EL14012 iCAP Qs ICP-MSによるSiマトリックス試料中の極微量元素分析

Technical Note EL14012
iCAP Qs ICP-MSによる Siマトリックス試料中の
極微量元素分析
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
キーワード
【Siマトリックス濃度による影響評価】
ICP-MS /極微量分析/ Siマトリックス/コールドプラズマ/安定性試験
概要
Siマトリックスによる不純物元素の信号強度に対する減感の影
響を確認するため、1 µg/Lの標準溶液に Siマトリックスを添加し
た試料溶液を測定し、各元素の信号強度を比較しました。
このテクニカルノートでは、
Thermo Scientific™ iCAP™ Qs ICP-MSを用いた Siマ
トリックス試料中の極微量金属元素分析について、その検出性能と安定性を報告し
ます。
表1:メソッドパラメーター
パラメーター
試験の目的
半導体分野の極微量分析では、シリコンウェハー中の不純物分析
など、Siマトリックス 試 料の 測 定が 不 可欠です。ここでは HF/
H2 O2液性の Siマトリックス試料中の Ti、Fe、Ni、Co、Mo、Wの6元
素について、
2時間連続測定を実施して、その検出性能と長時間安
定性を評価しました。また、
iCAP Qs ICP-MSのコールドプラズ
マが Siマトリックスの影響により感度低下などの影響を受けない
ことを実証しました。
測定試料
下記の Siマトリックス試料を調製しました。
【連続測定における安定性評価用】
・検 量 線 試 料:HF/H2 O2液 性、
0、1000 ng/L( Ti、Fe、Ni、Co、
Mo、Wの6元素)
・連続測定試料:HF/H2 O2液性 Si 500 mg/L試料に各元素の標
準溶液を添加したもの
(添加量:各元素50 ∼ 100 ng/L相当)
【Siマトリックス濃度による影響評価用】
・25元素の標準溶液1 µg/Lに Siマトリックスを添加したもの(Si
濃度0、100、500、1000 mg/L )
装置と機器構成
iCAP Qs ICP-MSと ESI社製 SC-2 DXオートサンプラーを用い
て、連続測定を行いました。
主な試料導入系の構成と機器パラメーターを表1に示します。元
素によってコールドプラズマモードと He KEDモードを切り替え
ながら、測定を行いました。
試験内容
【連続測定における安定性評価】
最初に検量線を作成し、
その後、
Siマトリックス試料(500 mg/L)
を50試料分連続測定して安定性評価を行いました。
ネブライザー
スプレーチャンバー
インジェクター
インターフェイス
測定モード
高周波出力
設定
PFA100ネブライザー(自然吸引)
PFA製サイクロン型
サファイア製 内径2.0 mm
Ptチップ高感度分析用
コールドモード He KEDモード
530 W
1550 W
1.1 L/min
0.8 L/min
コリジョンセルガス
流量
―
4.2 mL/min(He)
KED設定電圧
―
+3 V
ネブライザーガス
流量
表2:HF/H2 O2液性における検出限界(DL )
およびバックグラウン
ド相当濃度(BEC )
測定元素
同位体
測定モード
Ti
Fe
Ni
Co
Co
Cu
Mo
W
48
56
58
59
59
65
95
182
KED
Cold
Cold
Cold
KED
Cold
KED
KED
DL
BEC
(ng/L )
(ng/L )
1.8
0.8
0.3
0.6
11.2
0.9
0.4
0.7
3 .9
0.5
2.1
0.3
0.7
1.1
0.9
0.2
(DLと BECは測定試料中不純物量や測定環境に依存します)
結果
今回の検量線試料の測定より得られた各元素の検出限界(DL )
とバックグラウンド相当濃度(BEC )を表 2に示します。いずれの
元素もシングル ng/Lの検出限界値が得られ、HF/H2 O2液性にお
す。Si濃度(0 ∼ 1000 mg/L )によって大きく感度が変動するこ
となく、安定した結果が得られることを確認しました。コールドプ
ラズマに Siの高マトリックス試料を導入しても、高感度分析でき
いて極微量分析が可能であることを確認しました。
ることが実証できました。
Siマトリックスを500 mg/L含む試料の安定性評価の結果を図1
まとめ
に示します。不純物元素の定量値は100 ng/L 未満の低濃度であ
るにもかかわらず、
50試料の測定値の相対標準偏差は10 %未満
であり、長時間安定性が確認されました(表3)。これにより、コー
ルドプラズマに Siマトリックス試料を導入しても十分な感度と安
定性が得られること、および2条件の切り替え測定の再現性も優
Technical Note EL14012
Siマトリックス濃度の異なる標準溶液の測定結果を図2に示しま
iCAP Qs ICP-MSは、HF/H2 O2液性や Siマトリックスを高濃度
で含有する試料に対しても、
ng/Lレベルの極微量分析が可能で
す。オートサンプラーを使用したルーチン分析に対して、非常に安
定した極微量分析を提供します。
れていることを実証しました。
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図1:Siマトリックス500 mg/L試料の50回連続測定結果
表3:Siマトリックス 500 mg/L試料の50回連続測定の安定性
測定
平均値
標準偏差
モード (ng/L )
RSD
測定元素
同位体
Ti
Fe
Ni
Co
48
56
58
59
KED
Cold
Cold
KED
43 .9
46 .9
81.5
43 .2
3 .2
1.8
3 .8
2.3
7.4
3 .8
4.6
5.4
Co
Cu
Mo
W
59
65
95
182
Cold
Cold
KED
KED
43.3
88 .0
56 .5
57.8
2.1
2.7
3 .0
2.4
4.9
3 .0
5.2
4.1
(% )
Si 0 mg/L試料における各元素1 µg/Lの信号強度を100 %と
して、Siマトリックス濃度を変えたときの信号強度比を回収率と
して表示
図2:Siマトリックス濃度による不純物検出感度の影響
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