Page 1 Page 2 氏 名 海 道 真 典 学位(専攻分野) 博 士 (農 学) 学 位 言

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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Issue Date
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The in vivo mRNA amplification system in transgenic plants
expressing RNA replicon( Abstract_要旨 )
Kaido, Masanori
Kyoto University (京都大学)
1996-07-23
http://hdl.handle.net/2433/78075
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
author
Kyoto University
【3
91】
かい
どう
まさ
のり
海
道
真
典
学位(
専攻分野)
博
士
学 位 記 番 号
農
博
学位授与の 日付
平 成 8年 7月 2
3日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
農 学 研 究 科 ・農 林 生 物 学 専 攻
学位 論文題 目
Thei
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ngRNA r
e
pl
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c
on
氏
名
(農
学)
第 898 号
(
RNA レプ リコンを発現する形質転換植物 による i
nvi
w mRNA増
幅 システム)
(
主
論文調査委員
査)
教 授 古津
論
文
教 授 泉井
巌
内
容
の
要
桂
教 授 津 田盛 也
旨
植物 を用いた有用 タンパ ク質産生 システムとして,適当なプロモーター配列 をもつ外来遺伝子 を導入 し
た形質転換植物 を作 出す るとい う方法 と,外来遺伝子 を導入 したキメラウイルスの増殖 を利用する方法が
これ まで試み られて きた。 しか し,前者 は強力 なプロモーター配列がないために外来遺伝子の発現量が少
な く, また,後者 はキメラウイルスが全身感染性 を失 うことが多 く,植物 レベルで 目的 タンパ ク質の高い
生産量 を実現で きない とい う問題があった。
本論文の第 1章では, これ らの 2つのシステムの長所 を組み合わせ た新 しい有用 タンパ ク質産生 システ
ムについて記述 している。 筆者 は本 システムのために 3分節型のゲノム構造 をとり,増殖能が高いプロム
モザ イクウイルス (
BMV) を用 いている。 BMV の RNAlと RNA2には BMV の複製酵素成分である
1
aお よび 2
aタンパ ク質がそれぞれ コー ドされている。1
aタンパ ク質お よび 2
aタンパ ク質の両方 を発現
M1
2植物) を作 出 し, さらに,その植物 にヒ ト7-インターフェロン (
I
FNて)遺
す る形質転換 タバ コ (
DNA をアグロバクテ リウム
伝子 と BMV の外被 タンパ ク質遺伝子 とを置換 したキメラ BMV RNA3の c
M1
2FCP2I
FN タバ コでは I
FNγの mRNA が従来
法 によって導入 している。 得 られた形質転換植物 (
の形質転換植物 を用いたシステムに比べて約 5倍多 く蓄積 した。 しか し, この量 は BMV の高い増殖能 を
考 える と少 ない
。
この原因 として まず,抗 ウイルス作用 をもつ I
FNて の蓄積量 によってキメラ BMV の
複製が阻害 された とい う可能性が考 え られる。そ こで野生型の BMVRNA 1-3 (
仝 ゲ ノム)の c
DNA
を導入 した形質転換 (
V1
23タバ コ)を作 出 し,その可能性 を考察 している。
第 2章 で は,V1
23タバ コに誘導 され るウイルス抵抗性 につ いて述べ ている。 V1
2
3タバ コにおける
BMV RNA の蓄積量 をノーザ ン分析 によって調べた結果,その蓄積量 は非形質転換 タバ コのプロ トプラ
2
3タバ コのプロ トプラス ト
ス トに BMV を接種 した ときの 1%であ ることを明 らかに した。 さらに,V1
に BMV RNA を接種 して も, BMV RNA の蓄積 量 は変 わ らない こ とを示 し, V1
2
3タバ コ細胞 には
-1
09
8-
BMV に対す る強い抵抗性が誘導 されていることを明 らかに した。つ ぎに,BMV RNA を様 々な組 み合
わせで発現す る形質転換植物 を作出 して同様の接種実験 を行 った ところ,BMV RNAlと 2をともに発現
′末端 の非翻
す る形質転換 タバ コでのみ強い抵抗性が認め られた。 さらに,BMVRNA の複製に必須の 3
訳領域 を欠失 させた RNA lと 2を発現す る形質転換 タバ コに同様 の接種実験 を行 った ところ, この植物
2タバ コほど強い抵抗性 は見 られなかった。 これ らの結果か ら,導入 した ウイル
のプロ トプラス トは V1
ス RNA の自己複製によって強いウイルス抵抗性が誘導 されることを明 らかに した。
第 3章では, BMV 発現 タバ コにお ける BMV 蓄積量 を増加 させ るための試 み を行 ってい る。 BMV
′末 端 に余 分 な配 列 を付 加 す る とそ の感 染 性 が 劇 的 に減 少 す る こ とが 知 られ て い る。
RNA の 3
M1
2FCP2
I
FN植物や V1
2
3タバ コにおいて も転写 された BMV RNA の 3
′末端 には約 2
0
0
塩基の余分 な
配列が付加 されることがわか ったので, これ らを除去す るために t
obac
c
or
i
ngs
potvi
r
us由来の リボザ イ
DNA の 3'末端 に導入 した。 リボザイム配列 を もつ BMV RNA 発現植物 (
V1
23
R タバ コ)に
ム配列 を c
おける BMV RNA 蓄積量 は V1
2
3タバ コに比べて約2
0
倍 に上昇 させ るこ とに成功 した。 しか し, この植
物の細胞 において も BMVに対す る抵抗性が認め られた。
第 4章では,植物の遺伝子発現パ ターンを変化 させ ることを目的 として, V1
2
3タバ コ葉 に傷害ス トレ
スを付与 した ところ,BMV RNA の蓄積量 は傷害 ス トレスを付与 しなか った ものに比べて約 3倍 に増加
した。傷害ス トレスによる BMV RNA 蓄積量 の増加が RNA 転写の活性化 によるのか,BMV RNA の
2
3タバ コと 3
′末端の複製
複製の活性化 によるのか を調べ るために,完全長の RNA lと 2を発現す る V1
に必須の非翻訳領域 を欠失 した RNA lと 2を発現する M1
2タバ コに同様 の処理 を行 った ところ, V1
2
R
タバ コでのみ BMV RNA lと 2の蓄積量 が増加 した。 この結果 は,傷害 ス トレスによって BMV RNA
の複製が活性化 されることを示 している。 また,傷害ス トレスによって多 くの植物細胞 中に誘導 されるこ
とが知 られているジャスモ ン酸 メチルによって同様の結果が得 られた。 リボザイム配列の付加 と傷害ス ト
レスによって形質転換植物中の BMV RNA 蓄積量 を6
0
倍 に上昇 させ ることがで きた。 これ らの知見 は,
植物 を用いた有用 タンパ ク質の産生 に貢献す るとともに,植物のウイルスに対す る抵抗性発現機構 の解明
に多 くの示唆 を与 える ものである。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
植物体 を用いた有用 タンパ ク質産生 システムとして,有用遺伝子 を植物体 に導入する方法 と,キメラウ
イルスを感染 させ る方法が試み られて きたが,前者 は外来遺伝子の発現量が少な く, また,後者 はキメラ
ウイルスが全身感染性 を失 うために高い生産量が得 られない とい う問題があ った。本論文では,新 しい有
n
用 タンパ ク質産生 システムとして形質転換植物中で発現 させたウイルスの複製酵素 に 目的の mRNA を i
oにおいて増幅 させ るシステムを構築 した ものであ り,本研究の成果 として評価すべ き点 は以下の と
viv
お りである。
1.M1
2FCP2
I
FN植物 において,転写 されたキメラ BMV RNA3(
I
FNγを外被 タンパ ク質遺伝子 と
FNγの mRNA であ るキメラ RNA4が合成 さ
置換 した もの)は BMV の複製酵素 によって複製 され,I
れた。キメラ RNA4の蓄積量 は従来の形質転換植物 において得 られ る外来遺伝子の転写産物の蓄積量 に
-1
0
9
9-
比べ て高 く, このシステムが有用 タンパ ク質の産生 に有効であることを示 した。
2.BMV の仝 ゲ ノム を導入 した形質転換植物 (
V1
2
3タバ コ) と BMV RNA lと 2を発現す る V1
2タ
バ コにおける内在性 の BMV RNA 蓄積量 は,非形質転換 タバ コの プロ トプラス トに BMV を接種 し,2
4
時間培養 した場合の 1%以下であ った。 したが って, レプ リコンを植物細胞 の染色体 に導入 した場合,そ
の増殖 は宿主植物の抵抗性反応 によって抑制 されるとい う可能性が示唆 された。 この推論 は V1
2
3タバ コ
お よび V1
2タバ コのプロ トプラス トが,それぞれ BMV 接種 に対 して強い抵抗性 を示す とい う結果 によ
って確認 された。 また,複 製 に必須 の 3
′末端 の非翻訳領域 を欠失 させ た RNAlと 2を発現 す る M1
2植
2植物の プロ トプラス トほ ど強 い抵抗性 は認 め られないことか らも,内在
物 の プロ トプラス トには,V1
性 BMV RNA の複製が強い抵抗性 を誘導す ることが示 された。
3.導入遺伝子 の 3
′末端 に リボザ イム配列 を導入す ることで,BMV 発現 タバ コにおける BMV RNA 蓄
積量 は約 2
0倍 に増加す ることが明 らか となった。
4.傷害 ス トレスお よびそれに関連す るジ ャスモ ン酸 メチル処理 によって BMV RNA 発現 タバ コにおけ
る BMV RNA の複 製が活性化 され ることが明 らかになった。 この結果 は,傷害ス トレスに よって抑制あ
るいは活性化 される植物遺伝子の発現が ,BMV の複製 に深 く関与す ることを示 している。
以上の ように本論文 は,新 しい有用 タンパ ク質発現 システムを考案す るとともに,形質転換植物 に誘導
されるウイルス抵抗性 について詳細 に検討 を加 えた ものであ り,植物 ウイルス学,植物病理学,育種学 に
貢献す るところが大 きい。
よって,本論文 は博士 (
農学)の学位論文 として価値 ある もの と認める。
なお,平成 8年 5月 1
6日,論文並 びにそれに関連 した分野 にわた り試問 した結果,博士 (農学)の学位
を授与 される学力が十分あるもの と認めた。
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