潮位変化への応用
!
剛体地球+海水→ ζ= !!
弾性地球+海水→地球自身の変形による∆U = kU! で海底の変形を考える
1+𝑘
ℎ
1+𝑘−ℎ
𝑈! − 𝑈! =
𝑈!
𝑔
𝑔
𝑔
剛体地球に比べて 0.7 倍になる。