伝熱工学講義ノート (第 8 版)

埼玉工業大学(小西克享)
伝熱工学講義ノート(第 8 版)
伝熱工学講義ノート
(第 8 版)
埼玉工業大学工学部機械工学科
小西克享
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埼玉工業大学(小西克享)
伝熱工学講義ノート(第 8 版)
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はじめに
やかんで湯を沸かす.冷蔵庫で氷を作る.洗濯物が乾燥する.路面の水が蒸発する.等々,日
常的に目にする機会の多い事柄は,すべて熱の移動を伴う現象である.工業的にも生産工程にお
いて,加熱や冷却といった熱の問題は避けて通ることができない.熱の移動に関する知識は伝熱
工学として理論的に体系化され,熱の概念を扱う熱力学とともに熱工学分野の重要な科目となっ
ている.機械系エンジニアにとって,伝熱の基本的な知識は必要不可欠である.
本書は教員が講義する上で用いる講義ノートの形式をとっており,伝熱工学に関する要点をま
とめると共に,式の導出を詳細に解説している.各項目に関して,市販の教科書の解説を熟読す
ると共に本書を併用することによって,重要事項の理解が容易になるものと期待している.
内容は今後とも加筆修正の予定である.内容に関して不明な点やお気付きの点があれば著者ま
でご連絡いただきたい.
平成 26 年 9 月 1 日
埼玉工業大学 工学部 機械工学科 小西克享
2
埼玉工業大学(小西克享)
伝熱工学講義ノート(第 8 版)
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目次
第1章
伝熱工学の基礎事項
1.1 伝熱の定義
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
1.2 伝熱の本質
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
1.3 伝熱の 3 形式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
第2章
定常熱伝導
2.1 熱流束(heat flux)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
2.2 フーリエの法則
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
2.3 熱伝導率,λ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
2.4 温度場
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
2.5 平行平板の熱伝導
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
2.6 円管の熱伝導
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
2.7 球状壁の熱伝導
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
熱伝導のまとめ1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
熱伝導のまとめ2(伝熱量の式)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
第3章
熱通過
3.1 熱伝達率
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
3.2 平板壁の熱通過
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
3.3 多層平板壁の熱通過
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
3.4 円管の熱通過
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
3.5 多層円管の熱通過
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37
3.6 伝熱面付着物の影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
第4章
熱交換器の伝熱計算
4.1 熱交換器の種類
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42
4.2 温度差
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42
4.3 対数平均温度差
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
4.4 温度効率
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48
4.5 エネルギー効率
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
第5章
フィンの伝熱
5.1 温度分布の式と全放熱量
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50
5.2 フィン効率
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
5.3 フィン付き伝熱面からの放熱量
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55
5.4 フィン付き伝熱管の放熱量
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
第6章
無次元数
6.1 基本単位と次元式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
6.2 無次元数
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
3
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6.3 レイノルズ数(Re 数): 流れの特性を表す無次元数
・・・・・・・・・・・・・・ 60
6.4 ヌセルト数(Nu 数): 熱伝達の大きさを表す無次元数
・・・・・・・・・・・・・・ 62
6.5 プラントル数(Pr 数): 流れと熱移動の相関を示す無次元数
・・・・・・・・・・・・・・ 63
6.6 グラスホフ数(Gr 数): 自然対流の強さを示す無次元数
・・・・・・・・・・・・・・ 63
第7章
次元解析
7.1 次元式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
7.2 物理系と工学系の次元式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
7.3 バッキンガムの π 定理
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65
7.4 次元解析
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67
7.5 次元解析のメリット
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69
7.6 対流熱伝達の実験式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69
第8章
沸騰
8.1 沸騰様式の分類
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74
8.2 沸騰熱伝達の様相
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74
8.3 核沸騰と伴流
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74
8.4 沸騰特性曲線
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75
8.5 飽和温度
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75
8.6 臨界点
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77
8.7 二相流
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77
8.8 核沸騰における熱伝達率
8.9 バーンナウト熱流束 qmax [W/m2]の値
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 78
第9章
凝縮
9.1 凝縮の分類
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
9.2 凝縮熱伝達
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
9.3 膜状凝縮の熱伝達率
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80
9.4 滴状凝縮の熱伝達率
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81
9.5 直接接触凝縮の熱伝達率
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81
第 10 章
放射伝熱
10.1 放射伝熱の概念
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82
10.2 熱放射の基本法則
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82
10.3 高温ガスの熱放射
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85
10.4 二面間の放射伝熱
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86
10.5 放射熱の遮断
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91
10.6 形態係数の算出式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93
10.7 形態係数に関する法則
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94
第 11 章
太陽放射
11.1 データ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96
11.2 太陽放射のメカニズム
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97
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11.3 太陽定数
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97
11.4 太陽放射の組成(太陽からの放出時)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97
11.5 地表に到達する成分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98
11.6 日射量の測定
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98
第 12 章
物質拡散(拡散)
12.1 拡散現象
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100
12.2 フィック(Fick)の法則(拡散方程式)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101
12.3 境界層の種類
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105
12.4 拡散に関する無次元数
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106
12.5 拡散係数
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107
12.6 液滴の蒸発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107
第 13 章
内部発熱問題
13.1 内部発熱を伴う円柱内部の熱伝導
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111
13.2 発熱体を内部にもつ円筒の熱伝導
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112
13.3 発熱体から液体への熱伝達
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
14.1 熱伝導方程式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118
14.2 差分近似
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 122
14.3 表計算による直交座標系非定常熱伝導の数値解法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125
14.4 表計算による円柱の非定常熱伝導の数値解法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133
14.5 直交座標系定常熱伝導の数値解法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135
14.6 円柱座標系定常熱伝導の数値解法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144
14.7 熱交換器の定常熱伝導の数値解法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
14.8 フィンの定常熱伝導の数値解法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 153
14.9 非定常拡散の数値解法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156
理解度チェック
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 158
理解度チェック解答
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 175
引用文献
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 178
5
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第1章
第1章
伝熱工学の基礎事項 6/178
伝熱工学の基礎事項
1.1 伝熱の定義
伝熱 (heat transfer) = 熱の移動
工学の分野では熱,物質,電子,情報などの移動や伝達の問題を扱うことが多い.これらの要
素は相互に関係を持ち,組み合わせによって熱流体,熱電子,電磁流体など呼ばれる.伝熱工学
は主に熱の移動を扱う学問分野であるが,熱に移動には物質の移動を伴う場合と,伴わない場合
がある.
物質の移動を伴う場合
→ 流体の伝熱
物質の移動を伴わない場合 → 固体内部の伝熱,熱放射
このほか,
物質のみの移動=流動(流体)および物質拡散
電子の移動=電流
情報の移動=通信(情報伝達)
などがある.
伝熱
熱
熱電子
熱流体
流動
物質
電子
電流
電磁流体
情報
通信
1.2 伝熱の本質
熱の本質は分子の振動(もしくは回転)による運動エネルギーであり,熱はエネルギーの一種
と言える(熱力学の第 1 法則).振動(回転)が激しければ激しいほど高温となる.伝熱とは,
より激しく振動(回転)する分子が振動(回転)の弱い周囲の分子をより激しく振動(回転)さ
せる.このとき,分子から分子に運動エネルギーの伝播が起き,熱は高温から低温に流れるとい
う現象(熱力学の第 2 法則)が発生する.また,物質はその表面から電磁波を放出するとともに,
他からの電磁波を吸収して熱に変換する性質がある.このため,物体間では電磁エネルギーの伝
播が起こる.これがもう一つの伝熱の本質である.
(1) 振動(回転)エネルギーの伝播=分子の振動もしくは回転のエネルギーが伝達
①
固体,静止液体,静止気体の場合
物体(固体,静止液体,静止気体)が暖められると,物体を構成する分子が強く振動する.液
6
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第1章
伝熱工学の基礎事項 7/178
体や気体の場合は分子が回転することもある.分子の振動(回転)は周囲にある他の分子を振動
(回転)させるため,振動(回転)のエネルギーは次々と分子間を伝播して行く.分子の振動も
しくは回転のエネルギーが周囲に伝播する現象を熱伝導という.
分子(粒子)の振動
振動が減衰しながら伝わる
固体(静止流体)内部
分子(粒子)
振動:強

高温側
②
熱の流れ
振動:弱

低温側
流れがある場合
流れが存在すると(分子が流れていると),分子間の接触が静止時より活発となって分子の振
動(回転)が周囲に伝播しやすくなり,伝熱が促進される.壁面近傍の温度分布は急勾配となる.
温度差によって流体内部には密度差が発生し,周囲より軽い部分には浮力が生じて上昇しようと
するため,自然に流れが発生する.これを自然対流と呼ぶ.(強制的に流れを発生させた場合は
流れ=0のとき
(熱伝導)
流れがある場合
(対流熱伝達)
y
壁面からの高さ y
強制対流という)対流がある場での熱移動は対流熱伝達と呼ばれる.
温度分布は壁面近傍
で急激に変化する
分子(粒子)の振動
温度分布
は直線的
振動伝播
温度
壁面
温度
流れ=分子(粒子)の流れ
分子
壁面
参考:電流
電子が左端から流れ込むと,左端の原子は流れ込んだ電子を取り込み,持っていた電子(自由
電子)を隣の原子に渡す.電子の受け渡しは連鎖的に発生する.これが電流(電子の流れ)であ
る.電子そのものが導体内を通過する速度は遅いが,導体内部の自由電子ほぼ一斉に移動するた
め,電気が伝わる速度はきわめて高速である.
7
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
e
e
第1章
e 自由電子
e
伝熱工学の基礎事項 8/178
e
電子の流れ=電流(向きは逆)
球が離れている場合,遅れて運動
押す
密着の場合,ほぼ同時に運動
押す
球の衝突(距離による違い)
(2) 電磁エネルギーの伝播=電磁波
すべての物体からは電磁波が放出されている.その強さ(放出されるエネルギー)は絶対温度
の 4 乗に比例している.これを熱放射という.物体は電磁波を放出すると同時に,他の物体から
放出された電磁波を吸収している.このため,放出する電磁波のエネルギーより吸収するエネル
ギーの方が大きい場合,物体は加熱され,放出量が上回る場合には冷却されることになる.
例題 1.1 伝熱の本質は何と何か?
解答 「運動エネルギーの伝播」と「電磁エネルギーの伝播」
1.3 伝熱の 3 形式
(1) 熱伝導 (heat conduction):
固体(静止液体・静止気体)中を熱が高温部から低温部に移動する現象を熱伝導という.
熱力学の第 2 法則
ex)金属棒の一方を加熱すると,他方は徐々に暖かくなる.
(2) 対流熱伝達 (heat convection, convection heat transfer):
流れ場における熱の移動.特に,流体から固体壁(もしくはその逆)へ熱が移動する現象を対
流熱伝達という.
ex)やかんで湯を沸かす.
(3) 熱放射 (thermal radiation):
8
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第1章
伝熱工学の基礎事項 9/178
あらゆる物体は,物体の温度に応じて様々な電磁波を物体表面から放出(放射)している.放
射された電磁波を他の物体が受けると,電磁波はその物体表面で吸収されて熱に変わる.このよ
うな伝熱を熱放射という.
ex)日に当たると暖かい.
例題 1.2 対流熱伝達は,伝熱の本質のどれに該当するか?
解答 「運動エネルギーの伝播」
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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
第2章
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定常熱伝導
2.1 熱流束(heat flux)
単位時間 [s]に単位面積 [m2]を通過する熱量 [J]を熱流束 (heat flux) [W/m2]と呼ぶ.速度を
表わす「流速」とは字が異なるので注意が必要である.一般に,熱が伝わる物体(物質)の断面
積が変化するため,熱流束は次の微分形で表わされる.
q
dQ
dA
[W/m2]
ここで,Q は単位時間当たりの通過熱量(伝熱量)[J/s],A は断面積 [m2]である.
参考:熱流束の単位は次のように導出される.
単位 
J
J/s W
 2  2
2
sm
m
m
通過熱量(断面を通過する熱量,伝熱量ともいう)は熱流束を断面積で積分したものとなり,次
式で表される.
通過熱量
Q   qdA
定常状態のとき,熱が伝わる物体(物質)の断面積が変化する・しないにかかわらず,どの断
面でも通過熱量(伝熱量)は一定となる.
参考:通過熱量に差が生じる場合は,図に示すように加熱もしくは冷却が起こる非定常現象
となる.
Q1>Q2
Q1<Q2
物体の温度上昇
物体の温度降下
一方,断面積が一定なら熱流束は一定となるが,断面積が変化する場合は断面積が小さい所ほど
熱流束が大きくなる.
断面積一定の場合
断面積が一定の場合,どの断面でも通過熱量(伝熱量)は等しい.同様に,熱流束もどの断面
でも等しくなる.熱流束 q を,断面積を A とすると通過熱量 Q は,
Q   qdA  q  dA  qA

と表される.dA の積分は断面積を表す.すなわち, A  dA
q
q 一定
積分は面積を
求めること
Q
A
A
10
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
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断面積が変化する場合
伝熱量は定常状態なら,どの断面でも通過熱量(伝熱量)は等しい.(熱流束は等しくない.)
通過熱量は
Q1  Q2  Q3  Q( 一定)
となり,このとき,熱流束 q は
q
dQ
dA
であるから,各断面の位置で
 dQ 
q1    ,
 dA  1
 dQ 
q2    ,
 dA  2
 dQ 
q3   
 dA  3
となる.断面積が異なるから熱流束は一定とはならない.断面積が小さい所ほど熱流束が大とな
る.
q1  q2  q3 ( q1  q2  q3 )
水=冷却=低温
A1
Q3
Q2
Q1
A2
A3
熱の移動
火=加熱=高温
例題 2.1 定常熱伝導で,断面積が異なる場合,熱流束は大きいのは断面積の大きい方かそれと
も小さい方か?
解答 小さい方
例題 2.2 断面積が 10.0cm2 の金属棒の内部を 200W の熱が流れているとき,
熱流束は何 W/m2 か?
解答
q
dQ
200

 2.00 105 W/m2
4
dA 10.0 10
2.2 フーリエの法則
フーリエの法則とは,通過熱量(伝熱量)は温度勾配に比例するという伝熱工学においてもっ
とも重要な法則である.
11
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
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dQ
x
注意:伝熱工学では,温度を表す変数としてを用いることが多いため,本書においてもを
用いることとする.
フーリエの法則を式で表すと次のようになる.これをフーリエの式という.
単位時間に微小面積 dA を通過する熱量
比例定数=熱伝導率(物質により値が異なる)
フーリエの式
dQ  
d
dA
dx
温度勾配
dQ をプラスにするため,符号をマイナスにする
熱は高温側から低温側へ流れる
このとき,
d
0
dx
温度勾配と伝熱量の関係は,次の図のようになる.
q1
温度勾配緩やか→伝熱量小
q1< q2
q2
温度勾配急→伝熱量大
フーリエの式を熱流束で表すと,次式となる.
q
重要:
dQ
1 
d 
d

dA  
 
dA dA 
dx 
dx
フーリエの式を解く(積分する)と,温度分布が求まる.
例題 2.3 平板壁の両面温度が 80℃と 20℃で,平板壁の厚さが 10.0cm のとき,この平板壁内部
の温度勾配は何 K/m か?
解答
d  2  1 20.0  80.0


 600 K/m
dx

0.100
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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
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2.3 熱伝導率,λ
熱伝導率λ [W/(mK)]とはその材質の熱の伝わりやすさを示す物性値であり,物質の種類によっ
て固有の値を持ち,熱伝導率の値は,金属>液体>気体 の順となる.例えば 0℃において,グ
ラスウール 0.040,空気 0.554,鉄 83.5,銅 403 である 1).熱伝導率が小さな材質は,「保温材」
や「断熱材」と呼ばれるが,実際に熱伝導率が 0 の物質は存在しない.
熱伝導率は温度の影響を受けるため,厳密には熱伝導率の値は一定ではない
.ただし,狭い温
2)
度範囲では差はわずかでありことから,計算を簡単にするため一定とおくことが多い.
1) 引用文献 1 参照
2) 本書 p.15 例題 2.6 参照
2.4 温度場
温度場とは,時間的・空間的に温度分布が存在する場のことである.時間的に変化しない定常
状態における温度分布(定常温度分布)は物体の 3 次元的な形により決る.温度分布が時間的に
変化する場合,非定常温度分布と呼ばれる.
空間的温度場
1 次元温度分布:   f  x 
2 次元温度分布:   f x, y 
3 次元温度分布:   f x, y, z 
非定常温度場
1 次元温度分布:   f x, t 
2 次元温度分布:   f x, y, t 
3 次元温度分布:   f x, y, z, t 
温度分布
高
が存在
温度場
温
側
低
温
側
温度場の区別
空間的
時間的
1 次元:温度が x 軸方向のみに変化
定常:時間的に温度分布が変化しない
2 次元:x,y
非定常:時間的に変化
3 次元:x,y,z
組み合わせによって呼び方が変わる.例)1 次元定常温度場
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2.5 平行平板の熱伝導
(1) 単層平行平板
平板内の温度分布は,熱流速に対するフーリエの式
q  
d
dx
から求めることができる.ただし,x の正の方向に熱が移動する場合 Q>0.逆向きの場合 Q<0 と
なる.
フーリエの式を変形すると
d  
q
dx

両辺を積分すると
d   



q

q


xに無関係
dx
dx
C: 積分定数
不定積分  x  C

q

 x  C  
q

x  C  ...(1)
(1)式は,x の 1 次関数だから,平板内の温度分布は,下図の赤い線のように直線となることが分
かる.
q
x
dx
L
次に,境界条件を用いて積分定数を決定する.
境界条件(B.C. Boundary Condition の略)を次のようにおく.
左端 x  0で  1

右端 x  Lで   2
(2)
(3)
(2)式を(1)式に代入すると
1  0  C   C   1
よって
q
   x  1

(4)
(3)式を(4)式に代入すると
14
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
2  
q


q  
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L  1
L
 2  1 
もしくは q 

L
1   2 
[W/m2]
(5)
平行平板の熱流束は①熱伝導率と温度差に比例し,②板厚に反比例する.
面積 A [m2]を t 秒間に流れる熱量は,次式で与えられる.
Q  qAt  

L
 2  1 At [J]
Q
もしくは

L
1  2 At
単位:[W/m2][m2][s]=[W・s]=[J]
例題 2.4 壁の外気に触れる面から 2 ヶ所(x1, x2 [m])で温度を測定したところ,θ1, θ2[℃]となっ
た.このとき,熱流束 q[W/m2]はいくらになるか.
外気
(表面)
q
炉
内
x1
x2
解答
q  
 2  1
x2  x1
 
d
  2 1
dx
x2  x1
 0 より q  0
符号は方向を示す. q  0 なら x 軸の負の方向に熱が流れる.
例題 2.5 平板壁の両面温度差が 80℃で,平板壁の厚さが 10.0mm,熱伝導率が 1.74 W/(mK)
のとき,この平板内部を板厚方向に伝わる熱流束は何 W/m2 か?
解答
q  
d

80.0
 
 1.74
 1392 W/m2
dx

0.0100
例題 2.6 熱伝導率が温度によって変化する場合の平行平板内温度分布を求めよ.(金属では高
温で,熱伝導率が小さくなるものが多い.例えば,銅.)
解答
熱伝導率を     
  0 とおく.
15
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
d  
q

dx より d  qdx
λ
λ
β
β
θ
θ
熱伝導率
の変化
両辺を積分すると
 d  q  dx
     を代入すると
    d  q  dx
γ を積分定数とすると,
1 2
      qx
(1)
2
境界条件 x  0 で   1 より
1
12  1    0
(2)
2
境界条件 x  l で    2 より
1
2 2   2    ql (3)
2
(2)-(3)より,
1
 12   2 2   1   2   ql
2

熱流束は



1
1
 12   2 2   1   2 
2l
l
となる.(1)-(2)より,
1
  2  12     1   qx
2
  2  12  2   1   2qx  0
q 




 2  2  12  21  2qx  0
解の公式より


    2    1  21  2qx
2

   
x  0 を代入すると,
16
 2   212  21  2qx

16/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導

    2  21   21
 
2

 2  1
 1 ,


  1 2


17/178
     1 

となるが,境界条件 x  0 において,   1 であることを考慮すると,
    2   21  21  2qx
2


のみが,解となることがわかる.この解は,関数 y  a  b  cx
a  0, b  0, c  0 と同様
b

 a  0, b  0, c  0
c

c  0の原点を(0, 0)から  b ,  a  に平行移動したグラフである.
c

y
のグラフを描くことになる.ここで, y  a  b  cx  a  c  x 
は,次図のように,y 
 cx
この部分が温度分布となる
b/c
0
l
x
-a
よって,温度分布は,下図のように上に凸の曲線となる.
0
l
  0 のとき,この解は関数 y  a  b  cx


になる. y  a  b  cx  a  c x 
y  cx
b

c
x
a  0, b  0, c  0 と同様のグラフを描くこと
a  0, b  0, c  0 は,下図のように,
c  0の原点を(0, 0)から   b , a  に平行移動したグラフである.
 c

17
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
y
a
この部分が温度分布となる
0
-b/c
l
x
よって,温度分布は下図のように下に凸の曲線となる.
0
参考:
l
x
2 次関数(放物線のグラフ)の性質
y
y
y
x
x
18
x
18/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
y
y
x
x
y
x
(2) 多層平行平板
熱伝導率λが温度に関係なく一定のとき
①どの層も温度分布は直線
②どの層も熱流束 q は一定
q の値が一定でなければ,どこかの層で
発熱→温度上昇を続ける
吸熱→
温度分布は非定常
下降
第 1 層から第 n 層までのフーリエの式を変形して,温度に関する式を導くと,
1
 2  1    2  1    1 q
1
1


第 2 層 q   2  3   2    3   2   2 q
2
2
第1層 q 
...
第n層 q 
n

 n1   n    n1   n   n q
n
n
19
19/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
20/178
となるので,枠内の式の両辺をそれぞれ合計すると
 1
 n 1  1  q

 1
n
2
 

   n   q i
2
n 
i 1 i
これより
q
 n 1  1
n
i

i 1 i
通過熱量は
Q  qA  
[W/m2]
 n 1  1
1 n i

A i 1 i
[W]
熱伝導抵抗 R を
R
1 n i

A i 1 i
[K/W]
とおくと
Q
n 1  1
R

1  n 1
R
[W]
となる.
例題 2.7 図のように 2 層からなる炉壁がある.熱伝導率が 1  2 のとき,2 層の定常温度分布
として最もふさわしいいのは a, b, c のどれか?
a
b
c
解答 b
例題 2.8 図の 2 点 A,B の温度を求めよ.
50 C
60 C
2m
B
A
40 C
10 C
同じ
2m
30 C
2m
2m
20 C
20
2m
熱の流れる方向
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
21/178
解答
熱平衡を考えると,A 点に関して
 A  50  
 A  40 
B   A  
30   A 

 
   
   
   


2  
2  
2  
2 
A 点に入る熱量
(1)
A 点を出る熱量
B 点に関して
 B  60  
B   A  
10   B  
20   B 

 
   
   
   


2  
2  
2  
2 
B 点に入る熱量
(1)式より
(2)式より
(2)
B 点を出る熱量
 A  50   A  40   B   A   30   A 
 4 A   B  120
 B  60   B   A   10   B   20   B 
  A  4 B  90
2 つの式を連立して解くと
15 A  570   A  38  C
 B  4  38  120  32  C
2.6 円管の熱伝導
(1) 単層円管
平板の場合,x のどの位置においても
d
 const (一定)
dx
通過熱量 Q  qA  const
熱流束 q  
すなわち,熱流束 q,通過熱量 Q は一定となる.
r2
r1
1
q2
q1
r
2
l
dr
一方,円管の定常熱伝導では通過熱量 Q は一定であるが,任意の半径 r における熱流束は変化す
る.重要
21
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
22/178
通過熱量 Q1  Q2
熱流束 q1  q 2
注意: Q1  Q2 円管の温度が上昇 or 降下する過程(途中)にある非定常
通過熱量の計算式を求める.
半径 r の位置での熱の通過面の面積を A とすると
Q   A
d
dr
r の正の方向に熱が移動する場合 Q>0.逆向きの場合 Q<0 となる.ここで,半径 r,長さ l の円筒
面の面積は A  2rl より,円管のフーリエの式は
Q  2rl
d
dr
となる.この式を変形すると
Q dr
2 l r
dr
 ln r  C を適用して,与式を積分すると
不定積分の公式 
r
Q
 
ln r  C 
2 l
d  
ここで,B.C. を次のようにおく.
r  r1で  1  (1)
r  r2で   2  (2)
(1)式より
1  
Q
2 l
ln r1  C (3)
(2)式より
2  
Q
2 l
ln r2  C(4)
y
(3)式-(4)式より
1   2  
Q
2 l
ln r1  ln r2   
Q
r
ln 1
2rl r2
2 l
    [ W]
r1 1 2
ln
r2
r
r
この式は,対数関数の関係式 ln 1   ln 2 より
r2
r1
2 l
    [W]
Q
r2 2 1
ln
r1
Q
と表記することもできる。熱流束は
22
0
1
x
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
q
23/178
Q
1 2 l
 2  1      2  1  [W/m 2 ]

r
A
2rl r2
ln
r ln 2
r1
r1
直径で表示すると
2 l
  1  [W]
d2 2
ln
d1
2
  1  [W/m 2 ]
q
d2 2
d ln
d1
Q
例題 2.9 円管内部の任意の半径 r における温度を与える式を導け.
r1
r2
r
1

2
解答
円管のフーリエの式
Q
2 l
  1  は任意の位置において成立する.よって,r と r1 間
r2 2
ln
r1
に適用すると
Q  
2 l
 2  1    2l   1 (1)
r
r
ln
ln 2
r1
r1
(1)式を整理すると
  1 
 2  1
ln
r2
r1
ln
r
r1
(2) 多層円管
一つめの層に関して,通過熱量はフーリエの式より
Q
2 l
   
r 2 1
ln 2
r1
となるから,温度差は
23
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
 2  1  
Q
2 l
ln
r2
r1
となる.よって,各層の温度差を並べると
 2  1  
24/178
1
2
3
n
Q
r
ln 2
2l1 r1
n+1
Q
r
3   2  
ln 3
2l2 r2

 n 1   n  
Q
r
ln n 1
2ln
rn
辺々足し合わせると,
 n 1  1  
Q n 1 ri 1
 ln r
2l i 1 i
i
よって
Q
2l  n 1  1 
n
1 ri 1
ln

ri
i 1 i
となる.
例題 2.10 図のように,熱伝導率の異なる 2 種類の保温材を同量ずつ円管の周りに施工するとき,
保温性が良いのはどちらか調べよ.ただし, 1  2 とし,円管表面温度 1 と保温材の最外周部の
温度  2 は同じとする.
10cm
λ1
λ2
15cm
λ2
15cm
λ1
18.7cm
18.7cm
(a)
(b)
解答
温度差を 1   2 ,パイプの長さを l とすると,通過熱量はそれぞれ
Qa  
Qb  
2l  2  1 
1 15 1 18.7
ln  ln
1 10 2
15
2l  2  1 
1 15 1 18.7
ln  ln
2 10 1 15
24
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
25/178
よって,両者の差をとると
Qa  Qb  
2l  2  1 
2l  2  1 

1 15 1 18.7 1 15 1 18.7
ln  ln
ln  ln
1 10 2 15 2 10 1 15




1
1


 2l  2  1 

 1 15 1 18.7 1 15 1 18.7 
ln  ln
 ln  ln
15
2 10 1 15 
 1 10 2
1  15
10  1  15
10 
 ln    ln
 ln 
 ln
  18.7
15  2  18.7
15 
 2l  2  1  1
 1 15 1 18.7  1 15 1 18.7 
 ln  ln
 ln  ln


10

15

10

15
2
1
 1
 2

 1 1  18.7
15 
   ln
 ln 
10 
 1 2  15
 2l  2  1 
 1 15 1 18.7  1 15 1 18.7 
 ln  ln
 ln  ln

15  2 10 1
15 
 1 10 2
 1 1  18.7 10
   ln
 1 2  15 15
 2l 1   2 
 1 15 1 18.7  1 15 1 18.7 
 ln  ln
 ln  ln


10

15

10

15
2
1
 1
 2

1 1
1 1
1  2 のとき   0 たとえば   0.16  0
1 2
2 3
18.7  10
ln
 0.18499  0
15  15
2l 1  2   0
分母  0
より, Qa  Qb  0  Qa  Qb
よって,通過熱量は Qa の方が小さい.よって,保温効果は a の方がよい.
2.7 球状壁の熱伝導
円管の場合と同様に,任意の半径 r における通過熱量 Q は一定でるが,熱流束 q は一定ではな
い.
フーリエの法則より
Q   A
d
dr
r の正の方向に熱が移動する場合 Q>0.逆向きの場合 Q<0 となる.r の位置における面積は,
A  4 r 2
より
25
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
d
dr
Q dr
 d  
4 r 2
dr
1
不定積分の公式  2    C より
r
r
Q 1

 C
4 r
Q  4r 2 
B.C.
1
2
r dr
r  r1で  1 (1)
r  r2で   2 (2)
球殻の断面
(1)より
1 
Q 1
 C
4 r1
2 
Q 1
 C
4 r2
(2)より
辺々を引いて
 2  1 
Q 1 1
  
4  r2 r1 
よって
Q
4
  1 
1 1 2

r2 r1
半径 r の位置における熱流束は,球の表面積が A  4r 2 なので
q
Q
1 4


2  1 

 2  1  
2
A 4r 1  1
1
2 1
r   
r2 r1
 r2 r1 
直径で表わすと
Q
q
4
4
2


   
 2  1  
 2  1  
1 1
2 2
1 1 2 1



r2 r1
d 2 d1
d 2 d1

1 1
r 2   
 r2 r1 
2  1  

d 
 
2
2
 2 2
  
 d 2 d1 
ここで,

d 2  d1
2
とおくと
1 1 d1  d 2
2
 

d 2 d1
d 2d1
d1d 2
26
2  1  
2
2  1 
1
2 1
d   
 d 2 d1 
26/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
なので
2
      22
      d1d2 2  1  [W]
1 1 2 1
 2 1


d 2 d1
d1d 2
Q
1
dd
dd
q    2  1 2 2  1    1 22 2  1  [W]
A
d

d
Q
例題 2.11 球殻内部の任意の半径 r における温度を与える式を導け.
解答
r2 (d2)
2  2  1 
Q
1 1

d 2 d1
r
は任意の直径間でも成立するから
Q
2  2  1  2   1 

1 1
1 1


d 2 d1
d d1
r1 (d1)
 に関して解くと
  1 
 2  1  1
1
  
1 1  d d1 

d 2 d1
温度分布の式を変形すると
 1 
 2  1 1
1 1 d1

d 2 d1

 2  1 1
1 1 d

d 2 d1
ここで,定数を
A  1 
 2  1 1
1 1 d1

d 2 d1
B
 2  1
1 1

d 2 d1
とおけば,
  A
B
d
と表すことができる.これは,双曲線  
B
が A だけθ方向に平行移動したことを示す.
d
27
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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
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熱伝導のまとめ1
項目
フーリエの
式
平行平面板
d
q  
dx
q
d   dx

温度分布
q
  1 
[℃]
 1 

x
 2  1
L
x
円管
d
Q  2rl
dr
Q dr
d  
2 l r
 
r
  1  2 1 ln
r
r1
ln 2
r1
対数曲線
直線
球殻
d
Q  4r 2 
dr
Q dr
d  
4 r 2
  1 
 1 
 2  1  1
1
  
1 1  r r1 

r2 r1
 2  1  1
1
  
1
1 d d1 
 
d 2 d1
双曲線
熱流束
q

[W/m2]
L
 2  1 
q
r ln
q
単位時間当
たりの通過
Q

L
 2  1 A
熱量
[W=J/s]
t 秒間の全通
過熱量
[J=Ws]
Qt  


L
 2  1 At
r2
r1
 2  1 
2
  1 
d2 2
d ln
d1
2 l
  1 
r2 2
ln
r1
2 l
  1 
Q
d2 2
ln
d1
Q
2 l
  1 t
Qt  
r2 2
ln
r1

2  1 
 1 1
r   
 r2 r1 
2
2  1 
q


1
1
d 2   
 d 2 d1 
dd
q   1 22  2  1 
d
d 2  d1

2
4
   
Q
1 1 2 1

r2 r1
2
   
Q
1 1 2 1

d 2 d1
dd
Q   1 2  2  1 
q
2

4
   t
Qt 
1 1 2 1

r2 r1
 
28
d1d 2

 2  1 t
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
伝熱量 Q 
1   2


E
と表した場合,R を熱伝導抵抗[K/W]と呼ぶ.(電流 i  )
R
R
R
Q  0 :x 軸の正の方向に熱が移動
Q  0 :x 軸の負の方向に熱が移動
単層の場合
平行平面板
円管
熱伝導抵抗
面積 A[m2]の平板の
長さ l[m]の円管の熱
[K/W]
熱伝導抵抗は次式と
伝導抵抗は次式とな
なる
る
L
R
A
r
1
ln 2
2l r1
1
d
R
ln 2
2l d1
R
球殻
1  1 1
  
4  r2 r1 
1 1 1
  
R
2  d 2 d1 

R
 d1d 2
R
多層の場合
平行平面板
円管
熱伝導抵抗
面積 A[m ]の平板の
長さ l[m]の円管の熱伝
[K/W]
熱伝導抵抗は次式と
導抵抗は次式となる
なる
R
1 n 1 ri 1
 ln r
2l i 1 i
i
R
d
1 n 1
ln i 1

2l i 1 i
di
2
R
1 n Li

A i 1 i
球殻
1  1 1

 
r1 
i 1 i  ri 1
1 n 1 1
1

R
 

2 i 1 i  d i 1 d1 
R
R
1
4
n

1 n

  d di

i 1 i i i 1
熱伝導のまとめ2(伝熱量の式)
平板
Q>0
Q

L
1  2 A
0
(温度差>0 となるように計算する)
x
Q
Q<0
x

L
1  2 A
0
注意:x の負の方向に Q  0 としたいときは 1 と  2 を交換
Q

L
2  1 A
29
0
29/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導
30/178
円管
Q
r2
r1
1
2 l
     0
r2 1 2
ln
r1
Q>0
2
l
r2
r1
Q
Q<0
2
注意:r の負の方向に Q  0 としたいときは 1 と  2 を交換
l
1
2 l
     0
r2 1 2
ln
r1
Q
2 l
     0
r2 2 1
ln
r1
球殻
Q
r2
r1
1
Q>0
2
Q
r2
r1
2
1
Q<0
4
     0
1 1 1 2

r1 r2
4
     0
1 1 1 2

r1 r2
注 意 : r の 負 の 方 向 に Q  0 と し た い と き は 1 と  2 を 交 換
Q
4
     0
1 1 2 1

r1 r2
30
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第3章
第3章
熱通過
31/178
熱通過
3.1 熱伝達率
流れが存在すると,流体内部の温度分布は流速に依存して変化する.この原因は流動によって
分子間の接触が活発となり,エネルギの伝播が促進されることによる.たとえば,平板に沿う流
れがある場合,壁面から遠く離れた位置では温度は一様である.一方,壁面に近づくにつれて温
度は急激に変化するが,壁面近傍での温度分布は直線ではなく,曲線となる.一般に流速が増加
すると,
壁面近傍の温度分布は左下図の A から B のように壁面近傍で大きく変化する特徴を持つ.
このとき,熱伝達率は hA  hB となる.仮に,流れが無い場合は右下図の C のような分布となる.
(ただし,重力下では温度差に伴う自然対流が発生するので,完全に流れが無い状態の実現は難
しい.)
温度分布
固体壁
hB
θf
B
u
固体壁
B
θw
A
hA
C
流れがあるとき
θw
流れがないとき
注意:熱伝達における固体壁に接する位置での流体内部の温度勾配に起因する熱移動であり,伝
熱の本質は熱伝導である.
流体から壁面もしくはその逆で壁面から流体に熱が伝わる場合,伝熱量は流れ場の様子によっ
て異なるため,計算は容易ではない.そこで,簡便な方法として以下に示す熱伝達の式が考案さ
れた.
熱伝達の式=流体―固体壁間の伝熱において,単位時間当たりの通過熱量を与える経験式.

Q  h  A   f  w

[W]
固体壁温
流体の温度
伝熱面積
熱伝達率(流れの速度に依存),W/(m2・K)
熱伝達の式における比例定数を熱伝達率という.この熱伝達率は流れの速度に依存するため,
物性値(物質固有の値)ではなく経験値である.熱伝達の式は簡便で扱いやすいものであるが,
熱伝達率の推定が容易ではない.伝熱工学のテキストや資料には,いろいろな状況を想定した推
定値が提案されているが,熱伝導率と異なり値には幅がある.熱伝達率の値が 10 なのか 100 なの
かといったオーダーは簡単に推定できるが,厳密な値を求めることは困難である. ただし,特定
の状況に対しては,のちに解説する無次元数(ヌッセルト数,Nu 数と標記)を用いた実験式が提
31
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第3章
熱通過
32/178
案されているので,適用できる場合には利用すべきである.
壁面において,流体側の熱伝導量は壁面側の熱伝導量に等しいとみなすことができる.このた
め,熱伝達の式,熱伝導の式の関係を以下のように求めることができる.
q
熱流束

Q
 h  f  w
A

壁面における流体側の熱伝導量は
 d 
Q   A f 

 dx  f , x0
壁面での温度勾配
流体に接する壁面内部の熱伝導量は
 d 
Q   Aw 

 dx  w, x0
これらは等しいから
 d 
 d 
h f   w A   A f 
  Aw 


 dx  f , x0
 dx  w, x0
となる.
例題 3.1
100℃の流体と 10.0℃の壁面との間で対流熱伝達が行われている.熱伝達率が
70.0W/(m K) のとき,流体から壁面への熱流束は何 W/m2 となるか?
2
解答
q  h f   w   70.0  (100  10.0)  6300 W/m2
3.2 平板壁の熱通過
固体壁をはさんで,流体から別の流体に熱が移動する伝熱形式は,熱通過と呼ばれる.このと
き,流体から固体壁へは熱伝達,固体内部は熱伝導,固体壁から流体は熱伝達が行われ,しかも
それらは同時に行われている.例えば,平板の熱通過は,図のように高温の流体から固体壁を通
して低温の流体に熱が移動する.
熱伝達
固体壁
高温流体
熱伝導
低温流体
熱伝達
温度境界層が発達
32
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
熱通過では次の 3 つの方程式が考えられる.
高温流体側熱伝達
熱通過
33/178


 w1   w2 

q 3  h2  w2   f 2 
q2 
固体壁内熱伝導
低温流体側熱伝達
一般に h1  h2

q1  h1  f 1   w1
第3章
(流れの速度が異なるため)
前式より
 f 1   w1 
q1
h1
 w1   w 2 

q2

 w2   f 2 
q3
h2
辺々加えると
f1 f 2 
q1 
q
 q2  3
h1 
h2
定常状態では
q1  q2  q3  q とおくと
1  1
 f 1   f 2  q   
 h1  h2 
   f 2 
1  1 f1
 
h1  h2
1
[W/(m2・K)]
k
1  1
 
h1  h2
q 
とおけば
1
q  k  f 1   f 2 
ここで,k は熱通過率と呼ばれる.平板の熱通過率の単位は熱伝達率の単位[W/(m2・K)]と同じであ
る(注意:円管および球殻の熱通過率の単位は熱伝導率と同じ[W/(m・K)]).


平板の通過熱量を Q  kA  f 1   f 2 
R
1
11  1 
    
Ak A  h1  h2 
 f1  f 2
R
と表したとき,
[K/W]
を熱通過抵抗(もしくは,全熱抵抗)という.ここで,
1
Ah1


A
熱伝達抵抗 Rconv1 
熱伝導抵抗 Rcond
33
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
熱伝達抵抗 Rconv2 
第3章
熱通過
34/178
1
Ah2
とおくと,
R  Rconv1  Rconvd  Rconv2
となる.
注意:次のように熱通過率の逆数 R を熱通過抵抗とする文献もある.この場合,単位が異なるの
で注意が必要.
R
1 1  1
  
k h1  h2
[(m2・K)/W]
熱通過の式では,温度として 2 つの流体温度  f 1 , f 2 を必要とするが,平板壁の温度は不要で
ある.すなわち平板壁の温度が不明でも,伝熱量を推定することができ,大変有用である.
注意:平板壁の両側の温度  w1 , w 2 が測定できれば,平板壁内の熱伝導のみを考えればよく,よ
り正確な伝熱量が計算できる.
例題 3.2 図のような平板壁における熱通過率はいくらか.
高温流体側熱伝達率: h1 =70.0W/(m2K)
平板厚さ:  =10.0mm
平板の熱伝導率:  =1.74W/(mK)
低温流体側熱伝達率: h2 =20.0W/(m2K)
解答
k
1
1  1
 
h1  h2

1
 14.279 ≒14.3
1
10.0  0.001 1


70.0
1.74
20
3.3 多層平板壁の熱通過
平板壁が多層の場合の熱通過の式
熱流束は
q  k  f 1   f 2 
熱通過率は
k
1
1

1
 i 
h1 i 1 i h2
n
[W/(m2・K)]
熱通過抵抗は
R
n
1
11

1
    i  
Ak A  h1 i 1 i h2 
[K/W]
注意:次のように熱通過抵抗を単に熱通過率の逆数とする文献もある.
34
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
R
n
1 1

1
  i 
k h1 i 1 i h2
第3章
熱通過
35/178
[(m2・K)/W]
例題 3.3 多層平板壁の熱通過率 k は, h1 , h2 , i /  i の最小値よりさらに小さいことを示せ.
解答
h1 , h2 , i /  i のうち,最も小さいものを a,それ以外を bi で表すと
n

1 1
1 1 n 1 1
  i 
 
k h1 i 1 i h2 a i 1 bi
と表すことができる.bi>0 より
1 1 n1 1
1 1
  0  
k a i1 bi
k a
 ka
すなわち,k は h1 , h2 , i /  i のうち,最も小さいものよりもさらに小さい.
例題 3.4 図のように内部が 1400℃となる炉を製作する.耐火壁を厚さ 20cm の耐火レンガで作
り,外側を断熱材で覆う構造とするとき,断熱材の厚さを決定せよ.ただし,物性値は図中の通
りとする.
耐火
断熱
θw1=1400℃
h2=11.6W/(m2K)
θw2=1000℃
? ℃
炉内
1.74W/(mK)
λ2=0.186W/(mK)
20cm
δ2 cm
解答
耐火レンガを通過する熱量は,1m2 当り
Q

 w1   w2   1.74 1400  1000  3480 W

0.2
熱通過の計算⇒断熱レンガ+熱伝達
Q
 w2   f 2
1000  0

 3480
2 1
2
1


2 h2
0.186 11.6
より
 2  0.0374 m
3.4 円管の熱通過
①
円管内側における伝熱
35
外気
θf2=0℃
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
Q1  h1d1l  f 1   w1 
高温流体側(熱伝達)
管の内側面積
Q2 
円管壁内部(熱伝導)
(3.4.2)

管の外側面積
 f1
 w1
h1
(3.4.1)
2 l  w1   w 2 
d
ln 2
d1
d1

温度差=流体から壁へ
d2
Q1 内側熱伝達による熱伝達量
Q2
壁の熱伝導による熱伝導量
 w2
Q3
h2
外側熱伝達による熱伝達量
 f2
Q1 内側から外側に通過する熱通過量
定常状態では
Q1  Q2  Q3  Q
とおけるから
Q
h1d1l
d
ln 2
d1
 w1   w2 
Q
2 l
Q
 w2   f 2 
h2d 2l
 f 1   w1 
辺々足し合わせると
 f1  f 2 
熱通過
温度差=流体から壁へ
② 円管外側における伝熱
Q3  h2d 2 l  w2   f 2
低温流体側(熱伝達)
l
第3章
Q 1
1
d
1 1



ln 2 
  h1d1 2 d1 h2 d 2  l
これより
36
(3.4.3)
36/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第3章
 f1  f 2
Q
熱通過
37/178
(3.4.4)
1 1
1
d
1 



ln 2 
l  h1d1 2 d1 h2 d 2 
 f1  f 2
したがって, Q 
とおけば,熱通過抵抗は
R
1 1
1
d
1 
 [K/W]
R  

ln 2 
l  h1d1 2 d1 h2 d 2 
(3.4.5)
また,
Q  l
 f1  f 2
 1
1
d
1 



ln 2 
 h1d1 2 d1 h2 d 2 
と表されるから
Q  k l  f 1   f 2 
とおけば,熱通過率は
k 
1
[W/(mK)]
d
1
1
1

ln 2 
h1 d1 2 d1 h2 d 2
(3.4.6)
となる.この場合,熱通過率の単位[W/(mK)]が平板の場合[W/(m2K)]と異なるので注意のこと.
熱通過抵抗は,次式で表される.
R 
1
1 1
1
d
1 

 

ln 2 
k l l  h1d1 2 d1 h2d 2 
[K/W]
参考:円管の熱通過では,長さ基準の熱通過率と面積基準の熱通過率を区別する必要がある.面
積基準の熱通過率では,また,円管内側の面積を基準とする場合と,円管外側の面積を基準とす
る場合の 2 種類がある.長さ基準の熱通過率はどの面でも一定であるが,面積基準の熱通過率で
は,内面と外面で熱通過率の値が異なることになる.
熱通過率の単位が異なることにも注意が必要である.
長さ基準の熱通過率 Q  kL  f 1   f 2 : k の単位=W/(mK)


外側面積基準の熱通過率 Q  k A 


:
内側面積基準の熱通過率 Q  k1 A1  f 1   f 2 : k1 の単位=W/(m2K)
2
2
f1
 f 2
ここで,
A1 
A2 

4

2
d1 :円管内側の面積
2
d 2 :円管外側の面積
4
A1  A2 なので, k1  k2
k  k  

1
1 d2
1

ln 
h1d1 2 d1 h2 d 2
[W/(mK)]
37
k2 の単位=W/(m2K)
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第3章
k l
1
l
4l d1
k1 



1
1
d
1
1
1
d
1
2
A1
d1

ln 2 

ln 2 
4
h1d1 2 d1 h2 d 2 h1d1 2 d1 h2 d 2
熱通過
38/178
2
k l
1
l
4l d 2
k2 



1
1
d
1
1
1
d
1
2
A2
d2

ln 2 

ln 2 
4
h1d1 2 d1 h2 d 2 h1d1 2 d1 h2 d 2
[W/(m2K)]
2
[W/(m2K)]
上記の(3.4.6)式は長さ基準の熱通過率であるが,π の値を含まないことが異なる.
3.5 多層円管の熱通過
熱通過率は
k 
1
n
1
1
1 d
1
  ln i 1 
h1d1 2 i 1 i
di
h2 d n 1
[W/(mK)] 単位に注意
熱通過抵抗は,次式で表される.
R 
1
1 1
1 n 1 d
1 

 
  ln i 1 
k l l  h1d1 2 i 1 i
di
h2d n 1 
[K/W]
例題 3.5 鉄管の周囲を保温材で覆った 2 層管がある.内部は 100℃の温水が流れており,外気温
度は 20℃とする.鉄管は外径 30mm,肉厚 2mm とし,保温材の肉厚は 20mm である.2 層管の熱
通過率はいくらか?また,長さ 1m 当たりの通過熱量はいくらか?
ただし,
鉄の熱伝導率は 1  40.0W/(mK)
保温材の熱伝導率は 2  0.300W/(mK)
20
お湯側熱伝達率: h1 =70.0W/(m2K)
30
外気側熱伝達率: h2 =1.00W/(m2K)
解答
熱通過率は
k 

1
n
1
1
1 d
1
  ln i 1 
h1d1 2 i 1 i
di
h2 d n 1
1
1
1
0.030
1
0.070
1

ln

ln

70.0  0.026 2  40.0 0.026 2  0.300 0.030 1.00  0.070
 0.061542  0.0615 W/ mK 
通過熱量は
Q  k l  f 1   f 2   0.061542 1 100  20  15.467  15.5 W
38
20
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第3章
熱通過
39/178
3.6 伝熱面付着物の影響
長時間使用していると,伝熱面にはさまざまな付着物が堆積する.水との伝熱面では,湯あか,
さび,ごみなど,ガスとの伝熱面では,すす,オイルなどが考えられる.これらの付着物は熱伝
導抵抗となるため,装置の性能に影響を与えることになる.付着物の厚さを  s ,熱伝導率を s と
すると,付着物の熱伝導抵抗は
平板壁の場合,
Rs 
s
r
 s
As A
となる.ここで, rs 
[K/W]
s
は汚れ係数[m2K/W]と呼ばれる.汚れ係数の値は 0.0002 m2K/W 程度であ
s
る.
円管内側の場合,
1
2l s
1

2l s
Rs 
ただし,
s
 1
r1
  s 
r s 
r1
1 
1 
  ln 1
 

 ln 1  
r1   s 2l s 
r1  2l s 
r1 

   s 
r
r
1 s
1 s

 s  s
[K/W]
    
  r1  2l s r1 2lr1  s 2lr1 ld 1
ln
円管外側の場合,
r s
1
1    s 
ln 2

ln 1  
2l s
r2
2l s  
r2 
r
r

1 s
1 s


 s  s
[K/W] ただし,s  1
2l s r2 2lr2  s 2lr2 ld 2
r
Rs 
となる.
39
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第3章
熱通過
40/178
まとめ
熱通過抵抗(熱抵抗)R=熱伝達抵抗 Rconv+熱伝導抵抗 Rcond+付着物の熱抵抗 Rs
表.付着物がない場合とある場合の比較

 f1  f 2

平板通過熱量 Q  kA  f 1   f 2 
R
 f1  f 2
円管通過熱量 Q  k l  f 1   f 2  
R
1
[K/W]
kA
1
[W]→ R'
[K/W]
k 'l
[W] → R 
付着物がない場合
平 熱通過率
k
板 W/(m2K)
熱通過抵抗
K/W
付着物がある場合
1
1  1
 
h1  h2
k
11  1 
   
A  h1  h2 
11 1 
Rconv    
A  h1 h2 
R
Rcond 
1
1

1
 rs1   rs 2 
h1

h2
R
Rconv 

A
Rcond 
Rs 
円 熱通過率
k 
管 W/(mK)
熱通過抵抗
K/W
R 
11

1
  rs1   rs 2  
A  h1

h2 
1
k 
1
1 d2
1

ln 
h1d1 2 d1 h2 d 2
1 1
1
d
1 



ln 2 
l  h1d1 2 d1 h2 d 2 
R 
11 1 
  
A  h1 h2 

A
rs1  rs 2
A
1
1
r
1
d
r
1
 s1 
ln 2  s 2 
h1d1 d1 2 d1 d 2 h2 d 2
1 1
r
1
d
r
1 


 s1 
ln 2  s 2 
l  h1d1 d1 2 d1 d 2 h2 d 2 
Rconv 
1 1
1 



l  h1d1 h2 d 2 
Rconv 
1 1
1 



l  h1d1 h2 d 2 
Rcond 
1
d
ln 2
2l d1
Rcond 
1
d
ln 2
2l d1
Rs 
1  rs1 rs 2 
  
l  d1 d 2 
例題 3.6
x  1のとき, ln(1  x)  x, ln(1  x)   x となることを確かめよ.
ヒント:次の値を計算してみる.
ln(1  1 101 ) 
ln(1  1 102 ) 
ln(1  1 103 ) 
ln(1  1 104 ) 
ln(1  1 101 ) 
ln(1  1 102 ) 
ln(1  1 103 ) 
ln(1  1 10 4 ) 
40
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第3章
熱通過
41/178
解答
ln(1  1 10 1 )  0.0953101798
ln(1  1 10 1 )  0.10536051565
ln(1  1 10 2 )  0.00995033085317
ln(1  1 10 2 )  0.0100503358535
ln(1  1 10 3 )  0.000999500333084
ln(1  1 10 3 )  0.00100050033358
ln(1  1 10 4 )  0.0000999950003333
ln(1  1 10 4 )  0.000100005000333
例題 3.7
厚さ 2mm の鉄板でできたお湯のタンクがある.内部は 100℃の温水が流れており,外気温度は
20℃とする.このタンクの熱通過率と 1m2 当りの通過熱量はいくらか?また,お湯側に湯あかが
発生し,汚れ係数が 0.0002 m2K/W のとき,熱通過率と 1m2 当りの通過熱量はいくらになるか?
ただし,
鉄の熱伝導率は 1  40.0W/(mK)
お湯側熱伝達率: h1 =70.0W/(m2K)
外気側熱伝達率: h2 =1.00W/(m2K)
とする.
解答
湯あかがない場合,
k
1
1  1
 
h1  h2

1
 0.98586
1
0.002
1


70.0 40.0 1.00
W/(m2K)
Q  kA f 1   f 2   0.98586  1 100  20  78.8688
W
湯あかがある場合,
k
1
1

 0.98567
1

1
1
0.002
1
 rs1   rs 2 
 0.0002 
0
h1

h2 70.0
40.0
1.00
Q  kA f 1   f 2   0.98567  1 100  20  78.8536 W
41
W/(m2K)
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第4章
第4章
熱交換器の伝熱計算 42/178
熱交換器の伝熱計算
4.1 熱交換器の種類
(1) 並流式熱交換器と向流式熱交換器
熱交換器にはさまざまな形式があるが,伝熱計算が容易な熱交換器としては並流式熱交換器と
向流式熱交換器に限られる.これらは,図のように高温側と低温側の流体の向きが異なる.並流
式は2つの流体が同じ向きに流れ,向流式では逆方向に流れる.
温度変化
流体 A の入口温度
A
入口温度
A
dθA<0
出口温度
出口温度
dQ
dQ
流体 B の入口温度
入口からの距離 x
A と B の入口
A
B
出口温度
B
dθB>0
B
dθA<0
出口温度
入口温度
dθB<0
x
dx
A と B の出口
dx
A の入口
A
熱の移動
A の出口
熱の移動
dQ
dQ
B の出口
B
B の入口
向流式熱交換器
並流式熱交換器
(2) 直交流式
2 つの流体の流れの方向が直交する形式のもの.伝熱計算は容易ではなく,数式で扱うことが
困難である.
4.2 温度差
(1) 温度差の式
熱交換器の入り口から x の位置にある微小部分 dx を通って高温流体 A→低温流体 B へ伝わる熱
量は
dQ  k  A   B dA
熱通過率
と表される.
高温流体 A
dA
低温流体 B
dQ
x
dx
42
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
A の失う熱量は
dQ  GACPA d A
第4章
熱交換器の伝熱計算 43/178
 t の関係と同じ.値を正にするため,-を付ける)
( Q  mc
d A  0 (並流,向流とも)
B の得る熱量は
d B  0並流
d B  0向流
dQ  GBCPB d B 並流
 GBCPB d B 向流
より
d A  
dQ
GACPA
d B  
  並流 
dQ


GBCPB   向流 
温度差の変化
 1
1
d A  d B  

 GACP
GBCPB
A


dQ   Dk  A   B dA


ただし,
D
1
1

GACPA GB CPB
ここで,    A   B とおくと
d A  d B  d  A   B   d  
d     DkdA

d  
  DkdA

積分区間は,入り口(x=0)から距離 x の位置で,温度差は 1 →  ,伝熱面積は 0→A となる.
両辺を積分すると


1
1

d      Dk  dA
A
0
1
 xdx  ln x  C より
左辺=ln  1  ln   ln 1  ln


1
右辺   DkA
 ln

  DkA
1
ここで, ln y  x  y  e の関係より
x

 e  DkA
1
   1e  DkA
よって,高温流体と低温流体の温度差は,指数関数で表されることがわかる.
43
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第4章
熱交換器の伝熱計算 44/178
(2) 流量と温度分布の関係
図で,高温側および低温側の流体の温度分布が a および a’のとき,高温側の流量が増加すると,
温度分布は b および b’となる.高温側の流量が無限大のとき,高温側は c のように温度一定とな
るが,低温側は c’のようになる.
w1
c
b
高温側
g1
低温側
a
c’
b’
a’
4.3 対数平均温度差
高温流体と低温流体の温度差は,指数関数で表されるため,一定とはならない.温度差が変化
するため,伝熱量の計算は複雑となる.そこで,温度差の平均値を用いることで,単純な熱通過
の問題に置き変える必要がある.この温度差は,後述のように式中に対数関数が含まれるため,
対数平均温度差と呼ばれる.
対数平均温度差  m を用いると,交換熱量は単純な熱通過問題として解くことができる.
平板式熱交換器の場合 Q  kA m となる.(A は伝熱面積)
円管式熱交換器の場合 Q  k '  l m となる.(l は管長)
注意:熱通過率の単位に注意
k:W/(m2K),k’:W/(mK)
タンクでは
向 流
並 流
0
伝熱面積 A(距離に比例)
対数平均温度差を用いることで,タンクと同じような熱通過の問
題に置き換えることができる.
44
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第4章
熱交換器の伝熱計算 45/178
A
一般的な熱通過問題
(流体の温度一定)
B
A
並流式熱交換器の熱通過
の式で計算できるが,
と
平均値
が不明なので,
も
も不明
B
温度差の変化(指数曲線)
と
面積等価
の温度差を
使い,
の平均値
を
として計算できる.
となる.式を解くと
と表わされるため,
A
0
指数曲線の描く面積
対数平均温度差と呼ばれる.
対数平均温度差の導出
高温流体と低温流体の温度差の平均を  m とすると,  m =グラフの面積/底辺となる.よっ
て

1 A
 m    dA  1
A 0
A

A
0
e
 DkA

dA  1
A
1  DkA
 1  DkA 
1
 Dk e
   DkA e

0
面積
ここで,

 e  DkA
1
だから
DkA   ln
 m 

1
1

ln
1
 
   1

 1 

 1

ln
1
入口と出口の温度差を 1 ,  2 とすると,   2 とおいて
45
A


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 m 
第4章
熱交換器の伝熱計算 46/178
 2  1 1   2

 2

ln
ln 1
1
 2
対数平均温度差(並流,向流とも同一)
参考)対数平均温度差の式を以下にように表わすと,添え字の順番を暗記しやすい.
 m 
 m 
 2  1
 2  1


ln  2  ln 1
ln 2
1
1   2
1   2


ln 1  ln  2
ln 1
 2
1 と  2 の温度差が小さいとき,次のように,算術平均を用いても誤差は少ない.
   2
 m  1
2
熱交換による伝熱量は
Q  kA m
となる.
例題 4.1 質量流量 1.00t/h のガスを 15.0℃から 40.0℃まで加熱することが出来る平板式熱交換器
を設計したい.加熱には 300kg/h の温水を用いる.図を参考にして,並流,向流それぞれの伝熱
面積を求めよ.ガスの比熱は 1.00kJ/(kgK),水の比熱は 4.1868kJ/(kgK),熱通過率は 29.1W(m2K) と
する.温水入口温度を 80℃とする.
w1=80.0℃
300kg/h
w1=80.0℃
300kg/h
w2
g1=15.0℃
1t/h=1000kg/h
w2
g2=40.0℃
並流
1t/h=1000kg/h
向流
解答
水が失った熱量  cwWw w  cwWw  w1   w2 

ガスが得た熱量  cgWg  g  cgWg  g 2   g1

両者は等しいから
cwWw  w1   w2   cgWg  g 2   g1 
より
46
g1=15.0℃
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第4章
熱交換器の伝熱計算 47/178
4.1868  103  30080.0   w2   1 103  100040.0  15.0  25  106 J/h  6944J/s  6944W 
80   w2  19.9
 w2  60.1℃
対数平均温度
 m 
1   2

ln 1
 2
1   w1   g1
 2   w 2   g 2
を用いると,熱交換による伝熱量は
Q  kA m
したがって
A
Q
k m
並流のとき,
1   w1   g1  80.0  15.0  65.0
 2   w2   g 2  60.1  40.0  20.1
1   2 65.0  20.1

 38.256 ℃

65.0
ln 1
ln
 2
20.1
Q
6944
A

 6.2376  6.24m2
k m 29.1  38.256
 m 
向流のとき,
1   w1   g 2  80.0  40.0  40.0
 2   w2   g1  60.1  15.0  45.1
1   2 40.0  45.1

 42.499 ℃
1
40.0
ln
ln
 2
45.1
Q
6944
A

 5.6148  5.61m2
k m 29.1  42.499
 m 
向流のとき, 1 と  2 の温度差が小さいので,次式を用いても良い.
1   2 40.0  45.1

 42.55 ℃
2
2
Q
6944
A

 5.6081  5.61m2
k m 29.1  42.55
 m 
と同じ結果が得られる.
47
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第4章
熱交換器の伝熱計算 48/178
4.4 温度効率
次の式で表わされる効率である.熱交換器において,温度  B1 の低温流体 B が到達しうる最高
温度は,高温流体の入口温度である  A1 である.よって,2 つの流体の入り口温度差に対して,実
際の温度上昇分がいくらになるかは,熱交換器の性能を表わす指標となる.
実際の温度上昇分
(加熱時)
最大温度上昇分
実際の温度降下分

(冷却時)
最大温度降下分
A
t 
B
並流,向流とも
流体 A:  At 
 A1   A2
 A1   B1
流体 B: Bt 
 B 2   B1
 A1   B1
:熱容量の差が大きい
1
(向流式)
(並流式)
:熱容量が同じ
0
1
2
3
NTU
4
温度効率の変化
横軸: NTU 
kA
:伝熱単位数
G A c pA
NTU=Number of Heat Transfer Unit の略
パラメータ β:高温側流体 A と低温側流体 B の熱容量の比:  
GAc pA
GB c pB
β = 1→ 高温側 A と低温側 B は同じ熱容量
β = 0→ 高温側 A は低温側 B と比べて熱容量は無視できる
β が1に近づく(高温側 A と低温側 B の熱容量が近づく)につれ,向流式の方が,温度効率が高
くなる(出口温度が同じでよければ熱交換器を小型化できる)ことが分かる.
並流,向流,直交流の温度効率を1 ,  2 ,  3 とすると,  2   3  1 となる.
48
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第4章
熱交換器の伝熱計算 49/178
4.5 エネルギー効率
A
B
熱交換器において,温度  B1 の低温流体 B が到達しうる最高温度は,高温流体の入口温度であ
る  A1 である.このとき,低温流体 B が得る熱量は
QB max  cB wB  A1   B1 
となる.一方,温度  A1 の高温流体 A が到達しうる最低温度は  B1 である.このとき,高温流体 A
が放出する熱量は
QA max  cAwA  A1   B1 
となる.実際に熱力学的に交換可能な最大熱量は, QA max か QB max のどちらかのうち小さい方で
ある.これを min QA max , QB max  と表記する.
実際に,交換が行われる熱量は,高温流体 A,低温流体 B ともに等しい.
Q  cAwA  A2   A1   cB wB  B 2   B1 
両者の比をエネルギー効率と言う.

Q
min QA max , QB max 
49
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第5章
第 5 章 フィンの伝熱
50/178
フィンの伝熱
伝熱の分野では,魔法瓶のように保温することが重要な場合と,冷凍機のように積極的に冷却
(放熱)させることが重要な場合があり,それぞれに方法や概念が異なる.
①
保温する=伝熱抵抗を増やす=伝熱(放熱)面積を減らし,保温材(断熱材)を巻き付ける.
②
冷却(放熱)を促進する=伝熱(放熱)面積を増やす=フィンを付ける.
5.1 温度分布の式と全放熱量
フィンの放熱効果を確認するには,フィンからの全放熱量の算出が不可欠である.放熱量を算
出するには,フィンの温度分布を求める必要がある.フィンの温度分布がわかると,フィンから
の全放熱量はフィン付け根における熱伝導から求めることができる.
フィンの温度分布は以下のようにして求めることができる.
フィンの微小部分における熱の移動を考えると,
微小部分への入熱 dQ’
微小部分からの放熱
熱伝導によるもの dQ”
大気への熱伝達 dQ
フィンの温度分布
x
dx
雰囲気温度
0
フィン
dQ’
壁面
周囲長 S
dQ”
断面積 A
dQ
断面積 A,周囲長 S の断面が円形のフィンを考える.定常状態を仮定すれば,微小要素におい
て流入熱量と放熱量を等しくおくことができる.
dQ'  dQ"dQ  dQ  dQ'dQ"
(5.1.1)
ここで,フーリエの法則から
d
dx
d 
d 
dQ"  A  
dx 
dx 
dx 
dQ'  A
50
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第 5 章 フィンの伝熱
θ
x dx
①式に代入すると
dQ  A
d  d 
d 2
dx


A
dx


dx  dx 
dx 2
(5.1.2)
熱伝達の式より
dQ  h  t0 Sdx
(5.1.3)
dx
S:周囲長
(5.1.2)式=(5.1.3)式とおけば
d 2
A 2 dx  h  t0 Sdx
dx
変形すれば
d 2 hS
  t0  :温度 θ に関する線形2階常微分方程式

dx 2 A
が得られる.ここで,   t0=Θ とおくと
d dΘ d 2 d 2Θ

,
 2
dx dx
dx 2
dx
2
d Θ hS
 2 
Θ
dx
A
と変形される.
参考:
d2y
 m2 y
2
dx
の一般解は
y  C1e mx  C2 e  mx
で与えられる.
証明,一般解を微分すると
dy
 C1 me mx  C 2 me mx
dx
d2y
 C1 m 2 e mx  C 2 m 2 e mx  m 2 C1e mx  C 2 e mx  m 2 y
dx 2

となり,微分方程式を満たしていることがわかる.
そこで,
m2 
hS
A
(m の単位は,m-1 になる.)
とおくと
51

51/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 5 章 フィンの伝熱
d 2Θ
 m 2Θ
2
dx
となる.この微分方程式の一般解は
Θ  C1emx  C2e mx
(5.1.4)
とおくことが出来る.ただし, C1 ,
C2 :積分定数
次に,境界条件を用いて,積分定数を決定する.
・熱伝達による放熱 Qx l  hAl  t0   hAΘl
・熱伝導による入熱
 d 
 dΘ 
Qx l   
 A   
 A
 dx  x l
 dx  x l
l
 dΘ 
 hAΘl   
 A
 dx  xl
h
 dΘ 

   Θl

 dx  xl
を x で微分すると
dΘ
 C1memx  C2 memx
dx
なので
C1meml  C2 meml  
C e

h
1
ml
 C2 e ml

(5.1.5)
h
h


e  m  C1  e ml  m  C2  0




ここで,(5.1.4)式に x  0 を代入すると, Θ0  C1  C2 ,また, Θ0   0  t0 より
C1  C2   0  t0
ml
 C2   0  t0  C1
これを(5.1.5)式に代入すると
h  ml
h   ml


 m  e C1   m  e  0  t 0  C1   0





h  ml 
h  ml 
h  ml

 m  e   m  e C1   m  e  0  t 0 







h   ml
h  ml


 m  e
1 
e

m 


C1   0  t0 
  0  t0 
h ml
h  ml 
h   ml

e ml  e ml 
e  e ml
 m  e   m  e
m






52

52/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 5 章 フィンの伝熱
53/178
h  ml

 m  e


C 2   0  t 0  C1   0  t 0 
h  ml 
h   ml

 m  e   m  e




h  ml

1 
e
m 

  0  t 0 
h ml
e ml  e  ml 
e  e  ml
m
  t0  Θ


h  ml
h  ml


1 
e
1 
e
m 
m 


mx
 t0   0  t0 
e   0  t0 
e mx
h
h
e ml  e ml 
e ml  e ml
e ml  e ml 
e ml  e ml
m
m
h
h

 mxml 
 mxml 
 1 
1 
e
e
m 
m 


 t0   0  t0 
h ml
e  eml 
e ml  e ml 
m
h m  xl  m  xl 
e  e 
e m  x  l   e  m  x l  
m
 t0   0  t0 
h ml

e ml  e ml 
e  e ml 
m




フィンからの全放熱量は
 d 
Q  A
フィン付け根の温度勾配に比例

 dx  x0

 A C1memx  C2 memx

x 0


 A C1me0  C2 me0  Am C1  C2 
h  ml 
h  ml

1 
e  1 
e
m 
m 


 Am  0  t0 
h ml
e ml  e ml 
e  e ml
m
h ml
e ml  e ml 
e  e ml
m
 Am  0  t0 
h ml
ml
 ml
e e 
e  e ml
m






5.2 フィン効率
フィンの形状や配置が複雑になると,解析的に伝熱量を求めることが困難となる.このような
場合,次のフィン効率を用いて評価を行う.
53
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)

第 5 章 フィンの伝熱
54/178
実際の放熱量
フィンの全表面が根元温度に等しい場合の放熱量


 h
x
 t0 dA
h 0  t0 A
1   x dA   t0 dA
1  m A  t0 A  m  t0


 0  t0
A
 0  t0
A
 0  t0
ただし,
 x :根元より,x の距離におけるフィン表面の温度
 0 :根元の温度
 m :フィン表面の平均温度
t 0 :周囲媒質の温度
A:フィンの表面積
フィン効率を用いると,フィン表面の平均温度は
m   0  t0   t0
と表される.
矩形断面のフィン効率は


1  el  e l

l  el  e l



2h
b
b
l
である.ただし,h:熱伝達率,λ:熱伝導率
例題 5.1 図のようなフィンが 800℃の壁面から,20℃の空気中に突き出している.このフィンの
全放熱量はいくらか?フィン表面の平均温度はいくらか?また,表面温度が平均温度に等しくな
るのは壁から何 mm の位置か?ただし,熱伝導率は   46.5 W/(mK),熱伝達率は h  23.3
W/(m2K)
5.00mm
30.0mm
500mm
解答
4
断面積 A  0.005  0.03  1.5  10 m2
周囲長 S  2  0.005  0.03  0.07 m
54
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 5 章 フィンの伝熱
55/178
hS
23.3  0.07

 233.835
A 46.5  1.5  10 4
 m  15.2916  15.292
eml  e15.2920.5  2092.25  2092.3
1
e ml  e  ml  2092.3 
 2092.3
2092.3
1
e ml  e  ml  2092.3 
 2092.3
2092.3
h ml
e ml  e  ml 
e  e  ml
m
1
h ml
ml
 ml
 ml
e e 
e e
m
m2 




フィンの全放熱量




h ml
e  e  ml
m
Q  Am 0  t0 
h ml
ml
 ml
e e 
e  e  ml
m
4
 46.5  1.5  10  15.292  800  20  1  83.1852  83.2 W
e ml  e  ml 
フィン効率は
2h
2  23.3

 14.157
b
46.5  0.005
el  e14.1570.5  703520

1  el  e l
   l l
l  e  e
1


703520 



1
1
703520  

 
 0.14127
1
14
.
157

0
.
5
14
.
157

0
.
5



 703520 

703520 

フィン表面の平均温度は
m   0  t0   t0  0.14127  800  20  20  130.19  130 ℃
温度分布は
h  mx  ml 
h  mx  ml 

 1 
1 
e
e
m 
m 


  t 0   0  t 0 
h ml
e ml  e  ml 
e  e  ml
m
mx
23.3
23.3

 e

 2092.3
 1 
1 


15.292  46.5  2092.3  15.292  46.5  e mx

130.19  20  800  20
23.3
2092.3 
 2092.3
15.292  46.5
2160.9
305.26  4.6228  10  4 e mx 
e mx
mx
ここで, e  t とおくと
2160.9
305.26  4.6228  10 4 t 
t
4 2
4.6228  10 t  305.26t  2160.9  0

55

埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 5 章 フィンの伝熱
56/178
解の公式から
305.26  305.26 2  4  4.6228  10 4  2160.9
t
2  4.6228  10  4
305.26  305.25

2  4.6228  10  4
 660320 or 10.8
よって
mx  ln t  ln 660320  13.400  x 
13.400
 0.87628  0.5 (不適)
15.292
もしくは
mx  ln t  ln 10.8  2.3795  x 
2.3795
 0.15560  0.156  0.5 (適合)
15.292
距離は 0.156m=156mm
5.3 フィン付き伝熱面からの放熱量
フィン付け根温度と雰囲気温度から放熱量を求める方法について述べる.
フィンの付いた伝熱面から放熱量は,フィンのない部分からの放熱量とフィン部分からの放熱
量の合計となる.
フィンのない部分からの放熱量は
Qw  h f Aw 0  t0 
フィン部分からの放熱量は,
Q f  h f Af m  t0 
ただし,
h f :壁面の熱伝達率(壁面外側とフィン部分は同じとする)
Aw :フィンを除いた壁面の外側伝熱面積
 0 :壁面の温度=フィン付け根部分の温度
A f :フィンの伝熱面積
 m :フィン表面の平均温度
t 0 :雰囲気温度
Qw
f1
Qf
0
1
L
P
A
hf
lw
h1
t0
m
t0
λ
Aw
56
Aw
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 5 章 フィンの伝熱
57/178
よって,フィン付き伝熱管全体の放熱量は
Q  Qw  Q f  h f Aw  0  t 0   h f A f  m  t 0 
(5.3.1)
フィン表面の平均温度は
m   0  t0   t0
①に代入すると
Q  h f Aw  0  t 0   h f A f   0  t 0   t 0  t 0   h f Aw  h f A f  0  t 0 

 0  t0
1
h f Aw  A f
(5.3.2)

ここで,熱伝達抵抗として R f 
Q
1
とおけば,放熱量は
h f Aw  A f 
 0  t0
(5.3.3)
Rf
となる.フィンがない場合の熱伝達抵抗は R f 
1
であるから,フィンが付いたことにより,
h f Aw
熱伝達抵抗は減少することになる.
5.4 フィン付き伝熱管の放熱量
流体温度と雰囲気温度から放熱量を求める方法について述べる.
r2
r1
rf
Qw
Qf
1
f1
0
h1
L
m
P
A
t0
hf
lw
λ
t0
Aw
Aw
円管内面での熱伝達量および円管内部の熱伝導量は Q に等しく,それぞれ次のようにおける.
Q  h1 A  f 1  1
円管内側(熱伝達)
(5.4.1)

円管壁内部(熱伝導)
Q
1  0 

(5.4.2)
1
r
ln 2
2 l r1
フィンからの放熱は,(5.3.2)式より
57
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
Q
第 5 章 フィンの伝熱
 0  t0
1
h f Aw  A f
58/178
(5.4.3)

(5.4.1)式,(5.4.2)式,(5.4.3)式より
Q
h1 A
1
r
1   0  Q
ln 2
2 l r1
1
 0  t0  Q
h f Aw  Af 
 f 1  1 
辺々足し合わせると
 f 1  t0 
 1

Q
1
r
1
1
r
1

Q
ln 2  Q
 Q

ln 2 
 h A 2 l r h A  A  
h1 A
2 l r1
h f Aw  Af 
1
f
w
f 
 1
ここで,熱通過抵抗を
R
1
1
r
1

ln 2 
h1 A 2 l r1 h f Aw  Af 
とおけば,通過熱量は
Q
 f 1  t0
R
となる.
例題 5.2 外径 20mm,肉厚 1mm の円管がある.この円管に外径 100mm,肉厚 1mm の環状フィ
ンを 10mm ごとに付けた場合,放熱量はフィンを付けない場合の何倍になるか?
ただし,フィン効率は 60%,フィン側の熱伝達率は 50W/(m2K),管内の熱伝達率は 5000W/(m2K),
円管の熱伝導率は 400W/(mK),管内部の流体と雰囲気の温度差は常に一定とする.
解答
フィンがない場合,熱通過抵抗は
R1 
1
1
r
1

ln 2 
h1 A1 2 l r1 h f A2
1
0.02
1
ln

5000  2  0.018l 2  400  l 0.018 50  2  0.02l
1
0.10536
1



180l
800l
2.0l

1

フィンがある場合,フィンを除いた円管の外側伝熱面積は
Aw  d 2lwn    0.02  0.01  0.001 
l
 0.36l
0.01
ただし, l w はピッチ-フィンの高さ(  P  h ),n はフィンの枚数
フィンの伝熱面積は,
2
2

l
 0.1   0.02  

Af  2   rf  r2 n  2   
 0.48l
 
 

 2   2  
 0.01

2
2

58
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 5 章 フィンの伝熱
59/178
フィンがある場合の熱通過抵抗は
R2 
1
1
r
1

ln 2 
h1 A 2 l r1 h f Aw  A f 
1
0.02
1
ln

5000  2  0.018l 2  400  l 0.018 50  0.36l  0.48  0.6  l 
1
0.10536
1



180l
800l
32.4l

1

放熱量の比は,熱通過抵抗の比となるから

1
0.10536
1
1
0.10536 1




Q2
R1
R2
180

l
800

l
2
.
0

l
180
800
2.0  13.835  13.8




1
0.10536
1
1
0.10536
1
Q1  R2




R1
180l
800l
32.4l 180
800
32.4
答え:13.8 倍
59
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第6章
第6章
無次元数の導入
60/178
無次元数の導入
6.1 基本単位と次元式
比重や比率などの例外を除き,たいていの物理量(長さ,重さなど)にはそれぞれの単位があ
る.物理量の種類は多く使われている単位も多数あるものの,興味深いことに基本となる単位は
7 つの『基本単位』(長さ[m],質量[kg],時間[s],温度[K],電流[A],物質量[mol],光度[cd])と
2 つの補助単位(平面角[rad],立体角[st])だけである.すなわち,すべての物理量の単位はこれ
らの単位の組み合わせで決定される.基本単位と補助単位の組み合わせて作られた単位を『組み
立て単位』という.特に伝熱工学で扱う力学系の物理量に関しては,4 つの基本単位(長さ[m],
質量[kg],時間[s],温度[K])があれば十分で,基本単位の組み合わせですべての単位を決定する
こ と が で き る . た と え ば , 圧 力 の 単 位 は , Pa ( パ ス カ ル ) で あ る が , 定 義 か ら Pa =
N/m2=(kgm/s2)/m2=kg/(ms2)となり,長さ[m],質量[kg],時間[s]の 3 つが組み合わされたものである
ことが分かる.
物理量が単位を持つとき,物理量は次元を持つともいう.(次元の定義は第 7 章参照.このほ
か,次元は空間の軸を示すことがある.例.3 次元空間)
物理量に単位がない場合,その物理量は無次元であるという.例.比重,比率
6.2 無次元数
単位を持たない数を無次元数という.次元を持つ数を次元のない状態にすることを無次元化と
いう.たとえば,マラソンの距離を例にとると,「ランナーが 21.0975km の地点を通過」と表現
することと「ランナーが全行程 42.195km の 1/2 を通過」は同じ意味になる.
21.0975km=全行程の 1/2
この場合,21.0975km を無次元数である 1/2 という比率で表したことになる.物理現象の中には流
体現象のように相似則が成り立つものがあり,無次元数を用いることで大きさに関係なく現象を
パターン化して表すことができるという工学上のメリットが生まれる.
6.3 レイノルズ数(Re 数):
流れの特性を表す無次元数
たとえば,翼の断面形状を同じにして,流速を調節すれば,全く同じ流れのパターンを作り出
すことができる.このときの条件は,Re 数と呼ばれる無次元数を同じにすることである.Re 数が
同じなら,流れのパターンは同じになることから,飛行機の翼周りの流れの様子を模型の翼で確
かめることが出来る.
模型の翼,Re 数=3.0×105
飛行機の翼,Re 数=3.0×105
Re 数が同じ=翼周りの流れのパターンは同じ=相似則
60
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第6章
無次元数の導入
(1) 定義:
Re 
①
代表速度u  代表長さL uL

動粘性係数

単位計算
m/s  m
 1 (無次元)
m 2 /s
平板の場合,前縁からの距離 x [m]におけるレイノルズ数は
Re 
u x

ただし, u :主流速度[m/s],x:前縁からの距離[m],
    : 動粘性係数 [m2/s],μ:粘性係数[Pa・s],ρ:流体密度[kg/m3]
②
管内流の場合,内径 d [m]の管内におけるレイノルズ数は
Re 
u d

管の断面が円以外の場合は,次の相当直径 de を用いる.(円管の場合, de  d となる)
de 
4S
L
ただし,S:流路断面積[m2],L:管断面のぬれぶち長さ[m]
(2) レイノルズ数(Re 数)の物理的意味
u2
慣性力
L  uL  uL
Re 

u
粘性力   L2


L
u2
3
慣性力=質量×加速度  L 
L
du 2
u
 L    L2
粘性力=せん断応力×面積  
dy
L
L3 
Re 数→小=慣性力が小,粘性力が大=粘り気のある流れ=乱れが発生しにくい=層流
Re 数→大=慣性力が大,粘性力が小=さらさらの流れ=乱れが発生し易い=乱流
参考:Re 数は粘性の影響を受ける流動現象の解明に用いられる.
(3) 臨界 Re 数・・・層流から乱流に遷移の始まる Re 数
①
平板に沿う流れ
層流←小←3.2×105→大→乱流
層流
Re=20000 Re=3.0×105
Re=100
Re=0
乱流域
層流底層
層流域
x
乱流境界層
層流境界層
61
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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
②
第6章
無次元数の導入
62/178
円管内流れの場合
層流←小←2300→大→乱流
熱伝達率小←→熱伝達率大
層流速度境界層
乱流域
Re>2300 の場合
層流域
層流
入口
d
層流域
乱流域
流速分布
層流域
層流
6.4 ヌセルト数(Nu 数):
乱流+層流
熱伝達の大きさを表す無次元数
(1) 定義:
Nu 
熱伝達率h  代表長さL hL

熱伝導率

単位計算

参考:熱伝達における熱流束の式は, q  h  f   w
W/(m 2 K)  m
 1 (無次元)
W/(mK)

流速が増加すると,壁面近傍の温度分布は A から B に変化する.このとき,熱伝達率は hA  hB
となる.
温度分布
固体壁
hB
θf
B
B
u
A
hA
θw
熱伝達量は
Q  h f   w A
壁面での熱伝導量は
 d 
Q     A
 dy  y  0
流体の熱伝導率
壁面での流体の温度勾配
両者は等しいから
 d 

  
 d 
 dy  y 0
h
 A  
h f   w A   

 f w
 dy  y 0
そこで,代表寸法を乗じると無次元化できる.整理すると
62
単位:
W/(m 2 K) 1

W/(mK) m
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第6章
無次元数の導入
63/178
 d 

  
hL
 dy  y  0 壁面での温度勾配


 f  w

基準温度勾配
L
これを Nu 数という.
6.5 プラントル数(Pr 数): 流れと熱移動の相関を示す無次元数.(水は Pr>1,空気は Pr<1)
動粘性係数 

熱拡散率a
a
Cp

粘性係数
,a 
なので, Pr 

Cp
密度

Pr 
温度境界層
速度境界層
Pr<1
温度境界層
速度境界層
温度境界層
Pr=1
速度境界層
Pr>1
6.6 グラスホフ数(Gr 数): 自然対流の強さを示す無次元数.
Gr 
代表長さL3  重力加速度g  体膨張係数  温度差 L3 g

動粘性係数

注意:グラスホフ数はレイノルズ数の一種である.
63
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第7章
第7章
次元解析
64/178
次元解析
7.1 次元式
伝熱工学で扱う力学系の物理量の基本となる単位(基本単位)は4つである.それらを記号
M,L,S,T で表す.
基本単位
質量[M],長さ[L],時間[S],温度[T]
すべての物理量は,基本単位の組合せで表わすことができ,これを組立単位という.したがって
組立単位は,基本単位の記号である M,L,S,T での組み合わせ表わすことができ,記号化した単位
の式を次元式という.次元式に含まれる基本単位の指数を次元という.
例)仕事=質量×重力加速度×高さ
仕事とは重力の働く場で質量 m の物体を高さ h だ
単位 m・g・h→kg・m/s2・m→kg・m2/s2
け持ち上げるのに必要なエネルギーmgh のこと.
↓
ML2/S2:基本単位の組合せで表すことができる.
仕事:ML2/S2
次元式
M: 1 乗
L: 2 乗
S: -2 乗
次元
仕事の次元式は ML /S で表される.仕事は,質量が次元 1,長さが次元 2,時間が次元-2 の物理
2
2
量である.
7.2 物理系と工学系の次元式
力学系の物理量は M,L,S,T の 4 つで表すことができるが,これに副次元として,力[F]と熱量[Q]
を加えると,次元式が簡素化できる.たとえば,仕事は,ML2/S2 が FL となる.M,L,S,T の 4 つの
みで表す場合は,物理系(もしくは MLST 系)次元式といい,M,L,S,T,F,Q の 6 つで表す場合は工
学系(もしくは MLSTFQ 系)次元式という.
主な物理量の次元式は次表の通り.
物理量
質量
長さ
時間
温度
力
モーメント
トルク
熱量
仕事
エネルギー
記号例
M
L, l
t
θ, T
F
M
T
Q
W
E
物理系
(MLST 系)
SI 単位
kg
m
s
K, ℃
N=kgm/s2
Nm=kgm2/s2
Nm=kgm2/s2
J=Nm=kgm2/s2
J=Nm=kgm2/s2
J=Nm=kgm2/s2
M
L
S
T
ML/S2=MLS-2
ML2/S2=ML2S-2
ML2/S2=ML2S-2
ML2/S2=ML2S-2
ML2/S2=ML2S-2
ML2/S2=ML2S-2
64
工学系
(MLSTFQ 系)
M
L
S
T
F
FL
FL
Q
FL=Q
FL=Q
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
動力,仕事率
速度
加速度
重力加速度
質量流量
体積流量
圧力
応力
体積弾性率
=1/圧縮率
比重量
密度
第7章
次元解析
P
u, v, w
α
g
G
Q
p
σ
W=J/s= kgm2/s3
m/s
m/s2
m/s2
kg/s
m3/s
Pa=N/m2=kg/(ms2)
Pa=N/m2=kg/(ms2)
ML2/S3=ML2S-3
L/S=LS-1
L/S2=LS-2
L/S2=LS-2
M/S=MS-1
L3/S=L3S-1
M/(LS2)=ML-1S-2
M/(LS2)=ML-1S-2
QS=QS-1
L/S=LS-1
L/S2=LS-2
L/S2=LS-2
M/S=MS-1
L3/S=L3S-1
F/L2=FL-2
F/L2=FL-2
K
N/m2
M/(LS2)=ML-1S-2
F/L2=FL-2
γ
N/m3=kg/(m2s2)
M/(L2S2)=ML-2S-2
F/L3=FL-3
M/L3=ML-3
FS2/L4=FS2L-4
   g  kg/m3
65/178
粘性係数
動粘性係数
μ
Pa・s=Ns/m2
m2/s
M/(LS)=ML-1S-1
L2/S=L2S-1
FS/L2=FSL-2
L2/S=L2S-1
比エンタルピ
比内部エネルギー
比エントロピ
比熱
熱容量
h
u
s
c, cp
C
L2/S2=L2S-2
L2/S2=L2S-2
L2/(S2T)=L2S-2T-1
L2/(S2T)=L2S-2T-1
ML2/(S2 T)=ML2S-2T-1
Q/M=QM-1
Q/M=QM-1
Q/(MT)=QM-1 T-1
Q/(MT)=QM-1 T-1
Q/T=QT-1
熱伝導率
λ
J/kg=Nm/kg=m2/s2
J/kg=Nm/kg=m2/s2
J/(kgK)
J/(kgK)
J/K
W/(mK)
= kgm/(s3K)
ML/(S3T)=MLS-3T-1
Q/(LST)=QL-1S-1T-1
熱拡散率
(温度伝導率)
  

a 
 c   m2/s
 p 
L2/S=L2S-1
L2/S=L2S-1
熱伝達率
h
M/(S3T) =MS-3T-1
Q/(L2ST)=QL-2S-1T-1
熱流束
q
M/S3 =MS-3
Q/(L2S)=QL-2S-1
    
W/(m2K)
= kg/(s3K)
W/ m2 =Nm/ (sm2)
=kgm2/(s3 m2)
= kg/s3
7.3 バッキンガムの π 定理
すべての物理現象は,無次元数を適当に組み合わせることで記述することができる.
たとえば,歩いた道のり L [m]と時間 t [s]の関係は,歩く速度を v [m/s]とすれば
L  vt
であるが,歩く標準速度を v0 と定めると,
L  rvv0t
となる. rv は標準速度に対するその人の歩く速度の比である.そこで,全行程距離 L0 で両辺を割
れば
Lm rv  v0 m/s  t s

L0 m
L0 m
となり,単位は消滅する(無次元化).2 つの無次元数を
65
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
1 
第7章
次元解析
66/178
L
vt
,2 
L0
L0
と定義すれば,
1  rv 2
となる. 1 は道のりの到達度を表す無次元数で, 2 は速度と時間の積を表す無次元数である.こ
のように無次元数を導入することで,道のりを直接表す代わりに到達度として表すことができる.
この場合は,関与した物理量は,道のり[m],時間[s],全行程距離[m],標準速度[m/s]の 4 つであ
るが,含まれている基本単位は[m]と[s]の 2 つだけである.
ある物理現象の特性を表すのに必要で,かつ互いに独立した無次元数の数は,その現象に関係
する物理量の全数 n から,n 個の物理量の次元式を表すのに必要な基本単位の数 m を差し引いた
ものに等しい.これを「バッキンガムの π 定理」という.
注意:道のりの例のように,m は常に 4 とは限らない.
n-m 個の無次元数を  1 ,  2 ,  3 , ,  nm とすれば,現象を表す特性方程式は次のように表される.
f 1,  2 ,  3 , ,  n m   0 →無次元数による特性方程式
ただし,
n :温度,速度など,その現象に含まれる物理量の数
m: n 個すべての物理量の次元式に含まれる基本単位の数
例題 7.1 n=6, m=4 のとき,グラフは図の 7.1 から 7.3 のどれで表わされるか?
解答
nm64 2
よって,物理現象を表す式は
f 1,  2   0 または 1  f  2 
となる.グラフは図 7.2 で表される.
例題 7.2 n=7, m=4 のとき,グラフは図の 7.1 から 7.3 のどれで表わされるか?
解答
nm743
よって
f  1 ,  2 ,  3   0 または 1  f  2 ,  3 
となる.グラフは図 3 で表される.  3 はグラフのパラメータとなる.
66
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
図 7.1
x
第7章
図 7.2
次元解析
67/178
図 7.3
7.4 次元解析 1)
流れを伴う熱移動では,熱伝導率と異なり熱伝達率は流体の種類や流速などの影響を受ける.
関与する因子は多数考えられるため,実験結果からそれらの因子を直接含む熱伝達率の実験式を
導出することは容易ではない.そこで,以下に述べる次元解析の手法を用いて,関与する因子か
ら必要となる無次元数の数を求め,無次元化された熱伝達率に関する実験式の導出が試みられた.
参考文献:1) 一色・北山,最新機械工学シリーズ 7
伝熱工学(改訂・SI 併記),森北出版,pp.81-85.
熱移動に関与する物理量は,以下のとおりとする.
物理量
記号
MLST 次元式
熱伝達率
h
M/(S3T)
流体の密度
ρ
M/L3
定圧比熱
cp
L2/(S2T)
代表寸法
D
L
流体の熱伝導率
λ
ML/(S3T)
流速
w
L/S
流体の粘性係数
μ
M/(LS)
関与する 7 つの物理量に対して,次の方程式が成立する.
f h,  , c p , D,  , w,    0
これらに含まれる基本単位は M, L, S, T の 4 つである.バッキンガムの π 定理より,必要な無次元
数は
nm743
である.したがって,3 つの無次元数  1 ,  2 ,  3 を用いれば,上記の方程式を
f 1,  2 ,  3   0 または 1  f  2 ,  3 
の形に変換することができる.π として様々なものが選択できるが,最も都合の良い式が完成す
るように選択することが望ましい.この例では,7 つの物理量のうち,h に関する実験式導出を目
的とするので,h を無次元化したものをまず  1 とする.残りは,ρ,cp を無次元化して,それぞれ
 2 ,  3 とすることを考える.7 つの物理量から h,ρ,cp を除いた残りの 4 つの物理量(基本量と
いう) D,  , w,  を用いて,  1 ,  2 ,  3 をそれぞれ次のように表す.
67
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
1 
2 
3 
第7章
h
D  wc1  d1
a1
b1

D  wc 2  d 2
cp
a2
b2
D a3 b3 wc3  d 3
分母の次元は
 ML
L 3 
S T 
a
b
L
 S 
c
d
M
b  d a  b  c  d  3b  c  d  b
S
T
 LS   M L
となる.そこで
M1S3T 1
M b1  d1 La1  b1  c1  d1 S 3b1  c1  d1 T  b1
L 3M
 2  b 2  d 2 a 2  b 2  c 2  d 2  3b2  c 2  d 2  b 2
M
L
S
T
2  2 1
LS T
 3  b3  d 3 a3  b3  c3  d 3  3b3  c3  d 3  b3
M
L
S
T
1 
分子分母の次元を比較すると,  1 に関して
M
1  b1  d1
L
0  a1  b1  c1  d1
S
 3  3b1  c1  d1
T
 1  b1
これを解くと, a1  1,
1 
b1  1, c1  0, d1  0 となる.よって
h
hD

 Nu数
0 0
D w 

1 1
となる.  1 はヌセルト数であることが分かる.  2 に関して
M
1  b2  d 2
L
 3  a2  b2  c2  d 2
S
0  3b2  c2  d 2
T
0  b2
これを解くと, a2  1,
2 
b2  0, c2  1, d2  1 となる.よって

D w 
1 0
1
1

Dw


Dw

 Re数
となる.  2 としてレイノルズ数を適用できることが分かる.  3 に関して
68
次元解析
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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
M
0  b3  d3
L
2  a3  b3  c3  d3
S
 2  3b3  c3  d3
T
 1  b3
これを解くと, a3  0,
3 
D w 
0
次元解析
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b3  1, c3  0, d3  1 となる.よって
cp
0 1
第7章
1

cp



 Pr数
a
 3 としてプラントル数を適用できることが分かる.結果として,
f Nu, Re, Pr   0 もしくは, Nu  f Re, Pr 
となる.結局,熱伝達率 h を含む Nu 数が,Re 数および Pr 数の関数として定義されることになる.
熱伝達率は次式を用いて Nu 数から求めることができる.
h
Nu数  
D
7.5 次元解析のメリット
熱伝達率 h を残りの物理量で表せば,
h  f (  , c p , D,  , w,  )
となり,6 つの独立変数が含まれる.パラメータが多すぎるため,グラフ化することは困難であ
る(図 7.4).グラフ化ができなければ,実験式の導出は不可能である.
h
Pr
?
図 7.4
x
図 7.5
Re
一方,次元解析により,熱伝達率 h を含む Nu 数が Re 数と Pr 数の関数,
Nu  f Re, Pr 
であることが分かったので,Re 数と Pr 数を変更した実験を行い,実験結果を図 7.5 のように表示
すれば,具体的な関数形を求めることが可能となる.実際,次節のように様々な実験式が提案さ
れている.
7.6 対流熱伝達の実験式
7.6.1 実験式に用いられる無次元数
69
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第7章
次元解析
70/178
種々の実験を通して,対流熱伝達に関する実験式が提案されている.
① 強制対流: Nu  f Re, Pr 
c, m, n を定数として
Nu  cRe m Pr n
と表される.ここで,Nu 
hL

であるから,h  Nu

L
として,熱伝達率を求めることができる.
② 自然対流: Nu  f Gr, Pr 
c, m, n を定数として
Nu  cGr m Pr n
と表される.
7.6.2 強制対流熱伝達の実験式の例
各種の実験式は,日本機械学会「伝熱工学資料(改訂第 4 版)」丸善に詳しく掲載されている.
ここではその一部を紹介する.
(1) 水平平板で平板先端から等温に保たれる場合
(伝熱工学資料 p. 46 より)
①層流熱伝達
平板先端から x の位置における局所ヌセルト数 Nu x および平板先端から x の位置までの区間の
平均ヌセルト数 Nu m は
局所ヌセルト数 Nu x  C Pr Rex
1/ 2
平均ヌセルト数 Num  2C Pr Re
(7.6.1)
1/ 2
x
(7.6.2)
ただし,
C Pr   0.332 Pr 1 / 3
 0.564 Pr
1/ 2
Pr  0.5
1  0.909Pr  Pr  0.2
1/ 2
0.2  Pr  0.5 の場合,Evans, H. L., Int. J. Heat Transfer, 5 (1962), 35. の表参照
②乱流熱伝達
Johnson-Rubesin の式
Nux  0.0296Pr 2 / 3 Rex
4/5
0.5  Pr  5
(2) 水平平板で平板先端から等熱流束で加熱する場合
(7.6.3)
(伝熱工学資料 p. 47 より)
①層流熱伝達
局所ヌセルト数 Nux  0.458Pr
1/ 3
1/ 2
Rex
(7.6.4)
②乱流熱伝達
0.5  Pr  5 の場合,(7.6.3)式を適用する.
(3) 管内強制対流層流熱伝達
管内流の場合,境界層が十分発達した領域では,Nu 数は一定となり下記の①のようになる.一
方,乱流では Nu 数は Re 数と Pr 数の関数として表わされる.
70
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第7章
次元解析
(伝熱工学資料 p. 51 より)
① (伝熱壁)円管
管摩擦係数 f  16 / Re
Nu  3.66 壁温一定
 4.36 熱流束一定
② (伝熱壁)矩形管(幅 a×高さ b)
0
b/a
24/Re
管摩擦係数 f
7.54
Nu 壁温一定
8.23
Nu 熱流束一定
0.2
19.1/Re
4.8
5.70
0.5
15.6/Re
3.38
4.11
1
14.2/Re
2.97
3.60
7.6.3 管内強制対流乱流熱伝達の例 (伝熱工学資料 pp. 55-56 より)
(1) 水の場合
Colburn の式
Nu  0.023Re0.8 Pr 1 / 3
常圧下の空気の熱物性値(伝熱工学資料,p.329 より)
温度
T
K
100
150
200
240
260
280
300
320
340
360
380
400
420
440
460
480
500
550
600
650
700
800
900
1000
1100
1200
1500
密度 定圧比熱 粘性係数 動粘性係数 熱伝導率 温度伝導率
ρ
cp
μ
ν
λ
a
kg/m3 kJ/(kgK) μ Pas
mm2/s mW/(mK) mm2/s
3.6109
1.072
7.1
1.97
9.22
2.38
2.3661
1.018
10.4
4.40
13.75
5.71
1.7679
1.009
13.4
7.58
18.10
10.15
1.4715
1.007
15.5
10.5
21.45
14.48
1.3578
1.007
16.6
12.2
23.05
16.86
1.2606
1.007
17.6
14.0
24.61
19.39
1.1763
1.007
18.62
15.83
26.14
22.07
1.1026
1.008
19.69
17.86
27.59
24.82
1.0376
1.009
20.63
19.88
29.00
27.70
0.9799
1.011
21.54
21.98
30.39
30.68
0.9282
1.012
22.42
24.15
31.73
33.78
0.8818
1.015
23.27
26.39
33.05
36.93
0.8398
1.017
24.10
28.70
34.37
40.24
0.8016
1.020
24.90
31.06
35.68
43.64
0.7667
1.023
25.69
33.51
36.97
47.14
0.7347
1.027
26.46
36.01
38.25
50.69
0.7053
1.031
27.21
38.58
39.51
54.33
0.6412
1.041
29.03
45.27
42.6
63.8
0.5878
1.052
30.78
52.36
45.6
73.7
0.5425
1.064
32.47
59.9
48.4
83.9
0.5038
1.076
34.10
67.7
51.3
94.6
0.4408
1.099
37.23
84.5
56.9
117
0.3918
1.122
40.22
102.7
62.5
142
0.3527
1.142
43.08
122.1
67.2
167
0.3206
1.160
45.84
143.0
71.7
193
0.2939
1.175
48.52
165.1
75.9
220
0.2351
1.212
56.11
238.7
87.0
305
71
プラントル数
Pr
0.826
0.770
0.747
0.728
0.725
0.720
0.717
0.719
0.718
0.717
0.715
0.715
0.713
0.712
0.711
0.710
0.710
0.709
0.710
0.714
0.715
0.719
0.722
0.732
0.742
0.751
0.782
71/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第7章
次元解析
72/178
(2) 気体の場合
Kays の式
0.5  Pr  1.0
Nu  0.022Re 0.8 Pr 0.5
Num  0.015Re f
0.88
1/ 3
Prw
50  Pr
m:混合平均温度,w:壁温,f:m と w の平均温度(膜温度という)
例題 7.3 Nu 数が 0.023Re 0.8 Pr 0.33 とおくことが
物性値[単位]
できる気体と固体壁の熱伝達がある.物性値が表
のようになるとき,次の各問に求めよ.
値
動粘性係数 ν[m2/s]
2×10-5
(1)
Re 数はいくらか?
熱伝導率 λ[W/(mK)]
3×10-2
(2)
Pr 数はいくらか?
比熱 cp[kJ/(kgK)]
1
(3)
Nu 数はいくらか?
速度 u[m/s]
100
密度 ρ[kg/m ]
2
固体壁の代表長さ L[m]
0.5
3
(4) 熱伝達率はいくらか?
解答
(1)
(2)
(3)
(4)
100  0.5
 2.5 106
5

2 10
c p  c p  1103  2  2 105
Pr 


 1.3333


3 102
Re 
uL


Nu  0.023Re 0.8 Pr 0.33  0.023  2.5 106
Nu 
hL

より
h
  1.3333
0.8
Nu 3321.3  3 10

L
0.5
0.33
2
 3321.3
 199.28  199 W/(mK)
7.6.4 自然対流熱伝達の実験式の例
平板まわりの自然対流熱伝達
(伝熱工学資料 p. 69 より)
次元解析の結果から,自然対流熱伝達では Nu 数は Nu  f Gr, Pr  と表される.ここで,レー
レー数
Ra  GrPr
を用いて,局所 Nu 数と Ra 数の関係をグラフに表すと図のようになる.Ra 数の小さい領域は層流
域で,高い部分は乱流域となる.
遷移下限の Gr 数は
Gr  2.1 109 Pr , 0.7  Pr  200 0
である.
72
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
乱流域
log Nu
外乱大の
とき
外乱小の
とき
遷移域
層流域
log Ra
一様伝熱面温度の場合の局所 Nu 数の変化
73
第7章
次元解析
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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章
第8章
沸騰
74/178
沸騰
8.1 沸騰様式の分類
沸騰現象は流動形式とバルク液温に関して次のように分類される.
プール沸騰(自然対流下の沸騰)
流動形式による分類
強制流動沸騰(強制対流下の沸騰)
飽和沸騰(バルクの液温が飽和温度)
バルク液温による分類
サブクール沸騰(飽和温度以下)
8.2 沸騰熱伝達の様相
静止した流体の沸騰(=プール沸騰)は次のようなプロセスを経る.
①
伝熱面温度が上昇すると,水温が飽和温度(沸点)以下でも気泡が発生する.この気泡は不
完全なもので,ある程度成長すると,冷却されてやがて消滅してしまう.(サブクール沸騰)
②
さらに,伝熱面の温度が上昇すると,気泡は消滅することなく成長を続けるようになる.(核
沸騰)このとき,気泡の形状や大きさは伝熱面の状態に大きく依存する.
③
伝熱量をさらに増やすと,伝熱面の金属に溶融温度の低いものを用いた場合には,焼切れて
しまう(バーンアウト).このときの熱流束をバーンナウト熱流束(もしくは限界熱流束)と呼
ぶ.
④
バーンナウト点を過ぎて,金属が溶融しない場合,水が伝熱面から完全に離れ,水と伝熱面
の間が蒸気で隔てられるようになる.(膜沸騰)
熱伝達率は,核沸騰>膜沸騰となる.
蒸気放出
気泡消滅
水面
水蒸気
気泡成長
サブクール沸騰
(低負荷)
(高負荷)
膜沸騰
8.3 核沸騰と伴流
気泡の上昇によって,下部に巻き込むような流れが生じる.この流れを伴流と呼ぶ.
74
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章
沸騰
75/178
伴流
気泡が成長し上昇する
気泡の上昇に伴い,周囲の水が流入する
この場所を核として気泡発生
8.4 沸騰特性曲線
伝熱面から水への熱流束(伝熱面熱流束)と,伝熱面温度と飽和温度の差(伝熱面過熱度)の
関係を示す曲線を沸騰曲線という.
縦軸
非沸騰
核沸騰
log q
q [kW/m2]
熱流束 水との伝熱面積
B バーンナウト点
伝
熱
面
熱
流
束
G
横軸
H
水の飽和温度
(沸点,沸騰点)
D
A
A’
沸騰開始点
遷移
沸騰
膜沸騰
壁面温度
伝熱面過熱度
logΔTsat
沸騰曲線
A’→A 間は非沸騰領域で自然対流が発生している.熱流束 q を増やして A 点に到達すると,気
泡の発生が観察される.この A 点を沸騰開始点という.A 点からさらに q が増えると,極大熱流
束点であるバーンナウト点 B に達する.この AB 間は核沸騰領域である.B 点を過ぎると伝熱面
は蒸気膜で覆われるため,伝熱面温度が急上昇して G 点に到達し,伝熱面は赤熱状態となる.G
点は膜沸騰領域である.核沸騰から膜沸騰の遷移は急激に起きることが特徴である.このとき,
一般の金属では溶融点を越えることが多いため,伝熱面が焼損する.バーンナウトとは「焼き切
れ」の意である.逆に G 点から q を減らすと,D 点に達する.D 点は極小熱流束点である.D 点
よりさらに q を減らすと,膜沸騰から急に核沸騰に変化して H 点に遷移する.B→G,D→H 間の
現象はきわめて不安定である.
8.5 飽和温度
水が沸騰する温度(飽和温度)は雰囲気の圧力によって異なり,図のように圧力が大きいほど
75
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章
沸騰
飽和温度も高くなる.
水温
0.4760MPa のとき
150℃
飽和温度
∥
沸点
0.1013MPa のとき
100℃
沸騰
時間
飽和温度と飽和圧力の関係は,機械工学便覧に記載されており,次表に抜粋を示す.
水の飽和表.日本機械学会編「(新版)機械工学便覧 A6 熱工学」より抜粋
圧力
MPa
0.07
0.1
0.10133
0.15
0.2
0.3
0.4
0.5
温度
℃
89.96
99.63
100.00
111.37
120.23
133.54
143.62
151.84
比体積,
ν'
0.00103612
0.00104342
0.00104371
0.00105303
0.00106084
0.00107350
0.00108387
0.00109284
3
m /kg
ν"
2.36473
1.69373
1.67300
1.15904
0.885441
0.605562
0.462224
0.374676
比エンタルピ kJ/kg
h'
h"
r=h"-h'
376.768 2660.1 2283.3
417.510 2675.4 2257.9
419.064 2676.0 2256.9
467.125 2693.4 2226.2
504.700 2706.3 2201.6
561.429 2724.7 2163.2
604.670 2737.6 2133.0
640.115 2747.5 2107.4
r
水の飽和表をグラフで表すと次図のようになる.
蒸気圧曲線
0.5
0.45
0.4
圧力 [MPa]
0.35
0.3
0.25
0.2
0.15
0.1
0.05
90
100
110
120
温度 [℃]
76
130
140
150


h 

h 
76/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章
沸騰
77/178
8.6 臨界点
水を一定圧力の下で加熱すると,やがて飽和温度に達して飽和水となる.飽和水をさらに加熱
すると水蒸気が発生し,飽和状態の水と水蒸気が混在した湿り蒸気となる.湿り蒸気の状態では
いくら加熱しても温度は一定である.湿り蒸気をさらに加熱すると,やがてすべてが水蒸気とな
って乾き飽和蒸気となる.乾き飽和蒸気をさらに加熱すると,再び温度が上昇し,過熱蒸気とな
る.ある圧力を超えると,ある温度まで過熱されると,蒸発現象を伴わずに一気に液体から蒸気
に変化する.このときの圧力と温度の状態を臨界状態という.臨界状態における温度を臨界温度,
圧力を臨界圧力という.p-v 線図および T-s 線図上で,臨界状態はひとつの点で示される.この点
を臨界点という.
p
T
液体
過熱蒸気
液体
c 臨界点
過熱蒸気
c 臨界点
等圧加熱
飽
和
液
線
等圧加熱
飽和蒸気線
湿り蒸気
湿り蒸気
v
s
8.7 二相流
管内の液体が沸騰しながら流れるとき,液体から発生した蒸気泡が液体中に混在することにな
る.このような流れを二相流という.気泡の体積含有率をボイド率という.蒸気重量比を乾き度
という.二相流は流の形式により,次のように分類される.
(1) 気泡流:単独の小気泡が混入
(2) スラグ流:大きな気泡の塊が流路をふさぐように存在.
(3) 環状流:液体部分が管内壁に押し付けられ,中央を蒸気が通過
(4) 噴霧流:液体が液滴となって気流中に存在
8.8 核沸騰における熱伝達率
各種の実験式は,日本機械学会「伝熱工学資料(改訂第 4 版)」丸善に詳しく掲載されている.
ここではその一部を紹介する.
熱伝達率は,次の形式で与えられる.(伝熱工学資料 p. 128 より)
h  cg R  f  p q n
ただし,
c:液体によって決まる定数
R:表面性状を規定する因子
77
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章
g R ,
沸騰
78/178
f  p  :表面性状および圧力の影響を表す関数
g R   R nR , f  p   p p として与えられる.( nR , n p は定数)
n
n:熱流束に対する依存性を示す指数
(低熱流束域 n 
2
4
,高熱流束域 n  を推奨)
3
5
8.9 バーンナウト熱流束 qmax [W/m2]の値 (伝熱工学資料 p. 130 より)
加熱機器はバーンナウト熱流束以内で動作させる必要があり,正確な推定が重要となる.
Rohsenow と Griffith の式がもっとも簡単で利用しやすい.
qmax
hv  v
 v 


 l   v 
0.6
 0.0121 [m/s]
ただし, hv :蒸発熱 J/kg,  v :蒸気の密度 kg/m3,  l :液体の密度 kg/m3
78
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 9 章
第9章
凝縮
79/178
凝縮
9.1 凝縮の分類
気相から液相への変化を凝縮という.沸騰や蒸発とは逆の現象.
条件によって凝縮された液相の状態が異なり,次のように分類される.
・膜状凝縮:固体表面に膜状の液相を形成するもの
・滴状凝縮:固体表面に液滴を形成するもの.熱伝達率大
・直接接触凝縮:蒸気が低温流体に触れて直接凝縮するもの.固体表面への伝熱が無く,凝縮量
は低温流体の熱容量によって決定される.
液膜
液滴
膜状凝縮
滴状凝縮
固体表面が存在するとき,膜状凝縮になるか滴状凝縮になるかを決定する因子は,固体表面の材
質,表面の汚染度,有機物(油)の付着,蒸気の清浄度などである.
膜状凝縮
滴状凝縮
清浄 ← 汚染度 → 汚染
無
←
油
→ 付着
9.2 凝縮熱伝達
凝縮が起きるとき,液体の膜表面と蒸気の間では対流熱伝達,膜内部と伝熱面では熱伝導によ
り熱移動が起きる.液体の膜表面と蒸気との間の熱伝達率を hc,液膜の熱伝導率を l ,液膜の厚
みを δ,蒸気の飽和温度を Ts,液膜の表面温度を Tlw,伝熱面の温度を Tw とすると,熱流束は
液体の膜表面→蒸気: q  hc Ts  Tlw 
(9.2.1)
液体の膜表面内
:q 
l
T  T 
 lw w
(9.2.2)
となる.(9.2.1)式,(9.2.2)式より
Ts  Tlw 
q
hc
(9.2.3)
79
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 9 章
Tlw  Tw 
q
l / 
凝縮
80/178
(9.2.4)
Ts
Tlw
Tw
伝熱面
δ
液膜
(3),(4)より
1
1 
q
Ts  Tw   
h

/

l
 c

ここで, hc  l /  のため,
1
1

hc
l / 
よって
1
1
Ts  Tw   
 hc l / 
q

1

q 
q q
l / 
l

l
T  T 
 s w
凝縮熱伝達では,熱伝達率を h 
l
とおくことができる.→熱伝達率は液膜の厚みで決まり,液

膜が薄いほど値が大きくなる.
9.3 膜状凝縮の熱伝達率
各種の実験式は,日本機械学会「伝熱工学資料(改訂第 4 版)」丸善に詳しく掲載されている.
ここではその一部を紹介する.
(1) 体積力対流凝縮(液膜内の液体が重力によって流れ落ちる場合)
(伝熱工学資料 p. 148 より)
① 層流液膜
1/ 4
 Ga Pr 
Nul  0.94 l L  , 添え字 L:液体,l:代表寸法に伝熱面長さを取る.
 Ph 
3
l g
d 3g
Ga  2 ,
:ガリレオ数
2


Ph  c pl Ts  Tw  / h :相変化数,
h :凝縮の潜熱
② 乱流液膜
Nul  0.035PrL
*
2/5
ReL
*1 / 6
, Re L :二相レイノルズ数
80
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 9 章

Nul    l / g
*
2

1/ 3
凝縮
81/178
l :凝縮数, α:熱伝達率
(2) 強制対流凝縮(液膜内の液体が蒸気の流れの影響を受ける場合)
(伝熱工学資料 p. 148 より)
① 層流液膜
1/ 3
Nul  21ReLl
1/ 2
Pr 

1  0.451.2  L 
RPh 

1/ 2
 u 
R   L L 
  v uv 
:ρu 比
② 乱流液膜
Nul  0.156PrL R1 / 2 Ph1 / 15ReLl
1/ 3
0.8
これらの他に,体積力対流と強制対流の共存する場合,層流と乱流以外に波状流に対する式があ
る.
9.4 滴状凝縮の熱伝達率
未解明な部分が多く,実験データも不十分である.
9.5 直接接触凝縮の熱伝達率
噴流上への凝縮,落下液滴上への凝縮などに対する式が提案されている.
81
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
第 10 章
放射伝熱
82/178
放射伝熱
10.1 放射伝熱の概念
入射エネルギ Q が平面に入射するとき,平面で一部は反射され,一部は吸収され,残りは透過
される.
Q
QA
QD
QR
これらのエネルギには,エネルギ保存が成り立つから
Q  QA  QR  QD
(10.1.1)
の関係がある.両辺を Q で割ると
1
Q A QR QD


Q
Q
Q
となる.ここで
QA
 a * :全吸収率,
Q
QR
*
  r :全反射率,
Q
QD
*
  p :透過率
Q
とおくと
a*   r   p  1
*
*
(10.1.2)
となる.このとき,
a *  1 ,  r   p  0 のとき,完全黒体(すべてを吸収する)
*
*
*
 r *  1 , a *   p  0 のとき,完全白体(すべてを反射する)
 p *  1 , a *   r *  0 のとき,透過体(すべてを透過する)
と呼ばれる.
例題 10.1 全吸収率が 0.1,全反射率が 0.2 の平面がある.この平面の透過率はいくらか?
解答
 p*  1  a*   r *  1  0.1  0.2  0.7
10.2 熱放射の基本法則
(1) プランクの法則
物体からはいろいろな波長のエネルギ(熱放射エネルギ)が電磁波として放出されている.放
射される波長の範囲や放出されるエネルギ量はその物体の温度によって異なる.単位時間,単位
面積当りに放出されるエネルギ量(放射能)は波長と温度の関数となり,波長 λ での放射能(=
82
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
放射伝熱
83/178
単色放射能)は次のように記述できる.
E  f  , T  [W/m3]
ただし,T:絶対温度
また,全放射能 E は,単色放射能 E を波長 λ で積分したものとなり,次式で表すことができる.

E   E d
0
[W/m2]
完全黒体について,黒体の単色放射能は
Eb 
 e
5
c
1
c 2 / T

[W/m2]
1
(10.2.1)
で表され,これをプランクの法則という.ただし,
λ:波長 m
T:物体表面の絶対温度 K
c1=3.7413×1016 Wm4/m2=Wm2 プランクの第1定数
c2=1.4388×10-2 mK プランクの第2定数
ある物体のある温度における放射能と同じ温度における完全黒体の放射能の比を放射率と言う.
放射率  
E
Eb
放射率がすべての波長に対して一定となる物体を灰色体という.実際の物体の放射率は波長によ
って異なる.
完全黒体
Eλ
Ebλ
灰色体
Eλ
λ
例題 10.2 波長が 0.550μm の場合,温度 1000K における黒体の単色放射能は何 W/m2 か?
解答
Eb 
5 ec
c1
2
/ T
3.7413  1016

 162884 ≒1.63  105
2
1
.
4388

10
1


5
6
0.550  10 6  e 0.5510 1000  1







W/m2
(2) ウイーンの変位則
物体表面の温度が増加すると,単色放射能のピークは短波長側へずれる.これは物体の温度が
高くなるにつれて,表面の色が赤→黄→白へと変化することに対応している.
max T  2.90  10 3 [mK]
(10.2.2)
の関係が成立する.これを,ウイーンの変位則という.
83
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
放射伝熱
84/178
ウイーンの変位則
Ebλ
温度が上がると,ピークの
位置が短波長側へずれる
1200K
800K
可視部
λ
赤外部
黒体の単色放射能と波長の関係
(3) ステファン-ボルツマンの法則
物体が放出する全エネルギ量は

Eb   Eb d  
0

0
 e
5
c
1
c 2 / T
d  T
4
1
(10.2.3)
この式をステファン-ボルツマンの法則という.σ はステファン-ボルツマン定数という.
  5.67  108 W/(m2K4)
(10.2.4)
完全黒体の場合
Eb  T 4  5.67 108 T 4
灰色体の場合
E  Eb   T 4  5.67 108 T 4
(4) キルヒホッフの法則
T  Tb の場合を考える.熱の出入りはなく,2面は平衡状態にあるから,灰色体の放出エネル
ギについて,
E Q
が成立する.したがって
E  aEb  吸収率a 
E
Eb
一方,放射率の定義は
放射率  
E
Eb
であるから,
a 
(10.2.5)
となる.すなわち,物体の放射率εと吸収率 a は等しい.これをキルヒホッフの法則という.
84
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
T
放射伝熱
85/178
Tb
E
完全黒体は放射エ
ネルギをすべて吸
Eb
収
(1-a)Eb
(1-a)Eb
灰
色
体
完
全
黒
体
(5) ランバートの法則
面要素 dA1 から,半径 1 の球面上の面要素 dA2 に到達するエネルギ dQ12 は次式で表される.こ
れをランバートの法則という.
dQ12  I  dA1  cos   dw
ただし,
dw は面要素 dA1 の中心から見た面要素 dA2 の立体角
I は放射強さ
放射強さ I と放射能 E には次の関係がある.
I
1

E
(10.2.6)
dA2
aEb
φ
dA1
r=1
φ
10.3 高温ガスの熱放射
CO2, H2O などの三原子分子は放射線をよく吸収する.N2, O2, H2 などは無視できる.
温度 Tg のガス塊から温度 T1 の黒体微小平面 dA が受ける放射エネルギは


dQg   g dQb   g  Tg  T1 dA
4
4
(10.3.1)
と表される.ただし,
 g :ガスの放射率
dQb :温度の黒体から受ける場合の放射エネルギ
85
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
放射伝熱
86/178
燃焼ガスの放射率は,炎が黄色く輝かない「不輝炎」では,CO2, H2O などの含有率で決定される.
炎が黄色く輝く「輝炎」では,炎の中の炭素粒子から固体放射が行われるため,「不輝炎」より
放射率は高くなる.
10.4 二面間の放射伝熱
(1) 黒体 2 面間のとき
図において,dA1,dA2 は黒体面 A1,A2 上の微小要素面,r を 2 面間の距離, 1 , 2 を垂線と r
とのなす角とする.
dA1 から dA2 に放射されるエネルギは,
dQ12  Ib1dA1 cos 1d1
立体角の定義より
r 2 d1  dA2 cos 2  d1 
dA2 cos 2
r2
よって
dQ12  I b1dA1 cos 1
dA2 cos 2
cos 1 cos 2
 I b1
dA1dA2
2
r
r2
参考
円周 l  2r (2πrad = 360 度=1 周)→円弧なら dl  rd
円の面積 S  r 2
r2
d
2
扇形なら dS  2r 2d
扇形なら dS 
球の表面積 S  d 2  4r 2
A2
r
r
(立体角)
A1
同様に,dA2 から dA1 に放射されるエネルギは,
dQ21  I b 2
cos 1 cos 2
dA1dA2
r2
正味の放射伝熱量は
86
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
dQ  dQ12  dQ21  I b1  I b 2 
放射強さ I と放射能 E には, I 
1
dQ 

Eb1  Eb 2 
1
87/178
cos 1 cos 2
dA1dA2
r2
E の関係があるから,黒体 2 面間の放射伝熱の基礎式は

cos 1 cos 2
r
放射伝熱
2

dA1dA2   T1  T2
4
4
cos rcos 
1
2
2
dA1dA2
となる.面 A1 から面 A2 への放射伝熱量 Q は,次のように上式を積分することで求めることがで
きる.
Q

A1 A2
dQ



4
4 cos 1 cos 2 
 T1  T2
dA1dA2
r 2


cos 1 cos 2
4
4
  T1  T2  
dA1dA2
A1 A2
r 2


A1 A2


ここで,
1
cos 1 cos 2
dA1dA2


A
A
A1 1 2
r 2
F1, 2 
とおくと,放射伝熱量 Q は

(10.4.1)

Q  F1, 2 T1  T2 A1 [W]
4
4
(10.4.2)
と簡単な表記となる.F1, 2 は面相互の位置関係から幾何学的に決定されるため,形態係数という.
2 つの面が互いに平行に向かい合い,無限に続く場合,形態係数は F1, 2  1 となる.このほかの形
態係数の値は,いろいろな伝熱関連の資料に掲載されている.
(2) 無限平行 2 平面の場合
形態係数は F1, 2  1 となる.
①
黒体の場合
2 つの面が共に黒体の場合,単位面積当たりの放射伝熱量は

Q   T1  T2
4
4

[W/m2]
となる.
②
灰色体の場合
黒体ではない場合,一部のエネルギは吸収され,残りは反射されることになる.この吸収と反
射は無限に続く.
1
2
E1
87
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
放射伝熱
88/178
面 1 と 2 の放射能を E1 , E 2 とする.吸収率は放射率  1 ,  2 に等しいので,面 2 が吸収する放射
エネルギは
Q2   2 E1   2 1  1 1   2 E1   2 1  1  1   2  E1  
2

2

  2 E1 1  1  1 1   2   1  1  1   2   
2
2
となる.大括弧の中は,初項 1,公比 1  1 1   2  の等比級数であるから,二項級数の公式
 1  x  x
2

 
1
1 x
に当てはめると
1  1  1 1   2   1  1  1   2    
2
2
1
1  1  1 1   2 
よって
Q2 
 2 E1
1  1  1 1   2 
となる.
E1   1T1
4
なので,代入すると
Q2 
 1 2T14
[W/m2]
1  1  1 1   2 
同様に,面 1 が吸収する放射エネルギは
Q1 
 1 2T2 4
[W/m2]
1  1  1 1   2 
面 1 から 2 に伝わる放射伝熱量 Q は両者の差であるから
Q  Q2  Q1 



1
1

1
2


 1 2
 1 2
4
4
4
4
T1  T2 
T1  T2
1  1   1 1   2 
1  1   1   2   1 2
1
T
1
4
 T2
4


ここで,
fs 
1
1
とおけば,


1
1
2
(10.4.3)
1

Q  f s T1  T2
[W/m2]
となる. f s を放射係数という.
4
4
(10.4.4)
(3) 灰色体の有限平板の場合
面 1 から放射されたエネルギが吸収される様子は次の図の通りとなる.(二つの平板は平行で
ある必要はなく,角度を持つ平板でもよい.)面 1 と 2 の面積を A1,A2,面 1 から 2 への形態係
数を F12,面 2 から 1 への形態係数を F21 とする.面 1 と 2 の放射率を  1 ,  2 とする.
88
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
1
放射伝熱
89/178
2
図より,面 2 が吸収する放射エネルギは,
Q2  F211E2  F21 F12 1  1 1   2 1E2  F21 F12 1  1  1   2  1E2  
2
3
2
2
2
F12 1 2T1 A1

1  F21F12 1  1 1   2 
4
[W]
同様に,面 1 が吸収する放射エネルギは,
F21 1 2T2 A2
1  F21F12 1  1 1   2 
4
Q1 
[W]
二面間の放射伝熱量 Q は両者の差だから
Q


F121 2
 T14  T2 4 A1
1  F21F12 1  1 1   2 
(10.4.5)
となる.さらに,後述の形態係数の交換則
F12 A1  F21A2
を適用すると,
Q
F121 2
A
2
1  1 F12 1  1 1   2 
A2


 T14  T2 4 A1
(10.4.5)
となる.ここで,放射係数を
fs 
とおくと
F121 2
F121 2

1  F21F12 1  1 1   2  1  A1 F 2 1   1   
12
1
2
A2

(10.4.6)

Q  f s T1  T2 A1 [W]
4
4
となる.
(4) 灰色体 1 が灰色体 2 で完全に囲まれる場合
面 1 から放射されたエネルギが吸収される様子は次の図の通りとなる.面 1 と 2 の面積を A1,
A2,面 1 から 2 への形態係数を F12,面 2 から 1 への形態係数を F21 とする.
面 1 と 2 の放射率を  1 ,  2
とする.面 1 は面 2 に完全に囲まれているから,
89
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
放射伝熱
F12  1
F21 
A1
A2
となる.
2
1
E1
合計
合計
合計
図より,面 2 が吸収する放射エネルギは,
Q2   2 E1  1  F211 1   2  2 E1  1  F211  1   2   2 E1  
2
2
 1 2T14 A1

 2  F211   2 1
[W]
同様に,面 1 が吸収する放射エネルギは,
F211 2T2 A2
 1 2T2 A1


 2  F211   2 1  2  F211   2 1 1
4
Q1 
T2 4 A1
1

 F21  1
1
 2 
二面間の放射伝熱量 Q は両者の差だから
Q  Q2  Q1 
4


[W]


1
1
 T14  T2 4 A1 
 T14  T2 4 A1
1


1
1 A1  1
 F21  1
   1
1
1 A2   2 
 2 
(10.4.7)
となる.ここで
90
90/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
fs 
1
1

1
 1 A1  1

1
 F12   1
   1
1
  2  1 A2   2 
とおくと

放射伝熱
91/178
(10.4.8)

Q  f s T1  T2 A1 [W]
4
4
となる.
(4) 二面間の放射伝熱量
1 の面を基準にした二面間の放射伝熱量は,次式で与えられる.


Q  f s T1  T2 A1 [W](灰色体の場合)
ここで, f s は,放射係数である.
4
4
(10.4.9)
放射係数は,面 1 から 2 への形態係数 F12,面 2 から 1 への形態係数 F21 および面 1 と 2 の放射
率を  1 ,  2 の関数となる.
f s  f F12 , F21, 1 ,  2 
と表すことができ,具体的には以下の通りとなる.
完全黒体の無限平行平板の場合
f s  F12
(10.4.10)
灰色体の有限平行平板の場合
fs 
F121 2
F121 2

A
1  F21F12 1  1 1   2  1  1 F 2 1   1   
12
1
2
A2
(10.4.11)
灰色体 1 が灰色体 2 で完全に囲まれる場合
fs 
例題 10.3
1
1

1
 1 A1  1

1
 F21  1
   1
1
  2  1 A2   2 
(10.4.12)
2000K と 1000K の無限平行黒体面間で放射伝熱される熱量は何 W/m2 か?
解答




Q   T1  T2  5.67 108  20004  10004  850500 ≒8.51105 W/m2
4
4
例題 10.4 空気中に十分に広い 2 平行面が対峙しているとき,放射率がともに 0.200 とする放射
係数はいくらか?
解答
fs 
1
1

1
1
2

1
1
1
 ≒ 0.111
1
1

1 9
0.200 0.200
10.5 放射熱の遮断
(1) 遮熱板の効果
91
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
放射伝熱
92/178
図のように,温度が T1 , T2 T1  T2  の平行 2 平面 1,2 の中間に遮熱板 3 を挿入する.真空中でし
かも遮熱板が箔のように薄い場合,熱伝導および対流熱伝達による遮熱板への伝熱,および放熱
が無視できるから,定常状態では遮熱板の温度 T2 は放射伝熱のみによって決定され,T1  T3  T2
となる.
1
3
1-3 間および 3-2 間の放射伝熱量は

Q13 
1
1
Q32 
1
3

1
3


1
2
1
T
1
4
1
T
4
3


2
 T3  f s13 T1  T3
4

4

4

 T2  f s 32 T3  T2
4
4
4

と表される.定常状態では, Q13  Q32 より



f s13 T1  T3  f s 32 T3  T2
4
4
f s13T1  f s 32T2
f s 32  f s13
4
T3 
4
4
4

4
ここで,3 つの面の放射率が等しい場合
1   2   3  
となるから,
f s 32  f s13  f s
とおけば,
f s13T1  f s 32T2
f T  f sT2
T  T2
 s 1
 1
f s 32  f s13
fs  fs
2
4
T3 
4
4
4
4
4
4
よって,放射伝熱量は
Q  Q13  Q32 

2

1
T
4
1


 4 T 4  T2 4  1
4
  f s T14  T2 4
 T3  f s  T1  1
2  2


(10.5.1)
となる.放射率が同じ場合,遮熱板を 1 枚挿入することで放射伝熱量を 1/2 に減少することがで
きる.
(2) 遮熱板を 2 枚挿入する場合
92
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
1
3
4
放射伝熱
93/178
2
1-3 間,3-4 間および 4-2 間の放射伝熱量は

Q  f  T
Q  f  T
Q  f s T1  T3
4
4
 T4
4
4
 T2
s
4
3
s
4
4



これらより
Q
f s
Q
4
4
T3  T4 
f s
Q
4
4
T4  T2 
f s
T1  T3 
4
4
3 式の両辺をそれぞれ足し合わせると
T1  T2 
4
4
よって,
Q
3Q
f s

1
4
4
f s T1  T2
3

(10.5.2)
となって,放射伝熱量は 1/3 となる.
以上のことから,放射率が同じ場合,遮熱板の枚数を n とすると,放射伝熱量は 1/(n+1)となるこ
とがわかる.
例題 10.5 放射熱を 10 分の 1 するには,遮熱板を何枚挿入すればよいか.ただし,伝熱面と遮
熱板の放射率は等しいとする.
解答
10  1  9 枚
10.6 形態係数の算出式
1 の面から 2 の面に放射する場合の形態係数の定義式は
93
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章
F1, 2 
1
cos 1 cos 2
dA1dA2


A1 A1 A 2
 r2
放射伝熱
94/178
(10.6.1)
形態係数の計算式の具体例を以下に示す.
①
周囲を取り囲まれた面
F1, 2  1,
A1
A2
(10.6.2)
A2
面2
A1
面1
②
F2,1 
小さな円から平行な大きな円(軸一致)
F1, 2 
1  2
2
2
a  b  h 
2b2 
2

 b 2  h 2  4a 2 b 2 


2
(10.6.3)
半径 b の円
b
A1
a
h
A2
a 半径 a の円
上記の式を含め,形態係数の式の詳細は,下記資料を参照のこと.
『埼玉工業大学 技術資料(小西克享) 形態係数の式(平行面間)』
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Pdf/ParallelGeometricFactor.pdf
『埼玉工業大学 技術資料(小西克享) 形態係数の式(垂直面間)』
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Pdf/VerticalGeometricFactor.pdf
形態係数の導出過程は,小西研究室のホームページから下記 URL(技術資料のページ)を参照の
こと.(形態係数の式ごとに用意された pdf ファイルを参照可)
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Tech_inform.html
10.7 形態係数に関する法則
(1) 形態係数の交換則
面積が A1 と A2 の 2 面間の形態係数には次の関係がある.
A1F1,2  A2 F2,1
(10.7.1)
ただし, F1, 2 は,1 の面から 2 の面に放射する場合の形態係数で, F2,1 は,2 の面から 1 の面に放
射する場合の形態係数
黒体 2 面間の放射伝熱量は,


Q  F1, 2 T1  T2 A1 [W]
4
4
(10.7.2)
もしくは
94
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章


Q  F2,1 T1  T2 A2
4
4
で計算され,値は一致する.

[W]
放射伝熱
95/178
(10.7.3)



注意:伝熱量を F1, 2 T1  T2 A2 もしくは F2,1 T1  T2 A1 として計算するのは間違いで,形態
4
4
4
4
係数と面積の組み合わせに注意しなければならない.
(2) 離れた位置におかれた平板間の形態係数
A1
A3
A4
A2

A 
A
F1,2  1  3 F1 3, 2  4  F1 3, 4   3 F3, 2  4  F3, 4 
A1 
A1

(10.7.4)
まとめ
1.温度 T1[K],放射率εの面から放射される熱量(放射熱量)は
Q   T 4 [W/m2]
2.温度 T1 [K],放射率1 の面 1 から温度 T2 [K],放射率2 の面 2 に放射で伝わる熱量(放射伝熱
量)は

Q  f s T14  T2 4
 [W/m ]
2
面 1 の面積を A1 とすれば,面全体では


Q  f s  T1 4  T2 4 A1 [W]
ただし,
f s :放射係数
  5.67 108 W/(m2K4):ステファン-ボルツマン定数
T1 , T2 :熱源温度および受熱面温度
[K]
完全黒体の無限平行平板の場合, f s  1
完全黒体の平行平板の場合, f s  F12
灰色体の無限平行平板の場合, f s 
1
1

1
1
2
1
F121 2
1  F12F211  1 1   2 
1
灰色体が完全に囲まれる場合, f s 

1 A1  1
  1

1 A2   2 
灰色体の有限平行平板の場合, f s 
95
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 11 章
第 11 章
太陽放射
96/178
太陽放射
11.1 データ (http://ja.wikipedia.org/wiki/より)
太陽は,中心核(コア)・放射層・対流層(表面対流層)・光球・彩層・遷移層・コロナから
なる.
光球直径 1,392,000km(地球との直径比 109)
質量 1.9891×1030 kg(太陽系の 99%)
表面温度 5,780K
中心温度 1.5×107K
コロナの温度 5×106K
参考:放射層は太陽半径の 20%~70%の所にあり,対流層は 70%~100%の所にある.光球の厚さ
は 300~500km,温度は 5,800~6,000K,地球上から視認できる太陽光は,光球から発せられてい
る.彩層の厚さは約 2,000km,温度は光球よりやや低く,4,700~5,800K.紅炎(プロミネンス)
が発生することがある.遷移層はわずか 100km ほどの厚みで,急激に温度が上昇する.コロナは
太陽大気の外層で,太陽半径の 10 倍以上の距離まで広がる.コロナの温度は太陽表面温度よりは
るかに高く,太陽最大の謎.コロナからは太陽風(極めて高温~106K で電離した粒子 = プラズ
マ,地球の公転軌道に達するときの速さは約 300~900km/s,平均約 450km/s)が出る.プロミネ
ンスは彩層の一部が,磁力線に沿って,上層大気であるコロナ中に突出したもの.最大の高さは
1997 年に観測された 350,000 km(地球直径の約 28 倍).
平均公転半径 1 億 4959 万 7870km
太陽
地球
赤道面にて
d=12,756.3km
d=1,392,000km
太 陽 か ら 見 た 地 球 の 角直 径 ( 平 面 角 ) は
1/11,000rad, 立体角は 1/140,000,000sr
r
r
r2
r
1sr (ステラジアン)
1rad
平面角
立体角
全平面角=2π[rad]
全立体角=4π[sr]
96
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 11 章
太陽放射
97/178
11.2 太陽放射のメカニズム (http://ja.wikipedia.org/wiki/より)
核(太陽中心部,約 0.2 太陽半径)では核融合により,水素原子 4 個がヘリウム原子 1 個に変
換され,1 秒間に 430 万トンの質量が 3.8×1026J のエネルギを発生する(TNT 火薬換算で 9.1×1016
トンに相当).発生したエネルギの大部分はガンマ線に変換される.太陽中心部では 1500 万 K
という高温のために電子や陽子が固定されずに飛び交っており,これらがガンマ線の直進を阻害
するため外に放射されない.直進を阻害されたガンマ線は近くのガスに吸収されてエックス線と
して放出されるが,エックス線も電子や陽子に直進を阻害される。再びガスに吸収され放出され
る事を繰り返し,だんだんと波長が長い電磁波に変わっていく.このように,ガンマ線は周囲の
プラズマと相互作用しながら次第に「穏やかな」電磁波(紫外線や,それより波長が長い可視光
線、赤外線)に変換され,数十万年かけて太陽表面(光球)にまで達し,太陽光として放出され
る.
参考:太陽で主に起こっている核融合反応(陽子-陽子連鎖反応)
水素(陽子,p)同士が直接反応する水素核融合.陽子-陽子連鎖反応,p-p チェインなどともい
う.
① p + p → 2H + e+ + νe
2 つの陽子が融合して、重水素となり陽電子とニュートリノが放出される.
② 2H + p → 3He + γ
重水素と陽子が融合してヘリウム 3 が生成され、ガンマ線としてエネルギが放出される.
③ 3He + 3He → 4He + p + p
ヘリウム 3 とヘリウム 3 が融合してヘリウム 4 が生成され、陽子が放出される.
11.3 太陽定数 (http://ja.wikipedia.org/wiki/より)
太陽定数とは,地球の大気表面に垂直に入射する単位面積当たりの太陽放射の量.これは可視
光線だけではなく,あらゆる波長の電磁波を全て含めた値である.人工衛星の測定では,1.366
kW/m2=約 2 cal/(cm2 min)=1cm2 の受光面では 1cm3 の水を 1 分間に 2℃上げるだけのエネルギ.
2
地表への太陽放射は 440W/m2~540W/m(北緯
65 度における値).地球に届いた太陽放射のうち,
約 65%が熱となる.
地球の断面積 127,400,000 km2 をかけると地球全体が受け取っているエネルギは 1.740×1017W と
なる。太陽が放出しているエネルギの量は約 3.86×1026W.図 2)のように太陽定数は周期的に変動
する(0.1%程度).
11.4 太陽放射の組成(太陽からの放出時)
(http://ja.wikipedia.org/wiki/より)
太陽放射の約半分は可視光線であり,残り半分は赤外線や紫外線が占める.
ガンマ線:ごく微量
X 線:ごく微量
紫外線(~0.4μm):約 7%
97
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 11 章
太陽放射
98/178
可視光線(0.4μm~0.7μm):約 47%
赤外線(0.7μm~100μm):約 46%
電波(100μm~):ごく微量
ニュートリノ:核融合によって発生するニュートリノは,電子や陽子などに直進を阻害されな
いため,ほぼ全て外に放射されており,地球にも到達している.
このほか,α線,β線,電子,ヘリウム原子核,陽子などが太陽フレア(太陽大気の爆発現象)
などによって発生する.
11.5 地表に到達する成分
可視光線:大気を通過する割合が大きい
紫外線:0.2~0.3 μm の紫外線はオゾン(O3)に強く吸収される.
赤外線:一部の波長(8~13μm)を除いて,大気に吸収される.
地球に届いた太陽放射のうち、約 65%が熱となる.
11.6 日射量の測定
(1) 日射計の種類
図 11.1 に示すように全天日射計と直達日射計がある.
(2) 全天日射計の原理
①
図 11.1(a)のタイプ
受熱板に日光が当たると,ヒートシンクとの間に温度差が生じる.ヒートバランスの式は
QRA  C 1  0 AC  QL
(11.6.1)
となる.ただし,QR:太陽からの入射日射量,C:受熱板とヒートシンク間の熱伝導線の熱コン
ダクタンス=1/熱伝導抵抗,QL:ヒートシンク以外への熱損失,AC:熱伝導線の断面積
②
図 11.1(b)のタイプ
黒い受熱板と白い受熱板に日光が当たると,2 つの面の放射率が異なることにより温度差を生
じる.ヒートバランスの式は,
黒い受熱板に関して
QR1 A  C 1  0 AC  QL1
白い受熱板に関して
QR 2 A  C 2  0 AC  QL 2
両辺の差をとると
QR A1   2   C 1  2 AC  QL1  QL 2
(11.6.2)
となる.
③
図 11.1(c)のタイプ
広い受熱板と狭い受熱板に日光が当たると,2 つの面の面積が異なることにより温度差を生じ
る.ヒートバランスの式は,
98
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 11 章
太陽放射
99/178
広い受熱板に関して
QRA1  C 1  0 AC  QL1
狭い受熱板に関して
QRA2  C 2  0 AC  QL 2
両辺の差をとると
QR  A1  A2   C 1  2 AC  QL1  QL 2
(11.6.3)
となる.
(3) 直達日射計の原理
図 11.1(c)において,受熱板 1 に入射光が当たると,1 の温度が上昇する.日光が当たらないダ
ミーの受熱板 2 に通電して,12 間の温度差がなくなったとき,2 への通電量は入射日射量に相当
する.端子間電圧を E[V],電流を I[A]とすれば,
QR1 A  C 1  0 AC  QL1
EI  C 2  0 AC  QL 2
より,両辺の差をとるとヒートバランスの式は,
QR1 A  EI  C 1  2 AC  QL1  QL 2
(11.6.4)
となる.
直射光
散乱光
直射光
透明ドーム
加熱
I
2
E
1
A, ε1, θ1
mV
A, ε1, θ1
A, ε1, θ1
A1, ε1, θ1
熱電対
A2, ε1, θ2
1
C
ヒートシンク θ0
(a)
C
C
C
ヒートシンク θ0
C
ヒートシンク θ0
(b)
C
2
C
ヒートシンク θ0
(c)
直達日射計
全天日射計
図 11.1 全天日射計と直達日射計
99
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 12 章
第 12 章
物質拡散(拡散) 100/178
物質拡散(拡散)
12.1 拡散現象
(1) 相互拡散
濃度勾配に比例して,物質(分子)が移動する現象を拡散という.図で,ガス A と B を隔てて
いた壁を取り除くと,A の分子は B の中に,また B の分子は A の中に進入し,やがて容器全体は
A と B が完全に混合されて均一な状態となる.このように分子が相互に移動する現象を相互拡散
という.物質(分子)が拡散する速度は,濃度勾配に比例する.熱伝導によって熱が拡散する速
度が温度勾配に比例する点と類似性がある.
物質拡散:濃度勾配に比例して,物質(分子)が移動
熱拡散:温度勾配に比例して,熱が移動
A 濃度
B 濃度
A
B
A
B
容器
A
壁
B
A
B
A+B
拡散停止
(2) 液体の蒸発
大気圧下では,水は 100℃で沸騰して水蒸気となる.しかし,冬でも路面の水は蒸発してやが
てなくなり,干し物も乾く.水温が 100℃のはずはなく(実は,水温は大気の温度より低い),
水は沸騰させなくても蒸発することは明らかである.沸点(飽和温度)未満の液体が蒸発する現
象は,拡散によって引き起こされる.その系が保有できる液体の蒸気量(飽和蒸気量)は,系の
温度・圧力によって決まっているため,限界に達した場合は蒸発が停止する.最終的に系の蒸気
は飽和状態となり,蒸気の分圧はその温度における飽和蒸気圧に等しくなる.
濃度
空気
空気+蒸気
蒸発大
蒸発減少
飽和状態
=湿度 100%
全
域
が
飽
和
状
態
空気
+
飽和蒸気
液
飽和状態
気液界面より蒸気の流れが発生
(ステファン流=界面から発生する分子の流れ)
100
蒸発停止
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 12 章
物質拡散(拡散) 101/178
注意: 液体表面近傍の蒸気は常に飽和状態で,系の蒸気分圧が飽和蒸気圧となるまで拡散現象は
継続する.蒸発に伴い,液体から蒸発潜熱が奪われるため,液体の温度は低下することになる.
参考:
相対湿度φ [%]は飽和水蒸気圧力に対する水蒸気分圧の比(もしくは系の飽和水蒸気量に対す
る水蒸気量の比)であり,次式で表される.

p H 2O
pS
 100
(12.1.1)
絶対湿度 x は相対湿度φ [%]から計算することができる.
 pS
x  0.622
100
p
 pS

100
0.622
100 p
1
 pS
(12.1.2)
ただし,
p:大気圧力(もしくは系の圧力)
p H 2O :気温(もしくは温度)θ℃における水蒸気分圧[Pa]
pS :気温(もしくは温度)θ℃における飽和水蒸気圧[Pa]
θ℃における空気中の飽和水蒸気圧を求める式は多数提案されているが気象の分野では,次の
Magnus Teten (1967)の近似式が一般的である.
log10 pS 
7.5
 0.7858
  237.3
(12.1.3)
もしくは,対数の定義より
7.5
pS  6.1066 10  237.3
[hPa]
(12.1.4)
12.2 フィック(Fick)の法則(拡散方程式)
1855 年,Adolf Eugen Fick によって発表された.気体,液体,固体(金属)どの拡散にも適用で
きる.
(1) フィック Fick の第 1 法則:定常状態の拡散
単位面積当たりの成分の拡散モル速度 n [mol/(m2s)]は,モル濃度 n [mol/m3]の勾配 dn / dx に比例
する.比例定数を拡散係数 D [m2/s]という.
n   D
dn
dx
(12.2.1)
x
101
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 12 章
物質拡散(拡散) 102/178
相互拡散(1 と 2 の 2 種類の成分が互いに拡散する)の場合,1 と 2 の成分の単位面積当たりの
モル移動速度は次式で表される.
n1   D
dn1
dn
, n 2   D 2
dx
dx
(12.2.2)
注意:1 の成分と 2 の成分の拡散係数は等しい.
1 の濃度
2 の濃度
アボガドロの法則より,系の全体のモル数は場所に関係なく一定である.全成分のモル濃度を
n[mol/m3]とすると,位置に関係なく
n  n1  n2  const
が成立しなければならない.よって,式(12.2.2)は
n1  nD
d n1 / n 
d n2 / n 
, n 2  nD
dx
dx
[mol/(m2s)]
(12.2.3)
と変形することできる.この式ではモル濃度の代わりにモル分率が使用できるので便利である.
一方,アボガドロの法則よりモル数比は圧力比に等しいから,成分の分圧を p1, p2 [Pa],合計の圧
力を p[Pa]とすれば,位置に関係なく
p  p1  p2  const
が成立しなければならない.モル数の比と圧力の比は等しいから
n1 p1

,
n
p
n2 p 2

n
p
と表すことができる.気体の状態方程式
pV  mRT
(ただし,圧力 p[Pa],体積 V[m3],モル数 m[mol],ガス定数 R=8.31447[J/(molK)],絶対温度 T[K])
を変形すれば,
n
m
p

V RT
となるから,式(12.2.3)に代入すると,圧力分率に対して
pD d  p1 / p 
D dp1

[mol/(m2s)]
RT
dx
RT dx
pD d  p2 / p 
D dp2
n 2  

[mol/(m2s)]
RT
dx
RT dx
n1  
が得られる.
注意: 2 つの成分の移動速度には n 2  n1 の関係がある.
102
(12.2.4)
(12.2.5)
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 12 章
物質拡散(拡散) 103/178
1,
質量濃度 w [g/m3]は,モル濃度 n [mol/m3]と分子量 M[g/mol]の積であるから.
拡散質量速度 w
w 2
[g/(m2s)]は
dn1
d M 1 n1 
dw
 D
 D 1
dx
dx
dx
(12.2.6)
dw2
w 2  M 2 n 2   D
dx
となる.1 と 2 の成分の質量分率 f1 , f 2 は,混合気の平均分子量を M,全モル数を n とすれば
w 1  M 1 n1   M 1 D
f1 
M 1n1
,
Mn
f2 
M 2 n2
Mn
(12.2.7)
より
f1
f
n
n
1 n1  n2
1
 2  1  2 

(12.2.8)
M 1 M 2 Mn Mn M
n
M
さらに,(12.2.7)式と(12.2.8)式より
n1
f
f1
f1
1
1
1
M 1 


f1
f M1
f1 1  f1  M 1
n
M1
1
M
 2

1    1 1
M1 M 2
M1
M2
 f1
 M2
(12.2.9)
(12.2.9)式を x で微分すると






d  n1  d 
1
1
 d 
 



dx  n  dx   1
dr1   1
M
M
1    1 1 
1    1 1
  f1
  f1
 M 2 
 M2


 1
M 
 1    1 1 
 M2 
  f1

2




 dr1

 dx


M1
M2
M1
df1
 2 df 1
 f1

2
M2
dx   1
 M 1  2 dx
1    1
 f1
 M2 
  f1
M1
M2
df1
M 1M 2
df1
M 2 df1


2
2

M 1  dx
f 2  dx M 1 M 2 dx
2  f1
M 1 M 2    
 f1  1  f1 

M
2 

M1 M 2 
(12.2.10)
また,混合気の密度は
  nM
[mol/m3×g/mol=g/ m3]
であるから,拡散質量速度は
w 1  M 1n1   M 1nD
d n1 / n 
df1
M df1
M
  D
  D
dx
M 2 dx
M  M 1 dx
n 2  M 2 n 2   M 2 nD
d n2 / n 
df 2
M df 2
M
  D
  D
dx
M 1 dx
M  M 2 dx
となる.
103
(12.2.11)
(12.2.12)
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 12 章
物質拡散(拡散) 104/178
(2) 二成分の相対速度
分子の移動速度を V1 , V2 [m/s]とすれば,
n1  n1V1 , n 2  n2V2
 mol m mol 
 m 3 s  m 2 s 
であるから,
V1 
n1
n
, V2  2
n1
n2
したがって,成分 1 と 2 の相対速度は
V1  V2 
n1 n 2

n1 n2
(12.2.13)
ここで
n 2   D
dn2
d n  n1 
dn
 dn dn 
 D
  D  1   D 1  n1
dx
dx
dx
 dx dx 
(12.2.14)
の関係があるから,
V1  V2  
1
n  n2 dn1
dn
D dn1 D dn1
1  dn
n

    D 1   1
D

D 1
n1 dx n2 dx
n1 n2
dx
n1 n2
dx
 n1 n2  dx
(12.2.15)
となる.モル分率を用いると
V1  V2  
dn / n
n2
D 1
n1 n2
dx
(12.2.16)
ここで,(12.2.10)式より
d  n1 
M 2 df1
 
dx  n  M 1 M 2 dx
なので,質量分率を用いると
V1  V2  
dn / n
df
n2
n2
M 2 df1
1
D 1

D

D 1
n1n2
dx
n1n2 M 1 M 2 dx
f1 f 2 dx
(12.2.17)
(3) 静止液面から空気中に拡散する蒸気成分の拡散モル速度
液面において,蒸気成分は拡散により移動できるが,空気は液面を越えて移動できないから静
止していると考えられる.この場合,相互拡散と異なり,蒸気成分の拡散移動速度は上記の成分
1 と 2 の相対速度で示される値となり,空気の速度は 0 となる.蒸気成分の拡散移動速度は
n1  n1 V1  V2   
n1n dn1
dn
n dn
n
D
 D 1 
D 1
n1n2
dx
n2
dx
1 n1 dx
(12.2.18)
モル分率を用いる場合は
n1  
d n1 / n 
d n1 / n 
n 2 d n1 / n 
n2
n
D

D

D
n2
dx
n  n1
dx
1  n1 / n
dx
圧力比を用いる場合は
104
(12.2.19)
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
n1  
第 12 章
1
pD d  p1 / p 
1  p1 / p RT
dx
物質拡散(拡散) 105/178
(12.2.20)
成分分圧[Pa]を用いる場合は
n1  
1
D dp1
1  p1 / p RT dx
(12.2.21)
 1 [g/(m2s)]は
質量濃度[g/m3]を用いる場合,拡散質量速度 w
w 1  M 1n1  M 1
dn
M 1n
d M 1n1 
w1
dw
n
D 1 
D

D 1
1  n1 dx
M 1 1  n1 
dx
M 1  w1
dx
(12.2.22)
質量分率を用いると場合,
n 2 d n1 / n 
n2
M 2 df1
w 1  M 1 n1   M 1
D
 M 1
D
n2
dx
n2 M 1 M 2 dx

df
df
nM
nM df1
nM
D 1 
D

D 1
n2 M 2
dx
f2
dx
1  f1 dx
nM
(12.2.23)
ここで,混合気の密度は
  nM
[mol/m3×g/mol=g/ m3]
なので
w 1  
df
1
D 1
1  f1
dx
(12.2.24)
となる.
(4) フィック Fick の第 2 法則:非定常状態の拡散
非定常状態における物質の拡散は,D を拡散係数[m2/s],n をモル濃度 [mol/m3]として以下の式
で表される.
n
 2n
D 2
t
x
  2n  2n 
n
 D 2  2 
2 次元:
t
y 
 x
  2n  2n  2n 
n
 D 2  2  2 
3 次元:
t
y
z 
 x
1 次元:
これらの式は,フーリエの熱伝導方程式と式の形が同一であることから,温度分布と濃度分布の
解の形は同じものとなる.
12.3 境界層の種類
境界層には速度,温度,濃度の 3 種類がある.
105
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
速度境界層
温度境界層
第 12 章
物質拡散(拡散) 106/178
濃度境界層
θ
u
n
θ
12.4 拡散に関する無次元数
拡散では,次の無次元数が重要
(1) シュミット数:Sc
Sc 

D
ただし, :動粘性係数,D:拡散係数
Sc 数が 1 のとき,温度境界層と濃度境界層は完全に一致する.Sc<1 のとき,濃度境界層は温度境
界層よりも壁面に近づき,Sc>1 では反対となる.現象の類似性から,熱伝達におけるプラントル
数 Pr に対応している.
温度境界層
濃度境界層
Sc<1
温度境界層
濃度境界層
Sc=1
温度境界層
濃度境界層
Sc>1
温度境界層と濃度境界層
参考:Pr 数が 1 のとき,温度境界層と速度境界層は完全に一致する.Pr<1 のとき,速度境界層は
温度境界層よりも壁面に近づき,Pr>1 では反対となる.
温度境界層
Pr<1
速度境界層
温度境界層
速度境界層
Pr=1
温度境界層と速度境界層
106
温度境界層
Pr>1
速度境界層
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 12 章
物質拡散(拡散) 107/178
(2) シャーウッド数:Sh
Sh 
hD L
D
ただし, hD :物質伝達率,拡散速度 V  hD n1  n2  とおいた場合の hD
D:拡散係数
現象の類似性から,強制対流熱伝達におけるヌセルト数 Nu  f Re, Pr  に対応している.次のよ
うな関係がある.
Sh  f Re, Sc 
例えば,
Nu  0.024Re 0.8 Pr 0.48
で表される強制対流熱伝達があるとき,拡散に対して
Sh  0.024Re 0.8 Sc 0.48
の関係が成立する.
12.5 拡散係数
(1) 0℃,0.1013MPa の空気中における各種ガス成分の拡散係数
拡散係数の代表的な値は以下のとおり.単位は cm2/s(甲籐好郎「伝熱概論」養賢堂,p. 222 よ
り)
酸素 O2=0.178,炭酸ガス CO2=0.138,水素 H2=0.611,水蒸気 H2O=0.22,メタン CH4=0.196
プロパン C3H8=0.0878
(2) 温度・圧力の影響
温度 T[K]および圧力 P[MPa]における拡散係数は次式で与えられる.
T
D  D0 
 T0
m
 p0

 p
(12.5.1)
ただし,添え字 0 は標準状態を示す. m  2 (H2O のみ m  1.75 )
12.6 液滴の蒸発
高温雰囲気中に液滴がおかれた場合,液滴直径 2 乗値の時間的変化は図のようになる.液滴が
高温雰囲気に接したのち,最初は液滴の内部温度が上昇するため,液滴は緩やかに蒸発する.こ
の期間を初期加熱期間という.この期間は液体の種類や直径,雰囲気温度によって異なる.揮発
性の高い液体や直径が小さい場合,高温の場合は短い期間となる.
107
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
初期加熱期間
第 12 章
主蒸発期間
D2
θw
1
温度分布
θ
w1w
-K
w1r
D
1
液滴大
-K
物質拡散(拡散) 108/178
液滴小
液滴
蒸気濃度分布
r
t
液滴の温度が飽和すると安定した蒸発が行われる主蒸発期間に移行する.主蒸発期間において,
直径を D[m],時間を t[s]とすると
dD 2
  K  const
dt
(12.6.1)
が成立する.これを D2 乗法則といい,K[m2/s]を蒸発係数といい,値は液体の種類や雰囲気温度
によって異なるが,液滴の大きさには関係なく一定である.なお,蒸発係数の単位は拡散係数と
同じである.
dD2   Kdt
を積分すると,
D2   Kt  C
初期条件を t  0 で, D  D0 (液滴初期直径)とし,初期加熱期間を無視することができれば
C  D0
2
となるから,代入すると
D0  D2  Kt
2
(12.6.2)
となる.これより液滴直径が初期直径 D  D0 から D  0 となる(消滅する)までの時間(液滴の
寿命)は
tl 
D0
K
2
(12.6.3)
液滴の表面積は
S  D 2 [m2]
であるから
dS
dD 2

dt
dt
となり,表面積に関して
dS
 K
dt
となる.蒸発量を W とすると,
dV
W  
dt
ここで, V 

6
(12.6.4)
D 3 なので
108
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 12 章
物質拡散(拡散) 109/178
 
dV  dD 3  dD 3 dD 2  d D 2 dD 2



dt
6 dt
6 dD 2 dt
6 dD 2
dt
2
2
1.5 1 dD

 dD

 1.5 D 2
 D
  DK
6
dt
4
dt
4
1.5
 
よって
dV

W  
  DK
dt
4
(12.6.5)
となる.これより,蒸発量が最大となるのは初期直径の時で,値は

Wmax   D0 K
4
(12.6.6)
となる.
参考
蒸発量は蒸気の対流分と拡散分の和となり,次式で表される.
df
W  f1W  SDe 1
dr
ただし,S:液滴表面積,De:拡散係数
例題 12.1 体積が 1mm3 の液滴 1 つを体積が 0.5mm3 の液滴 2 つに分裂させた場合,蒸発時間,蒸
発量はどのように変化するか.ただし,初期加熱期間は無視できるものとする.
解答
体積が 1mm3 の液滴 1 つの場合,液滴の直径は
D1 
3
6

V 
3
6

1 
3
6

液滴の寿命は
2
2
2
D
1 3 6 
1 6 3
   
t1  1  
K
K   
K  
最大蒸発量は
3


6
Wmax 1   D1K   K
4
4

体積が 0.5mm3 の液滴 1 つの場合,液滴の直径は
D2 
3
6

V 
3
6

 0.5 
3
3

液滴の寿命は
2
2
2
D
1 3 3 
1 3 3
   
t 2  2  
K
K   
K  
最大蒸発量は 2 つの液滴分の合計であるから
3


3

Wmax 2  2  D2 K  2 K
4
4

寿命比は
109
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 12 章
2
t2

t1
1  3 3
 
K  
2
2
 3 3  1 3
       0.62996
2
6
2
1  6 3  
 
K  
最大蒸発量比は,液滴 1 つと 2 つの比であるから
Wmax 2

W
max 1
 2


4

4
K
K
3
3
3
2
6
3
  2 3  2  2 3  1  1.5874
3
3
6
2

tl 2
tl 1
となる.液滴の寿命と最大蒸発量比は逆数の関係にある.
110
物質拡散(拡散) 110/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 13 章
第 13 章
内部発熱問題
111/178
内部発熱問題
13.1 内部発熱を伴う円柱内部の熱伝導
発熱体の単位体積当たりの発熱量を w [W/m3]とする.
注意:発熱体の問題では,発熱量として単位体積当たり[W/m3],単位長さ当たり[W/m],発
熱体全体[W]などが混在するため注意が必要である.いつも,単位体積当たりの発熱量[W/m3]
から考えると間違いにくい.
Rh
r
1
q 放物線
電流
2
l
半径 Rh [m](直径 Dh [m])の発熱体の場合,長さ l [m]からの発熱量は
Q  Rh wl [W]
2
発熱体内部の半径 r [m]の位置における発熱量は,その内部に含まれる発熱体の体積と w の積とな
るから
Q  r 2 wl [W]
となる.半径 r [m]の位置における熱流束は,円筒面の面積で割ればよいから
q
Q
r 2 wl rw


[W/m2]
2rl
2rl
2
となる.この q は半径によって値が異なることがわかる.フーリエの法則より,熱流束は
q  
d
dr
と表されるから,2 つの式を等しくおくと
q  
d rw

dr
2
となるから,変形すると
d  
w
rdr
2
積分すると
 
w 2
r C
4
111
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 13 章
内部発熱問題
112/178
dy
 1  y  1dx  x  C
dx
dy
参考: y  x 2 
 2 x  y   2 xdx  x 2  C
dx
2
x
dy
x2
y

 x  y   xdx 
C
2
dx
2
yx
積分定数 C を決定するため,境界条件を円柱の外表面 r  Rh で,    2 とすれば
2  
w 2
Rh  C
4
より
C  2 
w 2
Rh
4
従って,温度分布は字式に示すように,上に凸の放物線となる.


w 2
w 2 w
2
r  2 
Rh 
Rh  r 2   2
4
4
4
発熱体の中心温度は, r  0 で与えられるから
w
w 2
2
1 
Rh  02   2 
Rh   2
4
4
 

(13.1.1)

(13.1.2)
となる.
13.2 発熱体を内部にもつ円筒の熱伝導
発熱体の外面から発生する単位長さ当たりの熱量を Q'  Q / L  とすると,円筒内面に Q’が与え
られる熱伝導問題となる.
Rh
r
1
放物線
q
2
l
対数曲線
この Q’は円筒内部では,どの半径においても等しい.円筒内の熱流束は
q
Q'
d
 
[W/m2]
2r
dr
と表されるから,変形すると
112
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
d  
第 13 章
内部発熱問題
113/178
Q' 1
dr
2 r
積分すると,
 
Q'
ln r  C
2
参考: y 
1
dy
1

 ln x  y   ln xdx   C
x
dx
x
境界条件を発熱体の外面 r  Rh で,    2 とする.式に代入すると
2  
Q'
ln Rh  C
2
積分定数は
C  2 
Q'
ln Rh
2
したがって,温度分布は
Q'
Q'
Q'
ln r  ln Rh   2  Q' ln r
ln r   2 
ln Rh   2 
2
2
2
2 Rh
となる.円筒の肉厚をδとすれば,円筒の外面 r  Rh   での温度は
Q'
R 
(13.2.2)
  2 
ln h
2
Rh
 
(13.2.1)
発熱体の単位体積当たりの発熱量は
w
Q
Q'

2
Rh l Rh 2
であるから,発熱体の中心温度は,前節を参考に
Q'
R 2 2
w 2
Q'
1 
Rh   2  h Rh   2 
 2
4
4
4
(13.2.3)
となる.
13.3 発熱体から液体への熱伝達
図のように発熱体の周囲を液体が流れる場合を考える.
(1) 液体の温度分布
周囲が断熱されている場合,発熱体から発生した熱量はすべて流体の温度上昇に費やされる.
このとき,発熱体の単位体積当たりの発熱量を w [W/m3],液体の体積流量を V [m3/s]とすれば,
入口から x の位置において,
発熱体の微小部分から液体へ与えられる熱量は
Q1  Rh wdx
2
微小部分に流入する液体の熱量は
Q2  cV
微小部分から流出する液体の熱量は
113
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 13 章
内部発熱問題
Q3  cV   d 
Rp
Rh
Q1
Q2
Q3
Q4=0
θ
液温
θ+dθ
x
dx
微小部分から外気への熱損失は,管の厚さを無視すると
Q4  0
よって,ヒートバランスは
Q1  Q2  Q3
より
Rh 2 wdx  cV  cV   d 
2
 Rh wdx  cVd
積分すれば
Rh 2 w dx  cV  d
2
 Rh wx  cV  C
境界条件として,管入口の条件(   1
at
x  0 )を与えると
0  cV1  C
より
C   cV1
となる.よって温度分布は
Rh 2 wx  cV  cV1
 
Rh 2 w
x  1
cV
(13.3.1)
出口温度は
Rh 2 w
2 
L  1
cV
(13.3.2)
長さ L[m]の発熱体の発熱量 Q[W]が与えられる場合は,
Q  Rh Lw
2
より
114
114/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
w
第 13 章
内部発熱問題
115/178
Q
Rh 2 L
出口温度の式に代入すると
Rh 2 Q
Q
2 
L  1 

2

cV Rh L
cV 1
(13.3.3)
となる.
(2) 発熱体の表面温度の変化
発熱体の微小部分から液体への熱伝達において,熱伝達率を h としたとき,ヒートバランスは
Rh 2 wdx  h w     2Rh dx
Rh w  2h w   
 w 
Rh
w 
2h
θ の式を代入すると,
R
R w
R w
R
 w  h w  h  x  1  h  x  h w  1
2h
cV
cV
2h
2
2
ここで
w
Q
Rh 2 L
を代入すると,発熱体の表面温度は
w 
Q
Q
x
 1

cVL
2hRh L
(13.3.4)
(3) 周囲が断熱されていない場合の温度変化
Rp
Rh
Q1
Q2
θ
Q3
Q4≠0 液温
θ+dθ
x
dx
発熱体の微小部分から液体へ与えられる熱量は
Q1  Rh wdx
2
微小部分に流入する液体の熱量は
115
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 13 章
内部発熱問題
116/178
Q2  cV
微小部分から流出する液体の熱量は
Q3  cV   d 
微小部分から外気への熱損失は,管の厚さを無視すると
Q4  k   a   2Rp dx
ただし,k は熱通過率, R p は管の外半径,  a は外気温度とする.
ヒートバランスは
Q1  Q2  Q3  Q4
となるから
Rh 2 wdx  cVd  cV   d   k    a  2R p dx
整理すると
d

   a 

2

Rh
w
2 R p k 

2 R p k
dx
cV
両辺を積分すると

d

   a 

2

Rh
w
2 R p k 

2


2 R p k
2 R p k
Rh
 

dx

ln




w

xC


a




2
R
k
cV

c
V

p

 
1
dy
1

 ln x  y   ln xdx   C
x
dx
x
参考:
1
dy
1
y

 ln x  a   y   ln x  a dx 
C
xa
dx
xa
y
境界条件(   1
at
x  0 )を代入すると
2



Rh



C  ln 1   a 
w 


2 R p k 




となるから,上記の式に代入すると
2
2





2 R p k
Rh
Rh
 





ln    a 
w 
x  ln 1   a 
w 





2 R p k 
cV
2 R p k 



 



変形すると

2
2

Rh
Rh
w
 a 
w
2 R p k 
2 R p k
2R p k
 2 R p k

 
ln


x


exp
2
2



c
V


R
R
 cV
1   a  h w
1   a  h w 
2R p k
2R p k 

   a 
従って,液体の温度変化は
116

x 

埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
  a 
 a 
ここで, w 
2
2


 2 R k
Rh
R
w  1   a  h w  exp   p

2Rp k
2 R p k 
 cV

第 13 章

117/178

x 

 2 R p k
1  2
2
 Rh w  Rh w  2 R p k 1   a  exp  
2Rp k 
 cV

内部発熱問題

x 

Q
を代入すると,
Rh 2 L
  a 
 2 Q

 2 R k
1  2 Q
  Rh
 2 R p k 1   a  exp   p
 Rh
2
2
2 R p k  Rh L  Rh L
 cV


 2 R p k 
1
 a 
x 
Q  Q  2 R p Lk 1   a exp  
2R p Lk 
 cV 
となる.出口 x  L では

 2 Rp k 
1
2  a 
L 
Q  Q  2 Rp Lk 1   a exp  
2Rp Lk 
 cV 
117

x 

(13.3.6)
(13.3.5)
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
118/178
Excel による非定常および定常伝熱計算
14.1 熱伝導方程式
(1) 定常温度場の特徴
ある場所の温度が時間的に変化しない→定常熱伝導が行われている.
フーリエの式 q  
d
を解けば,温度分布の式   f x  が求まる.
dx


 =f(x)
x の位置における
 は変化しない
空間的温度分布
時間的温度分布
x
t
(2) 非定常温度場の特徴
ある場所の温度が時間的に変化する.


x の位置における
 が変化する
 =f(t, x)
空間的温度分布
x
時間的温度分布
t
(3) 温度の時間的変化を求めるための方程式
小さな立方体の要素に対して,x 方向に熱の出入りを考える.
dQx’
dQx”
dz
z
dx
y
x


もし, dQx  dQx なら x 方向には温度の時間的変化が存在しない.
↓
定常
118
dy
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ここで,温度勾配の表し方は,
d
:温度が 1 次元(x)に変化する場合の x 方向の温度勾配
dx
↓

:温度が x 方向以外にも変化する場合の x 方向の温度勾配
x
左側の面
dt 秒間に左側の面(面積 dA=dydz)に dQx’ [J]の熱量が流入すると
(dQ と dQ’の単位の違いに注意)



dQx  
dAdt  
dydzdt
x
x
(14.1.1)
右側の面
温度変化を考える.

dx
 =f(x)
dx
x

右側の面では,温度は,    

dx
x
に変化する.熱量は
 
 

 
dQx  
dx dydzdt
x 
 x 
(14.1.2)
ここで
 
         2
 
dx  
 
dx  

dx
x 
 x   x  x   x   x  x 2
となるから,x 方向の熱量差は
   2 

 2


dQx  dQx  dQx  
dydzdt   
 2 dx dydzdt   2 dxdydzdt
x
x
 x x

y 軸に関して



dQy  dQy  dQy   2 dxdydzdt
y
2
z 軸に関して
119
119/178
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Excel による非定常および定常伝熱計算
120/178



dQz  dQz  dQz   2 dxdydzdt
z
2
全体では
  2  2  2 
dQ  dQx  dQy  dQz    2  2  2 dxdydzdt
y
z 
 x
熱量に関する公式 Q  mc を微小要素に適用すると,
dm  dxdydz

図より,  
dt
t

 =g(t)

dt
t
したがって,要素の温度がだけ上昇するのに必要な熱量は
  
dQ  dm  c    dxdydz  c p   dt 
 t 
となる.整理すると
  2  2  2 

 2  2 dxdydzdt  dxdydz  c p 
dt
2
y
z 
t
 x
 
  2  2  2 

  2  2  2     c p 
y
z 
t
 x

   2  2  2 





t  c p  x 2  y 2  z 2 
ここで,熱拡散率,もしくは温度伝導率として
a

[ m 2 / s]
c p
(14.1.3)
とおくと
  2  2  2 

 a 2  2  2 
t
y
z 
 x
直交座標系の非定常熱伝導方程式 (14.1.4)
が得られる.(14.1.4)式はフーリエの微分方程式ともいう.
温度伝導率 a [mm2/s]の値は,空気 21.9,水 0.147,鉄 10~17.5,銅 100 である.引用文献 1)
定常状態では

 0 より直交座標系の定常熱伝導方程式は次式となる
t
120
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  2  2  2 
a 2  2  2   0
y
z 
 x
121/178
(14.1.5)
定常状態
↓
傾き=0
↓

時間的変化だけが問題の場合
↓
x 方向以外の空間的変化も考え
t
る場合
参考:フーリエの法則は定常熱伝導に関する法則で,1次元の場合
q  
d
dx
(14.1.6)
これを 3 次元に拡張すると,x, y, z の各方向にそれぞれ熱流束が次のように定義される.

x

y 方向: q y  
y

z 方向: q z  
z
x 方向: q x  
(14.1.4)式より,1次元定常熱伝導方程式は
 2
0
x2
(14.1.7)
となるが,(14.1.6)式に境界条件を適用して解くことに
より得られる温度分布の式は
 
q

x  1
(14.1.8)
q
である.(14.1.8)式を x で 2 階偏微分すると,

q

x

2

0
x 2
x
となるから,(14.1.6)式と(14.1.7)式の解は同じであることが分かる.
(4) 直交座標系の熱伝導方程式
直交座標系の非定常熱伝導方程式(フーリエの微分方程式)は,次のとおりである.
121
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  2  2  2 

 a 2  2  2 
t
y
z 
 x
  2  2 

 a 2  2 
2 次元:
t
y 
 x
  2 

 a 2 
1 次元:
t
 x 
3 次元:
ただし, a 
(14.1.9)
(14.1.10)
(14.1.11)

[m 2 / s] (熱拡散率,もしくは温度伝導率)
c p

定常状態では,
t
122/178
(14.1.12)
 0 となるので,直交座標系の定常熱伝導方程式は,次式で表わされる.
3 次元:
 2  2  2


0
 x 2 y 2  z 2
(14.1.13)
2 次元:
 2  2

0
 x 2 y 2
(14.1.14)
1 次元:
 2
0
x2
(14.1.15)
(5) 円柱座標系の熱伝導方程式
直交座標系は座標変換により,円柱座標系に変換することができる.
 1     1

 r
  2
 a
t
 r r  r  r
 1     1

 r
  2
2 次元:
 a
t
 r r  r  r
3 次元:
1 次元:
 2  2 


 2  z 2 
(14.1.16)
 2 

 2 
(14.1.17)
 1    

 r

 a
t
 r r  r 
(14.1.18)
定常熱伝導方程式は,次式で表わされる.
3 次元:
1     1  2  2
r


0
r r  r  r 2  2  z 2
(14.1.19)
1     1  2
r

0
2 次元:
r r  r  r 2  2
(14.1.20)
1    
r
0
r r  r 
(14.1.21)
1 次元:
14.2 差分近似
(1) 導関数の差分近似(差分化)
差分近似とは微分を時間もしくは空間の有限差の割り算に置き換えることである.差分近似を
行うことにより,微分方程式を四則演算で解くことができる.
①
1 階導関数
122
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関数 u (x) の n-1 階導関数 u
( n1)
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123/178
( x) が連続で,n 階導関数 u ( n ) ( x) が存在するとき,刻みを h とす
ると,Taylor の定理から
1
1
u ( x  h)  u ( x)  hu( x)  h 2u( x)  h3u( x)  
2
6
1
1
u ( x  h)  u ( x)  hu( x)  h 2u( x)  h3u( x)  
2
6
ここで,展開式の左辺右辺それぞれを差し引くと
u( x  h)  u( x  h)  2hu( x)  O(h3 )
3
ただし, O(h ) は h の 3 次以上を含む項とする.ここで
O(h3 ) を無視すれば,
u ( x  h)  u ( x  h)
u( x) 
2h
中心差分近似
(14.2.1)
となり,1 階導関数を元の関数から計算できるようになる.このとき,h は小さければ小さいほど,
計算精度が向上する.一方,最初の展開式を
u( x  h)  u( x)  hu( x)  O(h2 )
2
2
とする.ただし, O(h ) は h の 2 次以上を含む項とする.ここで, O(h ) を無視すれば,
u( x) 
u ( x  h)  u ( x )
h
前進差分近似
u
(14.2.2)
u
x-h
x
x+h
x
x-h
中心差分近似
②
x
x+h
x
前進差分近似
2 階導関数
次に,展開式の左辺右辺それぞれを加えると
u( x  h)  u( x  h)  2u( x)  h2u( x)  O(h4 )
4
4
ただし, O(h ) は h の 4 次以上を含む項とする.ここで, O(h ) を無視すれば,
u( x) 
u ( x  h)  2u ( x)  u ( x  h)
h2
中心差分近似
(2) フーリエの微分方程式の差分近似
直交座標系の 1 次元の場合,フーリエの微分方程式は

 2
a 2
t
x
数値解法を行うには微分方程式を差分近似(差分化)しなければならない.
123
(14.2.3)
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124/178
ここで,  x,t を時刻 t,位置 x における温度,  x ,t  t を位置 x におけるt 後の温度,  x  x ,t を時刻
t における位置 x の位置からx だけ右側の位置における温度,  x  x ,t を時刻 t における位置 x
の位置からx だけ左側の位置における温度とすると,
時間に関して,前進差分近似を適用すれば,次式が得られる.

t

 x ,t t   x ,t
t
x ,t
空間に関して,中心差分近似を適用すれば,次式が得られる.
 2
x2

 xx ,t  2 x ,t   xx ,t
 x 
2
x ,t

 xx ,t  2 x ,t   xx ,t
 x 2
これらをまとめると,フーリエの微分方程式の差分近似は
 x,t t   x,t
t
a
 xx,t  2 x,t   xx ,t
 x 2
と表される.新しい時刻にける温度を求めるには,
 x ,t t 
at
  2 x,t   xx,t    x,t
 x 2 xx,t
ここで
rc 
at
 x 2
とおけば,

1


 x ,t t  rc  xx ,t  2 x ,t   xx ,t    x ,t  rc  xx ,t    2  x ,t   xx ,t 
 rc



となる.ここで,位置 x を i (i=0, 1, 2, …)を用いて表わし,さらに x  x  i  1 , x  x  i  1 と
する.板厚を n 分割すれば,左端を i  0 ,右端を i  n となる.また,時刻 t を j (j=0, 1, 2, …)
を用いて表わし, t  t  j  1 とすれば,差分式は次式となる.


1

 2  i , j   i 1, j 
 rc


 i , j 1  rc  i 1, j  2 i , j   i 1, j    i , j  rc  i 1, j  

(14.2.4)
例題 14.1 次の図のように板厚を 4 分割する場合,新しい時刻における温度の計算式を求めよ.
左面
右面
解答
124
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125/178
(14.2.4)式より,x の位置に対応して次の 3 つの式が得られる.これらを順次解けば次々と温度
の変化を求めることができる.

1



1



1


1, j 1  rc  0, j    2 1, j   2, j 
 rc



 2, j 1  rc 1, j    2  2, j   3, j 
 rc



 3, j 1  rc  2, j    2  3, j   4, j 
 rc



ただし,右端 x  0 および左端 x  L における温度  0, j 1 および  4, j 1 は境界条件として値を与
える.
14.3 表計算による直交座標系非定常熱伝導の数値解法
14.3.1 平行無限平板の両表面温度(境界条件)が一定の場合
(1) 表を用いた直交座標系 1 次元非定常熱伝導の計算
rc  1 / 2 の場合,温度を求める式は
i , j 1 
1
i1, j  i1, j 
2
(14.3.1)
となる.高温の状態から冷却されることを想定して,計算過程を表にしてまとめると,次のよう
になる.ただし,板厚は 4 分割するものとする.
表計算のセルの数式は
2 行目は初期温度
B 列と F 列は板の表面温度(境界条件)
C3 のセルは,C3=(B2+D2)/2
となる.
A
B
時刻
板の左端
1
C
D
E
F
板の中央
板の右端
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2
j=0 (t=0)
0
1000
1000
1000
0
3
j=1 (t=Δt)
0
(0+1000)/2
(1000+1000)/2
(1000+0)/2
0
=500
=1000
=500
4
j=2 (t=2Δt)
0
500
500
500
0
5
j=3 (t=3Δt)
0
250
500
250
0
6
j=4 (t=4Δt)
0
250
250
250
0
(2) Excel のスプレッドシート(表計算機能)を用いた計算
表計算には,Excel のスプレッドシートを用いると簡便であり,直交座標系の 1 次元非定常熱伝
導の計算を簡単に行うことができる.グラフも簡単に作成できる.
125
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126/178
表計算は次の手順で行う.
次の表に示すように Excel の各列を,A 列は時間刻み,B 列は i  0 ( x  0) の位置,C 列は
①
i  1 ( x  x) の位置,・・・と対応させ,表の 2 行目から,時間刻み j に対応して 0, 1, 2, ...
とする.
②
境界条件である初期温度を 2 行(B2 から F2)に与える.
③
境界条件を B 列と F 列に与える.
④
C3 セルの数式を
C2=(B2+D2)/2
(14.3.2)
とする.
⑤
C3 セルをコピーして空きのセルに貼り付ける.
以上の作業が終了すると,自動的に表計算が完了する.
まとめ:表計算のセルの数式は
2 行(B2 から F2)=初期温度
B 列=0(境界条件)
C3=(B2+D2)/2(C3 から E11 の領域は C3 を貼付)
F 列=0(境界条件)
上記の計算表に対応して,スプレッドシートを次のように記述する.
A
1
B
C
D
E
F
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2
j=0 (t=0)
0
1000
1000
1000
0
3
j=1 (t=Δt)
0
=(B2+D2)/2
C3 を貼付
C3 を貼付
0
4
j=2 (t=2Δt)
0
C3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
0
5
j=3 (t=3Δt)
0
C3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
0
6
j=4 (t=4Δt)
0
C3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
0
7
:
(3)
:
:
:
:
:
Excel のグラフツールによる温度変化のグラフ化
Excel のグラフツールを用いると,温度変化の様子を簡単にグラフ化することができる.グラフ
を作成するには,下図を参考にデータ領域を選択し,挿入→グラフ→折れ線と選択する.
126
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127/178
データの選択で,行と列の切り替えを行うことにより座標軸を入れ替えると,部材内部の温度
分布を示すこともできる.
(4) 計算結果に及ぼす rc の影響
rc を小さくすればするほど,計算精度が向上する.たとえば,rc  1 / 8 の場合,差分近似式は,
 i , j 1 
1
i1, j  6i, j  i1, j 
8
(14.3.3)
表計算のセルの数式は
2 行(B2 から F2)=初期温度
B 列=0(境界条件)
C3=(B2+6*C2+D2)/8(C3 から E11 の領域は C3 を貼付)
F 列=0(境界条件)
グラフは次のようになり,温度が徐々に低下していく様子が得られる.さらに,x の分割数を
増やすほど,なめらかな温度分布の変化が得られる.
127
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128/178
rc の値に対する同一時刻での値の変化を表に示す.この表より, rc が小さくなるにつれて値が
漸近していく様子がわかる.
表.中心位置 i=2 (x=2x)における同一時刻の計算値比較
rc =1/2
rc =1/4
rc =1/8
rc =1/16
rc =1/32
同一時刻の t
Δt
2Δt
4Δt
8Δt
16Δt
温度
1000
875
868.1640625
865.3298058
864.1273074
(5) 時間刻みを指定する場合
Δx は板厚を等分割する関係で, rc の値を指定した場合,Δt はきれいな数値にはならない.特
定の時刻まで計算する場合は,Δt を 0.001s のように指定し, rc の値を
rc 
at
 x 2
(14.3.4)
の式から求め,温度を次式から計算する方が便利である.
 x,t t  rc  xx,t  2 x,t   xx,t    x,t
(14.3.5)
また,精度の高い計算を行うには,空間の刻みΔx を小さくし,さらにΔx 対してΔt を十分小さ
くしなければならない.
例題 14.2 直交座標系の 1 次元熱伝導方程式を rc  1 / 4 とした場合の差分式を示せ.また,j=4 (t=4
Δt)まで計算して表を完成せよ.
A
1
B
C
D
E
F
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
1000
1000
1000
0
2
j=0 (t=0)
0
3
j=1 (t=Δt)
0
0
4
j=2 (t=2Δt)
0
0
5
j=3 (t=3Δt)
0
0
6
j=4 (t=4Δt)
0
0
128
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
129/178
解答
差分近似式は,  x ,t  t 
A
1
1
 x  x,t  2 x,t   x  x,t 
4
B
C
D
E
F
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2
j=0 (t=0)
0
1000
1000
1000
0
3
j=1 (t=Δt)
0
750
1000
750
0
4
j=2 (t=2Δt)
0
625
875
625
0
5
j=3 (t=3Δt)
0
531.25
750
531.25
0
6
j=4 (t=4Δt)
0
453.125
640.625
453.125
0
例題 14.3 直交座標系の 1 次元熱伝導方程式を rc  1 / 16 とした場合の差分式を示せ.また,j=4
(t=4Δt)まで計算して表を完成せよ.
A
B
C
D
E
F
1
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2 j=0 (t=0)
0
1000
1000
1000
0
3 j=1 (t=Δt)
0
0
4 j=2 (t=2Δt)
0
0
5 j=3 (t=3Δt)
0
0
6 j=4 (t=4Δt)
0
0
解答
差分近似式は,  x ,t  t 
A
1
 xx,t  14 x,t   xx,t 
16
B
C
D
E
F
1
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2 j=0 (t=0)
0
1000
1000
1000
0
3 j=1 (t=Δt)
0
937.5
1000
937.5
0
4 j=2 (t=2Δt)
0
882.8125
992.1875
882.8125
0
5 j=3 (t=3Δt)
0
834.4726563
978.515625
834.4726563
0
6 j=4 (t=4Δt)
0
791.3208008
960.5102539
791.3208008
0
14.3.2 平行無限平板の両表面温度(境界条件)がフローティングとなる(変動する)場合
たとえば,水中で高温金属を冷却する場合,平行平板の表面温度は時間とともに減少する.こ
のような場合,次の方法で計算することができる.
129
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
130/178
計算方法
①
内部温度の計算
 板の内部(x=x, 2x, 3x, ・・・)の温度は,境界固定の場合と同じ(2.5)式を用いる. rc  1 / 2 と
すると
1
 i1, j   i1, j 
2
ただし, i  1, 2,  , n  1
 i , j 1 
②
(14.3.6)
表面温度の計算
左側の壁面境界 i  0 における伝熱は,流体から壁面への熱伝達と壁面内部の熱伝導に分けら
れる.を平板の熱伝導率,h を熱伝達率とすると,壁面における伝熱は図のとおりである.
壁面
壁面内部
i0

流体側
h f   0, j 

x

1, j
  0, j 
セルと格子点の対応関係
注意:緑の部分は,格子点に対応するスプレッドシートのセルを表す.
は平板の熱伝導率,h は熱伝達率として熱平衡を考えると,流体から壁面への熱伝達による
伝熱量は平板内を熱伝導で伝わる熱量に等しいから
h 0, j 1   f  

x

1, j 1
  0, j 1 
式を変形すると
 


h 
 0, j 1  h f  1, j 1
x 
x

h f 
 0, j 1 

x
h
1, j 1

x

f 

hx
1
1, j 1

hx
ここで,
rf 

(14.3.7)
hx
とおくと
 0, j 1 
 f  rf 1, j 1
(14.3.8)
1  rf
となる.
130
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
左面
131/178
右面
温度分布の変化
右端の表面温度も同様に計算できる.
 n, j 1 
 f  rf  n1, j 1
1  rf
rf  4 ,  f  0 の場合,平板左端 x=0 で
0, j1  0.81, j1
(14.3.9)
となる.流体の温度が同じなら,平板右端 x=L の値は x=0 の値と同じになる.
平行平板内(x=x, ・・・)の温度計算は,表面温度が固定される場合と同一である.たとえば
rc  1 / 2 の場合,
 i , j 1 
1
 i1, j   i1, j 
2
となる.
表計算のセルの数式は,
2 行(B2 から F2)=初期温度
B3=0.8*C3(B4 から B11 は B3 を貼付)
C3=(B2 +D2)/2(C3 から E11 の領域は C3 を貼付)
F3=0.8*E3(F4 から F11 は F3 を貼付)
スプレッドシートは以下のとおりである.
A
B
C
D
E
F
1
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2 j=0 (t=0)
1000
1000
1000
1000
1000
3 j=1 (t=Δt)
=0.8*C3
=(B2+D2)/2
C3 を貼付
C3 を貼付
=0.8*E3
4 j=2 (t=2Δt)
B3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
F3 を貼付
5 j=3 (t=3Δt)
B3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
F3 を貼付
6 j=4 (t=4Δt)
B3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
C3 を貼付
F3 を貼付
131
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
132/178
結果は次のようになる.
A
B
C
D
E
F
1
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2 j=0 (t=0)
1000
1000
1000
1000
1000
3 j=1 (t=Δt)
800
1000
1000
1000
800
4 j=2 (t=2Δt)
720
900
1000
900
720
5 j=3 (t=3Δt)
668
860
900
860
668
6 j=4 (t=4Δt)
635.2
794
860
794
635.2
グラフは次の図のとおりとなる.
例題 14.4 境界条件がフローティングとなる場合の直交座標系 1 次元熱伝導方程式を rc  1 / 4 ,
rf  4 として,j=4 (t=4Δt)まで計算して表を完成せよ.
A
B
C
D
E
F
1
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2 j=0 (t=0)
1000
1000
1000
1000
1000
3 j=1 (t=Δt)
4 j=2 (t=2Δt)
5 j=3 (t=3Δt)
6 j=4 (t=4Δt)
解答
差分近似式は,i=0 で
 0, j 1  0.81, j
i≧1 で
 x,t  t 
1
 x  x,t  2 x,t   x  x,t 
4
132
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
A
B
Excel による非定常および定常伝熱計算
C
D
E
133/178
F
1
i=0 (x=0)
i=1 (x=Δx)
i=2 (x=2Δx)
i=3 (x=3Δx)
i=4 (x=L)
2 j=0 (t=0)
1000
1000
1000
1000
1000
3 j=1 (t=Δt)
800
1000
1000
1000
800
4 j=2 (t=2Δt)
760
950
1000
950
760
5 j=3 (t=3Δt)
732
915
975
915
732
6 j=4 (t=4Δt)
707.4
884.25
945
884.25
707.4
14.4 表計算による円柱の非定常熱伝導の数値解法
(1) 円柱の外面温度が一定の場合の非定常 1 次元温度分布
直交座標における非定常熱伝導方程式
  2  2  2 

 a 2  2  2 
t
y
z 
 x
は座標変換により,次のように円柱座標系に変換することができる.
 1     1  2  2 

 r
  2
 a
 2
2
t
z 
 r r  r  r 
(14.4.1)
1 次元の場合,
 1    
  2 1  

 r
  a  2 
 a

t
r r 
 r
 r r  r 
(14.4.2)
となり,これを差分近似すると,時間に関して,前進差分近似を適用すれば,次式が得られる.

t

 r ,t t   r ,t
t
x ,t
空間に関して,中心差分近似を適用すれば,次式が得られる.

r
 2
r 2

 r r ,t   r r ,t
2 r
r ,t

 r r ,t  2 r ,t   r r ,t
r ,t
r 2
これらをまとめると,フーリエの微分方程式の差分近似は
 r ,t t   r ,t
t
 2 r ,t   r r ,t 1  r r ,t   r r ,t 

 a  r r ,t


r
2r
r 2


ここで,半径方向に肉厚を n 分割し,円管内面を i  0 ,外面を i  n とし,時間刻みを j で表わ
し,さらに
r  ir
とおけば,
133
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
134/178
 i , j 1   i , j
 i 1, j  2 i , j   i 1, j
1  i 1, j   i 1, j 
 a


t
i r
2 r
r 2




a
r 
2
a
r 
2
1


 r  r ,t  2 r ,t   r  r ,t   r  r ,t   r  r ,t 
2i




1
1

1   i 1, j  2 i , j  1   i 1, j 
 2i 
 2i 

ここで
rc 
at
r 2
として整理すると


1
1

 i , j 1  rc 1   i1, j  2 i , j  1   i1, j    i , j
 2i 
 2i 



1

1
1

 rc 1   i 1, j    2  i , j  1   i 1, j 
 2i 
 rc

 2i 

(14.4.3)
また,温度分布が中心軸に対して線対称の場合,
 1, j  1, j
とおけるので,中心軸(i=0)上の温度は


 0, j 1  rc 1 
 1

1


1 
1  

1, j    2  0, j  1 
1, j   rc   2  0, j  21, j 
20 
 20  
 rc


 rc

(14.4.4)
例題 14.5
円柱内部の初期温度が 100℃,外面が 0℃のとき,円柱内部の温度変化を示せ.(Excel
の反復計算の設定は不要)
表計算のセルの数式は
3 列=初期温度
L 列=円柱外面の温度(境界条件)
B4=(2*B3+2*C3)/4(B5 から B17 は B4 を貼付)中心軸(i=0)上の温度
C4 =((1-0.5/C$2)*B3+2*C3+(1+0.5/C$2)*D3)/4(C4 から K17 の領域は C4 を貼付)
解答
(2) 円柱の外面温度がフローティングとなる(変動する)場合の非定常 1 次元温度分布
134
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
135/178
内部温度は,(14.5.2)式から求められる.を円柱の熱伝導率,h を熱伝達率とすると,円柱表
面の温度は,次式から求まる.
 n, j 1 
 f  rf  n1, j 1
(14.4.5)
1  rf
ただし,
rf 

(14.4.6)
hx
とおく.
例題 14.6 円柱内部の初期温度が 100℃,外面が 0℃のとき,円柱内部の温度変化を示せ.ただ
し,流体の温度  f  0 , rf  4 とする.(Excel の反復計算の設定は不要)
表計算のセルの数式は
3 列=初期温度
M 列=流体の温度(境界条件)
B4=(2*B3+2*C3)/4(B5 から B17 は B4 を貼付)中心軸(i=0)上の温度
C4 =((1-0.5/C$2)*B3+2*C3+(1+0.5/C$2)*D3)/4(C4 から K17 の領域は C4 を貼付)
L4 =0.8/1.8*K4(L5 から L17 は L4 を貼付)円柱外面の温度
解答
14.5 直交座標系定常熱伝導の数値解法
(1) 直交座標系定常熱伝導の差分近似
直交座標系の定常熱伝導方程式は,(14.1.14),(14.1.15)式より
1 次元:
 2
0
x2
2 次元:
 2  2

0
 x 2 y 2
差分化すると,
1 次元:
2 次元:
 xx  2 x   xx
 x 2
0
 x  x , y  2 x , y   x x , y
 x 
2

 x , y  y  2 x , y   x , y y
 y 2
135
0
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第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
136/178
これを  x と  x, y について解くと,x の位置における温度は
1 次元:  x 
 xx   xx
(14.5.1)
2
1 次元の場合,ある位置(x)の温度は,両側の位置(x-x), (x+x)における温度の算術平均値となる.
rxy 
y
とおくと,
x
rxy  xx , y   x x , y    x , y y   x , y  y 
2
2 次元:  x , y 


2 rxy  1
2
(14.5.2)
2 次元の場合,ある位置(x,y)の温度は,上下左右の位置(x,y-y), (x,y+y), (x-x,y), (x+x,y)における
温度から計算される.
(2) 直交座標系の 1 次元定常熱伝導(平板の熱伝導)
①
1 次元定常熱伝導方程式の差分化
直交座標系の定常熱伝導方程式は,(14.5.1)式より x 方向のきざみを i で表わすと,
i 
 i1   i 1
(14.5.3)
2
② Excel のスプレッドシート(表計算機能)を用いた直交座標系 1 次元定常温度場の計算
温度分布を解くには,境界条件が必要となる.1 次元の場合,境界条件は両端の温度である.
境界条件である左端の温度を0, 右端の温度をn とおき,温度場を n 分割すると,n-1 個の温度場
内部の温度 1 ,  2 ,  n1 に関して,次の n-1 個の方程式ができる.
1 
2 
0  2
2
1   3
:
 n1 
2
 n2   n
2
1 ,  2 ,  n1 を求めるには,この連立方程式を解かねばならない.解を得るには一般にはプログ
ラムによる数値解法が必要であるが,Excel を用いるとプログラムが不要であり,簡単に計算を行
うことができる.
Excel を用いて温度分布を計算するには次の手順に従う.
手順 1. 反復計算の設定
Excel を用いて定常温度場の計算を行う場合,通常の設定では循環参照に関する警告が表示され
る.これは値が不定なセルを利用して,別のセルを計算するためにセルの値が決定できないため
である.この問題を解決するには,循環参照を許可する設定が必要である.この設定により,Excel
内部で設定した誤差範囲になるまで自動的に反復計算(収束計算)が行われる.
反復計算を設定する手順は,次の通りである.
「ツール」→「Excel のオプション」→「数式」で「反復計算を行う」をチェックして,「OK」
136
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
137/178
をクリックする.
手順 2. セルの記述
1 次元温度場を 5 分割する場合を考える.スプレッドシートの A 列を温度場左端 x=0,F 列を右
端 x=L,とみなすことができる.B 列から E 列は温度場内部の位置
xi 
i
L
5
(i=1,2,3,4)
に相当する.計算結果は温度場の長さ L や,刻みx に無関係である.
左端 1000℃,右端が 0℃の場合,A1 セルに 1000,F1 セルに 0 を入力する.
このとき B1 セルの数式は=(A1+C1)/2 となる.B1 セルをコピーして空きのセルに貼り付ける.
1
A
B
C
D
E
F
1000
=(A1+C1)/2
B1 セルを貼付
B1 セルを貼付
B1 セルを貼付
0
次の計算結果が表示される.少数点以下の数値は収束誤差である.誤差を減らすには,「変化の
最大値」をより小さくする.
A
1
1000
B
C
800.0012
D
600.0016
E
400.0013
F
200.0007 0
Excel のグラフ作成機能(2-D 折れ線)を用いると,次の温度分布図が得られる.
137
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
138/178
(3) 直交座標系の 1 次元熱通過(平板の熱通過)
平板の両面を流体が流れる熱通過の問
題では,平板の両面における熱伝達による
熱伝達
伝熱量と平板内部の熱伝導による伝熱量
固体壁
低温流体
が等しいとおくことで,平板の表面温度を
次式のように求めることができる.
左の面では
高温流体
熱伝達
熱伝導

h1  f 1   0    1   0 
x
より
温度境界層が発達
0 

1
x

h1 
x
h1 f 1 
(14.5.4)
右の面では
h2  f 2   n   

 n   n1 
x
より
n 

 n 1
x

h2 
x
h2 f 2 
(14.5.5)
x 方向を 5 分割するものとして,表のように A1 セルと H1 セルの流体の温度  f 1 ,  f 2 を与え
る.

 1000 の場合を想定すると,平板の表面温度は(5.5)式および(5.6)式か
x
h1  500, h2  500,
ら表面温度は
1
左面:B1=(500*A1+1000*C1)/1500
①
右面:G1=(500*H1+1000*F1)/1500
②
A
B
C
D
E
F
G
H
1000
①式
=(B1+D1)/2
=C1 セル
=C1 セル
=C1 セル
②式
0
Excel のグラフ作成機能(2-D 折れ線)を用いると,次の温度分布図が得られる.
138
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
139/178
(4) 直交座標系の 2 次元定常熱伝導
① 2 次元定常熱伝導方程式の差分化
直交座標系の 2 次元定常熱伝導方程式は,(14.5.2)式より,x 方向のきざみを i,y 方向のきざみ
を j で表わし, rxy =1 とおくと次のように 4 つの位置の算術平均値となる.
 x, y 
②
 xx, y   xx, y   x, yy   x , yy
4
(14.5.6)
長方形断面の場合(2 次元)
2 次元の例として辺の比が 1:2 の長方形を考える.この場合,境界条件として長方形の周囲の温
度を与えなければならない.
温度場を Excel で求める.
手順 1. 以下の手順で反復計算の設定する.
「ツール」→「Excel のオプション」→「数式」で「反復計算を行う」をチェックして,「OK」
をクリックする.「変化の最大値」を 0.000001 に変更する.
手順 2. セルの記述
x 方向を 5 分割,y 方向を 10 分割するものとして,以下のように境界条件を与え,セルの書式
を設定する.
139
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
140/178
A
B
C
D
E
F
1
1000
800
600
400
200
0
2
900
=(A2+C2+B1+B3)/4
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
50
3
800
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
100
4
700
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
150
5
600
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
200
6
500
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
250
7
400
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
300
8
300
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
350
9
200
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
400
10
100
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
450
11
0
100
200
300
400
500
Excel の等高線グラフ作成機能を用いると,次の温度分布図が得られる.
③
矩形管の場合(2 次元)
Excel のスプレッドシートは断面の境界位置の温度を指定することにより,へこみや穴を有する
長方形断面にも対応することができる.下の例は,矩形パイプ断面の場合を示す.
A
B
C
D
E
F
1
200
200
200
200
200
200
2
200
=(A2+C2+B1+B3)/4
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
200
3
200
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
200
4
200
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
200
5
200
B2 セルを貼付
0
0
B2 セルを貼付
200
6
200
B2 セルを貼付
0
0
B2 セルを貼付
200
7
200
B2 セルを貼付
0
0
B2 セルを貼付
200
8
200
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
200
9
200
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
200
10
200
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
B2 セルを貼付
200
11
200
200
200
200
200
200
140
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
141/178
結果は次の通りである.
(5) 矩形管の外面温度(境界条件)がフローティングとなる(変動する)場合
①
内部温度の計算
2 次元:  i , j 
 i1, j   i1, j   i , j 1   i , j 1
ただし, i  1, 2,  , m  1,
②
(14.5.7)
4
i  1, 2,  , n  1 .内部の空隙部を除く.
表面温度の計算
壁面の温度が変化する場合,壁面の温度を計算する式が必要となる.計算格子の配置パターン
は,上下左右の壁面と,四隅のコーナーの 8 種類あり,それぞれ式が異なるため,格子ごとに数
式を変更しなければならない.
左側の壁面 i  0 における伝熱は,流体から壁面への熱伝達(x 方向)と壁面内部の熱伝導に
分けられる.を平板の熱伝導率,  f を流体の熱伝導率とする.壁面では固体壁と流体が接し
ているため,壁面に沿う熱伝導は流体内部の熱伝導と固体壁内部の熱伝導が合成されたものと考
え,熱伝導率は簡単化のため平均値  
  f
を用いる.h を熱伝達率,左側の流体温度を  fL と
2
すると,壁面における伝熱は図のとおりである.熱平衡を考えると,
h fL   0, j  

y

0, j
  0, j 1   

x

  0, j  
1, j
流体 f
(0, j-1)
(0,
j)
(1, j)
(0, j+1)
左面の熱平衡
141

y

0, j 1
  0, j 
(14.5.8)
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
 0, j について整理すると,

  r   r 

 0, j  fL x 1, j y 0, j 1 0, j 1
(14.5.9)
1  rx  2ry
ただし, rx 

hx

, ry 
hy
, rx 

hx
, ry 

hy
とおく.
同様に右の面 i  m において
 m, j 
 fR  rx m1, j  ry  m, j 1   m, j 1 
(14.5.10)
1  rx  2ry
上の面  j  0 における熱平衡を考えると,
h fU   i ,0  

x

i ,0
  i 1,0   

x

i 1, 0
  i ,0  

y

i ,1
  i ,0 
(14.5.11)
流体
f
(i,
0)
(i-1,0
)
(i+1,
0)
(i, 1)
上面の熱平衡
i , 0 について整理すると
  r 
    ry i ,1
 i ,0  fU x i 1,0 i 1,0
1  2rx  ry
(14.5.12)
同様に,下の面  j  n  において
 i ,n 
左上隅 i  0,
 fD  rx  i 1,n   i 1,n   ry i ,n1
(14.5.13)
1  2rx  ry
j  0 における熱平衡を考えると,


 0,1   0,0 
h f   0,0    1,0   0,0  
x
y
 0, 0 について整理すると
 r r 
 0,0  f x 1,0 y 0,1
1  rx  ry
(14.5.14)
142
142/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
143/178
流体 f
(0,
(1, 0)
0)
(0, 1)
左上端の熱平衡
同様に,右上隅 i  m,
j  0 では,
 f  rx m1,0  ry m,1
 m,0 
左下隅 i  0,
 0,n 
j  n では,
 f  rx1,n  ry 0,n1
(14.5.16)
1  rx  ry
右下隅 i  m,
j  n では,
 f  rx m1,n  ry m,n1
 m,n 
③
(14.5.15)
1  rx  ry
(14.5.17)
1  rx  ry
セルの記述
2 次元の例として辺の比が 1:2 の長方形を考える.この場合,境界条件として長方形の周囲の温
度を与えなければならない.
x 方向を 5 分割,y 方向を 10 分割するものとして,以下のように境界条件を与え,セルの書式
を設定する. rx  ry  4 ,  f  0 の場合,
I
J
K
H
H
0
0
0
0
0
0
(14.5.11)
式
(14.5.11)
式
(14.5.11)
式
(14.5.11)
式
(14.5.11)
式
0
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
100
100
100
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
100
100
100
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
100
100
100
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
=C3
(14.5.12)
式
(14.5.12)
式
(14.5.12)
式
(14.5.12)
式
(14.5.12)
式
(14.5.12)
式
(14.5.12)
式
(14.5.12)
式
(14.5.12)
式
(14.5.15)
式
(14.5.10)
式
(14.5.10)
式
(14.5.10)
式
(14.5.10)
式
(14.5.10)
式
(14.5.10)
式
(14.5.10)
式
(14.5.10)
式
(14.5.10)
式
(14.5.17)
式
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
A
B
C
D
E
F
G
H
1
rx
4
ry
4
rx’
1
ry’
1
2
0
0
0
0
0
0
0
3
0
(14.5.11)
式
(14.5.11)
式
(14.5.11)
式
(14.5.11)
式
4
0
(5.15)式
=C3
=C3
5
0
=C3
=C3
6
0
=C3
7
0
8
0
9
0
10
0
11
0
12
0
13
0
(14.5.14)
式
(14.5.9)
式
(14.5.9)
式
(14.5.9)
式
(14.5.9)
式
(14.5.9)
式
(14.5.9)
式
(14.5.9)
式
(14.5.9)
式
(14.5.9)
式
(14.5.16)
式
14
0
0
143
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
144/178
計算結果は下図のとおりとなる.
(6-06) 2 次元定常温度分布(矩形管境界浮動).xlsx
14.6 円柱座標系定常熱伝導の数値解法
(1) 円柱の 1 次元定常温度場の計算
定常の場合,熱伝導方程式は,(14.1.21)式から
 2 1 

0
r 2 r r
(14.6.1)
差分近似すると
 i 1  2 i   i 1
1  i 1   i 1

0
2
i r 2  r
r 
1
 i 1   i 1   0
2i
1
1


1   i 1  2 i  1   i 1  0
 2i 
 2i 
 i 1  2 i   i 1 
より
1 
2 
 i  1 
1
1 

 i 1  1   i1 
2i 
 2i  
(14.6.2)
例題 14.7 外径が 200mm,肉厚が 80mm の円管がある.円管の内面温度が 100℃,外面温度が 0℃
144
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
145/178
のとき,円管内部の定常状態における温度分布を求めよ.
(Excel の反復計算の設定をすること.)
解答
円管を半径方向に 10 等分すれば,
r 100
r 

 10 mm
10 10
 100  80

円管の内面  i 
 2  では,  2, j  100
10


円管の外面 i  10 では, 10, j  0
温度の差分式は
1 
2 
i , j  1 

1
1

i 1, j  1  i 1, j 
2i 
 2i 

i  3, 4,  , 9
下段は円管の定常熱伝導の解析解である.
r
r1
   2 
  1 
r2 1
ln
r1
ln
数値解と解析解の差はから,Excel による計算誤差はわずかであることがわかるが,さらに誤差を
減らすには,刻みの数を大きくすればよい.
表計算のセルの数式は
D3=円管内面温度(境界条件)
L3=円管外面温度(境界条件)
E3 =((1-0.5/E2)*D3+(1+0.5/E2)*F3)/2(F3 から K3 は E3 を貼付)
E4 =100-100/LN(5)*LN(E2/2)(F4 から K4 は E4 を貼付)解析解
E5=E3-E4(F5 から K5 は E5 を貼付)(誤差)
(4) 円管の 2 次元定常温度場の計算
145
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
146/178
2 次元定常熱伝導方程式は
1     1  2  2 1  1  2
r




0
r r  r  r 2  2 r 2 r r r 2  2
(14.6.3)
差分近似すると
i 1, j  2i , j  i 1, j
r 
2

1 i 1, j  i 1, j
1 i , j 1  2i , j  i , j 1
 2
0
2
ir
2r
 2
i r 
式を変形すると
2i 2    i 1, j  2 i , j   i 1, j   i    i 1, j   i 1, j   2 i , j 1  2 i , j   i , j 1   0
2
2
 4i 2    i , j  4 i , j  2i 2    i 1, j   i 1, j 
2
2
i    i 1, j   i 1, j   2 i , j 1   i , j 1   0
2


 4 i 2    1  i , j  2i 2    i 1, j  i    i 1, j
2
2
2
2i 2    i 1, j  i    i 1, j  2 i , j 1   i , j 1   0
2


 4i    1
2
 4 i 2    1  i , j  i   2i  1 i 1, j  i   2i  1 i 1, j  2 i , j 1   i , j 1   0
2
2
より
2
2
2
 i   2i  1 i 1, j  2i  1 i 1, j  2 i , j 1   i , j 1   0
2
i, j
i  2i  1 i 1, j  2i  1 i 1, j  2 i , j 1   i , j 1 
2
i , j 


(14.6.4)
4 i 2    1
2
表計算と対応させるため,図のように中心から半径方向に m 分割し,円管内面の位置を i  l と
する.x 軸の正方向から時計回りに角度を取り,円周を n 分割する.
j  0 と j  n は同じ位置になるから
 i ,0   i ,n i  l , l  1, , m
である.また,境界条件として,  l , j および  m, j を個々に与える.
y
i=0
j=0
1
l
m
=0
=/2
j=n/2
i=0
l
m j=n
x =0
j=0
=
j=1
=3/4
>0
n/2
円管断面上の座標の定義
例題 14.8
=2
表計算上の座標の定義
m  10, l  2, n  20 の場合,円管断面の定常温度分布を示せ.
146
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
147/178
解答
表計算のセルの数式は
B1=PI()/10 (角度刻み)
D 列=円管内面の温度(境界条件)
L 列=円管外面の温度(境界条件)
E3=E23(F3 から K3 は E3 を貼付)
E4=(E$2*$B$1*$B$1*((2*E$2+1)*F4+(2*E$2-1)*D4)+2*(E5+E3))/4/(E$2*E$2*$B$1*$B$1+
1) (E4 から K23 の領域は E4 を貼付)
E24=4(F24 から K24 は E24 を貼付)
14.7 熱交換器の定常熱伝導の数値解法
並流式と向流式熱交換器のそれぞれについて,高温流体および低温流体の温度変化を求める.
温度変化
流体 A の入口温度
A
入口温度
出口温度
出口温度
dQ
dQ
A と B の入口
A
B
出口温度
B
dθB>0
B
dθA<0
出口温度
流体 B の入口温度
入口からの距離 x
A
dθA<0
入口温度
dθB<0
x
dx
A と B の出口
dx
A の入口
A
熱の移動
A の出口
熱の移動
dQ
dQ
B の出口
B
B の入口
向流式熱交換器
並流式熱交換器
(1) 並流式熱交換器の場合
147
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
流体 A の温度変化は
d A  
dQ
k  A   B dA

GAcPA
GAcPA
式を変形すると
d A
k  A   B 

dA
GAcPA
差分化すると
 A,i   A,i 1
k  A,i   B ,i 

A
G AcP
A
 A,i   A,i1    A,i   B,i
kA
G AcPA
 G AcPA


 1 A,i 
 A,i 1   B ,i
kA
 kA

G AcPA
したがって,流体 A の温度は次式から求まる.
G AcPA
 A,i  kA
 A,i1   B ,i
G AcPA
kA
(14.7.1)
1
流体 B の温度変化は
dQ
k  A   B dA

GB cPB
GB cPB
d B 
式を変形すると
d B k  A   B 

dA
GB cPB
 B ,i   B ,i 1

A
k  A,i   B ,i 
GB cPB
 B,i   B,i1    A,i   B,i
kA
GB cPB
 GB cPB


 1 B ,i 
 B ,i 1   A,i
kA
 kA

GB cPB
したがって
GB cPB
 B ,i  kA
 B ,i 1   A,i
GB cPB
kA
(14.7.2)
1
(2) 向流式熱交換器の場合
流体 A の温度変化は,並流式の場合と同じなので,
148
148/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
G AcPA
 A,i
Excel による非定常および定常伝熱計算
149/178
 A,i1   B ,i
 kA
G AcPA
kA
(14.7.3)
1
流体 B の温度変化は
d B  
dQ
k  A   B dA

GB cPB
GB cPB
式を変形すると
d B
k  A   B 

dA
GB cPB
 B ,i   B ,i 1
A

k  A,i   B ,i 
GB cPB
 B,i   B,i1    A,i   B,i 
kA
GB cPB
 GB cPB


 1 B ,i 
 B ,i1   A,i
kA
 kA

GB cPB
したがって
GB cPB
 B ,i
 B ,i1   A,i
 kA
GB cPB
kA
(14.7.4)
1
流体 AB 間の温度差の解は次式で与えられるので,数値解の  A,i と  B,i 差  A,i   B ,i と比較するこ
とにより精度を検証することができる.
i  0e  DkA   A0   B 0 e  DkiA
(14.7.5)
i
ただし,
D
1
1

G ACPA GB CPB
(並流)
(14.7.6)
D
1
1

G ACPA GB CPB
(向流)
(14.7.7)
例題 14.9 質量流量 1.00t/h のガスを 15.0℃から 40.0℃まで加熱することが出来る並流式平板式熱
交換器において,
温度分布を求めよ.加熱には 300kg/h の温水を用いる.
ガスの比熱は 1.00kJ/(kgK),
水の比熱は 4.1868kJ/(kgK),熱通過率は k=29.1W(m2K)とする.温水入口温度を 80℃とする.
注意:流体の出入り口温度,流量,比熱,熱通過率,伝熱面積には関係式が成立するため,これ
らをすべて独立して値を決めることはできない.どれか一つは,従属変数として必ず他の値(独
立変数)から導く必要がある.この例では,伝熱面積を従属変数とする.
解答
149
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
水(A)が失った熱量  c AWA  A  c AWA  A0   An 
ガス(B)が得た熱量  c BWB  B  c BWB  Bn   B 0 
両者は等しいから
c AWA  A0   An   c BWB  Bn   B 0 
より
4.1868  10 3  30080.0   An   1  10 3  100040.0  15.0  25  10 6 J/h
80   An  19.903824719
 An  60.1℃
(1) 並流式熱交換器の場合
伝熱面積は
1   w1   g1  80.0  15.0  65.0
 2   w2   g 2  60.1  40.0  20.1
1   2 65.0  20.1

 38.256
1
65.0
ln
ln
 2
20.1
Q
6944
A

 6.2376m 2
k m 29.1  38.256
 m 
面積を 10 等分する場合,
n  10
A 6.2376
A  
 0.62376
n
10
流体 A および B の温度は
300 / 3600  4.1868  10 3
 19.2216
kA
29.1  0.62376
GB cPB 1000 / 3600  1.00  103

 15.3034
kA
29.1  0.62376
G A c PA

より
G AcPA
 A,i
 A,i1   B ,i
 kA
G AcPA
kA
GB cPB
 B ,i
kA
19.2216 A,i 1   B ,i
20.2216

15.3034 B ,i 1   A,i
16.3034
1
 B ,i1   A,i
 kA
GB cPB

1
流体間の温度差の解は
 1
1 
Dk  

k
 G AC P

G
C
B
P
A
B 

1
1




 29.1  0.18816
3
3 
 300 / 3600  4.1868  10 1000 / 3600  1.00  10 
150
150/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
より
Excel による非定常および定常伝熱計算
   A0   B0 e  DkiA  80  15e 0.188160.62376i  65e 0.11737i
(2) 向流式熱交換器の場合
伝熱面積は
1   A0   B 0  80.0  40.0  40.0
 2   An   Bn  60.1  15.0  45.1
   2 40.0  45.1
 m  1

 42.499

40.0
ln 1
ln
 2
45.1
Q
6944
A

 5.6148m 2
k m 29.1  42.499
面積を 10 等分する場合,
n  10
A 5.6148
A  
 0.56148
n
10
流体 A および B の温度は
300 / 3600  4.1868  103
 21.3537
kA
29.1  0.56148
GB cPB 1000 / 3600  1.00  103

 17.0008
kA
29.1  0.56148
GAcPA

より
G AcPA
 A,i  kA
 A,i 1   B ,i
G AcPA
kA
GB cPB
 B ,i  kA
kA
21.3537 A,i 1   B ,i
22.3537

17.0008 B ,i 1   A,i 17.0008 B ,i 1   A,i

17.0008  1
16.0008
1
 B ,i1   A,i
GB cPB

1
流体間の温度差の解は
 1
1 
Dk  

k
 G AC P GB C P 
A
B 

1
1




 29.1  0.021355
3
3 
 300 / 3600  4.1868  10 1000 / 3600  1.00  10 
より
   A0   B0 e  DkiA  80  40e0.0213550.56148i  40e0.011990i
流体の温度分布は以下のようになる.(Excel の反復計算の設定をすること.)
表計算のセルの数式は
B2=並流式の場合の流体 A の入口温度
151
151/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
B3=並流式の場合の流体 B の入口温度
L2=並流式の場合の流体 A の出口温度
L3=並流式の場合の流体 B の出口温度
C2=(19.2216*B2+C3)/20.2216(D2 から K2 は C2 を貼付)
C3=(15.3034*B3+C2)/16.3034(D3 から K3 は C3 を貼付)
B4=B2-B3(C4 から L4 は B4 を貼付)(温度差の数値解)
B5=65*EXP(-0.1129*B1) (C5 から L5 は B5 を貼付)(温度差の解析解)
B6=B4-B5(C6 から L6 は B6 を貼付)(誤差)
B9=向流式の場合の流体 A の入口温度
B10=向流式の場合の流体 B の出口温度
L9=向流式の場合の流体 A の出口温度
L10=向流式の場合の流体 B の入口温度
C9=(21.3537*B9+C10)/22.3537(D9 から K9 は C9 を貼付)
C10=(17.0008*B10-C9)/16.008(D10 から K10 は C10 を貼付)
B11=B9-B10(C11 から L11 は B11 を貼付)(温度差の数値解)
B12=40*EXP(0.01199*B8) (C12 から L12 は B12 を貼付)(温度差の解析解)
B13=B11-B13(C13 から L13 は B13 を貼付)(誤差)
152
152/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
153/178
14.8 フィンの定常熱伝導の数値解法
フィンの温度分布は
d 2
 m 2
2
dx
ただし,
   a
m2 
hS
A
ここで,  0 はフィンの付け根温度,h は熱伝達率,S はフィンの周囲長,A はフィンの断面積.
差分化すれば
 i 1  2 i   i 1
 m 2 i
2
x 
 i 1  2 i   i 1  m 2 x 2  i
m x 
2
2

 2  i   i 1   i 1
よって
i 
 i 1   i 1
2
m 2 x   2
(14.8.1)
実際の温度は
i  i   a
(14.8.2)
として求まる.
境界条件は, i  0x  0 において,  0   0   a
フィンの先端 i  nx  L  において,端面からの放熱が,端面におけるフィン内部の熱伝導量に
等しいと置くことにより
 dΘ 
hA l  t 0   hAΘ x l   
 A
 dx  x l
h
 dΘ 

   Θ x l

 dx  x l
Θn  Θn 1
h
  Θn
x

Θn  Θn 1  
h

 xΘn
よって
Θn 
Θn1
h
1  x
(14.8.3)

例題 14.10 次の条件におけるフィンの温度分布を計算せよ.
フィンの付け根温度  0  800 ℃
外気温度  a  20 ℃
153
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
フィンの長さ l  0.10 m
分割数 n  10
熱伝導率   46.5 W/(mK)
熱伝達率 h  23.3 W/(m2K)
5.00mm
30.0mm
l=100mm
解答
断面積 A  0.005  0.03  1.5 10 4 m2
周囲長 S  2  0.005  0.03  0.07 m
hS
23.3  0.07

 233.835
A 46.5  1.5  10 4
 m  15.2917
l
0.10
x  
 0.010
10
10
e ml  e15.29170.1  4.61435
m2 
より,解くべき式は
 i1  i1
 i1   i1
  i1

 i1
2
2
2
2.02338
m x   2 233.835  0.010  2
 0   0   a  800  20  780 ℃
i 
Θn 
Θn1
Θn1
Θn1
Θn1



h
23.3
23.3
1  x 1 
 0.010 1 
 0.010 1.00501

46.5
46.5
解析解は
154
154/178
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
155/178
h  mxml 
h  mx ml 

 1 
1 
e
e
m 
m 


  t0   0  t0 
h ml
e ml  e ml 
e  e ml
m
mix
23.3
23.3

 e

 4.61435
1

 1 



15.2917  46.5  4.61435  15.2917  46.5  e mix
 20  800  20 
1
23.3
1


4.61435 

  4.61435 

4.61435 15.2917  46.5 
4.61435 
4.76555 

 20  156.779   0.209614e15.29170.01i  15.29170.01i 
e


747.14
 20  32.863e 0.152917i  15.29170.01i
e


フィンの温度分布は以下のようになる.(Excel の反復計算の設定をすること.)
先端に近づくほど,数値解と解析解の差(誤差)が拡大する様子が分かる.誤差を減少させるに
は,分割数を増やす必要がある.
表計算のセルの数式は
10 分割の場合
B2=フィン付け根温度-周囲空気温度
C2 =(B2+D2)/2.02338(D2 から K2 は C2 を貼付)
L2=K2/1.00501(フィン先端温度)
B3=B2+20(C3 から L3 は B3 を貼付)
B4=20+32.863*EXP(0.152917*B1)+747.14/EXP(0.152917*B1)(C4 から L4 は B4 を貼付)
(解析解)
B5=B3-B4(C5 から L5 は B5 を貼付)(誤差)
フィンの熱伝導(10 分割の場合)
20 分割の場合(10 分割からの変更点のみ記載)
155
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
Excel による非定常および定常伝熱計算
156/178
C2=(B2+D2)/2.005846(D2 から K2 は C2 を貼付)
L2=U2/1.002505(フィン先端温度)
B4=20+32.863*EXP(0.152917*B1)+747.14/EXP(0.152917*B1) (C3 から L3 は B3 を貼付)
フィンの熱伝導(20 分割の場合)
14.9 非定常拡散の数値解法
フィック Fick の第 2 法則より,1 次元非定常物質拡散は,D を拡散係数[m2/s],n をモル濃度
[mol/m3]として以下の式で表される.(1 次元非定常熱伝導方程式と同形である)
n
 2n
D 2
t
x
ここで
rD 
Dt
 x 2
とおけば,


1

ni , j 1  rD ni1, j  2ni , j  ni1, j   ni , j  rD ni1, j    2 ni , j  ni1, j 
 rD



(14.8.1)
拡散領域の先端 i  n での境界条件は,密閉容器の場合,濃度勾配が 0 となるから
nn, j 1  nn 1, j 1
とおく.
例題 14.11 物質表面から物質が拡散する様子を示せ.ただし,物質表面における濃度を 1 とす
る.拡散領域の端で,濃度は 0 とする.
解答
rD 
1
とし,空間を 10 分割する.(Excel の反復計算の設定は不要.)
4
156
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
第 14 章
ni , j 1 
Excel による非定常および定常伝熱計算
ni 1, j  2ni , j  ni1, j
4
容器の端では,濃度勾配が等しい条件から
nn, j 1  nn1, j 1
表計算のセルの数式は
2 行(B2 から L2)=濃度初期値
B 列=1(境界条件)
C3=(B2+D2)/2(C3 から K32 の領域は C3 を貼付)
L3=K3(L4 から L32 の領域は L3 を貼付)
1 次元物質拡散( t  30t まで計算.表は途中まで表示)
157
157/178
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理解度チェック,No.1
学籍番号
理解度チェック
158/178
氏名
問題. 次の記述で,正しいものには○,正しくないものは×を付けよ.
1.たき火に当たると暖かいのは,たき火の熱が空気を伝わって身体に届くためである.
2.板厚の薄いフライパンの方が,火が通りやすいから,肉を全面むらなく焼くことが出来る.
3.魔法瓶の中には不活性ガスが詰められている.
4.金属に触れると冷たく感じるのは,金属に熱を奪われるからである.
5.手で触ったとき,体積が同じなら金属の方が木材より冷たく感じるのは,金属の方が表面温度が低
いからである.
6.アルミ箔と厚いアルミ板では感じる冷たさは同じである.
7.やかんで湯を沸かすとき,やかんの蓋を開けておくと早く沸く.
8.ビーカーで湯を沸かすとき,中をかき回した方が早く沸く.
9.同じ金属なら,重さの重いものほど暖めにくく,また,冷めにくい.
10.扇風機の風に当たると涼しく感じるのは,風の温度が部屋の空気の温度より低いからである.
11.濡れたままでいると体が冷えるのは,水が蒸発する際に体の熱を奪うからである.
12.物体の色を感じるのは,物体が表面からその色の光を放出しているからである.
13.物体に直射日光があたるとき,表面の色が黒い方が物体は温まりやすい.
14.風を当てる方が洗濯物は早く乾く.
解答欄
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
158
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.2
学籍番号
理解度チェック
159/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 熱は熱力学第 A 法則により,B 温部から C 温部に伝わる.
② 伝熱の本質は D の E や F のエネルギが伝播することと,G を放出・吸収することの 2 種類である.
③ 固体内部では,D の E が伝播する形態で熱が伝わり,伝熱形式は H と呼ばれる.
④ 流体内部では,D の流動によって D 間の接触が活発となって,E のエネルギ伝播が促進され,伝熱
形式は I と呼ばれる.
⑤ 物体は温度の4乗に比例したエネルギを G として放出しており,これを他の物体表面が吸収すると,
D を E させることにより物体内部で熱に変わる.媒体を介さずに G の形でエネルギを伝える伝熱形式
を J という.
⑥ 上記の H, I ,J を伝熱の K 形式という.
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
159
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.3
学籍番号
理解度チェック
160/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 熱流束とは,単位 A,単位 B あたりに伝熱面を通過する熱量のことであり,単位は C である.熱
流束を微分形で表すと,D を面積で微分したものとなる.
② 定常状態では,D は B に関係なく E であるが,熱流束は B が小さくなると逆に大きな値となる.
③ 温度分布が   f  x  で表されるとき,この温度分布は F 次元温度分布と呼ばれる.
④ 温度分布が時間的に変化しない場合を,G 温度分布と呼ぶ.
⑤
H の法則は,D が温度 I に比例することを示す法則である.この法則より,単位時間に微小面積
dA を通過する熱量 dQ は,dQ =
J
dA と表せる.この式を K の式といい,この式における比例定数を
L と呼ぶ.
⑥
L の単位は M である.
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
160
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.4
学籍番号
理解度チェック
161/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
①
A の法則より熱流束 q,熱伝導率λ,温度勾配
d
の関係を式で表すと, q  B となる.この式を
dx
解くことで,C 分布が求まる.
② 平行平板の場合, x  0 で   1 のとき,熱流束を q,熱伝導率をλとすると,C 分布は,
  D x  E で表される.よって,温度分布は F 線となる.
③ 平行平板の場合,熱伝導率をλ,板厚を L,温度差を 1   2 とすると,熱流束 q は G で表される.
このとき,伝熱面積を A [m2]とすると t 秒間に流れる全熱量は H と表される.
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
161
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.5
学籍番号
理解度チェック
162/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 多層平行平板の定常熱伝導では,どの層の温度分布も A 線となる.また,どの層の熱 B も値は C
しい.層ごとの熱 B の値が一定でない場合は,D が上昇もしくは下降する E 定常状態にある.
② 層ごとの熱伝導率λが異なる場合には,温度分布は F 線となる.
③ n 層からなる平行平板の熱流束 q は G で表される.
④ 図のような部材の熱伝導では,A 点と B 点の H はそれぞれの点における熱 I を考え,連立して解
くことで求めることが出来る.
40 C
50 C
60 C
A
B
30 C
20 C
10 C
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
I
162
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.6
学籍番号
理解度チェック
163/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 平行平板の定常熱伝導では,熱流束と通過熱量は共にどの位置でも A である.一方,円管の定常熱
伝導では,半径によって B は変化するが,C は一定である.同様に,球状壁でも,半径によって B は
変化するが,C は一定となる.
② 熱流束とは単位 D,単位 E あたりに伝達される熱量のことである.
③ 円管の定常熱伝導では,温度分布の式は  x  1  F で表され,これは温度分布が G 曲線で表され
ることを示している.
解答欄
A
B
C
E
F
G
 x  1 
163
D
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.7
学籍番号
理解度チェック
164/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
定常熱伝導における温度分布の式は,平行平板では A 線,円管では B 曲線,球殻では C 曲線で表さ
れる.
A
B
C
2.単層の場合における平行平板,円管,球殻の(単位時間あたりの)通過熱量 Q[W]の式を参考にし
て,n 層の場合の式を完成せよ.
単層
平行平面板
Q
Q
円管
球殻
Q

L
1  2 A
2 l
   2 
r2 1
ln
r1
4
   
1 1 1 2

r1 r2
n層
1   n 1
Q
1 n

A i 1
1   n 1
Q
n
1

2 l
1
ln
i 1
Q
1   n 1
1
4
n

i 1
164
1  1



1 


埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.8
学籍番号
理解度チェック
165/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 固体壁に沿って固体壁と温度の異なる流体の流れが存在する時,固体壁近傍には温度が急激に変化
する A 境界層が発生する.
② 平板の両側の温度を  f 1 ,  f 2
ただし,
f1
  f 2  ,熱通過率を k とすると,平板を通過する熱
流束は q=B となる.平板の熱伝導率をλ,厚さをδ,熱伝達率を h1, h2 とすると,熱通過率は k=C とな
る.熱通過率 k の単位は D である.
解答欄
A
B
C
D
③ 図の円管の熱通過では,円管内側は E,円管壁内部は F,円
管外側は E の熱移動が行われる.円管内側の伝熱量は Q1=G,円
管壁内部の伝熱量は Q2=
H ,円管外側の伝熱量は Q3= I とな
d1
d2
る.
全熱通過率を k’とすると,
円管を通過する熱量は Q=Q1= Q2=Q3
となる.ただし,k’= J である.
l
 f1
Q1
 w1
Q2
 w2
h1
Q3
h2
解答欄
E
F
G
H
I
J
165
 f2
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.9
学籍番号
理解度チェック
166/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 熱交換器には,A 流式,B 流式,C 交流式の 3 種類がある.A 流式と B 流式のうち,出口の温度
が同じ場合,伝熱面積を小さくできるのは B 流式である.
② 熱交換器の高温流体 A と低温流体 B の温度差  は 
 D と表される.ただし,熱通過率を k,
入口からの伝熱面積の合計を A,入口温度差を 1 ,また, D 
1
1
とする.

GACPA GB CPB
③ 熱交換器の入口と出口の温度差を 1 ,  2 とすると,対数平均温度差  m は  m  E と表される.
④ 熱通過率を k,面積を A,対数平均温度差を  m とすると,平板式熱交換器の高温流体から低温流
体への通過熱量 Q は Q= F と表される.
解答欄
A
B
C
D
E
F
166
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.10
学籍番号
理解度チェック
167/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① フィンの伝熱において,温度 θ に関する線形2階常微分方程式は
ここで,  t0=Θ ,m 
2
d 2
 A と表される.
dx 2
d 2Θ
hS
 B と表すことができ,一般解は,
とおくと,この微分方程式は,
A
dx 2
C1 , C2 を積分定数として Θ  C となる.境界条件を雰囲気温度 t0,フィンの根本温度 θ0,フィンの周
囲長 S,フィンの断面積 A,フィンの熱伝導率を λ,フィン周りの熱伝達率を h とすると,解はθ=D と
表される.また,フィンからの全放熱量は Q=E と表される.
②
 m をフィン表面の平均温度とすると,フィン効率は,  F となる.
解答欄
A
B
C
D
E
F
167
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.11
学籍番号
理解度チェック
168/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 伝熱工学において,重要な無次元数は A,B,C,D の 4 つである.A は E の特性を表す無次元数,
B は F の大きさを表す無次元数,C は E と G の相関を示す無次元数.D は H の強さを示す無次元数で
ある.A,B,C,D はそれぞれ,記号 I,J,K,L で表わされる.
② 代表速度を u,代表長さを L,動粘性係数を ν,熱伝達率 h,熱伝導率 λ,熱拡散率 a,重力加速度 g,
体膨張係数 β,温度差 Δθ とすると,定義式は,I =M,J =N,K =O,L =P となる.
③
A は流体に働く Q 力と R 力の比であり,値が小さい場合は,粘り気があって,乱れのない流れ,
大きい場合はさらさらして,乱れの発生し易い流れであることを示す.前者は S 流と呼ばれ,後者は T
流と呼ばれる.
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
168
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.12
学籍番号
理解度チェック
169/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 熱伝導率の単位は A で,MLST 系次元式は B である.したがって,M の次元は C,L の次元は D,
S の次元は E,T の次元は F である.


② 方程式 f h,  , c p , D,  , w,   0 に含まれる基本単位が M, L, S, T の 4 つであるとき,次元解析に
より,方程式を G =0 または
 1  H の形に変換することができる.この定理は I という.
③ ヌセルト数の実験式は強制対流熱伝達では Nu  J,自然対流熱伝達では Nu  K で表される.熱伝
達率 h はヌセルト数から計算でき,熱伝導率を λ,代表長さを L とすると, h
 L となる.
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
169
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.13
学籍番号
理解度チェック
170/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 沸騰曲線において,縦軸は A の対数を表わし,横軸は B Tw と水の C Ts の差として計算されるΔTsat
の対数を表わす.このΔTsat を D という.A'-A 間は非沸騰領域で,A-B 間は E 沸騰領域,D-I 間は F
沸騰領域である.B は G 点という.
I
log q
B
G
H
D
A
A’ 沸騰開始点
logΔTsat
② 水の p-v 線図および T-s 線図上で,c は H 点という.アは I の領域,イは J の領域,ウは K の領域
である.エは L 加熱を表わす.
p
T
ア
ウ
ア
ウ
c
c
エ
飽
和
液
線
エ
飽和蒸気線
イ
イ
v
s
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
170
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.14
学籍番号
理解度チェック
171/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 入射エネルギ Q が入射すると,平面で一部は QR のように A
Q
QA
され,一部は QA のように B され,残りは QD のように C される.
② 完全黒体の単色放射能は, Eb 
 e
5
c

1
c 2 / T
[W/m2]で表
1
QD
QR
される.これを D の法則という.
③ 物体のある温度における放射能と,同じ温度における完全黒体の放射能の比を E と言う.
④ 物体表面の温度が増加すると,単色放射能のピークは短波長側へずれ, max T  2.90  10 3 [mK]の
関係が成立する.これを F の変位則という.
⑤ 物体が放出する全エネルギ量は, Eb 


0
Eb d  

0
 e
5
c
1
c 2 / T
d  T 4 で表わされる.

1
これを G の法則という.σ は G 定数という.値は H W/(m2K4)である.

⑥ 2 面間の放射伝熱量を, Q  f s T1  T2
4

4

[W/m2]と表わすとき, f s を I という.

⑦ 2 面間の放射伝熱量を, Q  F1, 2 f s T1  T2 A1
4
4
[W]と表わすとき, F1, 2 は,1 の面から 2 の面に
放射する場合の J という.
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
171
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.15
学籍番号
理解度チェック
172/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
①
A 勾配に比例して,B(分子)が移動する現象を拡散という.
② 単位面積当たりの成分の拡散モル速度 n [mol/(m2s)]は,モル濃度 n [mol/m3]の勾配 dn / dx に比例し,
n   D
dn
で表わされる.これを C 法則という.比例定数 D を D という.単位は E である.
dx
③ 界面から発生する分子の流れを F 流という.
④ 3 次元非定常状態における物質の拡散は,
  2n  2n  2n 
n
 D 2  2  2  で表される.これを G 法則と
t
y
z 
 x
いう.
⑤ 境界層には,速度,H,I の 3 種類がある.拡散で重要な無次元数は J と K である.
解答欄
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
172
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.16
学籍番号
理解度チェック
173/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 多次元熱伝導の場合,x 方向の温度勾配は A と表せる.また,温度がθの位置から dx 離れた位置
における温度は B となる.
② 非定常熱伝導の場合,時間に対する温度勾配は C となる.また,温度がθの時刻から,dt 経過した
時刻における温度は D となる.
③ 3 次元の非定常熱伝導方程式は,E となる.ここで, a 

は F もしくは G と呼ばれる. 3 次
C p
元の定常熱伝導方程式は,H となる.
A
B
C
D
E
F
G
H
173
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック,No.17
学籍番号
理解度チェック
174/178
氏名
問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.
① 刻みを h とするとき,関数 u (x) の 1 階導関数の前進差分近似は, u(x)  A となる.また,2 階導
関数の中心差分近似は, u(x)  B となる.
② 1 次元熱伝導方程式において,時間に関する前進差分近似式は
する中心差分近似式は
 2
x2
 D となる. r 
x ,t

t
 C となる.また,空間に関
x ,t
at
とおいて式を整理すると,新しい時刻にける温度
 x 2
は  x,t  t  E と表される.
A
B
h
h2
C
D
t
x 2
E
174
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック
175/178
理解度チェック解答
No. 1
1.× 高温になった炎から放射された電磁波が身体で熱に変わるから.
2.× 火に接触する場所とそうでない場所で温度に大きな差が出て,焼きむらが生じやすい.肉厚が
厚いと,金属内部で熱が拡散しやすいため,焼きむらが生じにくい.
3.× 減圧されている.
4.○
5.× 手で触れる前の表面温度は金属も木材も同じである.金属は熱伝導性が高く,熱容量が大きい
ため,手から多くの熱を奪うので冷たく感じる.木材は金属より熱伝導性が低く,熱を伝えにくいため,
手から奪う熱量が少ない.
6.× アルミ箔もアルミ板も最初は同じ温度である.アルミ箔は熱容量が小さいため,手を触れると
すぐに手の温度に近づく.一方,厚いアルミ板はアルミ箔より熱容量が大きいため,温度変化がアルミ
箔より小さくなり,手から熱をより多く奪うので冷たく感じる.
7.× 水蒸気が流出し,温度の低い外気と入れ替わるため熱が逃げて温まりにくくなる.
8.○
9.○
10.× 風が当たると熱伝達率が大きくなり,伝熱が促進されるために身体から熱を奪いやすくなり涼
しく感じる.
11.○
12.× 物体に光があたると,表面の特性によって特定の波長成分は吸収され,それ以外は反射される.
たとえば可視光の赤以外の波長成分が吸収されれば,赤のみが反射されるために赤く見える.黒の場合,
すべての可視光の波長成分は吸収され,白の場合は赤,緑,青の成分が反射される.
13.○
表面が黒く見えるということは,より多くの波長成分(エネルギー)を吸収するためである.
14.○
No. 2.
A2,B 高,C 低,D 分子,E 振動,F 回転,G 電磁波,H 熱伝導, I 熱伝達,J 熱放射,K3
No. 3.
A 時間,B 面積,C W/m2,D 通過熱量(伝熱量),E 一定,F 一,G 定常,H フーリエ, I 勾
配, J
No. 4.

d
,k フーリエ,L 熱伝導率,M W/(mK) (注:A と B は逆も可)
dx
A フーリエ,B q  
Q

L
d
q

,C 温度,D  ,E  1 ,F 直,G q    2  1  ,H
dx

L
 2  1 At
175
埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
No. 5.
A 直,B 流束,C 等,D 温度,E 非,F 折,G q  
理解度チェック
176/178
 n1  1
 
もしくは q  1 n n1 ,H 温度,
n
i
i


i 1 i
i 1 i
I 平衡
No. 6.
A 一定,B 熱流束,C 通過熱量,D 面積,E 時間,F
1   2
ln
No. 7.
Q
No. 8.
H
1   n 1
A 直,B 対数,C 双,D Q 
n
Li
1

A i 1 i
r2
r1
ln
,E Q 
rx
,G 対数
r1
1   n 1
1 n 1 ri 1
 ln r
2l i 1 i
i
,F
1   n 1
1
4
n
1 1
1 
 

ri 1 
i  ri

i 1


A 温度,B k  f 1   f 2 ,C
1
1  1
 
h1  h2


,DW/(m2・K),E 熱伝達,F 熱伝導,G h1d1l  f 1   w1 ,
2 l  w1   w 2 
1
,I h2d 2l  w2   f 2 ,J
d
1
1
d
1

ln 2 
ln 2
h1d1 2 d1 h2 d 2
d1
No. 9.
A 並,B 向,C 直,D 1e
 DkA
,E
1   2
,F kA m
1
ln
 2
h  mx ml 
h

  m  e mx ml 
 m  e

hS

  t 0  ,B m 2Θ ,C C1emx  C2emx ,D t 0   0  t 0    
No. 10. A
,
h ml
A
ml
 ml
 ml
e e 
e e
m

E Am  0  t 0 
No. 11.
e ml  e ml 


e ml  e  ml



h ml
e  e  ml
  t0
m
,F m
h ml
 0  t0

e  e  ml
m
A レイノルズ数,B ヌセルト数,C プラントル数,D グラスホフ数,E 流れ,F 熱伝達,G 熱
移動,H 自然対流,IRe,JNu,K Pr,L Gr,M
uL

,N
L3 g
hL

,O ,P
,Q 慣性,R 粘性,S


a
層,T 乱,
No. 12.
A W/(mK),BML/(S3T),C1,D1,E-3,F-1,G f  1 ,  2 ,  3  ,H f  2 ,  3  ,I バッキンガム
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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
の π 定理,J f Re, Pr  ,K f Gr, Pr  ,L Nu
No. 13.
理解度チェック
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
L
A 伝熱面熱流束,B 壁面温度,C 飽和温度,D 伝熱面過熱度,E 核,F 膜,G バーンアウ
ト(バーンナウト),H 臨界,I 液体,J 湿り蒸気,K 過熱蒸気,L 等圧
No. 14.
A 反射,B 吸収,C 透過,D プランク,E 放射率,F ウィーン,G ステファン-ボルツマ
ン,H 5.67  10 8 , I 放射係数, J 形態係数
No. 15.
A 濃度,B 物質,C フィックの第 1,D 拡散係数,E m2/s,F ステファン,G フィックの第
2,H 温度, I 濃度, J シュミット数, K シャーウッド数
No. 16.
A
  2  2  2 





 a 2  2  2  ,F 熱拡散率もしく
,B  
,D  
dx ,C
dt ,E
t
y
z 
x
t
t
x
 x
  2  2  2 
 2   0
は温度伝導率,G a 2 
2
z 
 x  y
No. 17.

A
 x ,t  t   x ,t
 x  x ,t  2 x ,t   x x,t
u ( x  h)  u ( x )
u ( x  h)  2u ( x)  u ( x  h)
,B
,C
,D
,
h
t
h2
x 2


1
r



E r  x  x,t  2 x,t   x x,t   x,t もしくは, r  x  x ,t    2  x ,t   x x ,t 


引用文献
1) 一色・北山,最新機械工学シリーズ 7 伝熱工学(改訂・SI 併記),森北出版
2) 甲籐好郎「伝熱概論」養賢堂
3) 日本機械学会「伝熱工学資料(改訂第 4 版)」丸善
4) 日本機械学会編「(新版)機械工学便覧 A6 熱工学」
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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)
理解度チェック
伝熱工学講義ノート(第 8 版)
伝熱工学講義ノート
平成 19 年 9 月 1 日 初版
伝熱工学講義ノート(第 2 版)
平成 20 年 9 月 1 日 第 2 版
伝熱工学講義ノート(第 3 版)
平成 21 年 9 月 1 日 第 3 版
伝熱工学講義ノート(第 4 版)
平成 22 年 1 月 1 日 第 4 版
伝熱工学講義ノート(第 5 版)
平成 23 年 9 月 1 日 第 5 版
伝熱工学講義ノート(第 6 版)
平成 24 年 9 月 1 日 第 6 版
伝熱工学講義ノート(第 7 版)
平成 25 年 9 月 1 日 第 7 版
伝熱工学講義ノート(第 8 版)
平成 26 年 9 月 1 日 第 8 版
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