アメリカ政治史演習 担当 金井光太朗 授業のテーマ:ヨーロッパ公法秩序とアメリカ自由の帝国 アメリカ合衆国の独立とはヨーロッパを中心とする世界秩序の中で主権性を承認されることで あった。単純に独立の宣言とその承認で完了するものではない。主権国家としての実質を証明し、 ヨーロッパ公法秩序の水準に適った文明性、公共性を備えた政府を樹立する必要があった。それ ゆえ、アメリカ合衆国は連邦憲法を制定して統一した意思決定を行い、それを対外的にも実行し てゆく体制を築かざるを得なかった。他方、ヨーロッパ世界では一大転機を迎えていた。アメリ カ独立戦争はその転換を一気に促進してゆくことになった。イギリスは国内改革を進め、フラン スは大革命からナポレオンの台頭、共和革命の国外への拡大などヨーロッパ全体の激動を引き起 こしてゆく。特に、スペイン帝国は本国の混乱も含めて大きく動揺を来たし、19世紀には解体し てしまう。それに伴う無法状態を収め、秩序維持の責任を承継したのがアメリカ合衆国であった。 1821年にはスペインとの条約で北西部太平洋岸までの領土を認めさせ、大陸国家としての地位を 確定した。その西半球で公法秩序を維持する責任を負う宣言として,モンロー・ドクトリンを考 えることが出来る。 授業の進め方: ヨーロッパ公法秩序という概念を見事にまとめ上げたのはドイツの法哲学 者カール・シュミットであった。彼の『大地のノモス』を読んでその枠組みをしっかりと理解す る。その上で、最近のアメリカ外交史家による新しいアメリカ建国解釈を読んでゆく。アメリカ の独立から大陸発展をごく自然な流れと受け止めるのではなく、当時の歴史的情勢を理解しアメ リカが独立を認めてもらう必死の努力、そうした営みからルイジアナ領地、フロリダ植民地めぐ る交渉からスペイン帝国の崩壊とその承継への歴史的流れをつかんで欲しい。 選考の方法: 規定の人数を超えた場合は、小論文により選考する。 卒論テーマ Working on a Dream: ロックミュージックが担うアメリカリベラリズムの夢/星条旗をめぐる「内 戦」/"Rhapsody in Blue" に見るアメリカ性/個人主義の変化から考えるアメリカの車離れ/ 9.11後のアメリカにおける政治的PR/国家と家族の狭間に揺れる日系ハワイ人のアイデ ンテ ィティ/フィリッピン有産知識階層支配構造とアメリカ植民地政府/アメ リカ社会におけるヒ ップホップの叫び/第2次世界大戦中にディズニーが果たした役割/アメリカと同性愛 メールアドレス等: [email protected]、研究室:659、オフィスアワー:水5限
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