国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 研究所 基本方針2015

国立研究開発法人
国立国際医療研究センター
研究所
基本方針2015
平成27年4月1日
1
NCGM研究所の基本計画
Ⅰ.
2015∼
背景
1)ナショナルセンター(NC)は平成27年度より、「国立研究開発法人」へ移行し、
研究開発成果の最大化を目的とする組織となる。
2)国立研究開発法人の中で、病院を併設するのは6NC だけであり、そのミッション
は 基 礎 的 研 究 の 成 果 に 支 え ら れ 、 臨 床 に 直 結 す る 研 究 開 発 ( use-inspired basic
research)である。個々の教員の自由な発想に基づく医学研究を進める大学とは異な
り、NC は国の政策として優先すべき課題に沿った医療研究を継続的に展開する。
3)臨床研究や基礎的医学研究への期待と不信感が交錯する状況で、高い倫理観と研究
作法を身につけた医学研究者の育成と行動規範に沿った研究遂行が必要である。
4)運営費交付金削減など、財政状況の悪化の中で、自主財源・研究資金を獲得するこ
とが今後の研究の発展に必要である。
5)研究所は、若手活性化、人事流動化、研究部間の交流、共同研究の促進、外部との
連携・交流の促進など一定の改革を進めてきた。新法人へ移行するにあたり、新たな目
標設定、さらにそれを支える仕組みを作り、関係者の意識共有が必要と考えられる。
II.
研究所活動の基本方針
1)本研究所は NCGM の基本ミッションである「感染症、生活習慣病、肝炎・免疫疾
患」及びその稀少疾患の克服に向けた臨床研究に取り組み、基盤的研究、橋渡し研究、
開発研究を展開する。
2)特定の研究開発課題について研究成果の最大化を目的とし、「部門」、「チーム」を
機動的に編成する。明確な出口戦略と評価体制のもと、資源の有効活用により、病院診
療科や国際医療協力局と研究所の連携を強化して研究開発を進める。
3)臨床ゲノムコホート、メディカルゲノムセンターの基礎的解析部門を担当し、個別
化医療の推進により、超高齢社会の健康長寿の実現に尽力する。
4)研究遂行のために、競争的外部資金、民間資金を獲得し、産官学連携を進める。
5)NCGM のミッションの一つである国際連携、国際共同を推進するため、本研究所
の研究者は海外より情報(試料を含む)を集め、海外の研究者と共同研究を進め、また、
人材派遣や招聘を行い、国際保健医療の諸課題に応えていく。
6)前項に関連して、医療政策提言や開発途上国の Universal Health Coverage (UHC)
2
達成のため、臨床研究センターの社会医学部門、国際医療協力局の活動と協働する。
7)NCGM の重要なミッションの一つは、国際的視野と高い志を持った高度な医療従
事者や研究者の育成(人材育成)である。このために研究所は病院、臨床研究センター、
国際医療協力局と共同で様々な活動を行う。
8)研究計画の策定にあたり、平成26年2月に開催された外部評価の結果を参考にす
る。
また、本基本計画は4年を目処に見直しを行う。
III.
研究所活動の具体的計画
1.組織運営
1)研究所運営戦略室
研究所長、副所長、センター長・部門長(糖尿病研究センター長、肝炎・免疫研究セ
ンター長、メディカルゲノムセンター長等)と研究医療課長からなる運営戦略室を作り、
全体の研究方針、予算配分などを立案し、部長連絡会での審議の後、研究所長が決定す
る。
2)研究部体制について(基盤措置)
各研究部は1人の部長、1人の室長、1名の上級研究員と2名の研究員を基本構成単
位とし、部室長に一定額の基盤経費(庁費)を配分する。また、自ら確保した研究費に
よって特任研究員、技術補佐員等の雇用が可能である。特に優れた業績を挙げた研究員
は研究所長の承認のうえ、上級研究員とすることが可能である。
3)中堅研究員の戦略的配置
特任研究室長(独立室長)、主任研究員、上級研究員(公募枠)などの中堅研究者は
センター予算、外部資金獲得状況などを考慮し、企画経営部、人事課と協議の上、研究
所長が運営戦略室に提案する。運営戦略室で審議の上、公募を決定する。候補者の選考
は原則として部長連絡会で面接審議の上、研究所長が決定する。研究員の配置先につい
ては、研究所の戦略に基づくトップダウン的整備と、研究者自身の希望を重視するボト
ムアップ競争的整備の双方を行う。
4)常勤研究者の任期
部長任期は7年、特任研究室長、室長、主任研究員は5年任期を原則とする。上級研
究員は3年を任期とする。いずれも、改正労働契約法に基づき、評価、再公募の上で、
任期更新、無期雇用への移行を可能とする。
5)研究者の定年
3
研究所職員の定年は60歳である。ただし、余人を持って代えがたい人材に関して、
総長の諮問により定年延長の審議をすることが可能である。医療職職員に関しても、研
究所併任は60歳を限度とする。定年(併任)延長の可否については内規に従って、研
究所の審査委員による審査に基づき、センター「定年延長委員会」に報告し、決定する。
6)プロジェクト研究の設置
基盤的研究の発展や特定の課題遂行のために、5年間の「プロジェクト研究」を募集
することが出来る。プロジェクトは内規に従い、中間評価を行い、一回の延長を可能と
する。
2.情報共有(セミナー、会議等)について
1)研究セミナー
研究所セミナー、箱根山若手会などを月例で行い、夏期のリトリート、年末の総集編
と懇親会を開催する。また、各研究部、研究プロジェクトの内容を分かりやすく説明し、
研究課題を共有するセミナーFR (Fun of Research)を月例で行う。
2)部長連絡会
部長連絡会は部長、特任研究室長、プロジェクト長及び研究医療課で開催し、重要事
項の審議、報告、情報の共有を行う。
3)病院との連絡会議
月例で研究所・病院連絡会議を開く。病院主催の「リトリート」にも研究所員は積極
的に参加する。センター・部門は定期的にセミナー、会議を開催する。
4)教育セミナー
Physician Scientist を 初 め と す る 研 究 者 育 成 の た め 、 初 期 研 修 医 へ の early
exposure program (分子医学入門塾)、レジデント、フェロー向け研究所配属プログラ
ムを充実化し、また、研究所員対象に「英文論文書き方」「グラント書類の書き方」講
習会などを開催する。
上記の企画、運営は運営戦略室が行う。必要に応じて小委員会を設置する。
3.研究テーマの設定と評価方法
個々の研究部は病院、国際医療協力局などと連携し、以下の目標に沿って、平成27
年度からの5年間の研究を進める。4年後に「外部評価委員会」を開き、その結果に基
づき、運営戦略室で研究方向の見直し、研究部の改編、予算傾斜配分などを審議し、そ
の審議に基づき、総長・研究所長が決定する。
研究遂行にあたっては、下の例の様に、組織規程上の正式のセンターに加えて、後述
4
の様に病院診療科などと連携した「緩やかな部門」を構成し、部門内での共同研究を戦
略的・効果的に進めるとともに、部門間の情報共有・共同研究も推進する。予算や人員
の配備に関して一定の裁量権を「センター長」「部門長」に与える。
以下、センター・部門ごとの研究目標を記載する。
糖尿病研究センター
研究目標
世界の死因の第 8 位となっている糖尿病の患者数は、東アジア諸国を含む西太平洋地域
で最も多く今後も大幅な増加が予測されている。一方、アジア地域の糖尿病は、欧米と
は病因・病態が異なると考えられ、アジア人に適した予防法・治療法を開発する必要が
ある。この目的のため、病院・他 NC・大学などと連携し、動物モデル・バイオバンク
検体等を用いて、糖尿病の発症メカニズムや病態および合併症のメカニズムを分子レベ
ルで解明し、糖尿病や合併症を鋭敏に予測する新規バイオマーカーを開発し、その予防
を目指した臨床研究の開始を目指す。また、現在各部において同定しつつある糖尿病の
病態を規定する鍵分子をターゲットとした糖尿病根治薬・発症予防薬の開発を企業とも
共同し、アジア地域で国際共同治験等も視野に入れた開発を目指す。さらに、iPS 細胞
やヒト検体からの膵島移植など細胞療法を駆使して、糖尿病治療を「コントロール」か
ら「治す」ことへの前進を図る。また、現行の治療薬の選択や使用法について日本糖尿
病学会等とも連携して臨床試験や疫学研究などから有効性・安全性・経済性に優れたも
のを標準治療として策定する。これを、情報センターなどを通じて普及させることによ
り我が国の糖尿病医療レベルの均てん化を図り、さらにアジア地域への普及により糖尿
病診療の向上に貢献する。また、我が国やアジア地域の糖尿病の疫学的解析などをもと
に、糖尿病の予防や合併症抑制のための政策提言を行う。さらに、連携大学院等を通じ
て、研究所・病院が一体となり上記の研究を担う次世代の Physician Scientist を養成
する。
臓器障害研究部:糖尿病に関連する合併症の病因解明、バイオマーカー探索を進める。
合併症関連の OMICS 解析はショットガンプロテオームに限定するだけでなく、標的プ
ロテオミクス、メタボローム解析、タンパク修飾の解析も進める。さらに、糖尿病患者
の前向きコホート研究に因るバイオマーカー候補分子の意義の検証、疾患モデルマウス
などによる POC の研究も行う。
5
糖尿病研究部:
「糖尿病予防のための戦略研究」J-DOIT2, 3 の解析、サブ解析、また、
JPHC Diabetes Study による疫学研究や種々の臨床研究を進める。JPHC 研究に関し
ては、遺伝疫学解析も進捗させる。
分子糖尿病医学研究部:ヒト脂肪組織の発現解析からインスリン分泌を促す因子や、イ
ンスリン抵抗性を惹起する因子を同定し、動物モデルでそのメカニズムを解明し、治療
薬の開発を目指す。また、これらの因子が実際に糖尿病患者において発症や進展と関連
があるかどうかを経時的バイオバンク検体の解析によって検討し、発症予防バイオマー
カーとしての有用性を検討する。
代謝疾患研究部:糖尿病・肥満・代謝性疾患患者を中心とするヒト臨床検体を用いた多
層的オミクス解析により、ヒトにおける病態解析、疾患遺伝子・バイオマーカー探索、
および創薬標的の探索を行なう。これらと対をなす基盤研究として、モデル系により、
特にβ細胞、脂肪細胞などの分化や機能調節機構の解析、エピゲノム解析などによる環
境因子の分子メカニズムの解明、などを推進し、臨床試料由来パネルとの連関を検討す
る。
膵島移植プロジェクト:1 型糖尿病に対する根治治療として膵島移植を当センターで実
施する。他施設、他研究部と連携し iPS 細胞からの膵β細胞への分化誘導技術とその移
植技術を開発し、First in human(FIH)臨床試験を5∼10年のうちに当センターで
実施する。さらにブタ膵島を用いた異種移植の実施に向けた基盤整備を行う。
分子代謝制御研究部:肝臓や脂肪組織において肥満・糖尿病・非アルコール性脂肪性肝
疾患などの発症に係わる経路と分子実体を解明する。本解析から新規糖尿病治療薬開発
のための分子標的を同定し、企業などと共同し創薬へ展開させる。
糖尿病情報センター:糖尿病の実態、臨床情報、研究成果について国民への情報発信を
行い、研修会の施行や各種マニュアルの公表等により糖尿病診療のボトムアップに資す
る。糖尿病患者情報を蓄積し、糖尿病診療の動向を調査・分析する。
連携診療科(例):
(連携)糖尿病内分泌代謝科
(連携)眼科
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(連携)腎臓内科
(連携)臨床研究センター
(連携)循環器内科
(連携)神経内科
(連携)心臓血管外科
(連携)消化器内科
(連携)脂質シグナリング PJ
注記
連携先については、必ずしも固定したもので無く、また、センター・部門との間で1:
1対応でない。本構想は、研究所からの病院への提案である。今後病院との議論を通じ
て、仕組みの検討や連携診療科の随時追加が行われる。
連携の内容は、以下のことが考えられる。
1.共同研究の実施(患者試料・医療情報の収集、解析分担)
2.共同での研究費(インハウス、外部資金など)の獲得
3.連携大学院を通した博士号取得支援
4.研究所配属による基礎的研究技術の習得
5.論文執筆の指導、監修・協力
以下のセンター・部門でも同様である。
肝炎・免疫研究センター
研究目標
肝炎(薬害を含む)
・肝がん(ウイルス性、生活習慣病による非ウイルス性)
・免疫疾患
の発症機序、診断と治療に繋がる研究を進め、それらの成果に基づき費用対効果に優れ
た個別医療の確立を目指す。新規バイオマーカーや治療標的の有用性を国際臨床試験に
より検証し、国際医療に貢献する。肝疾患診療の均てん化を通して肝炎・肝がんの撲滅
を目指す。感染宿主応答、自己免疫による難治性疾患や稀少疾患、生活習慣病の病態形
成に深く関与する免疫系の作動機構や維持機構、急性ならびに慢性炎症の病態形成過程
を解析し、外因性及び内因性障害によって生じる炎症性疾患群の新たな治療標的や制御
法を創出する。
肝疾患研究部:肝疾患患者の個別化肝がん予防医療を確立するために、肝炎進展機序を
7
解明し、肝がんの病因別リスク因子と発症関連分子を同定する。肝疾患拠点病院や海外
診療施設の臨床情報と検体を用いて、肝がん関連因子の臨床的有用性を検証する。
消化器疾患研究部:消化管疾患由来の試料を用いて、エピジェネティック解析を中心に
疾患バイオマーカーを探索する。さらに消化管粘膜傷害の機序や、肥満・耐糖能異常に
おける消化管細胞の変化について、ヒト由来の試料と動物実験とを並行して解析する。
免疫病理研究部:自己免疫疾患、乾癬、アトピー性疾患の発症や病態形成におけるシグ
ナル伝達因子(Themis、RhoH)、環境応答因子(AhR、Nqo1)、炎症制御因子(TSLP、
IL-22BP)の関与を解明し、これらの分子を標的とした新規治療戦略を立てる。
免疫制御研究部:自己免疫疾患関連遺伝子と病態形成機構、B 細胞群による免疫応答制
御と疾患、組織修復及び線維化における IL-5 の新機能を解明する研究を行い、炎症性
疾患の新たな治療標的を同定する。ヒト疾患での関与について検証を進める。
肝炎情報センター:肝疾患診療の均てん化と高度医療を目指し、肝疾患診療拠点病院や
医療機関の医師やコ・メディカルに対する情報提供と研修を行う。大規模臨床試験を実
施する中核として、拠点病院や海外施設との強固な情報・検体管理体制を確立する。
連携診療科(例):
(連携)消化器内科
(連携)消化器外科
(連携)膠原病科
(連携)皮膚科
(連携)整形外科
(連携)耳鼻科
(連携)小児科
(連携)血液内科
(連携)呼吸器内科
(連携)腎臓内科
メディカルゲノムセンター
研究目標
8
メディカルゲノムセンター(MGC)は、国家戦略の観点より、ゲノム医療の「臨床応
用」を目指す。大きく、診療、解析、支援、バイオバンクの4つの部門を持ち、相互連
携して、先駆的医療の研究開発と実践に取り組む。特に、被験者の個人情報保護、生命
倫理への対応に十分留意しつつ、ゲノム情報を活用した、感染症その他の疾患、希少疾
患難病等の、診断精度の向上や治療選択の至適化などを推進する。
MGC の組織図(案)
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MGC に対する研究所、病院、臨床研究センターの関係
ゲノム医療は、網羅的に探索した結果を、その時その時の、研究の進捗状況・成果に
照らして診療に活用するという、従来の臨床検査などとは全く異なる概念に立脚した分
野であり、段階的に発展・成熟していく。したがって、臨床(病院での診療を通じた、
被験者リクルート及び成果の還元)と研究(研究所での生体試料を用いた解析と、その
成果を臨床応用するための臨床研究・治験における臨床研究センターの支援)とが一体
化して取り組むことが肝要である。
国際感染症部門
研究目標
海外拠点と連携した共同研究、 ASEAN 諸国を中心としたアジア・太平洋諸国、アフ
9
リカ諸国との国際保健医療協力研究を実施し、感染力・重症度の高い新興感染症をはじ
め、薬剤耐性病原体による再興感染症、さらには NTDs(Neglected Tropical Diseases)
などの国際感染症の制圧に向けた創薬、ワクチン開発、診断技術・機器の開発、医療サ
ービスの UHC の達成に貢献し、わが国の健康・医療に関する国際展開の促進といった
政策への提言も行う。一方、わが国の公衆衛生の脅威となる感染症の防疫、海外渡航者
の健康管理、院内感染制御などで国際感染症センター(トラベルクリニック)、感染症
内科などの活動と協働する。
感染症制御研究部:ベトナム、ネパール、ミャンマーなどと協力した分子疫学研究と薬
剤耐性の新規因子同定、アジアで流行する高度アミノグリコシド耐性菌を標的に、微生
物化学研究所と共同して、新規化合物を開発する。
感染症免疫遺伝研究室:多剤耐性緑膿菌の流行伝播、連鎖球菌のゲノム編集機構などの
基礎的課題に加えて、重症細菌感染症の迅速診断法開発、次世代シークエンサーによる
結核菌診断システムの開発を進める。センター病院と一体となって、臨床検体における
病原体の検出・解析法を構築する。
熱帯医学・マラリア研究部:フィールド研究を基盤に選定された NCGM 発の医師主導
治験マラリアワクチン FIH、さらには Phase I, II 試験を目指す。ラオス国立パスツー
ル研究所を拠点とした SATREPS(JICA/JST)プロジェクトでも、同国保健省やWH
Oと共同で、薬剤耐性マラリアの分子遺伝疫学とその封じ込めにかかる国際研究の目標
を達成する。
難治性ウイルス感染症研究部:様々な化合物ライブラリーとハイスループットアッセイ
系を用いて、肝炎、エイズなど難治性ウイルス疾患の新規治療薬の開発を進め、NCGM
発の薬剤による FIH の臨床試験を目指す。
連携診療科(例):
(連携)ACC
(連携)DCC/感染症内科
(連携)呼吸器内科
(連携)小児科
(連携)国際医療協力局
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(連携)臨床研究センター
先進医療開発部門
研究目標
ゲノム・オミクス解析、再生医療、分子細胞治療、遺伝子工学などの先端技術を駆使
して、先進医療の開発に繋がるような研究を推進する。センターのミッションである感
染症、生活習慣病、肝炎・免疫疾患とともに、人口高齢化に伴って複雑化し種々の合併
症が存在する病態や、難病、その他の疾患に対しても機動的に取り組む。基盤研究で得
られたシーズの臨床応用の可能性を明らかにし、産学官の連携、橋渡し研究へと展開す
る。臨床部門から上がるシーズについては、共同研究体制を含む協力体制を構築できる
様、弾力的に部門を運営する。
難治性疾患研究部:HIV-1 研究で見いだした新規ペプチドベクターの機能と応用性を明
らかにする。特に、国際特許の導出先企業との共同研究を推進し、臨床応用の実現性の
高い課題については、優先的に実用化を目指す。
遺伝子診断治療開発研究部:生活習慣病などの多因子疾患の post-GWAS 研究とし
て、オミクス等の網羅的 wet 解析、ビッグデータを対象とする dry 解析、及びヒ
ト患者由来試料を用いた個々の遺伝子・ネットワーク機能の検証を行う。
疾患制御研究部:ヒトES細胞やヒトiPS細胞からの分化細胞(褐色脂肪細胞、血管
内皮細胞、など)を用いて糖尿病などの代謝疾患の再生医療を開発すると共に、これら
のモデル細胞を駆使して創薬の分子標的の探索、細胞由来の液性因子の探索などを行い、
治療薬の開発を推進する。
細胞組織再生医学研究部:iPS 細胞から膵臓β細胞を誘導してⅠ型糖尿病患者への膵島
移植を目指すとともに遺伝性糖尿病の MODY の病態解明に役立てる。また肝硬変の線
維化のメカニズムの解明と新しい治療法の開発を目指す。
生体恒常性プロジェクト:造血幹細胞や造血器腫瘍幹細胞と周囲の微小環境(ニッチ)と
維持機構と、加齢や病態に伴う破綻の機構の統合的な理解を深める。得られた知見を基
に幹細胞の維持・増幅・操作技術の開発や、各種病態の解明、治療法開発を目指す。
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連携診療科(例):
(連携)小児科
(連携)産婦人科
(連携)臨床ゲノム診療部(設置準備中)
(連携)ACC
(連携)膵島移植 PJ(部)
(連携)脂質シグナリング PJ
(連携)血液内科
(連携)精神科
(連携)心療内科
(連携)循環器内科
(連携)心臓血管外科
(連携)呼吸器外科
(連携)脳神経外科
(連携)その他、CPC を活用する診療科
4.研究支援体制
1)共通機器室の充実
機器:電子顕微鏡、セルソーター、次世代シークエンサー、質量分析装置、大型プリン
ターなどを配備する。
人員:現員に加えて、室長クラス(例えばプロテオミクス.バイオインフォーマティク
ス)、研究員や技術補佐員(質量分析装置、セルソーター、次世代シークエンサー担当
オペレーターなど)を補充し、サービスと技術開発、研究を進める。
2)実験動物管理室
従来通り、共通基盤経費とユーザー負担を組み合わせて、研究サービスを向上させる
と同時に、人員を拡充し、新規技術導入や独自技術開発などを進める。研究所改装計画
により、実験動物スペースを拡充する。専任の上級研究員、技術補佐員を確保する。
3)RI 研究室
稼働状態を鑑みながら、基盤的RI測定装置や設備を維持し、必要な放射性同位元素
実験が安全に実施できるよう、放射線取扱主任者と常駐者による支援、放射線安全管理
委員会による安全管理を行う。
4)知財管理・広報活動
研究者は、常に研究の社会的意義、臨床への応用を考えなくてはいけない。新たな発
12
見については、早い段階で臨床研究センターの知財開発管理室に相談し、特許の入り
口・出口戦略を検討する。6つのナショナルセンター(あるいは都内の4つの NC で)
で共通の知財開発管理部門を持つことなども検討する。さらに、アウトリーチ、広報活
動(ウェブ、メディアセミナー、高校生や大学生への研究所オープンデイなど)を重視
する。このためにはセンター全体で広報担当のスタッフを強化して、研究内容・成果の
社会への発信に努める。
5)技術職員の異動促進とキャリアアップ奨励
技術系職員の技術研修を補助する。また、技術系職員の異動の促進、研究員へのキャリ
アパスを作る。
5.人材育成
Physician Scientist 育成のため、病院、臨床研究センターと共同で、連携大学院の実
質化も含めた新たな「MD/PhD コース」を創成する。Early exposure を重視する立場
からは、初期研修医への持続的な教育を重視する。連携する大学、医療研究機関と協力
して、育成した若手研究者(Physician Scientist 含む)が長期的にみた戦力となるよ
う、そのキャリアパス(任期付研究者の施設間ローテーション、留学支援制度など)を
整備する。様々な背景を持つ non-MD 研究者(理学、農学、薬学、工学など)の部室
長への登用、また、異分野融合による学際的研究を発展させる。また、研究業績と同時
に、人材育成(院生の指導数、外部機関への輩出数など)の実績も部室長の評価に加え
る。
6.研究倫理の遵守、研究費の適性使用等及びその教育
「国立研究開発法人国立国際医療研究センターの研究活動に係わる行動規範」、及び「国
立研究開発法人国立国際医療研究センターにおける研究活動上の不正行為の防止及び
研究費の適正な運営管理の確保に関する規程」、さらにこれらに基づく「国立国際医療
研究センターガイドライン(実験系)」
(平成26年10月6日決定)に則って研究活動
を進める。年に一回、全研究者、研究補助者を対象に講習会を開催する。動物実験講習、
バイオセーフティ講習と併せて、出席を義務とする。また、e-learning システムを活用
する。
7.環境安全管理
地震、事故火災などの発生に備え、作製された「災害対応マニュアル」(2014年
12月版)を活用する。センターの防災訓練に参加する。安否連絡網の整備を行う。ま
13
た、定期的に産業医などの巡視を受け、研究室環境の整備を行う。
8.産学官の連携
1)寄付部門(仮称)の設置
現在の空きスペースを活用して、寄付部門を設置し、企業との共同研究を推進する。
寄付部門設置要綱は別に定める。
2)産学官の人材交流
大学研究者、企業研究者の研究所への受け入れを促進し、また、一定期間、研究者を
他機関に研修派遣するなどの仕組みを導入する。
3)クロスアポイントメント制度の導入
他機関(大学、民間、研究所など)にエフォート管理で籍を置きつつ、同時に研究所
でも活躍出来る制度を導入する。
9.男女共同参画
研究所に男女共同参画推進委員会を置き、女性休憩室設置や、産休・育休後の復帰支
援策など具体的方針を検討する。部室長、上級研究員などに女性研究者を積極的に採用
するなどのポジティブアクションを進める。また、部長連絡会などの公式会議は9時∼
17時半の間に開催することを原則とする。
10.その他の研究環境整備
施設老朽化部分の改修、人感センサー、LED 照明の設置、個別空調の強化による光
熱費や CO2 排出量の削減、スペースの有効利用などを進め、働く者にとって安全で、
環境に配慮した研究所を構築する。
11.見直し
本計画は必要に応じて見直しと加筆・訂正を行う。
14
図
研究所と病院の連携をさらに深めるために(研究所新組織)
研究所長
諮問
運営戦略室
副所長
研究支援
部門
R
I
管
理
室
動
物
実
験
施
設
共
通
実
験
・
機
器
室
肝炎・免疫
研究センター
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克
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4研究部
情報センター
研究所と他部署
の連携・協力
国際感染症
部門
開
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学
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臨
床
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究
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新
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感
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3研究部
1特任研究室
メディカルゲノム 先進医療開発
糖尿病
センター
研究センター
部門
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情報センター
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門 先
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センター病院・国府台病院・臨床研究センター・国際医療協力局
(注)本図は研究所の新しい組織であり、また、研究所側から見た連携構想である。病
院、臨床研究センター、国際医療協力局からの視点では別の図が描かれる。
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