Application Note iCAP Q ICP-MSを用いた 食品の多元素測定 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 エレメンタル営業部 EL12006 Key Words iCAP Q ICP-MS 食品 多元素分析 He KED はじめに 試料と検量線⽤標準液の調製 試料 検 線⽤標準液 製 食品中の有害元素、必須元素、栄養元素の測定は、こ シリアル食品、海産食品、乳製品、および認証標準物質 こ10年間、社会的に大きな関心を集めています。国連 (米粉[IRMM-804]、鶏肉[NCS ZC73016])など一連の 食糧農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)が 80種類の食品試料を調製し、今回提案するICP-MSによ 支援する政府間諸機関は、食品試料の分析について るメソッドを評価しました。密閉容器マイクロ波分解システ 標準的な試験法の開発を担っています。この規制を遵 ムにより、HNO3・HCl混酸を用いて試料約0.5 gを酸分解 守すると共に、産業公害や環境汚染、またはそれ以外 しました。測定対象元素に適切な濃度の検量線用標準 の一連の経路により、食物連鎖に入り込むと考えられる 液を、1% (v/v) HNO3液性で調製しました。内部標準法 有害な汚染物質をモニタリングする必要があります。有 を適用し、内部標準物質としてGa、Rh、Ir(それぞれ20、 害元素は、食物連鎖に入り込むと、健康に重大なリスク 10、10 μg/L)をネブライザーの前にT-pieceを介してオン をもたらす可能性があります。そのため、食品中の主要 ラインで添加しました。 元素と微量元素の濃度について、簡便かつ汎用的な 多元素分析メソッドを持つことが不可欠です。多くの元 素に対し広いダイナミックレンジを持つICP-MSは、食 品分析に特に適しており、微量元素レベルの汚染物質 分析条件 iCAP™ Qc ICP-MSは単 iCAP ICP-MSは単一のKEDモードで操作し のKEDモ ドで操作し、表1 表1 のパラメータを用いました。 と栄養素などの主要元素を同時に測定できます。 装置 測定には、Thermo Scientific iCAP Qc ICP-MSを用いま 表1 ICP-MS測定パラメータ パラメータ 高周波出力 設定 1500 W ネブライザーガス流量 0.90 L/分 却式(3°C)のバッフル付きサイクロンスプレーチャン 補助ガス流量 0 80 L/分 0.80 バー、PFAネブライザー、内径2.5 mm石英インジェク 冷却ガス流量 14.0 L/分 ター付きのセミデマンタブル式石英トーチです。ICP-MS セルガス流量 He 4.5 mL/分 は、運動エネルギー分別(KED)コリジョンモードの一 サンプル吸上げ時間/洗浄時間 各 45 秒 した。使用した試料導入システムの構成は、ペルチェ冷 モードで操作し、コリジョンガスとして純Heを用いました。 積分時間 いずれの試料も、ESI社製SC4 DXオートサンプラーを用 ピークあたり測定ポイント数 1 いて導入しました。 て導入しました。 試料あたりの繰り返し測定回数 3 総測定時間(1試料あたり) 元素ごとに最適化 3分 結果と考察 表2 iCAP Qc He KEDモードで得られる 食品分析におけるメソッド検出限界(MDL) 独自のThermo Scientific QCell flatapoleテクノロジーを 用 ることにより 単 用いることにより、単一のKEDモードでの測定が可能とな ドで 測定が可能とな 同位体 7 干渉多原子イオン --- 3 11 B --- 10 リーニングしなければならない食品分析においては、大 23 Na --- 0.3 (mg/L) きなメリットになります。従来のICP-MSでは、全質量範囲 25 Mg の多元素分析に単一のHe KEDモードを用いると、Liな 31 ど低質量の元素については感度が低く、その結果、十分 34 な検出限界が得られませんでした。しかし、iCAP Qc S 39 ICP-MSをHe KEDモードで用いれば、低質量でも、食品 K --- 44 Ca --- ります。単一の分析モードを用いることにより試料のス ループットは大幅に向上し、多数の試料を迅速にスク 試料の正確な多元素分析のために十分な感度が得られ ます。 Li MDL(μg/L) 52 55 表2に今回のメソッドを用いて得られるメソッド検出限界を 示します。今回の分析に求められる希釈係数が1:100で 56 --14 P Cr 16 12 + N OH 16 40 0.01 (mg/L) 1 18 O O + 35 16 0.6 (mg/L) + 9 (mg/L) 0.5 (mg/L) 0.2 (mg/L) 1 + 36 16 Ar C 、 Cl O H 、 Ar O Mn Fe 40 14 1 + 40 15 + + Ar N H 、 Ar N 40 16 + 40 16 Ar O 、 Ca O Ni Cu 検出限界は、食品分析に求められる目標レベルを十分 66 Zn に下回ります。 75 図1および図2に、iCAP Qc ICP-MSのHe KEDモードで 78 同時に測定した、高濃度元素(Na:0~100 mg/L)および 88 低濃度元素(Li:0~100 μg/L)の外部検量線の例を示し Sr --- 98 ます ます。 Mo --- 1 111 Cd --- 0.3 138 Ba --- 0.3 141 Pr --- 0.02 208 Pb --- 0.1 また、認証標準物質である米粉と鶏肉の測定結果を表3 および表4に示します。分析した2種類の標準物質では、 すべての元素について、測定値と認証値は良く一致しま した。 図1 --- 2 0.8 --- 2 As 40 35 + Ar Cl 0.2 Se 38 40 + 1 Na(0~100 mg/L)の検量線 図2 Ca O + 4 65 限界はすべての元素で容易に達成され、主成分元素の 16 1 60 あることを考慮すると 表2より μg/Lレベルのメソッド検出 あることを考慮すると、表2より、μg/Lレベルのメソッド検出 44 + 0.2 Li(0~100 μg/L)の検量線 Ar Ar Qtegraソフトウェアの画面 Qtegraソフトウェアの画面 0.1 表3 認証標準物質 IRMM-804 (米粉)の分析結果 検量線チェック用標準液(CCV)と標準物質を、一連の測 定実行中に定期的に測定した結果、予想値に十分に一 認証値 致し、今回のメソッドの堅牢性が評価されました。8時間 35800 ± 470 34200 ± 2300 の分析中、一定の間隔を置いて、6つのCCV用標準液を Cu 2650 ± 30 2740 ± 240 66 Zn 23100 ± 270 23100 ± 1900 誤差を図3に示します。今回の分析全体を通じたCCVの 75 As 52.3 ± 0.8 49 ± 4 結果、食品試料のバッチ間のドリフトが最小限に抑えら 78 Se 35.1 ± 1.0 38(参考値) れたことから、8時間の分析時間内に、感度の変化による 1620 ± 9 1610 ± 70 検量線の再作成は必要としないことがわかります 検量線の再作成は必要としないことがわかります。 460 ± 8 420 ± 70 同位体 55 Mn 65 111 Cd 208 Pb 測定値 (希釈率補正値。濃度の単位はすべてng/g) 分析しました。高濃度、低濃度のさまざまな元素を対象 にした、CCV用標準液の平均濃度と分析実行時の相対 iCAP Qc ICP-MSが高マトリックス試料の長時間連続測 定において安定かつ堅牢であることを示すため、今回の 分析全体を通じて、内部標準物質の絶対的な感度変化 表4 認証標準物質 NCS ZC73016 (鶏肉)の分析結果 と相対的なドリフトを評価しました。図4に分析実行中の 内部標準物質の信号のばらつきを示しました。内部標準 同位体 測定値 認証値 物質の強度について、試料によるばらつきが最小限に 7 28 ± 1 34 ± 7 抑えられているのに加え、8時間の分析終了までに内部 Li 11 B 730 ± 23 760 ± 130 標準物質の感度は基本的に変化しませんでした。この 23 Na (μg/g) 1310 ± 25 1440 ± 90 挙動から、食品試料の分析におけるマトリックス耐性と干 25 Mg (μg/g) 1200 ± 22 1280 ± 100 渉除去の両面で、iCAP Qc ICP-MSの優れた堅牢性が 31 P (μg/g) 8950 ± 220 9600 ± 800 明らかにされます。食品試料は、変動幅が広範な濃度で 34 S (μg/g) 8310 ± 220 8600 ± 500 39 K (μg/g) 14000 ± 480 14600 ± 700 44 Ca (μg/g) 200 ± 4 220 ± 20 590 ± 110 52 Cr 450 ± 10 55 Mn 1640 ± 20 1650 ± 70 56 Fe 32700 ± 260 31300 ± 3000 60 Ni 153 ± 2 150 ± 30 65 Cu 1350 ± 11 1460 ± 120 66 Zn 25300 ± 220 26000 ± 1000 75 As 115 ± 1 109 ± 13 78 Se 549 ± 11 490 ± 60 88 Sr 611 ± 11 640 ± 80 98 Mo 112 ± 1 110 ± 10 1610 ± 16 1500 ± 400 138 Ba 141 Pr 2.6 ± 0.1 2.8 ± 0.6 208 Pb 90.7 ± 2.0 110 ± 20 (希釈率補正値。記載のない元素の濃度の単位はng/g) 図3 分析中に測定したCCV用標準液結果 さまざまな元素を含有することが十分に認識されている 含 ため、干渉の除去は特に重要です。 EL12006 サーモフィッシャー サイエンティフィック株式会社 フリーダイヤル 0120-753-670 FAX 0120-753-671 E-mail [email protected] 図4 8時間の分析時間における内部標準物質の強度の径時変化 今回の検討内容のひとつとして、一連の分析中、標準物 質を繰り返し測定しました。各標準物質をそれぞれ5回 測定し、再現性を評価しました。これらの結果を表5およ 表6 標準物質 NCS ZC73016 (鶏肉)の再現性(n=5) び表6に示します び表6に示します。 表5および表6の結果から、標準物質を8時間の分析時 間中に複数回繰り返し測定した場合、優れた再現性が 同位体 7 標準偏差 %RSD 29 0.6 1.9 720 14 1.9 (μg/g) 1380 18 1.3 Mg (μg/g) 1170 13 1.1 P (μg/g) ( / ) 8700 150 17 1.7 S (μg/g) 8230 150 1.9 K (μg/g) 13800 240 1.8 44 Ca (μg/g) 196 3.3 1.7 52 Cr 440 4.2 0.9 55 Mn 1630 13 0.8 56 Fe 32600 225 07 0.7 60 Ni 149 1.2 0.8 65 Cu 1330 9 0.7 66 Zn 25200 150 0.6 75 As 114 1 0.9 の多元素分析に対して最適の装置です。装置の高い感 78 Se 550 8.9 1.6 度と堅牢性により、iCAP Qcでは、試料をシ Qcでは、試料をシンプルに酸 プルに酸 88 Sr 616 97 9.7 16 1.6 (日本) 分解しただけで、食品の主要成分と微量成分の定量を 98 Mo 113 2.1 1.9 (グローバル) He KEDのワンモードでルーチンに行うことができます。 138 iCAP Q ICP-MSのコリジョンセルテクノロジーにより、広 Ba 1620 23 1.4 141 範な種類の食品試料について、対象元素すべての一斉 Pr 2.5 0.04 1.6 208 Pb 89.8 0.9 1 達成され、RSDはすべての元素で2%未満でした。 表5 認証標準物質 IRMM-804 (米粉)の再現性 (n=5) 同位体 55 65 M Mn Cu 平均値 35500 2670 標準偏差 170 11 %RSD 05 0.5 0.4 66 Zn 23400 170 0.7 75 As 52.7 0.7 1.4 78 Se 111 208 Cd Pb 34.7 1630 490 0.5 11 39 3.9 1.3 0.7 08 0.8 (濃度の単位はすべてng/g) まとめ iCAP Qc ICP-MSは、複雑なマトリックスを持つ食品試料 分析が干渉フリーで効率的かつ正確に実施できます。 Li 平均値 11 B 23 Na 25 31 34 39 (記載のない元素の濃度の単位はすべてng/g) www.thermoscientific.jp www.thermo.com ©2012 Thermo Fisher Scientific Inc. 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