数学解析 問 5
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問5
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氏名
(2014 年 6 月 2 日出題、裏面使用可、締切 6 月 9 日 9:00)
(担当 桂田)
次の極限が存在するかどうか調べ、存在する場合はそれを求めよ。発散する場合も ∞ または −∞ である
ときはそれを指摘せよ。出来る限り根拠を書くこと。
2 + 3xy
1
x+y
(1)
lim (3x2 + 4xy + 5y 2 ) (2)
lim
(3)
lim
(4)
lim
(x,y)→(1,2)
(x,y)→(0,1) 4x2 + 5y 2
(x,y)→(0,0) x2 + y 2
(x,y)→(0,0) log(x2 + y 2 )
|x|
sin(xy)
x−y
x2 y 2
√
(6)
lim
(8)
lim
.
(5)
lim
(7)
lim
2
2
xy
(x,y)→(0,0)
(x,y)→(0,0)
(x,y)→(0,0) x + y
(x,y)→(0,0) x + y
x2 + y 2
解説
(1) f (x, y) := 3x2 + 4xy + 5y 2 は多項式であるから、f : R2 → R は連続である。特に (1, 2) で連続であるから、
(x, y) → (1, 2) のときの極限は、f (1, 2) に等しい:
lim
(x,y)→(1,2)
f (x, y) = f (1, 2) = 3 · 12 + 4 · 1 · 2 + 5 · 22 = 3 + 8 + 20 = 31.
2 + 3xy
は有理式で、その分母が 0 にならない範囲 Ω := R2 \ {(0, 0)} に対して、f : Ω → R
4x2 + 5y 2
が定義されて連続である。特に (0, 1) ∈ Ω で連続であるから、(x, y) → (0, 1) のときの極限は、f (0, 1) に等
しい:
2+3·0·1
2
lim
f (x, y) = f (0, 1) =
=
.
2
2
4·0 +5·1
5
(x,y)→(0,1)
(2) f (x, y) :=
(3) 極限が存在しないことだけならば、背理法で証明できる。もし極限が存在すると仮定すると、それを A とお
くと
(
)
1
1
2
2
1=
lim
· (x + y ) =
lim
·
lim (x2 + y 2 ) = A · 0 = 0
2
2
2
(x,y)→(0,0) x + y
(x,y)→(0,0) x + y 2 (x,y)→(0,0)
となり矛盾が導かれる。ゆえに極限は存在しない。
実は lim = ∞ となることを示そう。授業で「つねに f (x) > 0, lim f (x) = 0 ならば lim
x→a
x→a
1
= ∞」とい
f (x)
う定理を証明した。
fe(x, y) := x2 + y 2 とおくと、これは多項式であるから、fe: R2 → R は連続であり、
lim
fe(x, y) =
(x,y)→(0,0)
fe(0, 0) = 0. fe の Ω := R2 \{(0, 0)} への制限を f とすると (連続関数の制限は連続なので)
lim
f (x, y) =
(x,y)→(0,0)
0, また (∀(x, y) ∈ Ω) f (x, y) > 0. ゆえに
lim
(x,y)→(0,0)
1
1
=
lim
= ∞.
x2 + y 2
(x,y)→(0,0) f (x, y)
(4) 一見して「これは不定形」と思うかもしれないけれど、落ち着いて見ると、分子 → 0, 分母 → −∞ で、
の形をしているので、“明らかに” 0.
0
−∞
授業で合成関数の極限について命題を与えた。同様にして ±∞ に発散する場合の命題が証明でき
証明 1
て、それを用いれば 1
lim
(x,y)→(0,0)
lim
(x,y)→(0,0)
log(x2 + y 2 ) = −∞ が示せる。すると、
x+y
1
=
lim (x + y) ×
lim
= 0 · 0 = 0.
log (x2 + y 2 ) (x,y)→(0,0)
(x,y)→(0,0) log (x2 + y 2 )
このように、0 に収束するものの積となっているわけで、0 に収束することを示すには、少し手抜きが出来る。
x2 + y 2 ≤
証明 2
1
2
のとき、log(x2 + y 2 ) ≤ log 12 = − log 2 < 0 より log(x2 + y 2 ) ≥ log 2 に注意すると、
|x + y|
x+y
log(x2 + y 2 ) ≤ log 2 → 0 ((x, y) → (0, 0)).
0
である。近づく方向を限定して考えてみると何か分かることがある。x 軸に沿って近づ
(5) いわゆる不定形
0
けた場合
x
x−y
lim
= lim = lim 1 = 1.
(x,y)→(0,0) x + y
x→0 x
x→0
y=0
y 軸に沿って近づけた場合
lim
(x,y)→(0,0)
x=0
−y
x−y
= lim
= lim (−1) = −1.
y→0
x + y y→0 y
x−y
は存在しない。
(x,y)→(0,0) x + y
これら 2 つの極限が一致しないので、
1
lim
lim
(x2 + y 2 ) = 0, lim log z = −∞ を組み合わせる。
(x,y)→(0,0)
z→0
(6) これも不定形
0
である。x 軸に沿って近づけた場合
0
√
lim
y=0
(x,y)→(0,0)
|x|
y 軸に沿って近づけた場合
√
lim
x=0
(x,y)→(0,0)
これら 2 つの極限が一致しないので、
x
= lim √ = lim 1 = 1.
x→0
x→0
x2
x2 + y 2
lim
(x,y)→(0,0)
|x|
x2 + y 2
√
= lim 0 = 0.
|x|
x2 + y 2
y→0
は存在しない。
0
である。x 軸, y 軸や、y = kx (k は定数) にそっての極限は、すべて 0 であることが分か
(7) これも不定形
0
る。実際例えば
x2 · (kx)2
k 2 x2
x2 y 2
lim
= lim 2
= lim
= 0.
2
2
2
(x,y)→(0,0) x + y
x→0 x + (kx)
x→0 1 + k 2
y=kx
これから 0 に収束しそうだと見当をつけて証明を考える。
2 2 2 2
2
2
2
x y x y
2x + y
=
= x2 y
−
0
≤
x
= x 2 → 02 = 0
x2 + y 2 x2 + y 2
x2 + y 2
x2 + y 2
はさみうちの原理から、
lim
((x, y) → (0, 0)).
x2 y 2
= 0.
+ y2
(x,y)→(0,0) x2
0
である。
0
A := {(x, y) ∈ R2 | xy ̸= 0}, B := {z ∈ R | z ̸= 0} とおいて、f : A → R, g : B → R を f (x, y) := xy,
sin z
g(z) :=
で定義する。 lim
xy = 0 · 0 = 0 (多項式関数は連続だから (x, y) = (0, 0) での値に収束)
z
(x,y)→(0,0)
より、多項式関数 xy の A への制限である f についても、 lim
f (x, y) = 0 が成り立つ。 lim g(z) = 1
(8) これも不定形
(x,y)→(0,0)
は高校で学んだ。f (A) ⊂ B であるから、g と f は合成できて、
sin(xy)
=
lim
g(f (x, y)) = lim g(z) = 1.
z→0
xy
(x,y)→(0,0)
(x,y)→(0,0)
lim
z→0