高次方程式

高次方程式
数学 II・B 授業ノート
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1 1 の立方根
一般に x の整式 P (x) が n 次であるとき,方程式 P (x) = 0 を n 次方程式という.また,n が 3 以上の方程式を
高次方程式という.
3 次方程式
x3 = 1
の解を考えてみよう.
x3 − 1 = 0
とすれば,左辺は
(x − 1)(x2 + x + 1) = 0
と因数分解できる.したがって,この方程式の解は,
x − 1 = 0,
または
の解である.したがって,
x = 1,
x2 + x + 1 = 0
√
−1 ± 3i
2
である.
一般に,方程式 x3 = a を満たす x を a の立方根または 3 乗根という.以上のことから,1 の立方根は
√
√
−1 + 3i
−1 − 3i
1,
,
2
2
の 3 つである.1 の立方根のうち,虚数であるものの一つを ω と表す.また,1 の立方根について,次のことがら
が成り立つ.
✓
✏
1 の立方根の虚数であるものの一つを ω とするとき,
1. 1 の立方根は,1,
ω,
ω 2 である.
2. ω = ω 2
3. 1 + ω + ω = 0
✒
✑
2 高次方程式の解法
高次方程式は主に因数分解を用いて,その解を求めることが多い.
• x4 − 2x2 − 3 = 0 の解を求めてみよう.
1
左辺を因数分解して
(x2 − 3)(x2 + 1) = 0
よって,
x2 − 3 = 0,
であるから,方程式の解は
または
√
x = ± 3,
x2 + 1 = 0
x = ±i
である.
• x3 − x2 − 2x − 12 = 0 の解を求めてみよう.
P (x) = x3 − x2 − 2x1 2 とすると,P (3) = 0 だから,P (x) は x − 3 を因数にもつ.そこで,P (x)
を x − 3 で割ると,
したがって,(x − 3)(x2 + 2x + 4) = 0 だから,
x − 3 = 0,
または
x2 + 2x + 4 = 0
であり,求める解は,
x = 3,
−1 ±
√
3i
である.
例えば,3 次方程式 (x − 1)2 (x + 1) = 0 の解 x = 1 を,この方程式の 2 重解という.また,3 次方程式 (x − 3)3 = 0
の解,x = 3 をこの方程式の 3 重解という.すなわち,Q(x) ̸= 0 として,方程式 (x − α)n Q(x) = 0 の解,x = α
を n 重解という.
2 次方程式の重解を,重複した 2 つの解と考えて,これを 2 個と数えれば,2 次方程式は複素数の範囲でいつで
も 2 つの解をもつ.
また,n 重解を重複した n 個の解と見れば,n 次方程式では,複素数の範囲で常に n 個の解をもつことが知ら
れている.
3 3 次方程式の解と係数の関係
一般に,係数が実数である方程式の解に,虚数解 a + bi をもつならば,それと共役な複素数 a − bi も解にもつ.
たとえば,a,b,c,d を実数とした 3 次方程式,
ax3 + bx2 + cx + d = 0
の解を α とすると,
aα3 + bα2 + cα + d = 0
2
が成り立つ. すなわち,
aα3 + bα2 + cα + d = 0
aα3 + bα2 + cα + d = 0
a ̸= 0,b,c,d を定数とした 3 次方程式
ax3 + bx2 + cx + d = 0
の 3 つの解を α,β ,γ とする.このとき,因数定理から
ax3 + bx2 + cx + d = a(x − α)(x − β)(x − γ)
となる.よって,
(
b
c
d
a x + x2 + x +
a
a
a
3
)
{
}
= a x3 − (α + β + γ)x2 + (αβ + βγ + γα)x − αβγ
なので,左辺と右辺の係数を比較すると,次の 3 次方程式の解と係数の関係が成り立つ.
✓
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3 次方程式 ax3 + bx2 + cx + d = 0 の 3 つの解を α,β ,γ とすると,
b
α+β+γ =− ,
a
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αβ + βγ + γα =
c
a
,
αβγ = −
d
a
• 3 次方程式 x3 + 4x + ax + b = 0 が −3 と 1 を解にもつとき,定数 a,b と他の解を求めてみよう.
他の解を γ とすると,解と係数の関係から,
−3 + 1 + γ = −4
γ = −2
よって,他の解は −2 である.同様に,
(−3) · 1 + 1 · (−2) + (−2) · (−3) = a
a=1
(−3) · 1 · (−2) = −b
b = −6
である.
• 3 次方程式 x3 − 3x + ax + b = 0 が 1 + 3i を解にもつとき,実数 a,b の値と他の解を求めてみよう.
1 + 3i を解にもつから,これと共役な 1 − 3i も解にもつ.ここで,もう一つの解を γ とすると,



(1 + 3i) + (1 − 3i) + γ = 3


(1 + 3i)(1 − 3i) + (1 + 3i)γ + γ(1 − 3i) = a



 (1 + 3i)(1 − 3i)γ = −b
が成り立つ.したがって,これを解いて,
γ = 1,
a = 12,
b = −10
すなわち,
a = 12,
b = −10,
となる.
3
他の解は 1 − 3i,
1
✑
4 演習問題
1. 1 の立方根のうち,虚数であるものの 1 つを ω とするとき,次のことが成り立つことを確かめよ.
(a) 1 の立方根は,1,
ω,
ω 2 である.
(b) ω = ω 2
(c) 1 + ω + ω = 0
2. 1 の立方根のうち,虚数であるものの 1 つを ω とするとき,次の値を求めよ.
(a) ω 1 4 + ω 7 + 1
1
(b) ω 2 + 2
ω
3. 次の方程式の解を求めよ.
(a) x3 = 125
(b) x4 − 3x2 + 2 = 0
(c) x3 − 4x2 + 9x − 10 = 0
(d) x4 − x3 − 11x2 + 9x + 18 = 0
4. a,b を実数として,3 次方程式 x3 + ax2 + bx − 6 = 0 が 1 + 2i を解にもつとき,定数 a,b と他の解を求
めよ.
5. 4 次方程式 x4 − 3x2 + ax2 + bx − 4 = 0 の解のうち,その 2 つが 1 と 2 であるとき,定数 a,b の値と他の
解を求めよ.
6. 3 次方程式 x3 − x2 + (a − 2)x + a が 2 重解を持つとき,定数 a の値を求めよ.
4