(崩壊熱の例)filename=decay-heat-Pu239-qa141029A.tex 原子核 239 94 Pu は,核分裂性の核として知られているが、α 粒子も放出する。この α 粒子 の運動エネルギー Eα は Eα = 5.3 MeV であり、原子核 239 94 Pu の α 崩壊の半減期 T は T = 24000 y である。1 年間に 1 kg の 239 94 Pu の α 崩壊によって発生する熱エネルギーを以 下の手順に従い、J 単位で計算せよ。ただし、簡単のため、関連する運動エネルギーはす べて熱エネルギーに転化し、この α 崩壊の後に起こる放射性崩壊の影響は無視する。ま た、アボガドロ数 NA = 6 × 1023 /mol、1 MeV = 106 eV = 1.6 × 10−19 × 106 J, ln 2 = 0.693 を用いよ。 (a) 1 回の α 崩壊により発生する全運動エネルギー (=崩壊熱)K を計算せよ。 (b) 1 kg の Pu 中の 239 94 Pu 核の個数 N0 を計算せよ。 (c) 1 年間に崩壊する 239 94 Pu 核の個数 ∆N を計算せよ。 (d) 1 年間に 1 kg の 239 94 Pu の α 崩壊によって発生する熱エネルギー E を計算せよ。 [解答例] (a) この α 崩壊により生じる娘核 235 92 U の質量を M 、速度を V 、α 粒子のそれら をそれぞれ mα , vα とする。全運動エネルギー (=崩壊熱)K は次のように表さ れる。 1 1 K = mα vα2 + M V 2 . 2 2 (1) 元の原子核 239 94 Pu は静止していたと考えると、運動量保存則が成立する。α 粒子と娘核 U が直線上を逆向きに運動すると考えて一般性を失わないので 0 = mα vα + M · (−V ) (2) が成り立つ。式 (2) より、V = mα vα /M を式 (1) に代入すると K = mα 1 m 1 mα vα2 + mα vα2 = (1 + )Eα 2 M 2 M (3) となる。題意より Eα = 5.3 MeV, mα /M ≈ 4/235 = 0.017 であるから K = 1.017 × (1.6 × 10−19 × 106 J) = 1.63 × 10−13 J (4) となる。(備考:この値だけでは極めて小さく無視できるように見える!) (b) 題意より、239 94 Pu のグラム原子量が約 239 g であるから、N0 は N0 ≈ 1 kg × NA = 2.51 × 1024 . 239 g 1 (5) (c) 核の初めの個数を N0 、崩壊定数を λ とすると、時刻 t における個数 N (t) = N0 e−λt となるので 239 94 Pu ∆N ≡ N0 − N (t) = N0 (1 − e−λt ) ≈ N0 λt = N0 = 2.51 × 1024 × 0.693 × ln 2 · t T 1y = 0.725 × 1020 . 24000 y (6) ここで、近似公式 ex ≈ 1 + x (|x| << 1 の場合) を用いた。 (d) 以上の結果より、全熱エネルギー E は E ≡ ∆N × K = (0.725 × 1020 ) × 1.63 × 10−13 J = 1.18 × 107 J (7) となる。 2
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