第8回 研究所セミナー ■ 講師 理化学研究所 統合生命医科学研究センター長代行 小安 重夫 先生 ■ 日時 2014年4月21日(月) (無料) 17:00~18:00 ■ 場所 国立国際医療研究センター 研究所 B1F 大会議室A&B ■ 演題 アレルギー性炎症とナチュラルヘルパー細胞 これまでの自然免疫研究は、細菌感染やウイルス感染時に見られる、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞や それらが産生するIL-1bやインターフェロンなどの炎症性サイトカインが中心であった。一方、古くから寄生虫感染やアレ ルギー性疾患において、獲得免疫系とは独立に IL-5やIL-13などのTh2型のサイトカインが産生され、異なるタイプの 炎症が誘起されることが知られていたが、関与する細胞に関しての情報は極めて限られていた。 我々は、腸間膜に代表される脂肪組織中に、これまでに報告のないリンパ球集積を発見し、この組織をFALC (fatassociated lymphoid cluster) と名付け、さらにFALC中に大量の2型サイトカインを発現する細胞集団を見いだした。こ の細胞がIL-2によって増殖し、IL-5, IL-6, IL-13などの2型サイトカインを恒常的に発現する特徴を持つことから、ナ チュラルヘルパー(Natural Helper: NH)細胞と名付けた。寄生虫感染時には、傷害を受けた上皮細胞や内皮細胞から 産生されるIL-25やIL-33に反応してNH細胞は大量のIL-5やIL-13を産生し、好酸球増多や杯細胞過形成を介して寄 生虫感染における自然免疫において中心的な役割を果たす。一方、NH細胞は獲得免疫系の細胞にも作用し、NH細 胞から恒常的に産生されるIL-5やIL-6はB細胞によるIgA産生やB1細胞の維持に機能する。NH細胞は様々な2型の炎 症に関わる。我々は最近、ステロイド抵抗性の重症喘息にもNH細胞が関わることを見いだした。気道炎症時に上皮細 胞から産生されるThymic stromal lymphopoietin (TSLP)がNH細胞に対してステロイド抵抗性を付与すること、このメカ ニズムがStat5を介することから、Stat5の阻害剤がステロイド抵抗性の気道炎症の治療に有効である可能性を示した。 本講演では、NH細胞と炎症との関わりや他の自然免疫細胞との関わりについて、最近の知見も含めて紹介し、最近盛 んになった自然リンパ球研究についても概観したい。 主催:研究所長 清水孝雄 [email protected] EXT#3001
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