ご参考 - 格付投資情報センター

格付方法
親会社と子会社の格付の考え方
2013 年 11 月 8 日
1.親会社の格付の考え方
R&I は親会社を格付する際、原則として傘下の子会社を含むグループ全体のキャッシュフロー創出力・財務構
成を評価する。グループは連結対象会社が基本となるが、グループとしての事業リスクと財務リスクを過不足なく
評価するため、実態に応じて、財務会計上の連結範囲に必要な調整を加える。連結の範囲に含まれない関連会社な
どでも、将来、その事業リスクと財務リスクが、支援などの形で親会社グループの評価に重要な影響を及ぼす可能
性があれば、その影響を考慮する。
持株会社グループの場合、グループの中核的な事業を担い、キャッシュフローの源泉となっている中核会社の発
行体格付は、グループの信用力を反映する。
2.子会社の格付の考え方
子会社の発行体格付にあたって基本となるのは子会社自身の評価である。債務を返済するのはあくまで当該債務
者であるからだ。しかし、その子会社が親会社にとって重要な存在であれば、子会社の格付に親会社の存在を考慮
することがある。経営困難時に親会社から何らかの支援を受けられる可能性が高いと判断すれば、子会社の財務諸
表をベースとして評価するよりも高い格付を付与するケースがある。
子会社のスタンドアローンの評価をベースに、親会社やグループの支援の可能性をプラス評価することを「ボト
ムアップアプローチ」と呼ぶ。ボトムアップアプローチでは、子会社のスタンドアローンの信用力評価に、
(1)グループの経営資源の活用などによる有形・無形のメリット(2)経営困難に陥った場合のグループ他社か
らの支援の可能性――などを加味する。(1)については、長期にわたってグループのメンバーとして活動してい
る企業の場合、既に現在の財務諸表に反映されている部分のダブルカウントは避ける。
親会社やグループの事業上なくてはならない極めて重要な子会社については、親会社や中核会社の格付をベース
に、その重要度に応じてノッチダウンして格付を付与することがある。こうした手法を「トップダウンアプロー
チ」と呼ぶ。トップダウンアプローチをとる子会社のうち、極めて重要かつ不可欠な存在で、経営が悪化した場合
には支援せざるを得ず、破綻するとしたら親会社や中核会社への波及がほぼ同時となる可能性が高いと判断すれば、
親会社等と同格となることもある。
R&I では、以下のような観点から親会社やグループにとっての子会社の重要性を判断している。
・議決権比率(現在の保有比率だけでなく、過去の推移や今後の見通しも考慮する)
・グループ戦略上の役割が明確か
・親会社から子会社に対するキープウェル契約など子会社の債務履行を包括的にサポートしていると判断できる契
約があるか
・親会社またはグループにとって機能面から必要な存在であり、かつ代替できない会社であるか
・規制などの要因により分社した会社であり、実質は一体とみなすべき会社であるか
・本質的に親会社や中核会社と同じ業務を分担し、顧客を共有するか
・親会社の連結収益やキャッシュフローに大きく貢献しているか
・当該子会社の破綻が親会社やグループ他社のブランド価値、事業価値に著しいダメージを与えるか
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格付方法
親会社と子会社の資本や人的な結びつきが強いことと、親会社にとっての子会社の戦略的重要度の高さは必ずし
も一致しない。新規事業や小規模の事業であるために親会社からの出資のみで資金調達し、人材の派遣を受けてい
るケースもあるからだ。
親会社やグループにとっての重要性が継続する見通しも重要だ。ある時点では親会社の戦略上極めて重要な子会
社も、経済合理性に合わなければ見直しの対象となるためだ。例えば、過去の資金不足時に親会社が多額の資金を
支援した実績がある子会社でも、改善の見通しが立たなければ、親会社は支援をやめる決定をすることがありうる。
こうしたことからトップダウンアプローチを採用する際は、一定の収益が上がっている、財務面でも一定水準の健
全性がある(新設会社などの場合は近々債務超過解消の見通しがついている)ことが必要となる。
子会社の債務返済能力は、子会社自身の事業リスクを踏まえたうえで、そのキャッシュフロー創出力と有利子負
債の水準などをベースに判断するのが基本である。親会社の信用力をベースとするトップダウンアプローチを採用
するには、負債が親会社の負債に近いと考えられるほどその子会社が特別な存在であることが必要となる。子会社
の発行体格付がトップダウンアプローチにより、親会社との乖離がなく、同格となった場合は、デフォルトリスク
をほぼ共有していると判断したことになる。
3.優良な子会社の格付の考え方
優良親会社を持つ子会社の評価は、「親会社の信用をどの程度子会社の格付にプラス評価できるか」の切り口で
評価するのが基本だ。しかし、なかには親会社よりも潤沢なキャッシュフロー創出力があり、財務構成も良好で、
親会社の支援を必要としない優良な子会社も存在する。
R&I は、財政状況が非常に優良であったとしても、原則として、子会社の格付は親会社の格付が上限であると
考えている。子会社である以上、(1)親会社による経営への介入があり、様々な取引を通じて直接的または間接
的に利益が管理される(2)配当などで資金を吸い上げられる(3)議決権比率によっては親会社の意向でいつで
も吸収合併や株式交換・移転などによる完全子会社化が可能――などの潜在的リスクがあるためだ。
ただし、子会社が金融機関である場合のように、法制度や公的規制などによって親会社のリスクが子会社に及び
にくい、あるいは、親会社にとって独立性の高い子会社の価値を高く保ち続けることが重要などの場合、子会社の
発行体格付が親会社を上回ることがあり得る。
R&I では、以下のような観点から、子会社の格付が親会社の格付を上回ることができるかを判断している。
・法制度や公的規制、親会社の株主権を制約する契約、子会社株式売却の具体的な予定があるなど、親会社のリス
クが子会社に及びにくくなるような客観的事実が存在するか
・子会社の上場の有無や議決権比率の水準、資金調達手段など、形式的にみて子会社の独立性は高いか
・親会社との事業の関連性が薄いか、親会社から切り離されても存続可能な事業か。また親会社は独立性の高い子
会社として価値を高く保とうとしているか
子会社が上場していたり、親会社と子会社の事業の関連性が薄いなど、形式的には親会社から独立しているよう
にみえても、実質的には親会社の支配力が強い場合もあり得る。親会社のリスクが子会社に及ぼす影響は、その実
態を慎重に見極める必要がある。R&I では、親会社の信用力やコーポレートガバナンス(企業統治)なども勘案
しながら、親会社による潜在的リスクの発生の可能性を個別事例ごとに吟味して、子会社の格付を判断する。
このような場合でも、一般には子会社の発行体格付が親会社を大きく上回るとは考えにくい。たとえ両社の単独
の財政状態がかけ離れていたとしても、親会社が株式を保有する理由があるはずである。一方、子会社の良好なキ
ャッシュフローなどを過度に織り込むことは適当ではないものの、親会社の連結財務諸表には子会社の財政状態が
反映される。原則として、両者の格付格差は小幅にとどまる。
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格付方法
4.親会社と子会社の格付の関係
親会社と子会社を格付するにあたって、考え方に矛盾が生じないよう留意している。例えば、いざというときに
親会社から支援を得られる可能性が高いとしてスタンドアローンよりも高い評価を得ている子会社があれば、その
親会社には子会社への支援リスクを十分に反映させる。
反対に、親会社のリスクが子会社に及びにくいなどの理由で、子会社に親会社を超える格付を付与している場合
は、親会社の信用力を判断する際に、当該子会社の潤沢なキャッシュフローを必要以上に考慮しないよう、当該子
会社の良好な収益や財務が反映されている親会社の連結財務諸表を割り引いて判断する。
*これまで公表した同種の格付方法は、本稿に代替されます。
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