教示による意図性尺度評定値と確信度の関係変化 妻藤 真彦 (美作大学大学) キーワード:尺度評定,教示の効果,評定の確信度 An effect of instruction to a relation between scale rating for intentionality and its confidence. Masahiko Saito (Mimasaka University) Key Words: scale rating, effect of instruction, confidence rating for a scale rating 目 的 量的な情報が元々あって尺度評定を行う場合と, “はい・い いえ”等の2値情報しかない(考えられない)ときに,その 判断の確信度が変換されて尺度値として回答する場合がある のではないか;それが起こっているときの一つの指標として, 妻藤(2007)は各質問項目の回答者に渡る平均値と,質問項 目内での評定値と確信度の回答者に渡る相関係数(項目内評 定確信相関)の間に,1に近い相関が出ることを論じた(確 信度の内的サンプリング理論との関係は,妻藤,2014)。この 一種のメタ相関係数を以下では rv とする。妻藤(2007)では, ある人の行動記述文について,どの程度意図的であったかを 尋ねた場合,rv が非常に大きく,行動に原因を付加した文(例 えば“遅刻しそうだったので”など)では少し小さくなり, 理由を付加した文(内的な理由: “急いでいたので”など)で は,かなり小さくなった。そこではフェイスシートの説明の 最後に“あまり考え込まず・・”という文を入れていたので, 以下では, “できるだけ直観的に”と“できるだけ考えて”と いう教示によって,rv 等が変化するかどうかを検討する。ま た,教示が実際に相違を作り出したかどうかを見るために, 各質問ごとに“直観的” “思考的” “両方”の選択肢を設けた。 ただし,各質問ごとに判断方式を回答すると,判断の仕方を 気にして自然な判断処理ではなくなる可能性もあるため,こ の回答と他の変数の関係も分析に含めて検討する。 方 法 大学1・3年生 234 名;回答不備が 27 名:有効数 207 名。 Malle & Knobe(1997)の行動記述文セットから妻藤(2007)が 10 個選択して,その行動を日本語で記述しなおしたもの。ど のくらい意図的だったかという質問に5点尺度で回答(意図 性評定)。各行動文の右のスケールに○を記入。この回答への 確信度を5点満点の数字で回答。その下に妻藤(2007)には なかった次の質問:“これを回答したときの判断は(直感的 両方 思考的)だった”を付加。この“行動のみ”質問紙の 他に,各文にその行動の原因を付加した文章による質問紙“原 因付き”を作成。さらにフェイスシートを2種: “できるだけ 直観的に答えてください(ただし考えないと答えられない場 合は考えて)” (直観教示)と, “できるだけ考えてみた上で答 えてください(ただし直観しかないときは直観で)”(思考教 示)。このように2教示×2記述タイプ(行動のみ,原因付き) の4条件。各々について質問の異なるランダム順が2種。異 なる回答者群に配布。 結 果 と 考 察 10 行動項目中の直観的回答数と,思考的回答数 (直観+ 思考+両方=10)を従属変数(回答者に渡る平均が表1)とす る多変量分散分析は,教示の効果が有意(Pillai のトレース: F(2,202) = 31.06, p <.001)。一変量検定でも両方が有意。 意図性評定と確信度を従属変数とした2教示×2記述タイ プ×10 行動項目の多変量分散分析において行動項目の主効果 表1 直観数・思考数の平均 直観数 直観教示 思考数 思考教示 直観教示 思考教示 行動のみ 6.04 3.61 1.49 3.57 原因付き 6.19 3.62 1.9 3.49 ( Pillai のトレース: F(18,186) = 58.02, p <.001)と, 記述タイプ×行動項目が有意(Pillai のトレース:F(18,186) = 5.99, p <.001),記述タイプの主効果は,p <.10。原因が 付加されると意図性評定値が変化する項目とそうでないもの がある。ここには教示の効果はない。下位検定(一変量検定) でも,評定値と確信度共に主効果と交互作用は同じ結果;rv を計算する前提である行動項目間の相違が確認された。 rv は直観教示・行動のみ条件で .94,原因付き.82;思考教 示・行動のみ.94,原因付き.90。直観教示は妻藤(2007)の.97 と.91 よりもやや小さい。判断の仕方教示だけでなく,各質 問ごとに直観的か思考的かの回答をいちいち求めたので,か えって判断法の教示から外れたケースが増えたかもしれない。 そこで,行動項目ごとに教示違反率(人数比率)を計算(直 観教示では思考率,思考教示では直観率)。項目内評定平均(10 個)から項目内評定確信相関を予測する線形回帰分析を step1 とし,独立変数に教示違反率を追加した step2,さらに項目 内評定平均と違反率の交互作用を追加する step3の階層的重 回帰分析(表2);独立変数のセンタリングは平均減法。 表2 項目内評定確信相関を従属変数とする階層的重回帰 直観教示行動 原因 思考教示行動 原因 R .99*** .82*** .94*** .90*** † (s3:⊿R2 **) (s1) (s1) (s1) †:s1 は step1,s3 は step3(交互作用項含む)を示す 直観教示・行動のみでは step3 の⊿R2 も交互作用項も有意 で係数は負:項目評定平均と教示違反率の大きさの関係によ っては項目内評定確信相関が小さくなる効果。これが rv の値 を小さくしていたと考えられる。他の条件では全て,step2 以降の⊿R2 も,項目平均以外の係数も有意ではない。教示遵 守率では全ての条件で⊿R2 は ns。R あるいは rv が1に非常に 近いことから考えて,与えられた情報が少ないと2値判断に なり,かつ直観的に判断しようとすると確信度と評定値の混 合が起こるのだと思われる。思考教示は R がグレーゾーン。 引用文献 Malle,B.F,& Knobe,J. (1997). Journal of Experimental Social Psychology,33,101-121. 妻藤真彦(2007). 心理学研究,77,541-546. 妻藤真彦(2014). 美作大学・同短大部紀要,59,7-16.
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