KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL Roles of Movement Protein Gene in Cell-to-Cell Movement and Host-Range Determination of Bromoviruses( Abstract_要 旨) Sasaki, Nobumitsu Kyoto University (京都大学) 2002-03-25 http://hdl.handle.net/2433/149902 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 【5 2 7】 さ 氏 名 さ き のぶ みつ 信 光 佐 々 木 学位( 専攻分野) 博 士 学 位 記 番 号 農 学位授与の 日付 平 成 1 4 年 3 月 25 日 学位授与の要件 学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当 研 究 科 ・専 攻 農 学 研 究 科 応 用 生 物 科 学 専 攻 学位 論文題 目 Rol esofMove me ntPr ot e i n Ge ne i n Ce l l-t o-Ce l lMove me ntand Hos t-RangeDe t e r mi na t i on ofBr omovi r us es 博 ( 農 学) 第 1240 号 (プロモ ウイルスの細胞 間移行及 び宿主域決定 における移行 タンパ ク質遺伝 子の役割) ( 主 査) 論文調査 委 員 教 授 奥 野 哲 郎 論 文 内 教 授 西 岡 孝 明 容 の 要 教 授 泉 井 桂 旨 感染 した細胞か ら隣接 した健全 な細胞へ と移行する過程 ( 細胞間移行)は植物 ウイルスの全身感染 において重要な過程 で あ り,全 ての植物 ウイルスは細胞 間移行 の成立 に必要不可欠 な移行 タンパ ク質 ( MP)遺伝子 を持 っている。 しか しなが ら, MP遺伝子の役割や機能 については不 明な点がいまだに多い。本論文では, Br omoて ′ i r us属 に属す る近縁 な植物 ウイルスで ac hl or ot i cmot t l evi r us( CCMV) と Br omemo s ai cvi r us( BMV)を用い,以下 に示す 2つの現象 に MP遺 ある Cowpe 伝子が どのように関与 しているのかを調べ ることで,MP遺伝子 の細胞 間移行お よび宿主域決定 における役割 を解析 した。 ( 1 ) CCMV と BMV は近縁 なウイルスであ るに もかかわ らず,異 なる細胞 間移行様式 を示 し,CCMV は外被 タンパ ク質 ( cp) を必要 としないのに対 し BMV は CPを必要 とす る。( 2 ) CCMV の MP遺伝子 を BMV の MP遺伝子で置換 したキメ ラ CCMV は野生型 CCMV の宿主であるササゲに全 身感染で きないが,キメラ CCMV を接種 したササゲの一部では全 身 感染能 を獲得 した変異体 ウイルス ( 適応変異体)が出現する。 第一章では,MP遺伝子 と CP遺伝子 は RNA3上 にあるが,野生型 と MP遺伝子組換 え RNA3のそれぞれか ら,CP遺 GFP)遺伝子 と置換 させ た CP遺伝子欠損 RNA3を作製 し,CCMV あるいは 伝子 を欠失あるいは緑色蛍光 タンパ ク質 ( BMV の RNAlと RNA2と一緒 に検定植物である Cheno podi um qui noaに接種 した。その結果,MP遺伝子 を除 く他のゲ ノム領域が CCMV と BMV いずれで も,CCMV の MPの蓄積 が見 られるウイルスは細胞 間移行 で きるの に対 し,BMV の MPの蓄積が見 られるウイルスは細胞間移行で きない ことを明 らかにした。 9 個体の異 なるササゲに由来す る適応変異体の MP遺伝子の塩基配列 を決定 し,MP遺伝子の中央領域 に位 第二章では,2 1 1 8,1 3 2 ,1 3 8,1 7 8,1 8 0)のいずれかにおいて Lysまたは Ar g-のアミノ酸変異 を引 き起 こす ような 1コ 置する 5カ所 ( ドン変異が生 じていることを明 らかに した。 また,上記 の 5ヶ所 のいずれかに Lysまたは Ar gのア ミノ酸変異 を起 こす よ うなコ ドン変異 ( 適応変異) を人工的にキメラ CCMV に導入す ることによ り,上記いずれの コ ドン変異 によって もササゲ に全 身感染で きるようになることを示 した。 また,適応変異が同定 された部位 の近辺 に位置す る 3ヶ所 のいずれか に Lys または Ar gへのア ミノ酸変異 を起 こす ようなコ ドン変異 を導入 したキメラ ccMV は,いずれ もササゲに全身感染せず,む しろ,接種葉 における細胞 間移行能 を失 うことを示 した。 さらに,適応変異 を導入 した BMV は,ササゲ ( BMV にとって は非宿主)において全身感染能 を失 っていることを示 した。 第三章では,キメラ CCMV お よび BMV は CP遺伝子が ない と細胞 間移行 で きないが (第 1章) ,適応変異 を持つキメ ラ CCMV お よび BMV の CP遺伝子 を GFP遺伝子で置換す る と,適応変異の位置 によって程度 の差 は見 られた ものの, CP遺伝子がな くて も C.qui no aにおいて細胞間移行す ることを示 した。 以上の結果 は,MPが CCMV と BMV の細胞 間移行 における CP要求性 の違い を決定す る重要 な因子であること, さら に MPの中央領域が宿主域 の決定だけでな く細胞 間移行能や細胞 間移行 の移行様式 に も関与す る機能領域 を形成 している 可能性があることを初めて示 した ものである。 -1 2 4 3- 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 本論文 は,近縁であるが, ・宿主域の異 なる 2種 の植物 RNA ウイルスである CCMV と BMV を用い, これまで詳細が明 MP)遺伝子の機能領域 を解析 した ものである。 細胞 間移行 における外被 タンパ ク質 ( CP)要 らかでない移行 タンパ ク質 ( 求性が両 ウイルスで異 なること,お よび CCMV の MP遺伝子 を BMV の MP遺伝子で置換 したキメラ CCMV を CCMV の非宿主であるササゲに接種す ると,一部のササゲにおいて全身感染で きる変異体 ウイルス ( 適応変異体 )が出現するとい う現象 に着 目し, これ らを解析することにより,MP遺伝子の適応変異 とその領域 について多 くの新 たな知見 を得ている。 本論文の評価すべ き点は以下の とお りである。 1.CCMV の MP を発現す るウイルスは CPが な くて も細胞 間移行で きるが,BMV の MPを発現す るウイルスは CPが ない と細胞 間移行で きない ことを明 らかにした。 2.2 9 個体 の異 なるササゲに由来す る適応変異体 の MP遺伝子 を解析 した結果,MP遺伝子の中央領域 に位置する特定の 5 カ所 のいずれか において Lysまたは Ar gのいずれかへのア ミノ酸変異 を起 こす コ ドン変異 を,キメラ CCMV がササゲに 全身感染で きるようになる変異 ( 適応変異) として同定 した。 3.適応変異が同定 された MP遺伝子 の中央領域の近辺 に位置する 3ヶ所 のいずれかに Lysまたは Ar gへのアミノ酸変異 を起 こす ようなコ ドン変異 を導入 して も,キメラ CCMV はササゲに全 身感染で きず,む しろ,接種葉 における細胞間移行 能 を失 っていること明 らかに した。 4.適応変異 を BMV に導入 し,本来 BMV にとっては非宿主であるササゲに接種 してみた ところ,ササゲに全身感染で き ない ことを明 らかにした。 5.本来細胞 間移行 に CP を必要 とす る BMV とキメラ CCMV は,適応変異の導入 によ り CP遺伝子がな くて も細胞 間移 行 で きるように細胞 間移行 の様式が変化することを明 らかに した。 以上の ように,本論文 は,MPが CCMV と BMV の細胞 間移行 における CP要求性 の違いを決定す る重要 な因子である こと, さらに MPの中央領域が宿主域 の決定だけでな く細胞 間移行能や細胞 間移行 の様式 にも関与す る機能領域 を形成 し ている可能性があることを植物 ウイルスにおいて初めて示 した ものであ り,植物 ウイルス学,植物病理学,農学に寄与す る ところが大 きい。 4年 2月21日,論文並 びそれに関連 よって,本論文 は博士 ( 農学)の学位論文 として価値 あるもの と認める。 なお,平成 1 した分野 にわた り試問 した結果,博士 ( 農学)の学位 を授与 される学力が十分あるもの と認めた。 -1 2 44-
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