新潟県の一戸建て住宅における縁側の温熱環境と生活行為 ー積雪寒冷

新潟県の一戸建て住宅における縁側の温熱環境と生活行為
―積雪寒冷地における住居計画に関する研究―
山岸明浩、佐々木博昭
Thermal Environment and Lives of "ENGAWA" at Detached Houses in Niigata Prefecture
―Study on House Planning in Snowy Cold District―
Akihiro Yamagishi and Hiroaki Sasaki
1.はじめに
放型の廊的空間では内部閉鎖型に比べ顕著に行為
新潟県のような積雪寒冷地においては,四季の
発生率が高いことを明らかにしている。また,筆
者ら3}は新潟県の積雪地における玄関囲い・物干
気候変化に応じて生活行為の場が大きく変化する。
例えば,夏季と冬季の物干しの行為では,天候の
安定した夏季には主に屋外において行為がなされ
れらの空間の温熱環壌は屋内外の中間的な性状を
るが,冬季には天候が不安定,または不順となる
示すことを明らかにしている。
ため,室内へと行為の場が移動する。この様な気
候に対応した住まいづくりは,民家の事例に示さ
以上のような背景に基づき,本研究では屋内外
れるように,地域により実に様々な工夫がなされ
宅における縁側に関する生活行為と温熱環境に関
ている。新潟県のように冬季における屋外での生
活行為が著しく制限される地域の場合,気候変化
する調査を通し,積雪寒冷地における縁側的空間
の住居計画手法について考察することを目的とす
への工夫として風除室や雪囲いが良く見受けられ
る。
し場の温熱環境の調査を実施し,冬季においてこ
の緩衝的空間としての縁側に着目し,新潟県の住
る。これらの空間は,夏季においては開放的な屋
2.調査概要
外空間,冬季には閉鎖的な室内空間へと変容し,
夏季と冬季の生活行為の場の緩衝的空間,あるい
は屋外と室内との間の中間領域に位置づけられ,
2」−llllll1pall9911
積雪寒冷地の住居計画における一つの観点である
測定は,2000年7月から2001年1月までの期間
と考える。
に,夏季,秋季,冬季のそれぞれの季節毎に実施
温熱環童測定のスケジュールを,表1に示す。
住宅を対象に住戸廻りの空闘構成と生活行為につ
した。測定住宅は,新潟市および近郊の市町村に
立地し縁側の存在する一戸建て住宅の5件を対象
いて調査し,中間空間(屋根だけ,あるいは屋根
とした。
既往の研究において,岩崎ら1)は新潟市の独立
温熱環境の測定項目を,表2に示す。温熱環境
の測定項目は,調査対象住宅の縁側,および縁側
に隣接する部屋(以下,「隣室」とする)の床上
0.1m,1.1mの温湿度と外気の温湿度とした。デ
ータの収集には,小型のメモリー付温湿度計(佐
藤計量ee SK・L200TH)を用い,測定ポイントの
温湿度を5分間隔で記録し,各々の調査対象住宅
において,季節毎に約1週間の連続測定を行なっ
た。なお,測定期間の設定には,盆や正月など日
と一部の壁で半囲いにした空間)が生活行為に果
たす役割が大きいことを指摘している。高木ら2)
は昭和期住宅における縁側・廊下に代表される廊
的空間におけるこどもの遊び行為の変遷について
調査し,縁側に代表される外部開放型の廊的空間
はこの40年間に激減し,かわって中廊下に代表
される内部閉鎖型の廊的空間が増加してきたこと
を指摘している。廊的空間においてはあそび,生
活行為など多様な行為が発生しているが,外部開
生活科学科生活科学専攻
1
県立新潟女子短期大学研究紀要 第41号 2004
常の生活状態と異なるような期間は避けるように
表1 温熱環境測定のスケジュール
した。
1.1−zz=hSELg
新潟県の住宅における縁側の存在状況,必要性,
利用状況などを明らかにするために,アンケート
調査を実施した。アンケート調査は,県立新潟女
子短期大学生活科学科生活科学専攻の学生78名
の住宅を対象に2001年10月から11月にかけて
表2 温熱環境の測定項目
実施した。アンケートの回収率は70.5%である。
表3に,縁側に関するアンケート調査項目を示
す。調査項目は,家族構成や延べ床面積など現在
の住まいの状況の他に,縁側の必要性,縁側の有
無縁側の熱環境に関する評価などである。
測定場所
測定項目
縁側
気温・湿度
隣室
気温・湿度
外 気
気温・湿度
測定位置
床上0.1m
ー上 1.1m
床上 0.1m
ー上 1.1m
風通しが良く,日射
e響のない建物周辺
3.縁側の温熱環境について一
表4 測定対象住宅の概要
築面積(㎡) 建築年代 縁側の向き
測定住宅
172
南
住宅A
1948年
102
東南
住宅B
1982年
76
北
住宅C
1965年
180
南
住宅D
1970年
165
東
住宅E
1968年
31測定対 住宅の概
温熱環境測定を行なbた住宅の概要を,表4に
示す。建築面積は76㎡から180㎡の範囲にあり,
5.件の住宅の平均値は139㎡である。建築年代は,
1948年から1982年の範囲にあり,全ての住宅が
約20年以上経過した一戸建て住宅である。縁側
表3 縁側に関するアンケート調査項目
調査項目
A.現在の住まいについて
質問項目
家族構成,延べ床面積,建築面積,敷地面積,建築年代,
轄ン地,住宅形態
B.縁側に対する必要性について
C.縁側にっいて(縁側ある人)
必要か不必要かとその理由,将来、縁側を作るかどうか
有無個数,大きさ(幅、長さ),方角利用者,利用状況,開
ツとその理由
D.縁側について(縁側を持たない人〉
E.縁側に面している部屋について
F.温湿度,気流,日照について
個数,大きさ,方角,利用法,開閉理由
部屋の種類,縁側に接している建具の開閉時間,開閉の理由
日中・夜間の熱環境
咊?E夜間の乾燥度合い
咊?E夜間の風通し
叝ニ
書、を通じての屋外への出入りの頻度
o入りの理由
ラ室の日中・夜間の熱環境
@ 日中・夜間の乾燥度合い
@ 日中・夜間の風通し
@ 日照
G.廊下について
H。廊下の温湿度、気流、目照について
大きさ(幅),利用法
日照
咊?E夜間の乾燥度合い
咊?E夜間の風通し
咊?E夜間の熱環境
1.自由回答
縁側についての意見・考え
2
新潟県の一戸建て住宅における縁側の温熱環境と生活行為
の面する方位は,住宅Cの北側を除き東から南に
一◆一外無温度
+縁側温度(床上1.1m)
位置している。
+隣室潟麿(床上1.lm)
一一
+縁側湿度(床上’1.1m)
+麟室湿度(床上1.1m)
なお,今回調査対象゜とした住宅は建築年数が長
く経過した住宅が多く,設計図書を得られない住
宅も存在したため正確な断熱・気密性能は不明で
あるが,概ね断熱・気密性は低いレベルの住宅で
あったと考えられる。
90
80
^70
蓬・・
饗・・
ep 40
§
3.2 の温湿度 境の日 動
夏季における縁側(床上1.1m),隣室(床上
1.1m),および外気の温湿度の日変動を,図1に
示す。なお,以下の解析に用いるデータは,5件
の調査住宅における測定期間の平均値である。夏
季の温度の変動は,20℃から30℃程度の範囲で推
移し,縁側,隣室,外気の温度はほぼ同様な推移
を示す。また,1℃から2℃程度ではあるが,外気
q〉一外気温度
ig 30
鰻20
10
O
OO. 0 30. 0 6.00 90. 0 120. 0 150.0 18{}0 21DO
時刻
図1 夏季の縁側,隣室,外気の温湿度の日変動
の温度は縁側と隣室の温度に比べ明け方に低く,
一←一外気温度 +縁側温度(床上1.1m)
日中に高い値を示す。相対湿度の変動では,外気
+隣室温度(床上1.lm》+外気逗度
と室内では異なり,外気は50%から85%程度の
範囲で推移するが,縁側と隣室の相対湿度は60%
一〇一縁側温度(床上1.lm》+隣室温度(床上1.1m)
90
80
承
から75%程度の範囲となり,外気に比べ変動は小
^70
さい。全体的には,相対湿度は夜間から明け方に
Pt 60
かけて湿度は高く,日中には低い値で推移する。
釈50
穿40
秋季における縁側,隣室,および外気の温湿度
の日変動を,図2に示す。秋季の温度の変動は,
10℃から20℃程度の範囲にあり,縁側と隣室の温
度は同様な値で推移するが,外気温度は一日を通
ε、。
鑓、。
10
じて縁側と隣室の温度に比べ2℃から5℃程度低
い値を示す。相対湿度の変動では,夏季と同様に
縁側と隣室に比べ外気の湿度の変動は大きく,
O
OO. 0 3DO 60. 0 90. 0 12D. 0 15D. 0 1800 210. 0
時刻
図2 秋季の縁側,隣室,外気の温湿度の日変動
85%から60%程度の範囲で推移する。縁側と隣…室
の湿度は60%から70%程度の範囲で同様な値で
+外気温度
推移し,夏季に比べ変動は小さい。
+隣室温度(床上1.1m)
冬季における縁側,隣室,および外気の温湿度
一ロー縁側温度(床上1.lm)
+縁側温度(床上1.lm)
−D一外気湿度
+隣室湿度(床上1.lm)
90
の日変動を,図3に示す。冬季の温度の変動は,
0℃から10℃程度の範囲で推移する。外気の温度
80
求
^70
度低い値で推移する。縁側の温度は,夜間から明
越60
け方にかけては隣室と同様な値であるが,7時か
蕊50
写40
翁
は一日を通じて縁側と隣室に比べ3℃から6℃程
ら21時頃までの生活時間帯では隣室に比べ2℃
’から3℃程度低い温度で推移する。相対湿度の変
速 30
動では,外気の湿度は70%から85%程度の範囲
P・9 20
で推移し,夏季,秋季と異なり一日を通じて明ら
10
かに縁側と隣室よりも高い値を示す。縁側と隣室
O
OO. 0 30. 0 60. 0 90. 0 120. 0 150.0 180. 0 21DO
の湿度は,60%から70%の範囲で推移し,秋季と
時刻
図3 冬季の縁側,隣室,外気の温湿度の日変動
同様な変動を示す。
3
県立新潟女子短期大学研究紀要 第41号 2004
3.3
の上下,室内外,室間の温度差の日’動
らん時においては,室内外温度差が正の値を示す
ことから縁側の温度は外気よりも高い。団らん時
季節毎の縁側と隣室の上下温度差(床上1.1m
と0.lmとの温度差)の日変動を,図4に示す。
に比べ明け方の上下温度差は小さく,明け方では
上下温度差が大きくなるに伴い,上下温度差も大
夏季は,全体的に他の季節に比べ上下温度差の値,
および変動は小さく,0.4℃から1℃程度の範囲で
きくなる傾向にある。
推移する。縁側の上下温度差は隣室に比べ大きく,
特に9時から14時頃までの日中で顕著である。
秋季は,深夜から明け方にかけて縁側の上下温度
冬季においては,全ての時間帯で室内外温度差
は正の値を示すことから縁側の温度は外気よりも
高い。明け方の上下温度差は0.8℃前後であり,
差は隣室よりも0.5℃程度大きく,1℃付近で緩や
他の時間帯に比べ小さい。昼間の上下温度差は
かに低下する。また,5時から10時頃にかけて縁
側と隣室の上下温度差は急激に変動し,一日の最
大値である1.5℃前後の値を示す。その後12時以
1.6℃から2.2℃付近に広く分布し,団らん時では
れの時間帯も室内外温度差が大きくなるに伴い,
降では,縁側と隣室の上下温度差は同様で推移し,
上下温度差も大きくなる傾向にある。
1.4℃から1.6℃付近に分布する。冬季では,いず
1℃付近で安定している。冬季は,5時から9時頃
にかけて縁側と隣室の上下温度差は2℃前後まで
大きくなり,その後16時頃までは縁側が1.6℃前
後,隣室が2℃前後で推移する。また,21時から
+縁側(夏季)+隣室(夏季)+縁側(秋季)
+隣室(秋季)+緑側(冬季)一{ト隣室(冬季)
2.5
。620
が生じている。冬季では,全体的に生活時間帯の
上下温度差が他の季節に比べ大きい傾向にある。
〒1・5
ご
5時にかけて隣室の上下温度差は0℃付近まで急
激に低下するが,縁側では1℃程度の上下温度差
ξ
琶
判1・0
季節毎の室間温度差(縁側と隣室との床上1.1m
においては,日中に室間温度差が正の値を示し,
lig
の温度差)の日変動を,図5に示す。夏季と秋季
縁側の温度は隣室に比べ高い。夜間から明け方に
円O.O
ll ・.・
は室間温度差が負の値を示し,縁側の温度は隣室
に比べ低い。夏季の室間温度差の変動は,秋季に
一〇.5
0DO 300 6DO 9.00 12.00 15DO 18.00 21:00
比べ高い値で推移する。冬季の室間温度差の変動
時刻
図4 季節毎の縁側と隣室の上下温度差の日変動
は他の季節とは明らかに異なっており,一日を通
じて負の値を示し,縁側の温度は隣室に比べ低く
なっている。室間温度差が大きくなる時間は,8
+夏季
1.5
時頃と18時から21時頃であり,約3℃程度の温
度差が生じている。また,日中の室間温度差は
+秋季
+冬季
1.0
δ゜.側謎−奉譜V辮爆唄巨側
3、3 甘の室内外温差と上下,室田温度差の ,
縁側の夏季と冬季の室内外温度差と上下温度差
の関係を,明け方(4時から6時),昼間(IO時
から14時),団らん時(19時から22時)の時間
帯別に分け,図6と図7に示す。夏季の昼間にお
いては,室内外温度差が負の値を示すことから縁
5 0 ’5 ρ 5 0 ’5
0 0 0 1 1 2 2
コ ロ コ ロ コ
1.5℃から2.0℃であり,深夜から明け方にかけて
室問温度差は小さくなっている。
一3.0
側の温度は外気よりも低く,上下温度差は0.8℃
から1.0℃の範囲となり他の時間帯に比べ大きい。
一一
R.5
O:〔〕0 3〈.)0 6D.0 90.0 12:00 15:00 18DO 21.00
また,室内外温度差の絶対値が大きくなるに伴い,
時刻
図5 季節毎の室間温度差の日変動
上下温度差も大きくなる傾向にある。明け方と団
4
新潟県の一戸建て住宅における縁側の温熱環境と生活行為
夏季と冬季の室内外温度差と室間温度差の関係
を,明け方,昼間,団らん時の時間帯別に分け,
室よりの温度で推移することが明らかとなった。
冬季では,明け方の室間温度差は0.4℃付近に
分布し,他の時間帯に比べ小さい。昼間の室間温
度差は2.5℃から1.5℃程度の範囲に分布し,団ら
図8と図9に示す。夏季では,昼間の室間温度差
は0.5℃から1.0℃程度の範囲にあり,他の時間帯
に比べ大きな値を示す。昼間では,室内外温度差
の絶対値が大きくなるに伴い,室間温度差も大き
くなる傾向にある。室内外温度差と室間温度差の
3.1℃から2.4℃程度の範囲に分布する。昼間と団
関係より各測定ポイントの温度の大小関係をみる
きくなる。室内外温度差と室間温度差の関係より
と,昼間においては外気温度〉縁側温度〉隣室温
各測定ポイントの温度の大小関係をみると,夏季
度となり,明け方と団らん時では隣室温度〉縁側
とは異なり一Bを通じて隣室温度〉縁側温度〉外
気温度となる。また,室内外温度差と室間温度差
ん時の室問温度差は他の時間帯に比べ大きく
らん時には,室内外温度差と伴に室間温度差は大
温度〉外気温度となる。また,室内外温度差と室
間温度差を比較すると室内外温度差に比べ室間温一4
の比較では,夏季と同様に室内外温度差に比べ室
度差は小さい傾向を示す。この様なことから,夏
間温度差は小さい傾向を示す。この様なことから,
季において縁側の温度は一日を通して外気と隣室
冬季においても縁側の温度は外気と隣室の中間的,
の中間的な値を示すが,外気に比べ居室である隣
かっ隣室よりの温度で推移している。
麗
1.1
琶
肩 o・s
柵0.7
唄
Fo.6
0.5
0 8 6 4 2 0 8
︵o°.ξdー∈一.コー世︶柵爆唄ド図
ξ
〒α9
ワの コ コ ハ ≦
。61つ
0.6
−2.0 −1。0 0.0 1。0 2.0
2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
室内外温度差(縁側一外気゜C)
図6 夏季・縁側の室内外温度差と上下温度差の関係
室内外温度差(緑側一外気,℃)
図7 冬季・緑側の室内外温度差と上下温度差の関係
1.5
0.0
翻
翁1.o
翁
◆明け方
一〇.5
」昼間
穀cらん時
Wt1・o
毒
蚤1五
聾
1α5
奉
鋼0.0
津o
卯興
唄一2.5
側
側一〇・5
一3.0
一1.0
一3.5
−2.0 −1.0 0.0 1.0 2.0
2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
室内外温度差(緑側一外気,℃)
室内外温度差(緑側一外気,℃)
図8 夏季の室内外温度差と室間温度差の関係
図9 冬季の室内外温度差と室間温度差の関係
5
県立新潟女子短期大学研究紀要第41号2004
4.縁側に関するアンケート調査結果について
答とともに,「何となく欲しい」,「日本的家屋が
4.雀 嘘の無と必
國IOに,住宅における縁側の有無についての
好きだから」といった漠然とした,あるいは好み
回答の集計結果を示す。住宅に縁側の「ある」と
図13に,縁側が必要でないと思う理由にっい
の回答が31%,iない」が69%であり,現在の住
宅においては縁側のない住宅が多い。縁側のある
ての回答の集計結果を示す。縁側が必要でないと
の意見は少数であるが,その理由では「土地が狭
住宅では,縁側が設置される方位は,東,南東,
い」,「縁側を作るより他の部屋を作りたい」とい
に関する要素も挙げられている。
南が多くなっており,縁側に隣接する部屋は座敷
った住宅の規模的制限による理由と,「活用しな
が最も多く,次いで仏間と居間となっている。
いから1,「洋風の方が好きだから」といった否定
図11に,住宅における縁側の必要性にっいて
の回答の集計結果を示す。縁側が必要であるとの
回答は85%と多くなっており,将来,住宅を建て
的,あるいは好みに関する要素が挙げられている。
2
る時に縁側をつくりたいとの回答も71%と高い
値を示した。回答者の内訳についてみると,現在
1
の住宅に縁側がある回答者は17人中全員が必要
であると回答し,縁側がない回答者においても38
0
40
(人)
10 20 30
図10縁側の有無
人中3◎入が必要であると回答している。
図12に,縁側が必要であると思う理由につい
ての回答の集欝結果を示す。縁側が必要な理由と
2
しては,f安らげる空聞だから1, f利用上便利な空
1
1:必要である
2:必要でない
間だから」,纏を見せる」,「採光の調飾ができ
0
る」といった具体的な生活上の理由を指摘する回
10 20 30
50
4
45
30
35
2§
25
肇倉
肇5糞
図11縁側の必要性
(人〉
40 50
(人)
Ql:日本的家屋が好きだから
Q2:必蚕なときに部屋を広くできる
Q3:外からのプライバシーを守る
Q4:縁側があるのは当然だから
Q5:庭を見せる
Q6:何となく欲しい
Q7:安らげる空聞だから
Q8:利用上便利な空間だから
Q9:風を和らげる
QlO:採光の調節ができる
Ql 1:黙を和らげる
Qf2:外部音を和らげる
Q重 {}2 Q3 (}4 Qs Q6 Q7 Q8 Qg QIe Ql 1 Ql2
《λ}
5
蟹麺縁働が必要であると思う理虫(複数回答)
Qr:土地が狭い
Q2:縁側を作るより部屋を作りたい
Q3:防犯上心配だから
Q4:洋風の方が好きだから
Q5:活用しないから
4
3
Q6:古くさいから
Q7:部屋が暗くなるから
2
︷手
f}f
Q2
Q3 Q4 Q5 Q6 Q7
図13縁側が必要でないと思う理由(複数回答)
6−一
新潟県の一戸建て住宅における縁側の温熱環境と生活行為
4.2縁側での生活行為
4.まとめ
図14に住宅に縁側を有する居住者の縁側での
生活行為,図15に縁側のない居住者が縁側で行
本研究では,積雪寒冷地の新潟県における縁側
いたいと考える生活行為についての回答の集計結
見を得た。
の温熱環境と生活行為について調査し,以下の知
果を示す。
1)縁側の上下温度差の日変動は,他の季節に比
縁側を有する居住者の回答では,一年を通じて
べ冬季の昼間から団らん時に大きくなる傾向にあ
発生している生活行為は「物置」,「通路」,「物干
り,1.5℃から2.0℃程度の値を示す。
し」としての利用である。季節により変化が認め
2)縁側と隣室の温度差の日変動は,夏季と秋季
られる行為には,「観葉植物を置く」が秋季と冬季,
においては昼間の温度が隣室よりも縁側の方が高
く,冬季では一日を通じて縁側の温度は隣室より
「夕涼み」が夏季,「ひなたぼっこをする」,「読
も低い値を示す。
書・新聞を読む」が春季に多くなっている。一方,
縁側のない居住者では,行為全般について回答が
3)縁側の上下温度差は,他の時間帯に比べ夏季
分布しており,多様な行為の場として緑側を利用
においては昼間,冬季では昼間と団らん時に室内
したいと考えていることが分かる。
外温度差の増加に伴い大きくなる傾向を示す。
較を行うと,廊下での生活行為は通路・物置以外
4)縁側の温度は,夏季・冬季ともに一日を通じ
て外気と隣室の中間的,かつ隣室よりの温度で推
の用途にはほとんど使われていない。さらに,温
移する。
また,同時に調査した廊下での生活行為との比
熱環境要素である温湿度,気流,日照に関するア
5)縁側が存在する住宅は全体の約3割であるが,
ンケート結果においても,縁側に対する評価は良
縁側の必要性については8割以上の居住者がC必
好であるが,廊下においては居住者o評点は低い
要である」と考えている。
6)縁側を有する居住者の行為では,「物置」,「通
値を示す。
42086420
●春 璽夏 ロ秋 ■冬
(人)
︶
1
2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10)
11) 12> 13)
図14縁側での生活行為(縁側を有する居住者,複数回答)
■春●夏口秋■_
(人)
35
30
25
20
15
10
5
0
1) 2)
3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11)
図15縁側での生活行為(縁側のない居住者の回答,複数回答)
7
12) 13)
県立新潟女子短期大学研究紀要 第41号 2004
謝辞
本調査にあたり,当時県立新潟女子短期大学生
活科学科生活科学専攻の学生,およびご家族の皆
様にご協力を頂いた。またデータの整理において
は,当時県立新潟女子短期大学生活科学科生活科
学専攻の学生,相田久美子,坂井亜紀代,元川朋
美,清田沙里,田村ちつる,長井愛の諸氏にご協
力頂いた。ここに記して深謝の意を示す。
路」,「物干し」といった季節を通じて行われる行
為と,「観葉植物を置く」,「夕涼み」,「ひなたぼっ
こをする」,f読書・新聞を読む」といった季節に
より発生する行為が存在する。
7)縁側のない居住者では,行為全般について回
答が分布しており,多様な行為の場として縁側を
利用したいと考えている。
今回の調査結果より,縁側は温熱環境の面にお
いては,屋内外の緩衝的,あるいは中間的な性状
を示すことから,住居計画において断熱気密境界
などといった点に配慮することにより,屋外温熱
参考文献
1)岩焙隆,高橋百寿,西村伸也,杉浦進:空間構
成と生活行為からみた新潟市の独立住宅の住戸廻
りの空間に関する研究,日本建築学会計画系論文
報告集,No.418,59・69,1990
2)高木真人,小川一人,仙田満:昭和期住宅の廊
的空間における機能に関する研究一縁側・廊下に
環境の室内への影響を和らげる効果が期待できる
と考えられる。さらに,生活行為の面においても,
縁側では様々な生活行為の場としての必要性が指
おけるこどものあそび行為の変遷を中心として
.摘されていることから,規模・空間構成などの点
一:日本建築学会計画系論文集,No.507,95・101,
1998
において検討することが必要であると考える。
3>山岸明浩,河路友也:新潟県北魚沼郡守門村に
おける住宅の玄関囲いおよび物干し場の冬季温熱
環境と居住者意識について一積雪寒冷地における
中間領域の温熱環境に関する研究一,日本建築学
会学術講演梗概集,D・2,175・176,1998
今後においては,縁側と同様な緩衝的空間の役
割を担えると考えられるサンルームや車庫につい
ても検討しながら,地域の気候風土に適した住居
計画について考究する予定である。
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