Lo紀子さん

Lo紀子さん
NPO法人MAMA−PLUG代表
【略歴】
・慶應義塾大学総合政策学部
・金融関係企業勤務
・広告代理店勤務
・(香港)新聞社(日本語誌)勤務
・(香港)証券会社リサーチ部勤務
・IT企画会社勤務
・フリーランスライター
・起業
◎現在の仕事
NPO法人 MAMA-PLUG(ママプラグ)の理事長として、ママを中心としたすべての女
性と社会を「PLUG (つなげる)」ためのプロジェクトを展開しています。主な事業は、
女性が輝くための「キャリア支援事業」、防災力を楽しく身につける「ACTIVE防災事
業」と、ボ ラ ン テ ィ ア と し て の「被 災 母 子 支 援 事 業」の 3 本 で す。2013 年 か ら は、
「ACTIVE防災事業」が神奈川県のボランタリー活動推進基金21の協働事業に採択され、
5年間の計画で取り組んでいます。
◎これまでの道のり
(大卒後)
今、振り返ってみると、そのときどき紆余曲折があったものの、小学生のころ最初に
やりたかった「書く仕事」、結局ここに戻ってきたかなという感じがしています。
大学を卒業するときは、就職先としてマスコミか金融か迷っていました。金融の営業
というのは、他業種の営業と違って、無いものを売る、自分で表現するというところが
あって、その意味ではマスコミも金融も私にとっては同じでしたので、そちらを選びま
した。
そこでの経験は、私のその後のキャリアには非常に役立ったのですが、やはり書く仕
事がしたくなって、出版社に移りました。当時、第二新卒という扱いはなかったので、
既卒としてそれまでの経験を問われ、「営業できます」ということで入りました。社内
転換を目指して、「書く仕事をやりたい」という思いで企画書をどんどん出していたと
ころ、そのうちの1つの企画が採用され、やりたかった「書く仕事」に移っていくこと
ができました。
(香港へ)
当時地元の九州にいたのですが、知り合った編集の方に、「君の性格を考えると、香
港が合うよ」と言われたのがきっかけで、香港へ。最初は香港には興味がなかったので
すが、有給休暇をとって香港に行ってみたら、香港の人たちはエネルギッシュで、「自
分がいつも悩んでいることを、この人たちは悩まないんだ」という発見があり、「ここ
で暮らそう!」と決めました。
最初は日本の新聞社の記者として働いていたのですが、やはり現地の企業で働きたい
と思い、金融のキャリアと香港での記者の経験を生かして、証券会社のリサーチの仕事
に移りました。
今振り返ると、そのときどきに自分に足りないものを求めて転職していたのだと思い
ます。
(再び日本へ)
香港で仕事をしている中で、日本で組織の動かし方を学びたいと思うようになりまし
た。その頃、30歳代前半だったので、日本の企業に就職するなら年齢的には今しかな
いかなと思い、日本に戻ってIT企業に就職しました。
ところが、長年にわたって寝ることも惜しみ、食べることも忘れて働いていたため
に、疲労の蓄積で体調を崩してしまいました。また、ちょうどその頃、妊娠したために
退職してフリーランスのライターとなりました。あのとき、妊娠して無理ができなく
なったことで、自分の体は大事に至らずに済んだのだと今になって思います。
(日本の女性が大変なことに・・・)
香港にいたとき、ちょうど日本で「負け犬論争」がマスコミで騒がれていたのです
が、香港の友だちから、「なぜそういう論争が起こるのかわからない」と言われて驚き
ました。香港では、子どもがいても夜でも食事に行ったりすることができたので、どの
人が結婚して子どもがいるのか忘れることもあるぐらいでした。香港で記者をしていた
際に、「ワーキングマザー」の特集を組もうとしたとき、そうした表現でカテゴライズ
することを不思議がられたこともありました。
一方で、独身で働く日本の友達からは、「キャリアを持っていても、日本では子ども
いないと駄目なのよ」と言われることもあって、このころ、「日本の女性は大変なこと
になっている!」という問題意識が生まれました。
日本に帰ってきてから、まずは長時間労働が問題だと思いました。これでは子育てし
ながら働けないなと。キャリアの選択肢が狭いということも大きな課題でした。結婚、
出産しても、もし正社員で残りたかったら、何があってもしがみつけ、という状況が友
人の話などからも聞こえてきました。子どもがいる友人のクリエイターから、子どもが
いることを隠して仕事をしていると聞いて、仕事をしているものにとっては、子どもが
いることを悪いこととして隠さなければいけないという現実があることに愕然としまし
た。
そのころから、自分が生きたい生き方に合わせて仕事を創っていくことができればい
いなと思うようになりました。
(NPOの活動)
出産前は、ライターの仕事をしていたのですが、もともと得意にしていた「旅行」の
記事を書くことは、子どもがいたらまず無理です。そんな中で自分のキャリアをこれか
らどうしていこうと考えていたときに、「子育て」をテーマにしてしまおうと思い立ち
ました。私は子どものことを何にも知らなくて、自分で勉強しなければならないと思っ
ていたので、それを自分の専門分野にしてしまえば、一石二鳥だと。実際いろいろ調べ
ているうちに、本も書かせていただくようになりました。
そういう経験をもとに、子育てで一度仕事を辞めると正社員として戻るのが難しいと
したら、会社勤めではないけど、内容や給与が正社員と同様の仕事を自分のワークライ
フプランにあわせて創り出せればいいのではないかと考えて、「ママプラグ」という事
業をプロジェクトとして立ち上げました。それが、トントンと任意団体になって、最終
的にはNPOの設立につながっています。
NPOの事業である「キャリア支援事業」では、特に子育て中の女性が、自分のこれ
までのキャリアと今の現状を結びつけたところに仕事を創っていくことで、働きやすく
なるのではないかと提案しています。その講座事業として、去年は子育て中の女性を対
象に好きなことを仕事にするというプロジェクトを行い、実際に何人かの方がフリーラ
ンスでお仕事を始めたのですが、営業的な部分が得意な方とそうでない方で難しさがあ
るんだなという課題が残りました。
「ACTIVE防災事業」は、もともと行っていた被災地支援がきっかけとなりました。
現地の方々から被災体験をうかがう中で、女性やこどもの日常がどのように影響を受け
ているのかに気づかされ、そうした被災体験はとても貴重なお話だと思い、取材をし直
して、本を作りました。その中で、災害は防ぎようがないけれども、そのあとに起こっ
た様々なことは防げたのではないか、日常生活を守るとか、心を守ることはできたので
はないかという気づきもありました。また、防災が重要でないと思っている人はいない
のに、防災が普及していないという現実にも直面しました。それではどうしたら防災に
取り組みやすいか、ということを考えるのはクリエイターである私たちの得意分野であ
り、ママプラグの仕事だ、ということになって、防災訓練を親子で楽しく取り組めるよ
うにする「防災ピクニック」を提案した、というのが経緯です。
もう一つ、今年から始めた県との協働事業で、防災ファシリテーターの養成講座を始
めました。こういった防災のファシリテーターの仕事を、フリーランスの正社員のよう
な感じにしたいなと思っています。
(自主保育)
こうした事業の中で、ママプラグではすでに実践している「自主保育」という方法を
提案しています。ママプラグでは、預け先が見つからず、子連れではできない仕事をす
る際には、予定が空いている別のスタッフが子どものお世話をしています。子どもを預
けたメンバーは、ほかのメンバーにサポートしてもらっているという自覚があるからこ
そ仕事をより一層頑張るので、結果として成果をしっかり出しています。また、他のメ
ンバーの子どもを預かることで、子どもの商品を作る際の参考にもなるし、子どもに
とっても、いろいろな大人に見てもらえることは、とてもよいことだと思っています。
このように、自主保育をすることによって、保育園に入れなくても、仲間がいれば、
自分が納得する仕事が自分のライフプランに合わせてできるということで、講座の中で
提案させていただいています。
◎今後の目標
まずは、県との協働事業を5年間きっちりやっていきたいと思っています。講座に参
加してくださる方々のように、キャリアとしてファシリテーターをやっていきたいと
思っている皆さんにお仕事を回せるように、事業をしっかりと組み立てていきたいと考
えています。同時に、防災はテーマとしては重いのですが、事業としては気軽に参加し
たくなるような楽しい企画を作っていきたいと思っていま
す。
◎これからチャレンジする素敵な仲間たちへ
子育てで一度仕事を辞めて、再度仕事に復帰しようかと思っている方には、子どもが
いることのメリット・デメリットをまず書き出してみるということをお勧めします。そ
うした作業を通して、昔のキャリアを、少し視点を変えつつ、これからの仕事につなげ
ることができるのではないかと思っています。視点を少し広げることで、自分がやりた
い仕事、続けたいキャリアが何らかの形で続けられるのではないでしょうか。
その際、正社員がよいのか、起業、フリーランスがよいのかというのは、人によって
向き・不向きがあるのかなと思っています。私は、やってみてから考えるタイプなの
で、まずは事業を立ち上げてみて、そこの知識が足りない場合に後から補填していくと
いうスタイルなのですが、人によっては、起業するというのは、設立のための書類を作
成したり、設立の手続きをすることが最初のハードルとなってしまう可能性がありま
す。ハードルが高いなと感じたら、無理せず正社員で就職することを考えてみるとよい
かもしれません。どういう働き方がよいという答えはないので、まずは自分のやりたい
ことを探してみる。自分のやりたいことをやるということにこだわったうえで、どうい
う働き方がいいのかを探していかれたらよいかなと思います。