展 望 - JA 全中

農畜産物輸出の振興と農業所得の拡大 ◆ Outlook by Takeshi Kanai
展 望
JAの進むべき道
農畜産物輸出の振興と農業所得の拡大
JA全中は、JAグループ輸出推
る。今後、GI を取得した農畜産物の
進対策本部委員会を設置し、組織を
輸出拡大を通して、より高い果実を
挙げた輸出の取り組み体制を構築し
とることが期待できることから、輸
た。併せて、専任事務局体制として、
出と併せて GI 制度の推進に取り組ん
農業対策部に「輸出・GI 対策室」を
でいるところである。
設置した。
一方、海外の食に対する考え方や
農畜産物輸出は、少子高齢化が進
みわが国の市場が縮小傾向にある中
金井 健
(JA全中常務理事)
で、新たに海外の市場を開拓し、国
市場の実態に目を向けることで、われ
われひいては国民の食に対する意識
改革につながるのではないかと思う。
内市場も含めて国産農畜産物の市場を拡大す
日本は物価の高い国、特に食品が高い国と
る取り組みである。輸出を拡大することによ
いう先入観がある。国内の農畜産物価格が低
り、海外の果実を生産現場に還元することで、
迷しているにもかかわらず、さらに価格競争
生産の拡大と所得の増大に挑戦する取り組み
を進めようとしている。しかし、わが国は海
である。
外と比べると、もはや物価の低い国になりつ
また、輸出により、わが国の安全で高品質
つあるようである。来日した外国人が驚くこ
な農畜産物が海外で高い評価を得て世界ブラ
とは、東京の中心である東京駅付近のビルの
ンドになることになれば、国内においてもブ
地下街で、ランチを1,000円以下で食べるこ
ランド力が高まり、付加価値が増大すること
とができ、弁当が500円程度で買えるとい
が期待できる。だから低価格で販売すること
うこと。この食の安さについて皆一様に信じ
はない。まずは海外の富裕層をターゲットに
られないという。
高価格で販売し、販売の裾野を拡大していく
為替レートや所得の差もある中で単純に比
など10年以上先を視野に入れた長期的な戦略
較することはできないとしても、われわれと
が必要である。
は食に対する価値観が違うようである。食は
そのためには、地理的表示保護制度(GI 制
命の源で最も大事なものであり、農業の再生
度)が有効である。欧州において付加価値の
産が可能な価格を支払うものと考えているよ
高い食品はGI 産品であることが一般的であり、
うである。成熟した先進国の責務として、意
わが国も昨年施行され登録申請が行われてい
識改革を進めたい。
2016/05
月刊 JA
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