エネルギー等分配の法則と気体の比熱

物理学概論
2014.7.9
エネルギー等分配の法則と気体の比熱
1.熱エネルギーとは何か
エネルギーがすべてのミクロな運動の自由度に行き渡った状態をいう。
各自由度に蓄積されるエネルギーの実体は原子・分子の力学的エネルギー
(運動エネルギー+位置エネルギー)
各自由度の運動エネルギーに対して均等な配分がなされる。(エネルギー等分配の法則)
絶対温度Tとの関係:
1自由度あたりの運動エネルギー(時間的平均値)=(1/2)kT
2.物質の比熱の実測値
実験データ
<定積モル比熱>
-1
分子量
ヘリウム
3.152
4.00
12.61
アルゴン
0.313
39.95
12.50
N2
0.736
28.01
20.62
O2
0.660
32.00
21.12
Jg-1K-1
原子量
Jmol-1K-1
鉄
0.444
55.85
24.80
銅
0.385
63.55
24.47
気体の定積比熱
固体金属の比熱
Jg
-1
K
mol = NA(=6.022×1023
Jmol-1K-1
アボガドロ数)個の分子からなる気体の量
(分子量にg(グラム)をつけた質量を持つ。)
固体金属の場合はNA個の原子からなり,原子量にgをつけた質量を持つ。
気体定数
R=NAk=8.314J mol
-1
K
-1
3.気体の比熱
定積モル比熱
気体の体積を変えずに,1モルの気体の温度を1K上げるためには,
外部らどのくらいの熱エネルギーを投入する必要があるか,を示す。
温度の上昇により気体の圧力は変化(増加)する。
定圧モル比熱
気体の圧力を変えずに,1モルの気体の温度を1K上げるためには,
外部からどのくらいの熱エネルギーを投入する必要があるか,を示す。
気体の体積は変化(増加)し,これに伴い外部に仕事をする。この仕事
を賄うための熱エネルギー(R)だけ,定積モル比熱よりも大きい。
4.エネルギー等分配の法則に基づく比熱の理論
(1)単原子分子理想気体の定積モル比熱
1つの原子からなる系は3個の自由度をもつ。
→単原子分子1個あたりの自由度=3
→1分子あたりのエネルギー=3×(1/2)kT
→1モルの気体のエネルギー=NA×3×(1/2)kT =(3/2)RT
→1モルの気体の絶対温度を1K上げるために必要なエネルギー=(3/2)R
=12.47Jmol-1K-1
(2)2原子分子理想気体の運動の自由度と定積モル比熱
1つの原子からなる系は3個の自由度をもつ。
2つの原子からなる系は本来6個の自由度をもつ。
重心運動(3自由度)+相対運動(3自由度)
相対運動
①伸縮運動
1自由度 (この運動は非常な高温にならないと起きない。)
②回転運動
2自由度
→2原子分子1個あたりの自由度=5
→1分子あたりのエネルギー=5×(1/2)kT
→1モルの気体のエネルギー=NA×5×(1/2)kT =(5/2)RT
→1モルの気体の絶対温度を1K上げるために必要なエネルギー=(5/2)R
=20.79Jmol
-1
K
-1