2014/6/15 科学基礎論学会2014年度大会 60周年記念分野別ワークショップ 「日本の心の哲学のこれまでとこれから」 問い 心の哲学は単一の • 心の哲学は、ある方法論などを共有する 単一の専門分野なのか? 専門領域なのだろうか - そこに、心を研究対象とするということ以上 の実質はあるか? 鈴木貴之(南山大学) [email protected] 1 2 心の哲学の多様性①:研究対象の多様性 • 意識(知覚、感覚、感情…) • • 命題的態度 心について哲学者が探究することは正当 • 認知 化可能か? - • 合理性 心の哲学の存在意義とは? • 自己知 • 志向性 … 3 4 心の哲学の多様性②:方法論の多様性 リチャード・ダブル (Double 1996) による自由意志論の分析 • 言語使用の分析 • 異なる自由意志理論を支持する人 • 概念分析 は、異なるメタ哲学的見解や、異な • 超越論的な論証 る哲学的一般原則を支持している。 • 経験科学の知見 • メタ哲学的な見解は真偽を問うこと • 質問紙調査 ができないため、自由意志論争に決 着をつけることはできない。 … 5 メタ哲学の入門書 (Ovargaard, • 4つのメタ哲学的見解 - 対話としての哲学(社会批評) - 実践としての哲学(よりよい生の実現) - 基礎づけとしての哲学(常識の基礎づけ、科 Gilbert, and Burtwood 2013) における分類 • メタ哲学の見解 (科学と連続的ー非連続的) 学の基礎づけ) - 6 世界観の構築としての哲学(科学と連続的/ 非連続的) 7 - 科学の一部としての哲学 - 未熟な科学としての哲学 - 科学の残余としての哲学 8 記述的 ①常識的な 世界観の解明 - イデア的対象の探究としての哲学 - メタ科学としての哲学 - 人間理解としての哲学 - 超越論的探究としての哲学 - 世界観としての哲学 - 対話としての哲学 記述的か 概念の探究 記述的 ②治療 修正的か 修正的 概念の探究か ③常識的な 世界観の修正 実在の探究か 連続的 実在の探究 科学と連続的か 非連続 非連続的か 的 非連続的 ④理論心理学 ⑤メタ科学 ⑥規範性の 領域の探究 9 10 問題 ①常識的な世界観の解明としての心の哲 • それは心理学の仕事では? 学 - • 心に関係する素朴概念の内実を解明する 素朴物理学の研究は心理学の仕事。なぜ素朴 心理学は違うのか? ことが、心の哲学の課題。 - すくなくとも、安楽椅子的に行うことではな いのでは? • 事例:自由意志論、行為論 • この作業は哲学的に興味深いのか? 11 12 ②治療としての心の哲学 • 哲学的な問題は、哲学的な語や概念の誤 問題 解に由来する。それらの使用の実態を明 • このような図式はごく一部の問題にしか らかにし、哲学的な問題を解消すること あてはまらないのでは? が、心の哲学の役割。 • 治療を終えたら哲学は用済みか? • 事例:オースティンによる「見え」の分 析 13 14 ③常識的な世界観の修正としての心の哲 学 問題 • 常識的な世界観には内的不整合がある。 • 心の哲学の問題すべてがこのようなもの 哲学的な問題はそこに由来する。常識的 ではないのでは? な世界観を一部修正し、より整合的なも のにするのが、心の哲学の課題。 • 前半の作業は心理学者の仕事では? • 事例:デネットの自由意志論、デネット の意識理論 15 16 問題 ④理論心理学としての心の哲学 • 哲学としてやることの必然性とは? • 心の哲学は心理学や神経科学と連続的。 - 違いは、哲学者はより一般的、理論的な 哲学のトレーニングを積んだものだけに可能 な貢献とは? 問題を扱うということ。 - 未熟な科学の段階でのみ貢献の余地がある? (cf. 宇宙論) • 事例:意識の理論、認知の理論、心の理 論の問題 • 現実問題として、(自分も含む)多くの 哲学者は勉強不足… 17 ⑤メタ科学としての心の哲学 18 問題 • 心の哲学は、心理学や神経科学の方法論 • 心の哲学のごく一部にしかあてはまらな を考察するメタ科学。 い。 事例:意識の問題 • 心理学者がやってもよいのでは? 19 20 ⑥規範性の領域の探究としての心の哲学 問題 • 実在のなかで、経験科学的な方法では探 究できない領域を探究するのが心の哲学 • おそらく自然主義を放棄することになる の仕事。 が… - manifest imageとscientific image - 因果性と規範性 - 超越論的論証 • これは①とどう違うのか? • ①と違うとしたら、哲学者はどのような 方法でこの領域を探究できるのか? • 事例:デイヴィドソンの議論 21 22 発表者の独断によれば… ① 意識の問題 ② 発表者の独断によれば… ③ ④ ⑤ ✓ ✓ ✓ ⑥ ① 認知の理論 23 ② ③ ④ ⑤ ⑥ ✓ 24 発表者の独断によれば… ① ② ③ ④ 発表者の独断によれば… ⑤ ⑥ ① 自由意志の 問題 (一般的 ② ③ ④ ✓ ✓ ⑤ ⑥ 自由意志の ✓ 問題 ✓ (私見で には) は) 25 26 発表者の独断によれば… ① ② ③ ④ 発表者の独断によれば… ⑤ ⑥ ① ② ③ ④ (✓) ✓ ⑤ ⑥ 合理性の 合理性の 問題 (✓) 問題 ✓ (別の見方 では) 27 28 問題 • 心の哲学の多くの領域をカバーできるの • たとえ分裂しても見通しは明るくない… は④か⑥。 - • 両者はいかなる意味で「心の哲学」とい とを説明するのが困難。 う専門領域を形成しているのか? - ④では、哲学者に固有の貢献が可能であるこ - ⑥では、現実の人間の心にかんする客観的な 探究であることを説明するのが困難。 認知心理学と社会心理学というよりは、 神 経科学的な精神医学と精神分析的な精神医学 のような関係では? 29 悲観的なシナリオは… 30 文献 • ④を志向する哲学者は、心理学者や神経 Double, R., 1996, Metaphilosophy and Free Will, Oxford: Oxford University Press. 科学者にその地位を奪われ… Overgaard, S., Gilbert, P., and Burwood, S., 2013, An Introduction to Metaphilosophy, Cambridge: Cambridge University Press. • ⑥を志向する哲学者は、心にかんする経 験科学から孤立していく… 31 32
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