マクロ経済分析 第 2 回 講義ノート 1/ 7 経済成長 2 2.0 今回のアウトライン A. マクロ経済学で重要な率の概念に親しむ B. 生産関数を理解し、具体的な演算ができる 2.1 経済成長とは A. 産業革命後の急激な経済成長とその多様性 B. GDP を一人あたりで見る (テキ スト p.54) C. 成長率と対数:なぜ率で見るのか? t 時点の GDP 成長率 = GDPt − GDPt−1 GDPt−1 (2.1) D. 平均的な率がわかると、成長経路が描ける t 時点の GDP = (1 + 成長率 g)t × 0 時点の GDP (2.2) E. 人口成長率を使っての計算:初期時点の人口 L0 、人口成長率 (年率) n 1. 1 年目の人口 L1 は? 2. 2 年目の人口 L2 は? 3. 100 年目の人口 L100 は? 4. t 年目の人口 Lt は? F. 数字を与えてみよう:初期時点の人口 L0 = 10、人口成長率 (年率) 0.1 1. 1 年目の人口 L1 は? 2. 2 年目の人口 L2 は? 3. 10 年目の人口 L10 は? Ver. 1.0 Masumi Kawade, 2014 マクロ経済分析 第 2 回 講義ノート 2/ 7 4. グラフにプロットしてみよう G. 対数:倍数の世界を和の世界に変換 1. 自然対数:ネイピア数 e = 2.71828 · · · を底とするのが一般 ln X = loge X (2.3) 2. 対数は掛け算を和、割り算を差、乗数を積に変える ln (X × Y ) = ln X + ln Y X ln = ln X − ln Y Y ln X a = a ln X (2.4) (2.5) (2.6) H. 対数を使って人口成長率を表現すると } { ln (1 + n)t × L0 = (2.7) I. 対数の世界で成長率一定のグラフを書くと直線になる (テキ スト p.60) 1. 米国の成長率は対数目盛で見れば直線 (テキ スト p.61) 2. 実は、成長率 n が 0 に近ければ以下の近似が可能 ln(1 + n) ≈ n Ver. 1.0 (2.8) Masumi Kawade, 2014 マクロ経済分析 第 2 回 講義ノート 3/ 7 J. たとえば、L0 と L10 がわかった場合、平均成長率を次のように求められる K. 次に、一人あたりの GDP の成長率が g 、人口成長率が n とすると、GDP の成 長率は、次のように表現できる { } ln (1 + n)t L0 × (1 + g)t Y0 = (2.9) L. 成長率はすべての国でほぼ一定か? 1. 成長の「収束 (convergence)」という考え方:高度経済成長が起き、その後 安定化 (テキ スト p.64) 2. ただし、低所得国で低成長もある (テキ スト p.66) Ver. 1.0 Masumi Kawade, 2014 マクロ経済分析 2.2 第 2 回 講義ノート 4/ 7 生産関数 A. 生産は経済活動の基盤であり、モデルの基礎 1. 生産関数は労働と資本、技術水準で決まると想定する 2. コブ=ダグラス型生産関数:扱いやすい関数であることも重要 Y = AK β L1−β (2.10) B. コブダグラス型の利点:規模に関して収穫一定 (Constant Returns to Scale) 1. 労働と資本を二倍にすると・ ・ ・ Y = A(2K)β (2L)1−β (2.11) 2. 規模に関して収穫逓減 [増](Decreasing[Increasing] Returns to Scale) C. コブダグラス型の利点:生産資源が労働と資本に完全に配分 Y = AK β L1−β = wL + rK (2.12) D. これを理解するために必要な限界生産物という考え方 1. 一単位の生産資源投入によってもたらされる生産の増分 2. 資本の限界生産物 (MPK:Marginal Product of Capital) は以下の通り MP K = Ver. 1.0 ) ∂Y ∂ ( = AK β L1−β = ∂K ∂K (2.13) Masumi Kawade, 2014 マクロ経済分析 第 2 回 講義ノート 5/ 7 3. 労働の限界生産物 (MPL:Marginal Product of Labor) は以下の通り MP L = ) ∂Y ∂ ( = AK β L1−β = ∂L ∂L (2.14) E. 市場の賃金や利子率がそれぞれ w, r の時、企業はどう考えるか F. もし、w = M P L, r = M P L ならばどうなるか wL + rK = M P L · L + M P K · K Ver. 1.0 (2.15) Masumi Kawade, 2014 マクロ経済分析 第 2 回 講義ノート 6/ 7 G. コブダグラス型の利点:一人あたり生産の議論に帰着 1. 資本装備率 k = K による表現 L Y = AK β L1−β (2.16) 2. 資本にかかる乗数 β が限界生産物逓減を表現 3. ただし、資本装備率では十分ではない (テキ スト p.106) H. コブダグラス型の利点:技術水準の考慮 1. 全要素生産性 (TFP:Total Factor Productivity) という指標 Y = AK β L1−β (2.17) 2. TFP の違いによる生産性の相違も大きい (テキ スト p.113) I. TFP は非常に広範な技術を考慮している 1. 人的資本、技術、社会制度、非効率、経済ショックとの相違 Ver. 1.0 Masumi Kawade, 2014 マクロ経済分析 2.3 第 2 回 講義ノート 7/ 7 以下の作業をしなさい A. 内閣府のホームページから、実質 GDP(年度・連鎖方式)、民間企業資本ストッ ク (現系列・取付・年度末 1-3 月)、就業者数(年度)を 1994 年から 2012 年ま で取りなさい 1. 資本装備率、労働分配率がどうなっているかを計算しなさい 2. 可能であれば、コブ・ダグラス型生産関数を使って回帰分析しなさい、な お、全てのデータを自然対数に変換して、定数項を用いながら、実質 GDP を資本ストックと、労働で回帰すれば良い B. コブ=ダグラス型生産関数を前提として、以下のことを検討しなさい Y = AK β L1−β (2.18) 1. β = 0.5, K = 1, K = 2, L = 1 の時の総生産と MPK をエクセルなどで求め なさい 2. β = 0.5, K = 1, K = 4, L = 1 の時の総生産と MPK をエクセルなどで求 め、1 のケースと比較しなさい 3. β = 0.3, K = 1, K = 2, L = 1 の時の総生産と MPK をエクセルなどで求 め、1 のケースと比較しなさい 4. 「コブ=ダグラス型生産関数の両辺を労働量 L で割ると MPK が求まる」、 この命題の真偽を確認しなさい Ver. 1.0 Masumi Kawade, 2014
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