1409「HR-ShortMessage」

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話を真に受けない余裕を
曽和利光 ㈱人材研究所 代表取締役社長
●住所:東京都港区白金台2-10-2 白金台ビル4F
●TEL:03-6408-4194 ●URL:http://jinzai-kenkyusho.co.jp/
■人事のコアスキルは「組織や人の見立て」
とでしょう。特に経営者や現場リーダーは意思決定
人事のコアスキルとは何か。それは「組織や人の
スタイルが“即断即決型”の人かつ“自信家”が多
見立て」すなわち「今,この組織(この人)はどん
いため,自分の経験から過度の一般化を行う傾向が
な状況にあり,問題があるとすればそれは何かを見
あり,彼らが自信を持って語る見立てや評価を鵜呑
極めること」です。
みにしすぎると,見誤る可能性があります。スポー
人事の重要スキルとして採用や育成,評価,報酬,
ツ選手などに見られる通り,ビジネスでも,優秀な
配置等に関する技術的・専門的な知識を指摘される
プレイヤーが“自分はなぜ結果を出せているのか”
ことがあります(もちろんそれは必要です)。
しかし,
という点には無自覚な場合も多く,自覚していると
事業戦略やマーケティング,商品開発等の他の分野
思っていても事実と違うことは多々あります。
と比べると,人事領域では技術や知識で解決できる
このことは,人事が人や組織を見立てる際に大変
オプションは限定的です。極端にいえば,「職能給
な障壁です。つまり,インタビューもサーベイも,
か職務給か」
「絶対評価か相対評価か」というような,
得られる情報は「客観的事実ではない」可能性があ
「右か左か」的な選択肢での議論が多いように思い
るからです(行動観察やデータはましでしょうが,
ます。一方,その「右か左か」の二者択一をよく間
誰かの「解釈」が入るという点では似ています)。
違えるのが人事です。原因の多くは「見立て」の間
■人の話は「半分」程度に聞き,拙速に動かない
違いにあります。誤った仮定から論理的に導き出さ
だから人事には,
「人から聞いた話は,鵜呑みに
れた結論は必ず誤りで,間違った結論を全力で推進
せずに,周辺関係者等から多角的に情報収集し,裏
すれば恐ろしいことになります。これを避けるため
を取って確認できるまでは保留情報としておく」と
に,人事は「見立て」の力を磨く必要があります。
いう,ある意味「人の話は半分に聞く」姿勢が大事
■分かっていない人の話から理解する困難さ
なのです。これまで人事に関わってきて,いろいろ
ところがその「見立て」は大変難しい。組織も人
な組織課題に対面し,関係者から話を聞く機会を持
も,その本質である「文化」や「パーソナリティ」
ちましたが,初めの方から聞いて感じた印象と,そ
などは目に見えない曖昧なものであり,そういうも
の後,別の方々から聞いて続々と入ってくる情報と
のを捉えるには大変な技量が必要です。
で,かなり印象が異なるケースが大半でした。拙速
また,
「インタビュー」
「サーベイ」
「行動観察」
「客
に,裏の取れていない情報をもとに動いてしまった
観的データ(退職率,評価点等)
」等,組織や人を
場合,誤った処方を実施しかねないのです。
見立てる手段は限られています。それぞれの領域に
組織,特に文化は一度壊すと元に戻りにくいため,
おいて細かなテクニックがあり,トレーニングを積
人事が誰かの“妄想”をもとに拙速に動き回ると,
んで技量を磨いていくことは必須ですが,限界もあ
害悪のほうが大きくなるのではないでしょうか。決
ります。
「人間は,自分のことは全然分かっていな
して「疑心暗鬼・性悪説で人を見ろ」とまでは言い
いし,見たいものしか見ない動物」だからです。
ませんが,組織や人というセンシティブな対象を扱
なかには「分かっている」と豪語する人もいます
う人事としては,できるだけ慎重に様々な角度から
が,大概は「分かっていると思っている」だけのこ
見立てをする必要があると思います。
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人事マネジメント 2014.9
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