リサーチ TODAY 2014 年 9 月 18 日 中国の日本車販売に欠けるものはなにか 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 中国では、中西部などの地方でマイカーの普及が急ピッチに進むことで、依然として自動車市場全体の 拡大が続いている。2012年秋の尖閣諸島問題を契機に日本車の販売は極度な不振に陥ったが、下記の 図表にあるように中国政府の環境規制強化や日系メーカーによる新モデル投入が奏功し、2013年には販 売が持ち直している。みずほ総合研究所は、中国における日本車販売動向に関するリポートを発表してい る1。日本車の販売シェアは最悪期を脱したが、まだ伸び悩んでいるのが実情であり、そこには日本企業が 中国において必要としている戦略の鍵が隠されていると、みずほ総合研究所は考える。 ■図表:中国における日系合弁自動車メーカー3社の乗用車販売台数 東風日産 (万台) 一汽トヨタ 広州ホンダ 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 2011上 11下 12上 12下 13上 13下 14上 (年/期) (資料)CEIC よりみずほ総合研究所作成 前述のように、日系メーカーの販売台数は最悪期を脱したものの、2014年に入ってから再び減速傾向を みせ、今年の販売見込みが下方修正される動きも出始めた。中国の市場全体の成長が続く中、日本車は その成長を十分に取り込めていない。次ページの図表に示されるように、日系3社のシェアは持ち直してい るが、2011年の水準を上回ることができずに伸び悩みの状況にある。一方、ドイツのフォルクスワーゲンは シェアを伸ばし、日系と対照的な状況にある。この背景には日本車が中国政府・消費者に対し安全性・環 境性の高さを十分訴求できていないことがある。 1 リサーチTODAY 2014 年 9 月 18 日 ■図表:中国における独VWと日系3ブランド乗用車の販売シェア 20.0% 18.0% VW 16.0% 14.0% 日産 12.0% 10.0% トヨタ 8.0% 6.0% ホンダ 4.0% 2.0% 0.0% 2011/1 11/4 11/7 11/10 12/1 12/4 12/7 12/10 13/1 13/4 13/7 13/10 (年/月) (資料)CEIC よりみずほ総合研究所作成 みずほ総合研究所では、中国における日本車を巡る環境を踏まえたうえで、次のように中国市場での日 本企業全体へのインプリケーションを考えている。 1. 耐久消費財市場について、沿海部では飽和感があるが、中西部などの地方では普及余地が 大きい 2. 中国政府は、省エネ・環境に関する規制を継続して強化している 3. 中国市場の嗜好にあった戦略製品を投入することが重要である 4. 中国の消費者および政府に、わかりやすくPRすることが重要である 5. 外資系企業が突発的なビジネスリスクに直面するリスクが高まっている 中国市場における外資のビジネスチャンスは引き続き大きいが、そこでは同時にリスクも拡大している。 また、中国市場に向かうには中国市場の特性を掴んだマーケティングが不可欠であり、同時に消費者や政 府へのPRを欠かさないという基本に帰る必要がある。日本車の教訓は中国でのビジネスの姿勢に一つの 参考事例を示すものだ。 1 酒向浩二「中国における日本車販売の動向」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2014 年 9 月 2 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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