Motivation Engineering Report Vol.15

ベストモチベーションカンパニーは、理念によって
会社の「事業」と職場の「目標」と個人の「仕事」が束ねられている
1
はじめに
本レポートでは、2013年に弊社の「社員モチベーション調査(Motivation Survey)」を実施した企業147社(38,325人)
の調査結果のうち、「Best Motivation Company Award2014」でランキングトップ10に選出された企業の傾向と、
モチベーション指数(MI)が相対的に低かった企業の傾向をご紹介します。
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調査概要
社員モチベーション調査《Motivation Survey》とは?
調査概要
編集方法
社員のモチベーション状態を調査し、どんな要素が
モチベーションを高め、どんな要素がモチベーションを低めるのか
を明らかにするために、社員に対して実施する施策です。
回答結果は、重要度×満足度の2軸で整理された
「4eyes® Windows」(※2)で編集されます。
重要度も満足度も高い右上の象限が“強み”、
重要度は高いが満足度は低い左上の象限が“弱み”となります。
質問項目
モチベーションインデックス《MI》とは?
全体的な満足度を問う「総合満足度」4問と、社員のモチ
ベーションの源泉となる「モチベーションファクター」128問(※1)
から構成されています。モチベーションファクターは、その要素が
「どのくらい重要か(=重要度)」「どのくらい満足しているか
(=満足度)」について、「非常に重要(満足)である(5)」から
「全く重要(満足)でない(1)まで5段階で回答します。
モチベーションインデックス(MI)とは、社員モチベーション調査
の結果を基に判定される組織のモチベーション指数です。
MIは「組織への期待度(重要度)」「組織への満足度」
「その一致度合い」などから総合的に算出されます。
<本レポートの対象データ>
◆データ数 :147社(38,325人)
◆収集期間 :2013年1月~2013年12月
®
(※1) ・・・ モチベーションファクター
会社項目
(※2) ・・・ 4eyes Windows
上司項目
A 会社基盤
財務状況などが安定して
いるか?
I 情報提供
情報を自分の言葉で
語ってくれるか?
B 理念戦略
組織の理念やビジョンに
共感できるか?
J 情報収集
メンバーの状況を把握して
くれるか?
弱み
強み
C 事業内容
事業の意義や将来性を
感じられるか?
K 判断行動
適切な判断や評価をして
くれるか?
社員が求めているものと
会社が与えているものが
合致している
D 仕事内容
仕事を通じてやりがいを
感じられるか?
L 動機形成
動機付けに気を配ってくれる
か?
社員が求めているものと
会社が与えているものが
乖離している
E 組織風土
組織の体質に馴染めるか?
F 人的資源
魅力的な人がいるかどうか?
G 施設環境
働く環境が快適かどうか?
H 制度待遇
評価や待遇が公平・適切
か?
職場項目
M 顧客接続
お客様を優先する職場で
あるか?
N 目標達成
職場の全員が全力を投じて
いるか?
O 意欲相乗
お互いの意欲を喚起し合って
いるか?
P 業務効果
効率的に業務を進めて
いるか?
1
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TOP10企業傾向
「Best Motivation Company Award2014」でランキングトップ10に選出された企業は、
【B.理念戦略】 【C.事業内容】 【D.仕事内容】 【N.目標達成】の項目が、MIの高さを牽引していました。
具体的には、「理念や戦略の発信と伝達が密にされている」「事業に優位性があり、成長性も感じられる」「仕事で自分の能力や
個性を発揮できる」「職場で目標が共有され、全員が全力を投じている」などの項目です。
これらの特徴をまとめると、「未来への明確な指針」・「職場での高い目標共有度」・「手触り感のある仕事内容」という
キーワードがトップ10企業に共通する要素だと考えられます。
理念・戦略を明確に示し、職場内で密に目標を共有しながら、社員の個性や能力が仕事に発揮されやすい環境を整備する、
すなわち、理念によって会社の「事業」と職場の「目標」と個人の「仕事」が束ねられていることが、TOP10企業の特徴なの
かもしれません。
TOP10企業の特徴
理念や戦略の発信と伝達が密にされている
未来への明確な指針
事業に優位性があり、成長性も感じられる
職場の高い目標共有度
職場で目標が共有され、全員が全力を投じている
手触り感のある仕事内容
仕事で自分の能力や個性を発揮できる
⇒TOP10企業は、理念によって会社の「事業」と職場の「目標」と個人の「仕事」が束ねられている
■トップ10企業一覧(2013)
総合満足度(TOP10企業傾向)
社名
会社満足度
3.6
1
株式会社スーパーホテル
仕事信頼度
3.6
2
イングホールディングス株式会社
3
株式会社ウィルゲート
4
株式会社アップガレージ
5
株式会社ネクスト
6
佐竹食品株式会社 株式会社U&S
7
株式会社ゼンリンデータコム
8
株式会社横浜DeNAベイスターズ
9
株式会社アクトコール
上司信頼度
3.9
職場満足度
®
3.6
1
2
3
4
5
4eyes Windows(TOP10企業傾向)
重要度 高
10 三木楽器株式会社
満
足
度
高
満
足
度
低
【重要度・満足度が高く、
MIの高さを牽引していた項目】
B.理念戦略
C.事業内容
D.仕事内容
N.目標達成
重要度 低
2
4
低MI企業傾向
低MI企業は、【B.理念戦略】 【E.組織風土】 【F.人的資源】 【N.目標達成】の項目がMIの低さに強く影響していました。
具体的には、「企業理念や当面の戦略が社員に浸透していない」「全社的な連帯感がない」
「適切な配置・採用を行えていない」「職場メンバーが切磋琢磨せず、目標達成意欲も低い」などの項目です。
これらの特徴をまとめると、「不透明な会社の指針」「人的つながりの希薄化」「職場の目標達成意欲の欠如」というキーワードが、
低MI企業に共通する要素として浮かんできます。
理念戦略など自社としての指針が曖昧で、社内の人的つながりも弱く、職場の目標達成意欲も低い、
すなわち、会社の指針が不明確で、時間的(現在-未来)つながりや、空間的(社員間・部署間)つながりが
弱くなっていることが、低MI企業の特徴と言えるかもしれません。
低MI企業の特徴
企業の理念や戦略が社員に浸透していない
不透明な会社の指針
適切な配置・採用を行えていない
人的つながりの希薄化
全社的な連帯感がなく、職場メンバーも切磋琢磨していない
職場の目標達成意欲の欠如
職場の目標達成意欲が低い
⇒低MI企業は、会社の指針が不明確で、時間的つながり(現在-未来)や
空間的つながり(社員間・部署間)が弱くなっている
総合満足度(低MI企業傾向) n=39
会社満足度
2.8
仕事信頼度
3.0
上司信頼度
3.2
職場満足度
®
2.9
1
2
3
4
5
4eyes Windows(低MI企業傾向) n=39
重要度 高
【重要度・満足度が低く、
MIの低さに強く影響していた項目】
B.理念戦略
E.組織風土
F.人的資源
満
足
度
低
満
足
度
高
N.目標達成
重要度 低
3
5
考察 モチベーションカンパニーを創るために
TOP10企業と低MI企業の差は、「求心力と遠心力のバランス」
今回の調査では、TOP10企業は、理念によって会社の「事業」と職場の「目標」と個人の「仕事」が束ねられていること、
ならびに低MI企業は、会社の指針が不明確で、時間的つながり(現在-未来)や空間的つながり(社員間・部署間)が
弱くなっていることが分かりました。これを受けて、弊社では、
TOP10企業と低MI企業との違いは、「組織に働く力学の求心力と遠心力のバランスの良し悪し」だと考えています。
昨今、多くの企業が「多様化するニーズへの対応」を理由に、現場が自立的に変化適応できるよう「遠心力」を強化していま
す。具体的には、高度化・複雑化する顧客ニーズ、業界の垣根を超えてグローバル規模で増加する競合対策(ニーズ)、
雇用形態や年齢・性別など属性が複雑化した個々の社員からの要請(ニーズ)などへの対応が挙げられます。
しかし、多様化するニーズに過度に対応した結果、本来意図していた役割分担や機能分化が、
役割の分断やコミュニケーション分断へとつながり、組織の疲弊と利益の喪失を招く事例が散見されます。
すなわち、環境変化が激しくなっている今だからこそ、盲目的に多様性の対応に追われるのではなく、今一度自分達の指針と
なる理念や戦略を見つめ直し、自分たちが何を目指し、どんな価値を、どのように創出するのかを明確にする重要性が高まって
いるのです。TOP10企業は、 多様化するニーズに対応しようと「遠心力」を働かせた結果、組織の疲弊と利益の喪失を招きやすく
なっている昨今の組織を、「求心力」となる理念を軸に見事に束ねている企業であると言えるのではないでしょうか。
必要なのは、理念の(再)構築・浸透と管理職の役割認識・視界の変革
では、求心力を回復させるにはどうすれば良いのでしょうか。月並みですが、我々リンクアンドモチベーションでは、
「理念の(再)構築・浸透」と「管理職の役割認識・視界の変革」の2つが鍵を握ると考えています。
一つ目の「理念の(再)構築・浸透」について、企業は環境変化に対して現場が自立的に変化適応できるよう「遠心力」を強化
するだけではなく、未来への指針(理念)を明確にする必要があります。さらに指針(理念)を一人ひとりの社員が
「認知」「理解」しているレベルではなく、「共感」「実践」できるレベルまで浸透させなければなりません。
その意味では、単なる数値目標や形骸化されたキーワードを飾るだけではなく、社員一人ひとりのモチベーションの源泉になる
自社独自の言葉を掲げ、その背景・コンテクストまで共有して、具体的行動を促すことが重要だと考えています。
また、二つ目の「管理職の役割認識・視界の変革」も、理念の浸透と密接につながります。単に言葉を掲げ、唱和させただけでは
モチベーションカンパニーを束ねる「求心力」には成り得ません。個々の社員が、理念を「共感」「実践」できるレベルまで高めるために、
現場の管理職の役割認識を、「短期利益を追求する業務管理者としての視界」から、「理念戦略を軸に経営と現場、自部署と
顧客・関連部署をつなぐ伝道師としての視界」へと転換させることが重要だと考えています。
多様化する社内外のニーズ対応や効率化を意識しつつ、日々の業績目標に追われて、つい視野が狭くなりがちな管理職に
対して、理念を軸とした伝道師としての役割認識を促すことが経営者のやるべきことであると言えるかも知れません。
本レポートが、モチベーションカンパニー創りのきっかけとなれば幸いです。
http://www.lmi.ne.jp/
株式会社リンクアンドモチベーション
モチベーションエンジニアリング研究所
所在地
発行責任者
問合せ先
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水田
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