産業組織論 II 第4講 練習問題

産業組織論 II 第 4 講 練習問題
練習問題の答え合わせがしたい場合は,解いたノートを持参しオフィスアワーに研究室まで来ること.
(部分的な解答でも構
わない.
)もしくは個別にアポイントメントをとること.
4.1 (製品差別化) 水平的製品差別化,垂直的製品差別化の例をそれぞれ一つずつ挙げよ.(講義中で紹介したものは除く)
4.2 (製品差別化財のベルトラン競争)
二浦屋と三浦屋は横浜市におけるラーメン市場の複占企業と仮定する.両社のラーメンは差別化されており,二浦屋
は醤油ベースの太麺ラーメンを,三浦屋は豚骨ベースの細麺ラーメンをそれぞれ販売している.二浦屋・三浦屋の設
定価格をそれぞれ pN , pM で表わす.両社は同一の生産技術を持っており,同一の費用関数 C(qi ) = 200qi に直面して
いる.(qi は i 社の生産量)
横浜市の各消費者は「理想的なラーメンはこうあるべきだ」という強い好みを持っており,その理想的なラーメンの
“立ち位置”を x というパラメータで表わすとする.消費者の好みは十分に多様化しており,二浦屋の醤油ラーメンを
究極と考える消費者 (i.e., x = 0 の理想を持つ消費者) から三浦屋の豚骨ラーメンを至高と考える消費者 (i.e., x = 1 の
理想を持つ消費者) まで幅広く存在している.特に講義の例と同様に,0 から 1 までの間の任意の立ち位置を持つラー
メンに対して,そのラーメンを理想とする消費者が同数存在すると仮定し,消費者全体の数は 1 で基準化する.以降
は消費者をその理想とするラーメンの立ち位置で区別する.即ち,“消費者 1/2”は x = 1/2 を理想のラーメンと考え
る消費者のことを指す.各消費者はラーメンの消費から一律に 1000 の満足度を得るが,自身の理想から乖離したラー
メンを消費することにストレスを感じ,不効用が発生する.不効用は実際に消費したラーメンと理想のラーメンの立
ち位置の距離に 500 をかけた形で発生する.したがって消費者 x が二浦屋・三浦屋それぞれのラーメン消費から得る
効用は以下の式で表わされる.


ux =
1000 − 500x − pN
二浦屋のラーメンを消費した場合
 1000 − 500(1 − x) − pM
三浦屋のラーメンを消費した場合
(1)
上述の設定の下で二浦屋・三浦屋は同時手番で価格を設定すると仮定する.各消費者は提示された価格を見た上で二
浦屋・三浦屋のどちらで食べるかを決める.食べに行かない or 二杯以上食べる等は行わないと仮定する.以下の問い
に答えよ.
(1) この駆け引きの状況を同時手番ゲームとして定式化せよ.ただし両社の直面する需要関数については DN (pN , pM ),
DM (pN , pM ) で表わしたままで良い.
(2) 二浦屋と三浦屋のラーメンが無差別となる消費者を “消費者 x
ˆ”と呼称する.x
ˆ の具体的な値を求めよ.ただし両
企業のラーメンの価格の差は 500 円以内であると仮定してよい.
(3) (2) の結果を踏まえた上で,二浦屋・三浦屋の利潤関数 πN (pN , pM ) と πM (pN , pM ) をそれぞれ求めよ.ただし引
き続き両企業のラーメンの価格の差は 500 円以内であると仮定してよい.
1
(4) (3) の結果を踏まえた上で,利潤最大化の一階条件から二浦屋・三浦屋双方の最適反応 PN (pM ), PM (pN ) を求め
よ.ただし引き続き両企業のラーメンの価格の差は 500 円以内であると仮定してよい.
(5) (4) の結果を踏まえた上で,このゲームのナッシュ均衡価格を求めよ.併せて二浦屋・三浦屋双方のナッシュ均衡
利潤も求めよ.
(6) (5) の結果は同質財のベルトラン競争の結果と比較してどのように変化したか,またその直観的な理由は何か,そ
れぞれ簡潔に述べよ.
4.3 (製品差別化財のベルトラン競争)
4.2 と同様に二浦屋と三浦屋のベルトラン競争を考察する.ただし,ラーメンの味以外の部分で消費者は二浦屋の方を
三浦屋よりも高く評価している.(例えば二浦屋の方がサービスが行き届いている等) そのため各消費者がラーメンの
消費から得られる満足度が二浦屋と三浦屋で異なっている.具体的には二浦屋のラーメンからは 1500 の満足度を得ら
れるが,三浦屋のラーメンからは 1000 の満足度を得るものとする.したがって消費者 x が二浦屋・三浦屋それぞれ
のラーメン消費から得る効用は以下の式で表わされる.


ux =
1500 − 500x − pN
 1000 − 500(1 − x) − pM
二浦屋のラーメンを消費した場合
三浦屋のラーメンを消費した場合
(2)
その他の設定は 4.2 と同様であると仮定する.以下の問いに答えよ.
(1) このゲームにおけるナッシュ均衡を求めよ.また二浦屋・三浦屋双方のナッシュ均衡利潤を求めよ.ただし計算
の過程で無差別になる消費者 x
ˆ が 0 から 1 の間に必ず存在することを仮定してよい.
(2) 4.2 の結果と比較して二浦屋・三浦屋の利潤はどのように変化したか,またその違いの原因は何か,それぞれ簡潔
に述べよ.
(3) 社会余剰を最大化する,即ち効率性が実現するのは二浦屋・三浦屋の双方が限界費用と等しい価格を設定した場合
である.即ち pN = pM = 200 の状況である.この状況における二浦屋・三浦屋の直面する需要関数 DN (200, 200),
DM (200, 200) をそれぞれ求めよ.
(4) ナッシュ均衡で二浦屋・三浦屋の直面する需要関数 DN (p∗N , p∗M ),DM (p∗N , p∗M ) をそれぞれ求めよ.(p∗N , p∗M は
二浦屋・三浦屋のナッシュ均衡価格を表わす)
(5) (3) と (4) の結果を比較し,その違いを簡潔に述べよ.また何故そのような違いが発生したのか,直観的に説明
せよ.
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