アイソトープ置換による LiCoO2 の結晶構造 茨城大学 平成 21 年度から 11 社の参加を得て Li イオン 電池材料の構造解析に関する共同研究を立上げ、 茨城県プロジェクト枠を利用して、 LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiMn2O4、LiFePO4 など合 計 10 種類の標準電池材料について中性子回折測 定を行いました。これらの材料のデータ解析を 茨城大学で行うとともに、参加各社においても 詳細な解析を進めています。 天然 Li 原子は、7.5% の 6Li と 92.5 %の 7Li で構成されています。 6Li は大きな中性子吸収 断面積 ( a=940/10-24 cm2)を有するため、通常よ り長い測定時間を必要とします。この吸収の影 響と測定時間との関係を調べるため、 LiCoO2 (Li: natural)と 7Li で置換した 7LiCoO2 を作製し、 iMATERIA を用いて同一条件下での測定を行い ました。図 1 に得られた回折プロフィルを示し ます。7LiCoO2 は、純度 99.9 %の Co3O4 と 7Li Min99at% 7Li の 7Li2CO3 から合成しました。 で置換した試料の場合は、天然 Li に比べ、ほぼ 半分の時間で Li 化合物の測定が可能であること が分かります。 12 回折強度 I (相対値) 中性子回折データを Z-Rietveld により解析した 結果を表1に示します。酸素原子の位置などに 少し差が生じていますが、LiCoO2 と 7LiCoO2 は ほぼ同一の格子定数、原子位置、熱振動因子を 有することが分かります。 Li 電池材料の構造解析を行う場合、Li をすべ て 7Li に置換することは、材料の純度や価格など の点で難しい状況にあります。J-PARC の加速器 の出力が上がると、1 試料あたりの測定時間が短 縮されるため、天然 Li を 7Li で置換する必要性 は小さくなると予想されます。 表 1 Z-Rietveld 解析結果 Li Co O a (Å) c (Å) BLi (Å2) BCo (Å2) BO (Å2) RWP(%) S 空間群:R-3m (No. 166-1) 7 LiCoO2 LiCoO2 3a 0 0 0 3a 0 0 0 3b 0 0 0.5 3b 0 0 0.5 6c 0 0 0.222(3) 6c 0 0 0.235(2) 2.815667(2) 2.815728(2) 14.05943(3) 14.05916(2) 0.790(7) 0.787(5) 0.127(4) 0.136(3) 0.222(3) 0.235(2) 5.98 5.82 2.36 2.73 7Li 10 中性子回折実験に利用した試料の作製および データ解析に協力いただいた茨城大学香蓮氏に 感謝致します。 天然Li 8 6 4 2 0 佐久間 隆 0 1 3 2 格子面間隔 d (Å) 4 図 1 iMATERIA による LiCoO2 と 7LiCoO2 からの 回折パターン 5
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