W(z) = z + ln z

基礎流体解析 学期末試験問題(平成 25 年度、松井教員)
問 1 複素ポテンシャルが
W (z) = z + ln z
となる二次元ポテンシャル流れについて、以下の質問に答えなさい。
(1) 速度が 0 となる点(よどみ点)の位置を求めなさい。
(2) この流れの流線がどのような曲線になるか、概略を図で示しなさい。
問 2 図 1 のように、x 軸から角度 π/n の位置までの間の領域を二次元ポテンシャル流れが流れていると
する(図中の灰色の領域は壁面であるとし、n は実数であるとする)。この空間を z 空間と呼ぶことにし、こ
の流れを等角写像 ζ = z n を用いて解くことにする。以下の問いに答えなさい。
(1) 等角写像 ζ = z n により、z 空間の原点は ζ 空間のどこに写像されるか。
(2) 等角写像 ζ = z n により、z 空間の斜め壁面上の点 z = exp(iπ/n) は、ζ 空間のどこに写像されるか。
(3) 図 1 の z 空間における壁面が ζ 空間でどのような壁面に写像されるか、図で示せ。
(4) ζ 空間において、原点から十分はなれた x 軸付近 (ただし x > 0 かつ y > 0) では、x 方向流速が
u = −1、y 方向流速が v = 0 の一様流れになっているとする。このときの ζ 空間での複素ポテンシャル W (ζ)
を求めよ。
(5) z 空間における、小問 (4) の流れの複素ポテンシャル W (z) を求めよ。
y
π/n
x
図 1 z 空間
問 3 密度 ρ= 1000[kg/m3 ], 動粘性係数 ν= 1.0×10−6 [m2 /s] の流体の流れにおいて、壁面でのせん断応力
が τ0 = 10 [Pa] であったとする。この流れについての以下の問いに答えなさい。
(1) 摩擦速度を求めなさい。
(2) 壁面からの距離が y=0.02[mm] である位置における無次元距離 y + を求めなさい。
(3) 壁面からの距離が y=0.02[mm] である位置における流速 u を求めなさい。
問 4 水中ロボットが静止した水の中を動いているとき、このロボットに働く水からの抗力を減らすための方
法を、4 つ以上提案しなさい。なお最初の状態では、ロボットの壁面のある位置で層流はく離が生じていたと
する。
それぞれの方法がどのような理由で抗力を減少させるのかについても、簡潔に述べること。また提案する方
法には、このロボットの大掛かりな改造を含んでもよいものとする。
(以上)
回答
問1
W (z) = z + ln z
(1) よどみ点では速度が 0 であるので, 複素共役速度を求めると
dW
1
=1+ =0
dz
z
よって
z+1=0
z = −1
したがってよどみ点の座標は (-1,0)
(2) この流れは x 方向の一様流 (流速 1) と、原点からの吹き出しの合成である。
問2
(1) 0n = 0 より、原点に写像される。
(2) (exp(iπ/n))n = exp(iπ) = −1 より、点 (-1,0) に写像される。
(3) 正の x 軸上の点 (x,0) は、x 軸上の点 ((xn , 0) に写像される。よって壁面の領域は、y < 0 の領域に写
像される。
(4) 一様流とみなして、W (ζ) = −ζ
(5) 変換式から
W (z) = −z n
問3
(1) 摩擦速度の定義より
√
√
v∗ = τ0 /ρ = 10/1000 = 0.1[m/s]
(2) y=0.02[mm]= 2.0e-5 [m] における y + は
y + = yvs /ν = (2.0 × 10−5 ) × 0.1/1.0 × 10−6 = 2[−]
(3) これは粘性底層の領域である。
粘性底層では u+ = y + なので
u = y + vs = 2 ∗ 0.1 = 0.2[m/s]
問4
ロボットの一部を水中から出す(水にふれている面から抗力を受けるため)
移動速度を減らす。(抗力係数が同じでも、速度の二乗に比例するため。またはく離が生じなくなる可能性
もある。
)
流れ方向の投影面積を減らす。(抗力は投影面積に比例する)
形状を変更して流線形とし、はく離を防ぐ(壁面にそう圧力上昇を減らせば、はく離しにくくなる)
トリッピングワイヤなどで乱流遷移させ、はく離位置を後方にずらす(乱流境界層ははく離しにくい)
表面を磨き、摩擦を減らす。(はく離を防げば、あとは摩擦損失を減らせば抗力が減少する。)