第七話 動いた三角形が語ること その一

第七話 動いた三角形が語ること
「接線は三平方の定理で」
図Ⅰは、3辺が a、b、c の直角三角形を、
4つ並べて、1辺が a+b となる正方形を
作っています。
4つの三角形で囲まれた部分は、1辺 c の
正方形になり、面積は になっています。
それでは、この4つの三角形を動かして、
2つの正方形を作りましょう。
Ⅰ
2つの直角三角形を合わせると、
縦 a、横bの長方形ができます。
これを図Ⅱのように配置すると、
面積が、 と
の正方形が2つできます。
図ⅠもⅡも、全体は1辺 a+bの正方形です。
2つの図で、動かした三角形によってできる
面積がそれぞれ、 a 2 、 b 2 、 c 2 の正方形には、
a 2  b 2  c 2 という関係が成り立ちます。
これは、3辺が a、b、cの直角三角形で、
「斜辺の2乗は、他の2辺の2乗の和に等しい」
ということを示しています。
これを「三平方の定理」といいます。
Ⅱ
その一
三平方の定理は、「図形」の他「関数」や「数量関係」
などにも多くの場面で利用されています。
図は、円Oに AB がPで接しています。AB を「接線」と
いい、半径と垂直になります。
AP=4cm、AO=5cm のとき、円の半径 OP の長さを求めて
みましょう。
OP=r として、「三平方の定理」を使います。
「その一」はこうやってみてはどうだろう
「接線⊥半径」から
が成り立ちます。これを解くと、
円の半径rは3cm になります。
この直角三角形の辺は、3:4:5になっています。
例えば、3辺が小数の時も、2辺が 0.9(0.3×3)、1.2(0.3×4)の直角三角形ならば、もう
1辺は 1.5(0.3×5)になるなど、いろいろな数値の場合にも利用することができます。
これを「三四五(さしご)の三角形」と呼び、古くから用いられてきました。ピラミッドなど
の遺跡にも、この定理が用いられたことがわかっています。
1
この定理は、古代のギリシア文明でピタゴラス(紀元前 572~492 年)が発見したことから、
「ピタゴラスの定理」とも呼ばれています。
その二
① 図Ⅰの長方形 ABCD と、C を中心とする円周の
4 分の 1 の弧があります。
B から円の弧に接線をひき、接点を P とします。
このとき、 x を求めましょう。
Ⅰ
② 図Ⅱの長方形 ABCD と、BC を直径とする円周の
2 分の 1 の弧あります。
Aから円の弧に接線をひき、接点を P と
します。このとき、 x を求めましょう。
Ⅱ
「その二」はこうやってみてはどうだろう
① 図Ⅰで、接点と半径は垂直に交わるので、
∠BPC=∠QAB=90°
錯角が等しいので、∠PBC=∠AQB
PC=AB=4
よって△BPC≡△QAB なので、QB=BC=5
△QABは直角三角形なので、AQ 2  AB 2  QB 2
Ⅰ
x 2  4 2  52
x  52  4 2  3
② 図Ⅱで、A からの接線の長さは等しいので、
AP=AB=4、QP=QC=4- x
したがって、AQ=AP+QP=4+(4- x )=8- x
△ADQ は直角三角形なので、AD 2  DQ 2  AQ 2
Ⅱ
6 2  x 2  8  x 
2
36  x 2  64  16 x  x 2
16 x  28
7
x
4
その三
① 図Ⅰの半径 2cm と半径 3cm の半円があります。
A から円 O’に接線をひき、接点を P とします。
このとき、 x を求めましょう。
2
Ⅰ
② 図Ⅱは、図Ⅰで AD= x 、∠PAO=30°とします。
このとき、 x をもとめましょう。
Ⅱ
「その三」はこうやってみてはどうだろう
① 図Ⅰで、OB=3、BO’=2 から、OO’=1
したがって、AO’=AO+OO’=3+1=4
接線と半径は垂直に交わるので、∠APO’=90°
Ⅰ
△APO は直角三角形で、 AP  4 2  2 2  2 3
△APO∽△AQB から、AP:PQ=AO’:BO’
2 3 : x  4:2
x 3
② 図Ⅱで、AB= 2 x なので、AO’= 2 x  2
△APO’は∠PAO’=30°の直角三角形
なので、3 辺の長さの比は、
Ⅱ
PO’:AO’:AP=1:2: 3 になります。
したがって、PO’:AO’=2 x  2 : 2  2 : 1
2x  2  4
2x  6
x3
第七話「秘伝」
図Ⅰの四角形 ABCD は正方形で、1辺が 12 ㎝です。
P は BC 上の点で、BP=3cm です。
このとき、AD、AB、PD に接する円 O の半径を求め
ましょう。
図Ⅱのように、AB と DF を延長し、交点を Q とします。
△QBP∽△QAD なので、x : 3  x  12 : 12
12 x  3 x  36
9 x  36
x4
2
2
2
△AQD は直角三角形なので、QD  AD  AQ
 12 2  12  4 
2
 144  256
 400
QD  20
3
Ⅰ
Ⅱ
△AQD の3辺は、AD=12、AQ=16、QD=20 です。
このとき、次のことがわかっています。
三角形に内接する円の半径は、3辺の長さから求めることができる
図Ⅲの円は、三角形の3辺に内接しています。
内接円の半径をrとすると、
Ⅲ
図から、三角形の面積は、
です。
△AQD の面積は、12×16÷2=96 です。
したがって、
12  r  16  r  20  r
 96
2
12  16  20 r  96
2
24r  96
r4
半径は、4cm です。
ここで第七話は終わりますが・・
1
どこかで「黄金比」という言葉を耳にしたこと
はないでしょうか。テレホンカードや新書本、
名刺など、普通の紙よりちょっと長めの長方形
を見ませんか。これらの縦横の比に「黄金比」
が使われています。
長方形から正方形を切り取った残りの部分が、
元の長方形と同じ形になるというのが、サイズ
の原理で、図に示したような関係があります。
x
1
1
x
x
1
なぜ「黄金比」と呼ぶのでしょうか?
古代ギリシア時代より、最も美しい比とされ、
その名がついたのです。当時の建築物や絵画に
も多く用いられてきました。
例えば、パルテノン神殿の縦と横の長さ、ミロ
のビーナスの、おへそから頭と、おへそから
つま先までの長さ、多くの古代ヨーロッパの絵画
の構図に見られます。日本でも葛飾北斎が、
「富岳三十六景」の中で、波と富士山の配置に用
いています。自然界でも、オームガイのらせん形
の縦と横の比や蝶の羽根などに見られます。
4
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8
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